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そしてついに、味を忘れられなくなった(シェゾ×レムレス)

登場人物:シェゾ、レムレス

CP傾向:シェレム

備考:5~6年前に書いていた続きもの『味見をしたら美味かった』の続き。
ここでまさかの完結編! ほんのりアヤシイ雰囲気にもなりますが
前半は連作のノリ、中盤は何故かシリアス、後半は最近の感じ……です。
適当捏造妄想盛りだくさんなので苦手な人は注意!








 時間は夜。ふらりと、いつもの場所に来てしまった。そろそろよゐ子は布団を入って寝る用意をする頃だ。
 街から少し離れたこの森は濃い闇に包まれており、灯りがないと歩くことすら危険だろう。
 しかし、夜目が利く彼には問題のない話だった。
 そもそも人間は闇を本能的に恐れると言う。だが彼は闇が怖くはない。例え今日のように月のない夜であってもだ。まあ、そうでなければ闇の魔導師は名乗れないだろうが。
 目的の家は、暗くて気味の悪い暗黒の森と対比するかのように、優しい明るさで満たされていた。窓から漏れるその灯りと、煙突から上がる白い煙がなお温かそうに見える。これが人の温もりというものだろう。
 その眩しさに少し目を眩ませながらも、彼はその家の呼び鈴を鳴らす。この行為もすっかり恒例になってしまった。
 すぐさま家の中から声がして、少し待つようにと伝えて来る。取り込み中のようだ。そのまま暫く待つと、その扉はやはり呆気なく開いた。

 だからだな、もう少し危機感を持てと。待ちかまえているのがもしオオカミだったらアイツはどうするつもりなんだ?いや、仮にも魔導師がオオカミにやられるはずもないだろうが。

「こんばんわ~って、あれ? シェゾ。キミ……またきたの?」

「ああ」

 中から出てきたのは、白いバスローブに身を包んだレムレスだった。髪の毛からぽたぽたと水滴が落ちているところを見ると、どうやら風呂から上がったところらしい。どうりで待たされたわけだ。

「どうしたの、こんな時間に……ま、まさか」

 そのまさかだ。

「そうだ、お前が欲しい!!!!」

「えーー!?!!!??」

「だから、ぷよ勝負だ!!!」

 ビシィっと指をさす。キマった。

「い、今から!? こんな時間に!? ……う、うーん」

 レムレスは歯切れの悪い返事をすると、じっとシェゾの顔を見る。

「なんだ、イヤなのか?」

「こんな夜更けだし、お風呂に入っちゃったし、今から汚れたくないなーって言うのもあるけれども……」

「言っておくが、そんな言い訳は闇の魔導師の俺には効かんぞ!」

「いや、キミ。魔力あんまり減ってないんじゃないかなって」

「……」

 確かに事実だ。今は別に魔力も枯渇していないし、さほど減ってもいなかった。ここに来る道理はあまりないのかも知れない。
 だがしかし、だ。前にコイツから奪った魔力は全部使ってしまった。
 その時に気がついたのだ。俺はコイツの魔力が欲しい。他の誰でもなく、コイツの魔力がいいのだ。ほんの少しでいい。舐めて吸って味わいたい。温かく、優しく体を伝っていくコイツの魔力が欲しい。そう、激しく渇望したのだ。

「だから言っているだろう、お前が欲しい! 故に奪いにきた! 簡単な話だろうが」

 それに気がついてから正気に戻った時、何となくヤバい気はしていた。正直、自分で自分にないと思う。けれども欲しかったし、会いたかった。
 もう変態でも何でもいいじゃないか。強烈に欲しいと思ったのだ。だから奪ってでも手に入れる。それが邪悪な闇の魔導師のあるべき姿と言うものだろう。

「話は簡単だけど、僕の意思はどうなるの。明日になれば相手するから、今日はもうやめよう? ね???」

 レムレスの言葉を無視してゆっくりとにじり寄る。

「ぷよ勝負をしないと言うならば別に俺はそれでもいい」

 レムレスが一歩後退するのと同時に、俺もまた一歩にじり寄る。

「どうしたの、なんか目がすわってるよ? 落ち着いて、シェゾ」

「ただし、試合放棄と見なすからな」

「!!?」

 それは一瞬だった。レムレスの腕を掴んだシェゾは、瞬く間にレムレスを床に押し倒した。レムレスは背中をしたたかに打っただろうが、幸い玄関にはマットが敷いてあり、ひどい打ち身にはならないだろう。

「ぃたっ! ちょ、ちょっと待ってよ! シェゾ!!!」

「待たない。待ってなどやるものか」

 そのまま覆い被さり、首筋に歯を立てる。レムレスの声にならない悲鳴が重なっている体から感じられて、ひどく興奮した。
 あまい、あたたかい魔力が喉を通る。脳が痺れるような、恍惚とした感覚に陥る。
 そうだ、これだ。これが欲しかったのだ。

「やめて、シェゾ。離して! そんなのずるいよ~」

「ずるいわけがあるか。大体一人で住んでいるくせに不用心なんだよ。変なやつに襲われたらどうするつもりだ」

「いや、それを君に言われたくはないような……」

 確かにそうなんだが、俺はいいんだ。

「さあ、もういいでしょう? 君の魔力は十分回復したじゃないか」

 体の下のレムレスが身じろいで抜け出そうとする。それを反射的に封じ込めると、こいつにしては珍しい恨みがましい目が返って来た。あまり開く事のない瞳は翡翠を溶け込ましたような色で綺麗だ。
 あ、こういうのも悪くないな。滾るものがある。よくよく考えれば相手は湯上がり姿で悪くない。バスローブという事は、下は裸だろう。よくもまあこんな格好で扉を開けたなと思うが、普通に考えてこんな時間に来客はないのが普通だ。

「……お前、なかなかいい格好しているな」

「へ?」

「いっそこのまま貰ってしまうか」

「な、何を……」

「聞かなくても分かるだろ」

 ゆっくりと脚をなで上げる。まだ湯冷めしていないのか、滑やかで温かい。

「ひっ」

 短い悲鳴に気を良くして肌に唇を寄せる。

「あ……だ、だ……だめぇぇぇーーーー!!!!!」

 レムレスの悲鳴のような叫びと共に、目の前が強烈な光に包まれる。何も見えなくなった後、ゆっくりと暗闇が訪れた。

 暗闇は怖くない。闇を恐れた事も一度たりともない。
 ならば光が怖いのかと言えば、光も恐れた事はなかった。
 光と闇は相反する属性であるが、決してどちらの方が強いというものではない。
 光のあるところには必ず影ができるように、光がなければ影は存在できない。闇は存在できても、光というものがあるからこそ、初めてその真価を発揮するのだ。
 また闇の中の光は、いかなる方法を持ちようとも消し去ることができない。
 互いに造り、存在しあう。共存し相反する、その矛盾すらも兼ね備えた属性が光と闇だった。
 その中でも、アイツの力は更に原初の光に近いものだった。何故だかはわからない。
 宇宙を構成する力に近い。例え闇の中でも輝きを失わずさすらう事のできる光、それが彗星というものだろう。
 太陽のように燃え盛り、闇を消すことはない。より闇と共生する能力に長けている光。

 欲しい。

 そう思ったのは確かだ。あの力があれば、闇と光が合わさって最強になれる。
 それにあの魔力は自分によく馴染んだ。味が好みだと言うことは、そう言う事だ。

 だが、本当にそれだけなのだろうか?
 本当に欲しいモノがあるような気がする。
 本当に欲しかったものは、あの力に流れる、彼の――……








「目が覚めたかい?」

 ふと目が覚める。見えるのは天井と、心配そうなヤツの顔。

「ごめんね、ちょっとやりすぎてしまったよ」

「!?」

 がばりと身を起こすと、そこはレムレスの家のソファの上だった。丁寧に柔らかい毛布が身の上に掛けてある。
 隣のレムレスは流石にバスローブから寝間着に着替えている。そこで色々思い出した。

「って、おまえ! 襲ってきた男を部屋に入れて看病してどうするんだ馬鹿か!?!!」

「えええ、僕がそこで怒られるの!?」

「だから危機管理能力が薄いっつってんだよ!」

「そんなの初めて聞いたよ!?」

「言うのは初めてだ!! が気づけよ、俺に襲われかけたのは今日が初めてじゃないだろうが!! 本当に馬鹿なんじゃないか?」

 危機的意識が薄すぎる事に愕然とする。いや、自分のことではないのだが。自分が悪いんだが。ここまで人が良すぎると逆に心配になってくる。

「そんな事言われたって、気を失わせた相手を寒空に放り出すなんてできないし、ちゃんと自衛したからいいじゃない」

「魔力取られておいて何言ってんだよ!」

「だから美味しいもの食べて寝てたら魔力なんて回復するんだから、そんなに大きな声でカリカリ怒らなくたって……」

「……」

「……」

 そういえば、そんな事を言っていた気がする。本当にどこまでお人好しなんだ。思わず黙りこんでしまったシェゾにつられて、レムレスも黙りこむ。

「ねえ、シェゾ。少し僕とお話しようよ」

「は?」

「だって、僕はキミのことを理解できていないもの。キミがどういう思想のもとで何を目指しているのか。キミが僕の魔力を、ここまでして求める意味もわからないし、知らないよ」

「知って……知ったところでどうする」

「それはわからないよ。手を貸すかもしれないし、止めるかもしれない。けれども、僕はキミの事が知りたい」

 まあいいか。

「……いいだろう」

 他人の事など知ってどうなるのだ。と、思わなくもない。

「だが、面白い話など何もないぞ。俺は強くなりたい。ただそれだけだからな」

 素っ気なく明後日の方向を見ながらそう呟く。
 丁寧な清掃が行き届いた部屋は、暖かい光の中で優しい生活感を漂わせていた。そう言えば暫く洞窟暮らしが続いていたこと思い出す。

「何故? もうキミは十分に強いと思うのだけれど」

 あえて見ないようにしていたのに、シェゾの視界へひょこりとレムレスの顔が入る。そのままソファーの隣に座り込まれてしまった。危機感がゼロすぎる。大丈夫かこいつ。まぁ、さっき返り討ちにされたのは事実なのだが。

「簡単な話だ。俺はもっと上の存在を知っているし、俺は自分に限界を感じていない。それに、誰にもこの力を奪われるわけにはいかない」

 故にもっと、もっと自分は強くならなくてはならない。それが理由だ。

「うーん、でも……自分を高めるために他人の魔力を奪うのは合点が行かないなぁ」

「いいか? 自分の技を磨くには魔力がいる。それを自分のものだけで補っているより、他からも集めた方が効率がいい」

「ああ、なるほど。そういや、キミはずっとアルルの事を狙っていたんだっけ」

「アルルの『魔力』だ! 変な言い方をするな!!」

 思わずシェゾが声を荒げる。その声にレムレスは僅かに首をすぼめた。

「それで僕が怒られるのはちょっと理不尽な気がするな~」

「うるさい。それに俺は、奪われる側にはもう二度となりたくないんだ。それならば闇の魔導師らしく奪う側でいる。それが俺に与えられたら力の特権でもあるからな。それは誰にも否定させん。世間では違っても、俺にはそれで普通なんだ。あと努力も嫌いだしな」

 闇には闇の道理がある。暗闇の中で世間一般の常識を叫んでも無駄だ。生きてきた世界が違う。こんな脳天気が育つ世界もあれば、奪うか奪われるかの世界だってある。
 確かにその世界の雰囲気に絆されることはあるが、もとより己は弱肉強食の世界に生きてきた。力は欲して当然だ。奪うことだって……当然なのだ。

「お前はどうなんだ?」

「僕?」

 話をすり替える。まだ学生の身だと云うが、それなのに山奥で一人暮らしなど明らかにおかしい。否、この歳なら学校の近くで一人で生活する者もいるだろうが、イメージするなら集合住宅だ。言わばアパート的な手狭な部屋を借りて住むのが普通だ。この家は一人で住むには広すぎる。いち学生の住処にはとても見えない。

「こんなところでバイトで稼いだ金で菓子作っては暢気そうに配り歩いて何がしたいんだ? 目的を聞いておかないと怪しすぎるだろ。俺にはさっぱりわからん。お前が極度のお人好しで馬鹿なのはわかるが」

「僕、そんな風に見られてたの!? ていうか見てたの!?」

「見ていた。……で、どうなんだ?」

「いや、言われてみたら、確かにたまに視線を感じてたけど」

「そっちじゃない」

「え、あ、うん」

「……」

「僕はね、少し特殊な家庭に生まれて育ったんだ。家は厳しくて殆ど外には出られなかった。青空の遠い家だった。でも僕は外の世界に行きたかったんだ。違う自分を見つけたかった。僕は誰かに幸せをあげられる人になりたい。希望を守れる人になりたかったんだ」

 なるほど、箱入り息子。ならばこの甘さも頷ける気がする。

「家にいた時は辛いことが多くて、でもおやつの時間だけは楽しみだったんだ。甘いものを食べてると、暗い部屋でも幸せになれる。だからね、お菓子を配り歩いてるのは……そりゃあ僕が好きだって事もあるけれど、でもあまーいものを食べて、みんな幸せになって、希望を持ってくれたらって思うからなんだよ」

 学生として実家から出てきたのだろう。それなら、この一軒家も理解できる。それなりの資産のある、魔導師関連の家系だと推測する。

「その件については何も言わんが、希望? 菓子で作る幸せとやらより更にあやふやな単語だな」

「ひどい言われようだなぁ……。希望って言うのは、より良い未来を願う気持ちだよ。幸せになりたいって思う心だよ。僕は、それを守れる魔導師になりたいんだ。だから家を出てきたの」

 夢を紡ぐように、幸せそうにレムレスは笑いながら語る。

「途方もない話だな。全てを守るなど、叶える事など、どうせできやしない。お前のそれは、ただの『希望依存』だ。人の欲というものには際限がない。権力を握った人間が変わってしまわない保証などない。もしそれを、お前が人の欲を『希望』と呼ぶのであれば、お前は永遠に手の届かないものを追い続けることになるだろう」

 たくさんの人々を見てきた。特に闇に堕ちる者は山ほど見てきた。強い力は善人さえも狂わせ、腐らせる。そして闇に堕ちた者の希望は希望とは呼ばない。呼ぶならば『欲』だ。

「そうかもしれないね。でも諦めたくないんだ。君の言葉を借りるなら、僕も限界はまだ感じていない。いや、限界はあるかもしれない。世界は広いから、その全てに手が届くなんて思ってはいないよ」

 それはそうだ。現実を見ろと言いたい。世の中なんてものは残酷で、理不尽で、きれい事だけで生きていくには割に合わなさすぎる。その年齢になれば、それくらい気がつくだろうに。

「でもね、手の届く範囲のたくさん幸せを守りたいし、生み出したい。高望みかもしれないけど、僕はそのために自分を磨きたいし、在り続けたいんだ。……だから、君だって幸せになってほしいし。人を傷つけないなら、力だって貸せるはずだよ」

「そうか、だが……俺は幸せなんて知らない。欲が満たされた事はないからだ」

「うん」

 レムレスがうとうとし始める。襲ってきた男の目の前でそれもどうかと思うのだが、レムレスは相変わらずてんで危機感がなかった。

「俺は他人のためになど戦えない」

「それは、普通のことだよ」

「お前は違うんじゃないのか?」

「言ったでしょう。僕は、たぶん生まれはキミ寄りなんだ。だから、今の幸せな世界を、毎日を、失いたくないんだ。幸せを、希望を守ると言うことはそこに行き着くんだよ。だから、全て他人のためじゃない。ちゃんと自分のためさ」

「じゃあ、俺にも希望をくれるのか?」

「キミも、欲しいのかい?」

「……ああ、欲しい」

 その言葉に、レムレスはふにゃりと笑うと、落ちていたシェゾの手をとって優しく包み上げた。
 レムレスの眠気が感染るように、急に眠気が襲ってくる。魔法ではない。これはそう、安心だ。暖かい家で、柔らかいソファーの上で、温い毛布を被って、そして優しい手に包まれている。誰かの手に、そのように触れられたのは何十年ぶりだろうか。
 どんどん意識は朦朧としていく。だが気分は悪くなかった。たまには光に包まれて居眠るのも悪くない。

「いいよ、君にもあげるよ。……どれくらい欲しい?」

「そうだな…………全てだ」

 そう、呟いたところで意識は途絶えた。







 朝。気づけばそう、朝だった。
 窓から差し込む光は強く、目を焼かれんばかりに眩しい。
 まどろみながらゆっくりと身を起こす。いつもの硬い冷たい岩の上ではない。そこは柔らかくて、温かかいソファーの上だった。
 どこからか香ばしい何かを焼く匂いがする。ゆっくりと、昨夜何があったかを思い出し始めたところで、声がかかった。

「おはようシェゾ。良い朝だね」

「……んー……ん!? 朝ァ!?」

「朝だよ? はい、目覚めのコーヒーはいかが?」

 ソファの隣にある団欒用のテーブルに、コーヒーの入ったカップが置かれる。備え付けてあるのは大量の砂糖とミルクだ。流石は甘党の家。いやいやいや。

「朝ご飯は何がいいかな? ベーコンエッグはもう焼いてしまったのだけど。あとはパンで良い? サラダもあるよ」

 来客に構えるのが嬉しいのか、にこにこと嬉しそうに用意を進めるレムレスを、シェゾは唖然として見ていた。いや、これは来客を持て成す行為なのか?いやいやいや。

「どうしたの、シェゾ。ぽかんとして。サラダは何が好き? もしかして、嫌いなものとかある?」

 返事がないのを心配したのか、レムレスが盆を持ったまま寄ってくる。
 待て待て、俺は昨日……というか昨夜、この家に押し入った半強姦魔だぞ。これはどういう展開になっているのか。

「お前……それは嫁か何かの真似事か……」

「え? 昨夜の事、忘れてしまったの? まあ、最後の方はお互いにウトウトしていたから、思い出せないのかもしれないけど」

 うーん、と困ったようにレムレスが唸る。

「なんだって!? 俺は何を喋った!?」

 マズい事は喋ってないだろうが、意識がないというのは存外に怖い。

「えーと……なんだっけ、希望が欲しいって」

「はあ??? で、お前は何て答えた!?」

 必死の形相で問いかけるシェゾがおかしかったのか、レムレスは軽やかに笑うと、一息ついてゆっくりと答えた。

「僕の全てを、キミにあげるよ」

 思わずシェゾは固まる。
 なんだそれは。それは正しく……愛の告白ではないか。







【エピローグ】


「で、なんで俺なんかを選んだんだ」

 誰かに選ばれたことなんて、過去に一度もない。否、後継者に選ばれた事ならある。が、そんなものは数に入れたくはない。

「うーん」

 レムレスは朝食の片付けをしながら考える。すっかり馴染んだシェゾは、リビングでもやもやと色々考えながら、朝刊を読んでいるフリをしていた。

「俺を選ぶと言うことは、生涯俺のものになるということだ。それはそんな簡単に決めて良いことなのか?」

「だってキミってば、放っておいたら色んな人の所に行きそうなんだもの」

「そうか! 嫉妬か!」

 何かに目覚めたかのように、ガタリとソファーから立ち上がる。

「いや違うけど」

「違うのかよ」

 大人しく着席する。

「僕がいる間は、キミは理不尽に人を襲ったりはしないでしょう?」

「まあ、そうだな」

「闇が光を求める気持ちは僕にも痛いほどわかるし。……それに、キミの優しい笑顔、僕はとても好きだもの」

「は? 俺が笑った!? しかも優しく!? ハァ、いつのことだ……!?」

 昨夜だろうが、例のごとく記憶にない。

「ヒ・ミ・ツ」

「おいこら!」

「そんなに怒らないで欲しいなぁ。僕なんていつもにこにこしてるのに」

「お前はそういう顔だろう」

「でも、昨夜でわかったよ。キミがとても優しい人だって。だからもう僕は怖くないよ」

「逆に俺が怖いわ」

「えー、そんな~」

 まあ、許す。思いがけず欲しかったものが手に入ったのだ。気分は悪くない。

「ただ、僕もね。『希望依存』で、『博愛主義者』だから。そこだけは覚悟してね」

 その言葉で納得する。そういうことなのだ。その全てが合致した。それが自分だった。
 シェゾがレムレスを欲を満たす相手だと感じたように、レムレスもまたシェゾを欲を満たす相手だと認識した。Win-Winというものだろう。
 好きと認識するには歳を重ねすぎてしまったが、自分のものと認識するのは容易かった。今はそれで良しとしよう。

 朝というものはあまり好きではなかった。夜型のシェゾにとって、朝日は天敵に近い。だが、自分の光を手に入れられた朝は、初めて悪くないと思った。
 そうだ、きっとこれからも、こういう朝は来る。そこでシェゾは意地悪な笑みを含めてレムレスに問いかける。

「で、俺がお前に手を出して良いのは、いつからなんだ?」

「そ、それはまだちょっと、覚悟を決めさせて欲しいなぁ……。ほら、朝だし」

「そうか、朝だな」

 やはり夜が好きだ。そう思いながら、シェゾは気分良く二度寝を決め込む事にした。







や~~~~っと完結しましたね!
何年前の話だよ?っていうくらい黒歴史で、読み返さないと設定思い出せないんで(笑)
しょうがなく読み返すんですけど、文が稚拙すぎて心がズタズタになりましたよね。
ぎえええ恥ずかしい殺してくれ~~

でもようやく、シェレムのウチのレムレスがゆるぽわで希望依存の博愛主義者で、それでもシェゾの隣にいる理由が書けたと思います。
シェゾさんは過去設定が公式でいっぱいあるので、シェゾさんファンの地雷を踏んでなければいいんですけど……。
やっと手に入れた光、みたいなやつです。えへへ。

シェレムは闇と光の属性違いと、レムレスが闇の魔導師の家系出身者で『光を選んだ』というところが個人的にポイントなので、こう……伝わればいいなって思います。

伝わらないのか、そういう性癖の人がいないのか、全然反応がないんですよね……シェレム。
ゆるぽわな先輩が好きな人、そんなにいないんです??
おっかし~な~
なので、面白かったところとか、教えて貰えたら嬉しいでっす(*゜v゜)

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