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星より遠い、玉座の牢獄(エルイグ)

制作時期:2024年10月

杖と剣のウィストリア(10巻既読推奨)のエルノール✕イグノールの妄想。
これの続き

女攻めで逆はないです。左右固定。

今回は前回よりソフトめながら、イグノールが思いもよらない羞恥プレイをさせられるエルイグ話。









「これより本日の定例会を始める」

 エルノールの側付きであるフィルヴィスの声が、凛と静まった広間に響き渡る。
 ここは妖聖の派閥の謁見の間。
 ここでは長を頂点とした派閥構成員により、二日に一度ほど定例会が行われている。
 塔にいるからこそ、ここは全ての情報が集まる中心でもあり、同時に外界から閉ざされた最も閉鎖的な空間でもある。
 ゆえにエルフ達は情報の共有を密にし、互いの存在や状況の把握をよくするために集っているのだという。
 前回はここで、圧迫面接さながらの歓迎を受けた。紅のカーペットに膝をつきながら、ふるえていた事を今でも思い出せる。
 そこから二日。
 たった二日前の話であるのに、状況は一変している。

 私、イグノール・リンドールは玉座にいた。
 もちろん、長になったわけではない。
 長であるエルノールはいつも通り、長くて広い玉座の真ん中に堂々と足を組んで座っている。
 そして私は、そんな彼女の上に、横向けに跨るようにして座らされていた。





 忘れることのできない夜を越えて、やっと迎えた朝は妙に清々しかった。
 カーテンが開けられた窓から見える青空は雲一つなく、太陽光が差し込み明るく照らしている。どこかで小鳥の囀りも聞こえる。
 前日に受けた疲労や傷も全て癒やされ、気は重たくとも体が軽いスタートを切った。
 まだ慣れているとは言い難い新生活の中、イレギュラーに発生した不測の事態。もう発生しないといいと思うが、おそらくそうもいかないであろう事は予測できる。

 エルノールに支度をするように言われて、彼女の部屋を出ると、そこにはまるで仕立てたばかりのようなピカピカに戻った制服が揃えて置いてあった。流石にシャツ一枚で過ごすというのは、人と会ってしまった時になんと言ってよいのかわからない事態になる。
 朝食も置いてあったが、まずは新しいシャツに袖を通し直してズボンを履くところからはじめた。何とも情けない話だ。

 食べるように、とメモ書きしてあった朝食をなんとか腹に詰め込みながら、時計で時間を確認する。朝の定例会まで時間が近づいているが、部屋に戻っている時間がなさそうなので申し訳なく思いつつも水を借りて身支度をする。
 何でも使って良いとは言われたが、主のいない部屋で勝手に使うというは何ともこころもとなかった。
 既にここにいないエルノールは、おそらく側近たちと準備を始めているのだろう、出ていったきり戻って来る様子はなかった。
 流石に序列が最も下の新参者が、後から遅れてくるのはまずい。真っ先に入室しておくべきだろうと、勝手がわからないままも部屋を出た。

 来た道を思い出しながら廊下を歩き、昇降台まで辿り着く。そこまで誰にも合わなかった。昨夜は案内をしてもらったので、使い方がいまいちわからなかったが、魔力を流し込んでみたら動いたので良しとする。
 しかし慣れないものばかりで不安になるものだ。本当にこのまま何も言わず、戻っても良かったのだろうか。

「戻るのか、イグノール」

 そこへ聞き知った声がかかった。そちらへさっと振り向く。そこにはすっかりいつも通りのエルノールがいた。いつもの供が後ろに二人いる。
 それで少しほっとした。流石に人前では滅多な事はされないだろう。

「はい。新参者の私が、遅れて部屋に入るのはまずいでしょうから」

 時間には早いのだが、最初に入っておくのは格が低い者のマナーの一つだ。
 だが、それを聞いても眉一つ動かさず、エルノールは告げる。

「そうか、ついてこい」

 そのまま彼女と一行は目の前を通り過ぎ、着いた昇降台へと入っていく。

「はっ」

 まぁ、先に入るという考えは元からなかったが。胸に手を置いて一例すると、短く返事を返して最後列についた。



 下に降りると、その先は定例会の会場でもある謁見の間になっている。その側にある準備室へと側付きたちと共に通された。
 派閥の長というものは謁見する時は最後に場に入り、そこから開始が宣誓されるものだ。なので、エルノールは開始時間ちょうどにここから出ていく事になる。
 自分は末席であるからして一番遠くの席であるのだが、この部屋に引き止められたまま広間の方から声がしてくるまで待たされていた。少しずつ人の声が増えてきており、気がはやる。
 エルノールは側近と何やら話し込んでおり、こっちを見る様子はない。このままでいいのだろうか、そわそわする。
 思わず手すきのレフィーヤ嬢に声をかけてしまった。

「あの、私は広間へ行かなくて良いのでしょうか」

「エルノール様がここにいろと仰っただろう。大人しくしていなさい」

 そう、きっぱりと突き放され、返事をして押し黙る。
 これで後から怒られたらどうしよう、泣くしかない。


 定例会の時間になった。遠くで定時を告げる鐘の音が響き渡ると共に、エルノールも椅子から腰を上げる。

「イグノール、おまえもついてこい」

 そう言うと、光さす玉座へと悠然と歩いていく。その後を側近の二人が続き、そこから少し離れた距離をついていく事にした。
 いや、これは……いきなり新参者が王座側から出てくるなど、注目を集めるのではないか?
 いくらエルノールが自分を傍に置きたいのだとしても、反感を買うのではないかと危惧したりもする。元々、あまり同族には好かれていないのだ、気後れは感じた。
 想像通り、場に出たところで周囲がざわりとどよめく。
 だが、気にせずエルノールは台座に座り、そして名を呼んだ。

「イグノール、こちらへ」

「??? ……はい」

 呼ばれたからには拒否もできず、玉座へと一歩二歩と近づく。
 すると突然、ふわりと体が浮いた。

「っ!?」

 いや、風魔法を行使しているのはエルノールだ。ここで杖を抜くことが許されているのはエルノールしかない。
 そのまま宙を浮かび、落ちる事に怯え、着地した先は……エルノールの玉座の上だったというわけだ。
 エルノールに対して横向きに、丁度足を曲げて跨るように降ろされた。

「~~~~っ!?!???」

 ちょっと待ってほしい、これはどういう状況なのだろうか。
 視線という視線が突き刺さる。いや、好き好んでこんな状態になったわけではないのだ。
 目を白黒させていると、エルノールの左手が背中から抱き寄せてくる。
 ひそ、と小声で話しかけられる。
 
「良い子にしていろ、お兄様」

澄ました顔で笑うエルノールは、一昨日もこの場所で見た、最も不敵な彼女だった。


 議題が淡々と進んでいく中、両手で顔を隠して、ただふるえて待つしかなかった。誰も指摘しないし、何も言わない。完全に存在をスルーされているというのに、視線という視線はずっと突き刺ささり続けている。
 それもそうだ。エルノールの左手はずっと自分の背中におりている髪を弄って遊んでいるし、その右手はずっと脚や足を撫で回していた。服越しでも手の温かさが伝わっていて、羞恥も相まってぞわぞわと肌で感じる。
 顔が熱い。いや、脳まで熱い。きっとすっかりと下にさがってしまった耳も赤くなっていることだろう。内容は全く頭に入ってこないし、誰が何を答弁しているのか全くわからなかった。
 恥ずかしすぎて、ただただ心頭滅却を心に刻みながら、黙って耐え続けるしかない。これは一昨日の圧迫面接以上に拷問だった。
 口は顔を隠すついでに手で塞いでいるから、声が漏れる心配はないが、突き刺さる視線があまりにも痛すぎる。いや、きっとエルノールに注がれている視線だってあるのだろうが、そんな彼女に密着しているのだから一緒のようなものだった。

 沸き立つ脳の端で議題が進んでいくのだけは感知する。何事もなく、早く終わってくれと祈る。だが、そんな祈りとは裏腹に、無情は続く。
 エルノールが髪を弄るのに飽きたらしく、次は左手で体を撫ではじめた。背中から始まり、腰のあたりまでをゆっくりと撫でられる。彼女の細くて靭やかな手のひらが、熱を伝えながら意思をもって蠢く。
 悲しいかな、その小さな挙動の変化にも、視界を隠し覆っているイグノールは過敏に感じ取ってしまっていた。ゆるゆると、少しずつ熱が高められていくのがわかる。口を覆い、耐えながらも、息が荒くなっているのがわかる。
 そんな、いやだ。こんな大勢の人の前で。触られて感じているだなんて、とてつもなく恥ずかしい。消えてしまいたい。その思考が更に悪循環を生み、思考を麻痺させている。恥ずかしいのに、小さく震える体は止まらなくて、じんわりと視界がぼやける。
 人前で泣くのはもっと嫌だ。誰か、誰か助けてほしい。

「以上で、今日の定例会は終わりとする。解散!」

 やっと、やっと終わった。どっと力が抜けると同時にくらりと目眩を感じて、倒れそうになったところをエルノールに抱きとめられる。
 情けないことに、そのままエルノールの肩口に頭を預けることになってしまうのだけれど、既に何も考えられなくなっていた頭は素直に従った。ただ縋って荒い息を鎮めるために呼吸を繰り返すしかない。

「流石にやりすぎなのでは」

「ふん、これでお兄様につく悪い虫どもも、何かあったら首が飛ぶ事に気づくだろうさ」

「あなたが彼を連れていきたいというから、何をするかと思えば……」

「ふふ、お兄様はとても可愛かったぞ。……このままイグノールをここで抱いては?」

「ダメです。昼からは至高の五杖での会合もありますし、それまでにまとめていただく仕事もあります」

「彼にも彼でやることがある。返してあげてください」

「チッ、つまらん」

 頭上で驚くような会話がされているのを、なんとか聞き取る。今はそれが精一杯だった。

「だそうだ、お兄様。玉座プレイはまたの機会にとっておくとするか」

「……エルノール」

 やっと整ってきた呼吸と、ブレずに見えるようになってきた視界で、近くの彼女の顔をおそるおそる見ると、それに気づいたのか目尻にキスが降ってきた。思わず目を瞑る。人が去った広間なので、それくらいなら平気な気がした。これは完全に感覚が麻痺しているのだろう。
 そもそも玉座プレイとは何なのだろうか。こんな恥ずかしい思いは、できればもう二度としたくないのだが。


 その後、エルノールは供を一人伴って、昇降台へと帰っていった。
 やっと歩けるようになったイグノールは、まだふわふわとする感覚に浮かされながらもレフィーヤ嬢の後を追って部屋を出る。

「訓練には遅れることを伝えておきます。暫く部屋で休んでください」

「……はい」

 先を行くレフィーヤ嬢は、何とも気まずい顔をしている自分にも淡々と接してくれている。流石はエルノールの側近だ。落ち着いていて、とても彼女を信頼しているのだろう。まるで自分と立ち位置が違う。きっとなりたかったのは、そのように頼ってもらえる存在なのだろう。
 部屋まで送ってくれた彼女は、そんな情けない顔をしている事に気がついたのか、珍しく話しかけてくれた。

「エルノール様には、貴方と会って良いのは二日に一度、仕事を全て片付けている場合のみとさせています。なので、修行に励める時は、しっかりと励んでください」

「わかりました」

「毎日、貴方をぐちゃぐちゃにされても困りますからね。そこはご安心ください。それでは」

 ぐちゃぐちゃ。これからそんな事もされるのだろうか。心身でいうと、既に心は乱されて確かにぐちゃぐちゃなのだが。
 全く休まらなかったその心と、まだ火照ったままでいる体を鎮めるために、やっとの気持ちで部屋に戻ったのだった。
 なお、これはまだまだ序盤、波乱の幕開けとしてはただの始まりだった。
 その地獄は、また次のお話。








玉座で侍らせられるイグノールが書きたかったんです!!!

それ以上でも以下でもなくて本当に申し訳ない。
当然、私の趣味ですよ。

ちなみにエルイグのイメージソングは谷山浩子の
『王国』(歪んだ王国)
雰囲気は『星より遠い』
更に Mili が Library Of Ruina に提供している泣く子戦の
こちらの訳詞の『And Then is Heard No More』というイメージでした。

つまり現段階では救いがありません。ワォ!

今後もあんまりないかもしれないけど
公式CPになるかもしれないという話を聞いたので先はわからんです。
この先はすけべになるのは確実という不穏さしかない……許せ。


\(^o^)/

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