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進め、暗中模索の徒 (紅炎×アリババ)

登場人物:アリババ、紅明

CP傾向:炎アリ、炎明

奏でよ、簡素清貧の君』 の後
語れ、一味同心の友』の間に入る話です。

注意:炎アリなのに紅炎兄さんが全く出てこず
アリババくんと紅明さんが紅炎兄さんの話をgdgdしてるだけの話です!

炎明も炎アリも同軸で存在できる人の話なのでご注意ください。
 感情的に炎明があります。






 それは、かの騒動があった翌日のことだった。
 バルバッドらしい少し湿った潮風が心地よく吹き抜ける。その風を受けて煌帝国軍船の旗が遠くにはためいて見える。
 明日この船団はシンドリアとの会談を行う孤島に向けて出立するのだ。
 シンドリアの使者として接待役を任されこの地へ来たアリババ一行だが、船旅の用意は殆ど煌帝国側で済ませてある。その為、彼らがやるべき事は各々が長旅に備えるくらいで、手持ち無沙汰なはずだ。
 勿論、そう仕組んだのは練紅明である。
 つまるところ、彼らに残された課題は紅炎に突きつけられた様々な無理難題の解決であった。
 煌帝国の軍門に下れ。その無理難題の方は八方塞がりのはずだ。そのように仕向けた上で招いたのだから、彼は首を縦に振らざるをえないだろう。
 問題は練紅明の策になかったもの。それは兄である練紅炎が気まぐれで元皇子アリババの元へ夜這いに行った事だった。結果は未遂。敬愛する実兄ながら、兄のしでかした気まぐれに少々頭痛を覚える。
 とりあえず騒動の翌日には適当にぐらかして落ち着けたのだが、そう簡単に騙されてはくれないだろう。冗談で終わってくれたらどれほど楽なことか。紅明は心労を感じ、小さく溜め息をついた。




 そうして夜、その兄の気まぐれにかかったお気に入りの彼は、何故か酒を片手に練紅明を訪ねて来ていた。

「兄王様の良いところが知りたい? どういう風の吹き回しなんですか」

 開口一番に紅炎の良いところを知りたいと彼は言う。所望された紅明の顔には面倒くさいと書いてあるが、アリババは想定済みだというように、言葉を用意していたようだ。

「まあ、とりあえず俺の話を聞いてくださいよ!」

「はあ? 嫌です」

 聞いてやる義理もないとぶったぎるも、アリババの笑顔は絶えない。

「聞いてくれないとここでドンチャン騒ぎをして一夜を明かしまーっす!」

「やめてください近所迷惑です!!」

 どんな脅しだ、と思わなくないが、単純に断ると後が面倒くさそうだ。そう考えた紅明は、少しだけ喋らせてさっさと帰らせようと画策する。

「……なら少しだけ」

 やった!とアリババは素直に喜ぶ。ここで紅明は、兄が奇想天外な才を愛する者だということをふと思い出した。ようするに、アリババの事が全く読めない。
 そんな置いてけぼりをくらう紅明をよそに、アリババはやたら深刻そうな演技のもと語りだした。

「俺は紅炎が怖いんです。寧ろ嫌いな方に傾いてる」

「それはそうでしょうね」

 あのやり取りで好きになれと言っても、土台無理な話だ。 そこはもう諦めている。
 後は時間をかけて兄の素晴らしさを見てもらうしかないだろう。長く側に置こうと兄が思っているのなら、次第に兄の意志ややり方もわかるはずだ。

「ここでですよ。人がオバケを怖いって思う原理、知ってます?」

「そんなもの居るはずないですし、怖くないのでわかりません」

 事実、存在しているとは思っていないし、いたとしても怖くない。己も王の器に肩を並べる金属器使いという自負もあるが、そんな不確かな存在より、生きている人間の方がよほど怖いと紅明は思う。

「アー、一般常識としてオバケは怖いってことにしておいてください」

 話が進まないと感じたアリババが、勝手に定義付ける。

「はあ」

「ずばり! オバケの怖さの本質は無知にあるんです! 相手のことが何もわからなくて、日常を想像できないから、人はオバケが怖いんです。考えてもみてくださいよ。四六時中、何を考えて何処で何をしてるかがわかるオバケとか、あんまり怖くないでしょう?」

「怖くないので分かりませんが、愉快にはなりますね」

「でしょう! で、逆を返せば、相手の事さえ分かれば、恐怖は薄れるってわけだ」

「え、ちょっと待って下さい。その言いようだと、あなたにとって兄王様はオバケなんですか」

「似たようなもんです!」

「そ、そんな……」

 思わず紅明はショックを受けた。兄が嫌われているとは思っていたが、まさかオバケ扱いされているとは初耳だ。

「つまりだ。俺が練紅炎という男をもっと理解して、良いところに気づければ、少しは協力する気になれるかもしれないし、とりあえず怖さは薄れる。ただ、そう云うものは、すぐ気がつけるわけじゃないですよね? そこで、近しい人から情報を仕入れようってわけなんです」

 なるほど、要するに紅炎の情報が欲しいということだろう。敵を知り己を知れば百戦危うからず。有名な兵法の一節だ。情報だけで全ての勝敗が決するわけではないが、駒を有利に進める上で必要不可欠なものだろう。
 あんな出来事の翌日に即行動とは、逞しいと言うべきか、図太いというべきか、抜け目がないというべきか、紅明は少々悩みつつも唸った。

「あなたはやたら前向きですね」

「そこが売りなんで!」

 にかっと笑う笑顔は太陽の如しだ。

「なんで私なんですか、紅覇や紅玉姫でもいいでしょうに」

「だって紅明さん、紅炎のこと好きでしょう?」

「……。………。…………否定はしませんが」

「良いところも悪いところも知ってるでしょう?」

 確かに。兄の良いところも悪いところも知っている。臣下であれば言えないような事から、ずっと隣にいなければ気付かないような事まで知っている。
 しかし、それらを教えてよいものかと、紅明は一考する。
 兄はおそらく、アリババの事をとても気に入っている。他の者にはない強さと、人を動かす弱さと、惹きつけるような輝くような光。決して媚びない芯の強さと率直さ。確かにこれまでにない人材だと紅明も思う。
 兄とて負けてはいない。とは思うが、そう言えば兄はとても言葉が少ない事を思い出す。いつも説明役を自分に投げてしまう兄は、あまり己を表に出さない。
 それは不平等だと思った。アリババの良いところなんて見ていたらすぐに分かるのに、兄は見ていたら悪いところしか理解されないなんて。

「……言いたいことはわかりました」

 すっかり乗せられてしまった気もするが、この際だから仕方がない。口下手な兄のために、良いところを全部話してしまおう。本人は絶対に良い顔をしないだろうが知ったことではない。そもそもアリババがここへ来た経緯を作ったのは兄なのだから。

「いいでしょう、この仕事が片付けば付き合ってあげます。だから仕事、手伝ってください」

「やりィ! ありがとうございまーす!!」

 休むまでに片付けようとしていた仕事は急ぐものではなかったが、片付けておけば後々楽になるのは確かだ。
 しかしこの時、喜ぶアリババはまだ知る由もなかった。部屋に膨大な量の仕事が待っていることに。







 いざ紅明の部屋に招かれ奥へ入ると、そこは雑然と書類や書簡が積まれた仕事の虫の巣窟だった。衝立により一見して外からは見えないが、相当ちらかっている。
 書類の山に圧倒されたアリババは呆然と山頂を見上げながら、語らう前に夜が明ける不安を感じ取った。

「え、何すかこの量」

「出立までにできるだけ片そうと思っている書類の山です」

「多すぎじゃ」

「普通ですよ」

 紅明は臆した様子は勿論なく、さっさと机に戻って筆をとる。

「そこに置いてあるのは目を通し終えた書類です。部署か州ごとに分けておいてください。途中までやってありますから、見たらわかるでしょう」

「はあ。何なんですこれ、始末書……?」

「大体が報告書のようなものですね。煌帝国領で起きた諍いや領民の声、政治や商業の動きなどを報告してもらっているのですよ。本来ならこのような末端の仕事は、ある程度地方に任せるものなのですが、煌は戦時中ですので、僅かな歪みも見逃さないために私も見ているのです」

「へえ……」

「目が届かないような末端での諍いから大きな規模の反乱やクーデターに繋がることも想定しています。あまり地方の処置に口出しはしませんが、行き過ぎた信賞必罰は争いの火種にもなりえますから」

「しんしょうひつばつ??」

「我が国のことわざで、正しい行いをしたものには褒美を、悪いことをした者にはそれ相応の罰を、という意味です。領民は法の下で公平にあらねばなりませんから」

 そう言う紅明は、顔も上げず淡々と仕事をこなしている。
 何とも言えない能力の差を、アリババはあえて考えないことにして作業に入った。




「いやあ、助かりましたよアリババ殿。徹夜を覚悟していましたので」

 そうして一刻半、懸命な勤労の末にようやく執務室は整然とした体を取り戻したのだ。

「ど、どーも……ていうか俺に見せても良かったんですか? 国政に関わる書類とか」

 機密に近い書類もあっただろうに、殆ど全ての書類整理に携わってしまった。

「おや、読む時間ありました?」

「いやぜんぜん。ていうか、紅明さんはあの速度で読めてるんすか?」

 その殆どの書類に紅明は目を通しているが、一枚につき数秒である。あの速度で読めているなら、相当な速読の能力だ。

「当然です。内容も大体覚えていますよ」

「あんた何者なんですか」

「普通の人間です。私はそれくらいしか秀でたものがありませんでしたので。それとこの仕事の半分ほどは、本来バルバッドの総督に任せるべきものなんです。つまりアリババ殿がうちに来るとしたら、いずれ貴方の仕事になりますよ」

「まじすか……」

 さぁ、とアリババの顔が青くなるのを軽く無視して紅明は立ち上がる。

「さあさ、兄王様の話を聞くのでしょう? こちらに来てください」

「あっ、はい!!」

 部屋に用意してある酒を適当にいくつか選んで取り出す。水と酒盃、適当に珍味も取り出し盆に乗せた。それらを接待用の席まで運ぶと、アリババに先に座るように促す。
 この席は普段使われないが、使われないからこそ雑然としていない。従事の者が綺麗に手入れしているのか埃一つ被っていない。先程までの大混迷を極めた部屋とは大違いだ。
 紅明もゆったりと座り、ニつの盃に白酒を注ぐと片方をアリババへと差し出した。

「さて、何から話しましょうか」

 アリババは一口、酒で口を湿らせて、話を切り出す。上質な酒は仄かに甘く、これはいくらでも飲めてしまいそうだ。

「お、生い立ちとか?」

「生い立ちですか。……私の物心がついた頃からしか話せませんが」

「そりゃそうだよな」

 順等であると思う。生い立ちが分かれば境遇による性格やその思考を察しやすい。完全に枠にはめてしまうのは上策ではないが、大まかな形を知るには良い質問だろう。

「ですよね。私が物心ついた時には、私たちは既に戦火の中に居ました。皇族の血を引くものとして武芸は勿論、教養の類は徹底して叩き込まれましたね。その頃の兄上は今よりも感情が表に出やすい、普通の少年に見えました。ああ、その頃は私は人見知りだったので、余計に兄が外交的に見えたんでしょうけど」

「え、そうなんです? 今じゃ紅明さんの方がまだとっつきやすそうなイメージなのになー。じゃあ人見知りなおったんですね」

「皇族が人見知りで許されるのはせいぜい元服までですよ。このあたりでは成人と言ったほうが通じやすいですかね。その後は有無を言わさないので嫌でもなおります。白龍もそうでしょう? まあ兄も私も根っこは人付き合いめんどくさい人なので、なおったと言うべきかは謎ですけどね」

「うわあ、皇族にあるまじき堂々とめんどくさい発言」

「隠したってどうしようもないでしょう。私達以外でできる仕事は出来る限り他に振りますし、人と合う仕事は少ないほうがいいです」

「俺の招かねざる客感がやばい」

「そうですね」

 と、言いつつも減ってきた盃に酒を注ぎ足してやる。アリババは縮こまってはいるが耳だけはしっかりこっちに向いているのがわかる。紅明は気にすることなく話を続けた。

「兄には慕っている方が居ました。前皇帝の嫡子である白雄様と白徳様です」

「白……」

「白龍の兄たち、と言えば分かり易いですかね」

「ああ、なるほど」

「あの方々が事故で亡くなってから、兄上は少し変わりました。宮廷ではよくあることなのですが、在位している皇帝か変わると、その家系の者達の地位も変動します。つまるところ、私たちはより強い立場に……権力者となったわけです。為政者になる可能性が高くなってきた私たちは、それまで以上に勉学に励み、戦う力も蓄えました。備えさせられたと言うのも正しいかもしれません。貴方もバルバッドで鍛えられましたよね」

「あ、ああ」

 いずれ国の王となるには様々な能力を要する。知識や武術だけでなく、先を見通す能力と広い目。アリババはその末端の部分しか学んでいない。

「あれです。為政者は人の上に立って国を治めなければならない。その為には必ず知識や見識が必要です。ですから、それらを研かねばならないわけですね。特に歴史は必須でしょう。何故だかわかりますか?」

 いきなり質問を投げかけられて、アリババの背筋が伸びる。下手な答えをしたら部屋から叩き出されそうだ。

「えっ!? えーと、同じ轍を踏まないため……っすかね」

「そうです。過去の成功と失敗を知ることは最も必要なことです。ところが」

「……が」

 ここで紅明は大げさなほどにうなだれた。
 一応、多少は酔っている部分もあるようだが、演技ではない事はわかる。悲しいまでの本心だ。

「兄上は想定外のハマり方を見せ……」

「あ、ああ。そういえば……」

「皆まで言わずとも私が一番よくわかっています」

「っすよねー」

「気づけば兄上の主目的に世界の謎を解き明かすことが追加されていました。いや、私も歴史は好きですし、気にならないわけではないのですが……」

 ここまで来れば最早愚痴である。紅明は空になっている盃に酒を並々と足すとそれを一気に飲み干した。そして更に注ぎ足す。数えてないが結構ハイペースな気がする。アリババは気づかないふりをしつつ干されたイカの足をそっと噛み締めた。
 多少、紅明の目が座っている気がするのは、このまま気のせいにしておきたい。

「紅明さんも苦労してるんだなぁ」

「……どうも。金属器を得るために迷宮攻略もしましたけど、ジンと語ろうとする兄上は輝いていました」

「へ、へぇ……」

 なんとなく予想はできる。確かにアリババだって最初にジンを見た時は興奮したものだ。それが解き明かしたい謎であったならば、それはもう輝いて見えたことだろう。

「後はまあ戦いに明け暮れながら今に繋がりますので、生い立ちはそれくらいですかね」

 アリババの中では微妙に繋がってない部分もあるのだが、紅明が酒に酔って気分が良さそうなのでさっさと次の議題に変えるが吉とアリババは踏んだ。

「えー。じゃあ、好きなものとか得意な事とか」

「兄上の好きなものですか? ああ、辛いものが好きです」

「え、なんか普通ッスね」

「肌荒れするんで私はあんまり好んで食べたくないんですけど、毎回何かしら辛いものが食卓に並ぶんですよね。後はほら、歴史というか世界の謎……あれがあればたぶん兄王様は生きていけますよ。それくらいですかねぇ、取り込もうとするような要素はないです」

 酒をたんまり飲んで火照っているのか、珍しく紅明の羽扇が本来の役割を果たしている。アリババとて酔っていないわけではない、上等な酒は心地よくとても気分が良い。紅炎のことはともかく、この紅明とであれば今後も上手く行けそうな気がしてきた。
 しかし、本題はそこではない。そろそろだな、とアリババは考えると、話を切り出す。 

「じゃあ最後にひとつ」

「どうぞ」

「紅明さんが好きな紅炎さんのところ」

 人は人の欠点ばかりに目が行くが、良いところを知らされれば意外と頷けるものなのだ。欠点も美点も反転させることができるし、勝手に妄想や羨望や憧れも込めて変換している部分もあるだろう。
 しかし、これを聞いておくに越したことはない。素面で語るには少しばかり照れるだろうが、今なら酒もある。

「す、好きなところですか」

「すっげえって思ってるところでもいいですよ」

「え、えええ……」

 酒があっても照れるものなのか、紅明は少しの間、目線を逸して考え込んでいたが、すぐに考えがまとまったのか語りだした。

「…………ええと。兄上は……兄上はああ見えて、優しいんですよ。まあ、私だけが血の繋がった兄弟というのもあるでしょうが、誰にだって優しいし、厳しいんです。勿論、自分にも。不公平な事は嫌いだし、真面目で率直な者が好きです。政争の中で生きてきましたから、そういうのは致し方ないんですけど。信頼できる人の事は、絶対に裏切りません。ああ見えて、情に厚いんですよ。でもあまり表情を表に出しませんし、顔が怖いからすぐ誤解されてしまって……あ、為政者として覇気があるのは大変良いことなんですけどね。あと宮廷や戦場からあまり外に出たことがないから、常識が微妙にズレていたりとかして、だから大切にしたいとか、好ましいとか思っても、伝える術が微妙におかしいんです。兄上には足りないところばかりで……それは私もなんですけど、ですからそれを互いに埋められるように、補えるようになりたいと、私はそう思っています」

「…………要は大好きなんすね」

「そ、そうですね」

「で、俺も埋められるパーツの一部になれと」

「兄上のアプローチはトチ狂ってますけど、そういうことのようですね。どこが気に入ったのか私にはわかりませんが、兄は貴方のことをとても気に入っているようです」

「うへぇ」

「さて、だいぶ酒も回りましたし、今日はこの程度でお開きと致しましょうか。何か答えに近づけるものは見つかりましたか?」

 アリババの結論は『紅炎は悪い人ではないが変人である』だ。
 既に現状は八方塞がりなのだが、もう少し覚悟を決める時間くらいなら貰えるだろう。

「……もうちょっと考えさせてもらっていいッスか」

「はいどうぞ」

 紅明は面白そうに百面相しているアリババをチラチラと見ながら、散らかっていた酒瓶や盃を盆の上に乗せる。

「後は給仕の者が片付けるでしょう、置いておいていいです」

「はぁ、わかりました」

「私は自室に帰って休みます。アリババ殿はどうされますか?」

「え、それはどういう……」

「もう少ししたら仕事詰めの私を怒りに、寝しなの兄王様がここへ来るでしょう。会われま……」

「帰ります!!!!!」

「元気な返事で宜しい」

 アリババと紅明は部屋を出ると、守衛を呼び戻して帰途についた。紅炎が来てもいいように、中に誰もいないことも言付けておいた。
 二人並んで通路を歩く。酒が残っているのか身体が火照っていて少しばかり暑い。だが、今なら酒の力も借りて悩み事をすることなく、ころっと眠れそうだった。

「今日はありがとうございました。紅明さん。色々聞けて助かりました」

「いえいえ。今度は兄と飲んでみると良いですよ。兄上は酒が入るとわりとちゃんと喋りますから」

 やや豪胆になるとも言うが、そこは紅明はあえて伏せておいた。

「えー、そうっすねえ。それもそのうち。それじゃ、おやすみなさい」

「はい、おやすみなさい。良い夢を」

 あと、その後に『何がどうなるか』……もあえて触れないようにしてアリババを見送る。
 結局のところ紅明は兄が好きで、兄が欲しいというならば、その願いも叶えたくなってしまうのだ。
 強欲に見えてあまり欲のない兄は、もう少しくらい贅沢をしても良いと思う。何より、気に入った好きな側近を侍らせるくらい許されるだろう。
 そう思いながら、紅明はふらりと自室へと踵を返した。




ほんのり続き『語れ、一味同心の友



私は話を書く時に『既にくっついている』ネタよりも『馴れ初め』を書きたがる類の字書きです。
そういう場合、あくまで馴れ初めの部分(相手を知り理解する)ターンが必須になるため
こうやって相手が出てこないけどカップリングだと言い切れる話ができてしまうんですね。

絶対これ需要ないでしょ!ゼロでしょ!!!
知ってた!!!でも書かないと私の炎アリの馴れ初め完成しないから書かざるえないじゃん!?

というわけで炎明も含めての炎アリでした。
最終的に紅炎兄さんはハーレム築くからなんでも良いよ。
ついてこれる人だけついてきてください……。
恋じゃないんだ。愛なんだ。

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