登場人物:不二裕太、不二周助、観月、跡部
CP傾向:不二観と裕観と跡観と裕太が大好きな不二兄が入り乱れるカオス世界線
制作時期:2024年6月
珍しく新テニ軸。
ある始まりの嘘と真 から続く、(※上記CP傾向参照)の短いお話。
前作はCPなしでしたが、ここからCP要素が入ります。
でもどのCPも成立していないよ!
本筋がどれかもわからないよ!
「兄貴、最近なんか観月さんと距離近くねぇか」
ふとテラスでお茶を飲みながら話し込んでいたら、自主練が終わったらしい裕太が来て、途中から会話に参加した。
そう、つまり両手に華。というには少し語弊があるかもだけれど、こういう状況は願ったり叶ったりというものだ。
だいじなだいじな弟と、それなりにだいじな友達と、穏やかに談笑しながら迎える休日の午後なんて最高すぎる。
でもまあ、お多感な時期というのもあるだろう。弟の口から飛び出した一言に、思わずぎょっとした。
「はい???」
「そうかな」
隣の観月も目を丸くしているので、それなりに驚いているようだ。
距離が近いといえばそうなるのだろうか。
そもそも観月はじめという男は、普段から懐に入り込めないほど気を張り詰めている……というわけではなくて、その実、仲間にはめちゃくちゃ甘い顔をするのである。
同室にも居場所があるというか、それなりに甘やかされているらしく、元から世話焼きな方である彼は何かと気に入られていたりする。
つまり、だ。これ以上友達を増やすと、一緒にいられる時間が減ってしまう。それは僕も裕太も願っていないことであるから、意識して近くにいるようにはしているわけだけど。まさか、裕太に怒られるとは思わなかった。
「観月さんは俺の……聖ルドルフのマネージャーなんだからな」
「一応、兼プレイヤーなんですけどね」
なんか今、主語がでかかったけど聞き流しておこう。
「お喋りするくらいいいじゃない。もしかして裕太、妬いてくれてるの?」
だったら嬉しい。裕太はとても優しい子だし、ちゃんと背中を追いかけてくれていると知っているけれど、口に出してくれる事はあまりないのだ。
「不二くん、そういう事を言うから裕太くんに嫌われるんじゃないですか」
「え、だってお兄ちゃんだもの、妬いてほしいじゃない」
観月から冷静なツッコミをもらってしまったが、いつだって弟の事を最優先に考えているつもりなのだから許してほしい。
「そうだよ妬いてんだよ! 俺から色々奪っておいて、次は観月さんまで奪うつもりかよ」
「あ、そっちなんだ……」
少しがっかりした。奪ったつもりはないんだけれど。観月を裕太から取り上げようとか考えてないし。
まぁ、でも裕太にとっては、観月は唯一無二の理解者なのだから、怒られるのも仕方がないのかもしれない。
「裕太くん落ち着きなさい。僕は誰にも奪われたりしてませんから」
一体何の話なんだこれは、と思いつつも、観月がややこしい話を更にややこしくさせている。
そしてそこに、更に話をややこしくさせる男が登場した。
「楽しそうなことしてんじゃねぇか、俺も混ぜろよ」
「おや、跡部くん」
テラスでガヤガヤやっていたのだから、会話など丸聞こえだろうが、この会話に割り込みに来るなんてどういうつもりなのかな。
そもそも跡部景吾は危険なのだ。元から観月と趣味や嗜好が似ているとは思っていたが、同族嫌悪すると思っていたら存外仲がいいようで、最近は特に観月と親しそうにしている。
そうやって観月が人と打ち解けて、より時間を他に使わないために近くにいるというのに。
「わぁ、これは強敵出現だね」
そう、敵。敵なのだ。認識ははっきりさせておかないと。
「跡部景吾……さん! 観月さんに近寄らないでください!」
フルネームで呼ぶも、さんをつけるあたり裕太は本当に育ちが良い。自分が言うのではなく、裕太が言うなら正当防衛だ。自分も何か言ってやるかと息を吸ったところで、観月がぴしゃりと言い切った。
「あなたは帰ってください。これはただの兄弟喧嘩ですので、話をややこしくしないでください!」
え、これ兄弟喧嘩だったの。初耳。
裕太から観月を取り上げることは絶対にないけれど、でも僕だってお友達でいたいんだから。
そうだ、弟とはんぶんこするのはどうだろうか。我ながら名案。
・ ・ ・ ・ ・
しかし、乱入してきた跡部の存在は、予想以上に危険であると感じていた。
兄弟で観月を取り合ってる謎会話に入ってくる男がいるなんて、信じられる?
そういや、最近ほんとうに親しげに会話しているのだ。
「観月って跡部と付き合ってるの?」
なので単刀直入。裕太が部屋の仲間に呼ばれて帰っていったあと、隣で端末をぽちぽち操作している観月に聞いてみた。
「はァ? そんなわけないじゃないですか。そんな色恋沙汰に現を抜かしてるほど僕は暇ではありませんよ」
ちら、と視線をくれるも、それはすぐに端末に戻ってしまう。確かに興味はなさそうだ。
「でもなんか、距離近くない?」
だからもどかしいのだ。
「趣味が近いだけですよ。……あと公式戦もしましたし、まあ、初対面というわけではないので」
ふと思い出したように観月が付け加える。
「え、そうだったんだ。観月どれくらい粘ったの?」
ああ、そういえばあの時、芥川慈郎と戦いたいと言ったのは、裕太を負かした相手がいたからだと思い出す。ということは、観月も試合に出ていたわけで、氷帝の誰かと戦ったのだ。そっか、跡部とか。
「知らなかったのも腹たちますが、僕が負ける前提で話すのやめていただけます?」
面白くなさそうな顔をされて、思わず笑顔になってしまう。
「ん~、観月が勝ってたら話に聞くでしょ」
「それは、そうなんですけど。……どうせ手も足も出なかったですよ」
「あはは、だよねえ」
だよね。あの頃なら、まだ自分だって跡部の相手は苦しかったかもしれない。観月がそんなぼこぼこにされるなら、観に行っても良かったななんて思う。きっとその時の彼を見れば、打ち解けるのももっと早かったはずだ。どこかにデータ残ってないかな。
言ったことはないけれど、観月のテニスは結構好きだったりする。なんというか、努力家のするテニスだなって思えて好き。けれどこれを言ったら絶対に観月は「この天才が!」って怒るから言わないでいる。
「笑うな」
友達になったからには言わないよ。たまに、いやしょっちゅう。面白くてついからかってしまうけれど、観月は怒っているより笑っている時の方がかわいいからね。
「え……でもさ、それなのにあんなに親しかったりするものなの」
「それを言うなら僕は不二くんが今ここにいることが不思議ですけど」
僕相手にはあんなに噛みついてきておいて、敵意むき出しだったのに。でもそれには理由があるからで、跡部にはないじゃないか。
「僕らには裕太っていう共通点があるじゃない」
あんなに感情をぶつけ合ったのも、過去があるから。なのに、あんなぽっと出のお金持ちでちょっと顔がいいだけの……いや、なんか他にも色々持ち合わせてはいるけど、それだけの関係なのに観月を持っていくのはダメでしょ。
「ただ単に趣味が近いからだと思いますよ」
「ふぅん、そうなんだ。僕は?」
観月の趣味はちょっと理解できないところがあるので致し方ないのかもしれないけれど、なんだか悔しいので聞いてみる。
「だから、裕太くんでしょう???」
いや、今はそれだけじゃないよね。
「え、僕たち友達だよね」
「そうなのでは?」
疑問符で返されてしまった。まぁ、いっか。観月がそうだというならば、納得しておくことにする。
ふふ、友達かぁ。悪くないね。
・ ・ ・ ・ ・
でも、それでも。やはり不安の目は摘んでおきたくて、次の日の朝に、鍛錬に出かける前の跡部に声をかけた。連休だけれど、体が鈍るとよくないからね。
「って、観月は言ってたけど、跡部は観月のことどう思ってるの」
「それを直接聞けるてめぇの神経、どうなってやがんだ」
めちゃくちゃ訝しげに見られている。遠回しに聞いてもはぐらかされる可能性だってあるし、こういう駆け引きはあまり得意ではないのだからしかたがない。
「僕は大切なものを守るためなら、手段は選ばない方なんだよね」
「好きだってんならどうするんだよ」
靴紐を結び直しながら、跡部が喋る。ここからでは表情が読めなくて、その問いに対する答えを考えるべく小首を傾げた。
「う~ん、観月と裕太次第だけど、今は困るなぁ。二人には仲良くしていてほしいからね。どちらの沈む顔も見たくはないし」
本心だ。それは困る。観月は懐が甘いからころりと落ちてしまうかもしれない。
「そういうお前はどうなんだよ」
「え? 友達だけど」
は? みたいな顔で見られている。いや、ただの友達ではなくて、大切な弟の大切な人でもある。
跡部はひとつため息をつくと、やれやれといった風に話しはじめた。
「交際は断られたが、別に無理に言い寄ったりはしてねぇだろ」
「えっ、あ。そう。うん、なるほど。そうだね」
やっぱり言い寄ってるじゃない。と思いつつ、目に見えて手を出してはいないのは確かだ。
ていうか観月、ちゃんと断ってたんだ。きっと即だったんだろうな。僕はこの気持ちを絶対に言わないでおこう。
「そういうてめぇは口出しできる立場なのかよ」
「うん、もちろん。観月は友達として大切だからね。なんであれ、一緒にいる時間が減るのは歓迎できないな」
だって面白くないじゃない。やっと隣にいても嫌な顔をされなくなったのだ。安々とそういう席を奪われたくはないよね。
「聞いてた話と随分違うじゃねーの」
「ああ、僕が観月の事を嫌ってるって話? 困ったな、そんな噂になってるんだ。確かに最初はそうだったかもしれないけど」
「今はそうじゃない、か」
そう。確かに最初は本当に気に食わなかった。大切な弟を傷つける相手なんて、許せるわけがないと思っていた。
でも事実を知ればそうでもなくて、むしろ裕太が慕う理由もなんとなくわかった気がする。
見る角度をかえないと、観月の本心は見えてこない。それに気づくまで遠回りをしてしまったけれど、今はそれでいいと思っている。容易に踏み込まれたら困るからね。
「観月はさ、ああ見えて情に脆くてね。懐に一度いれてしまった人を見捨てられないんだよ。だから、観月はあげないよ。裕太が悲しむのも嫌だし」
跡部は目が良いから、既に見えてしまったのかもしれない。そうなると厄介だなと改めて思う。
跡部が悪いわけじゃないし、嫌いとかでもないけど、あまりにも存在が強すぎるんだよね。
「それを決めるのは観月だろーが」
「それもそうだね」
・ ・ ・ ・ ・
と、まぁ、そんな会話をして、それから互いに牽制に牽制を重ね合っていたわけだ。
二人きりにならないようにとか、話してるとこを見たら割り込んでみたりだとか。色々と仕向けていたら、跡部と自然と顔を合わせることが多くなっただけ、それだけなのに。
「最近、跡部くんと不二くん、仲が良いですよね。何かあったんですか?」
さも不思議そうに尋ねてくる観月を前に、跡部と不二周助は同時に叫んだ。
「「どうして!!!!!!!」」
私は不二周助と観月はじめのコンビが好きという自覚が、ずっと昔からあるのですが
私の中ではどちらも右よりなのです。
そう、百合に近い。
なので喧嘩してない、互いにそれなりに信頼して友達やってる兄と観月さんがみたくて
書いてたはずなんですけど、不二兄がオーバーランをはじめました。どうして???
弟も含めて大切だっていうならしょうがないよね?
(※私の脳内にしかいない可能性)
跡観はスタンダードなので、混ぜるとカオスになったけど
1つのCPしか世界に存在してはいけないなんて道理もないしな~
混ぜるか★
と適当に突き通しました。
これは「実は友達以上なのに、それを言っても進展しないと判断して何も言わない」兄です。
私だけが楽しい。
この時期、跡観に混ざる不二兄とかも書いてたので、
跡観と不二観が混ざりあったカオス話とかがストックされています。
完成するかはいつも謎。
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