制作時期:2024年10月
杖と剣のウィストリア(10巻既読推奨)の
エルノール✕イグノールの妄想。
女攻めです逆ではない。左右固定です。
挿入はないけどイグノールが性的にいじめられてはいるので、苦手な人はお気をつけて。
気持ちR15 くらいある。
どうして。
それが一番最初に浮かんだ疑問であった。
謁見の後、連れて行かれた場は広い演習場だった。
そこでは何人もの同胞が日々鍛錬に明け暮れているようだ。
まあ、そうだろう。塔に上ってすることは、おそらく学生であった頃とさして変わらない。
己を腕を磨き続ける。あるいは研究に費やす。上に登れないものは一生その力を塔に捧げる。
それは『至高の五杖』であっても変わらない。塔を維持し、構成する頂点になるというだけで、力を塔に捧げる事は末端と同じだ。
だからこそ目指したのだ。そんな彼女の支えになりたいのだと。
また隣で笑い合える日が来るのだとしたら、それはこの塔でしかあり得ないことだ。
辛酸を舐め続け、一族の落ちこぼれだと言われ続け、一度は諦めすらしたけれど、励まし合える友を得てようやくここまで来たのだ。
この首輪の意味はわからない。こんなものがなくても、エルノールが望むのであれば何だってするつもりでここに来た。
頭の先から足の先、血の一滴まで全て捧げる覚悟をもってここまで来たのだ。
勿論、他のエルフほど優秀ではない事は自覚している。魔法を扱う力も、腕も、全くレベルが違う。
友のおかげで幻影魔法が使えるようになり、多少は自信を取り戻したが、やはり『当然のように使える』エルフとは大きく差がある。
それでも、己を磨かない理由にはならない。
どれだけ心が折れようとも、ここにいるためなら何だってしようじゃないか。
冷たく見据えてくる目しか存在しない、その輪の中へ、イグノールは自ら進み出た。
と、言っても現実は甘くなくて、徹底的にしごかれた。
落ちこぼれを見る目はどれも冷たくて、一切容赦がない世界だった。
まともに立っている方が少なかったのでは?なんて今なら思う。
学生の頃にあんな無様を見せていたら、きっと皆に笑われていただろうな。
しかしこれが、本来の強い力を持ったエルフとの実力差なのだ。
歓迎なんて最初からされていなかったのだろうし、諦めてはいたけれども、疎外感を感じるのは何も今に始まったことではない。
重い体を引きずって、なんとか充てがわれた部屋まで戻る。
鉛のように重い体をソファに横たえる。一気に疲れが溢れ出て、このまま泥のように眠ってしまいたい気持ちにかられる。
だが、全身は血と汗でベトベトで、とてもじゃないがこのままではいられなかった。
致し方なく制服を脱ぐ。たった一日で汚れてしまったそれを、なんとか風魔法でできるだけ見た目を戻す。
土埃やこびりついた血を落とすくらいしかできないが、しないよりはマシだろう。
その後はなんとかシャワーに転がり込み、全身にできた小さな切り傷が沁みるのに耐えながら体を洗った。
体を酷使しすぎたのか食欲は湧いてこなくて、好物の果物を一つ口に含んで水差しの水で腹を満たし、やっとの思いで寝台に体を横たえた。
色々考えなければいけないこともある。
密偵の件、エルノールにはめられた首輪、そしてこれからどうしていくか。
前もって全てを完璧に把握し、行動するように心がけていた。落ちこぼれでないという見せかけを強固にするためにも、努力した。リアーナのそばにずっといたのも、彼女のたゆまぬ努力の姿勢に好感を抱き、その影響を良い方向で受けていたかったからだ。
結果としてその行動は正しくて、学内でも勤勉な印象を与えるに繋がった。
そのような先読みを常にしていないと、己の力不足が露呈するようで怖かったのだ。
そんな思考も疲れにより微睡み、本当にベッドに倒れ込んだまま眠りに入る。
だが、そのまま安眠することは叶わなかった。唐突に扉をノックする音が響き、イグノールは覚醒する。
「何か御用でしょうか」
ここにいる者は全て格上、同期の者は一人もいない。
なら、誰が来たかを聞くまでもない。
「エルノール様が呼ばれています。すぐに支度して謁見の間までお越しください」
「……。わかりました。すぐさま向かいます」
エルノールが接触を図ってきた?
今日の胃が溶け落ちそうな面会以来、会ってはいなかった。
そっと彼女にもらった首輪に触れる。金属の素材で作られたそれは、当然はずす事は叶わず、つけたままで過ごしている。
機会があるのならば、彼女にあって聞きたい。これは一体、何の意味があるのだろうか。
急いで制服を着なおして、髪に櫛を通す。三つ編みをしている暇はなかった。
朝に着た時はまだ着られているような感覚すらあったが、今では少しよれてすらいる。
本当にボコボコにされたから致し方ないだろうが、この姿で会うことになるのは少し恥ずかしかった。
シャツは着替えられたから、先程までの汗で気持ち悪い感じはしない。それだけが僥倖だった。
謁見の間まで行くと、朝に集っていたエルフは誰もおらず、エルノールもいなかった。
残っていたレフィーヤ嬢が短く「こちらへ」と案内してくれたので、言われるがままにあとに続く。
台座の奥の昇降台から、更に奥へ。そこで気づく、この先にあるのはエルノールの暮らす私室なのだと。
部屋に通された後、レフィーヤ嬢はすぐに部屋を出ていった。部屋ではエルノールが何やら書き物をしており、たった二人で取り残されてしまう。
朝は勝手に口を聞いて不興を買ってしまった事を思い出す。咄嗟の事であったとはいえ、あれは失敗だったと思う。誇り高きエルフの姫が、落ちこぼれから気安く話しかけるなど、許されないことだろう。次はちゃんと言葉を選ぶ。
「イグノール、到着いたしました。何か御用でしょうか」
かしずいて目を閉じたまま、ただ命令を待つ。
「やっと来たか、まぁ、立つがよい」
書き物に一段落つけ、エルノールは筆を置くと、軽やかな足取りで近づいてくる。
そうしてまじまじと全身を見られた。今日半日でかなり汚してしまったのだが、まだこれ一着しか持っていない。気恥ずかしくて、思わず目線を落としてしまう。
「脱げ」
そこへたった一言、エルノールが声を発する。
今なんて。と一瞬狼狽えるが、聞こえなかったわけでも、意味がわからないけでもない。
「え?」
「制服を脱げといっている」
冷たい視線が真っ直ぐ刺さる。拒否権なんてないことは朝の一件で理解している。混乱する頭をどうにか宥めながら、惑う手でぱちりとエンブレムを外した。
マントを脱ぎ、大切な制服を地に落とすわけにもいかず困っていると「脱いだものはそこの椅子の背にでもかけておけ」と指示が出た。ふるえる手でベルトを外し、ローブを丁寧に脱ぎ去る。その間も視線を感じていたたまれず、足元しか見ることができない。やはり、ズボンもだろうか。これを脱ぐと下は肌なのだが。彼女から静止の声は出ず、羞恥に耐えながら履いているものを取り去った。
エルフは人に肌を晒さない。それは掟に近いものだが、同族相手にも肌を晒すことは少ない。触れることはできるが、当然だが人前でここまで脱いだことなどなかった。上から見える脚には、先程の鍛錬で残った無数のアザや傷が見える。こんな汚いものを見てどうするというのだろう。
上もシャツを脱いでしまえば、もう覆い隠してくれる布はない。流石に限界だ。好きな人の前で、そのような関係にもなっていないのに、そんなマネはできない。そもそも、全く意図が読み取れない。何もかもがわからない。
シャツの裾を握りしめると、やっとの思いで、絞り出すように陳情した。
「もうこれ以上は……ご容赦を」
「まあいいだろう」
その声にほっとする。いや、全裸を免れただけで、既に恥ずかしい格好をしているわけだが。
「近くに寄れ」
言われた通りに近づく。エルノールは読めない表情をしており、イグノールの腕を一つ取った。されるがままに手を差し出す。手や指、腕首あたりは制服に守られていないため、より切り傷が目立っている。
「まったく、痴れ者めが」
エルノールが静かに怒りを蓄積させているのがわかる。しかし、どのような声をかければいいのか、茹だった脳では何も浮かんでこない。
「程度を考えろとあれほど言っておいたというに」
言われた記憶がないので、他の者に対する怒りなのだろうか。
「ん? イグノール、この髪はどうした?」
ふと何かを見つけたのか、髪を一房すくわれる。良く見れば、そこだけばっさりと切り抜かれていた。
勿論、髪を切った記憶がないので、今日のうちに切れたものだろう。疲れていて全く気が付かなかった。
「おそらくは、今日の修練で失ったものかと……」
皆まで言わせて貰えず、体が宙に浮いた。
「っ!? わっ、エ、エルノール!?」
彼女の手にはいつの間に抜かれたのか、杖が光っている。そのまま彼女は無言で隣の部屋に入ると、そこにあるベッドに体を投げ飛ばされる。彼女が更に杖を一振りすると窓のカーテンが一斉に閉まった。スプリングのおかげで痛い思いはしなかったが、格好が格好だけに慌てて起き上がる。何かこの展開はまずい気がする。
しかし、考える間もなく彼女に接近され、押し倒され、そしてあっさりと跨がられてしまった。
「なに……ァッ!!!」
そのままものすごい勢いで首筋に噛みつかれる。突然の痛みに目を瞑った。ジンと続く痛みが全身を走る。
「いくら弱いからって、やらせすぎだ」
ゆっくりと離された顔が、近くにある。その強い眼差しに怯んでしまう。エルノールは怒っているとわかるのに、こういう時になんと言えばいいのか全くわからなくなっていた。
「この首輪の意味、わかってないな? お兄様」
首輪の意味? 当然のようにわからない。
ペットにつけるもの? 言う事を聞かせるためのもの?
いや、そんなものは必要ない。だって、エルノールが言うならば、自分はなんだってするつもりだったのだから。
どうやら視線だけでも理解不能だったことを察したようだ。
「いいだろう、その身を持って知るがいい」
エルノールは普段は温度のない顔に恍惚とした笑顔を浮かべると、ゆっくりと覆いかぶさってくる。抵抗はできるが、これ以上怒らせたくはなくて素直に受け入れるしかなかった。
首輪に一つキスを落とした彼女は、そのまま近くの傷を舐めあげる。生暖かく湿った舌が、ねっとりと肌を這っていく。その言いしれぬ感覚に、ぞくりと身を震わせる。漏れ出そうな声は必死に飲み込んだ。
流石にここまで来て、何をされるかは理解できている。その行為に静止をかけることすらできない。許されていないと理解しつつ、何故こんなにも悲しくなるのか。
既に現界を越えた思考力と感情はないまぜになって、麻痺してきている。
何より大切にしたいと願った相手なのだ、乞われたら何でもしたのに。
どうして、心が伝わらないままこんな事になっているのか。
それでも施される愛撫は気持ちが良くて、流されるままに熱に埋もれていく。
それは生理的なものなのか、感情の起伏によるものなのか、見当のつかない涙がぽたりと落ちる。
その滴を見て、エルノールは嬉しそうにうっとりと目を細めた。
朝。カーテンの隙間から差し込む光に、イグノールはゆっくりと目を開いた。
ぼんやりとしながら身を起こす。体は驚くほど軽くなっていた。というか、記憶がない。何があったか、瞬時に思い出せない。
そこへ思いがけない声がかかった。あどけない少女の声だ。
「やっと起きたか、イグノール」
途端に記憶がフラッシュバックする。そうして全てを思い出した。
前がほぼ開けたままのシャツ、履いていない下半身、腫れぼったい気がする目尻。信じられない事実がそこにはあった。休息を得て思考力を取り戻した分、その破壊力はでかい。
声の主のエルノールは少し離れたベッドに横たわり、じっとこっちを見ていた。
「エルノール!?」
思わずかかっていたシーツを引き戻して下半身を覆う。今更な気がしなくもないが、羞恥心が消えたわけではないのだ。
何がどうなっているのだ。いや、記憶はおぼろげにある。
ずっと泣かされながら愛撫をされて……たぶん、途中で疲労に負けて寝落ちた。だからその後の事はわからない。
散々に弄られた体に痛みはなく、アザや打ち身といった傷も、手の切り傷も全て治っている。その代わり、いたるところに鬱血した痕や噛み跡が残っている。それをキスマークだと悟ると、かっと頭に血が上る。なんと言えばいいかわからず止まっていると、随分と機嫌をよくしているらしいエルノールが話しかける。
「よいぞ、ここであれば、好きに口を開くが良い」
どうやら発言の許可を得られたようだ。
恥ずかしがっている場合ではない、冷静を取り戻そうと言葉を取り繕う。
「っ……あ。えっと、エルノール、これは一体……どういうことなんだい?」
「昨日ちゃんと言ったはずだぞ、首輪の意味をわからせてやると」
いや、わからない。全然わからない。微塵もわからなかった。いきなり恋人同士のような事をして、気持ちが通じてもいないのに、そんな……。展開が早すぎてついていけてもいないのだ。
そう考えれば、学園にいた頃もこのような色恋や欲というものから遠かったように思う。リアーナの傍らにいるようにしていたが、そのような噂にも話にもならなかったし、整然と生きてきた。もう少し俗世への見聞を深めておいた方が良かったのだろうか。
まだ理解できない顔をしていると、エルノールは楽しそうに身を乗り出してきた。彼女の細い指先が喉元に触れる。
「これは、お兄様は私のものだと、知らしめるためのもの」
つ、と撫でられた箇所が熱を持つ。昨夜の行為を思い出してしまいそうで、恥じらいから顔を伏せる。
「このようなものがなくとも、僕は最初から、全てきみに捧げるつもりで……」
ここまで来た。それだけは本心であり事実だった。やっと言えたはずの想いだった。
だが、最後まで言い終わる前に髪を引かれた。強くはないが、彼女の顔が近づく。
「こんなに傷を作って、髪も切られたというのに、黙っていろと?」
少し怒らせてしまった気がする。何が問題だったのだろう。申し訳なくて耳も垂れるというものだ。
「っ、それは……僕の力不足から起こったことで……」
初めての鍛錬だったのだ。加減もわからなかったし、手加減もされていたし、命に係るような事故もなかったように思う。
「だめだ、許さない。おまえを傷つけていいのも、おまえをいじめていいのも、おまえを泣かせていいのも私だけ。他のやつには許さん」
「エルノール……僕は……」
やはり、彼女の言う事がわからなかった。こんなにも近くにいて、手が届くような距離にいるのに、その間は星よりもきっと遠い。
そのまま優しく抱きしめられ、熱が伝う。だが、その体を抱きしめ返して良いのか、分からずにいた。身体も腕も石のように重たかった。
しかし、きっとそれが正解なのだ。この距離はすぐに測って良いものではない。
「安心せい、兄様の処女も貞操もまだ奪ってはおらん」
「しょっ……!?」
じょ!?
処女とは。いや、流石にその文字の意味を知らないほど無垢ではない。
「だが、覚悟はしておけ。私はいずれはおまえの全てを手に入れる。そのうちに、な」
くつくつと笑いながら、動く事ができないままの額に、髪に、エルノールは触れるだけの口付けを落としていく。
「逃げることは許さぬ。私が台座にいる限り、決して離しはしない。ゆめゆめ忘れるでない」
熱を与えられているはずなのに、頭はまたのぼせていくのに、どうしてだろうか、手足の先だけはまるで凍ったかのように冷たいままだった。
ウィストリアの沼に落ちました!
以下色々
ウィストリアは原作の漫画を無料で読み始めたあたりでアニメ化したのですが
こんなおかしな沼にハマるとは思ってもいませんでした。
私はクズいキャラが好きなのでシオンがウィルに僕見ろ執着しているのを知って大喜びをしていただけだったのです。(それもどうなの?)
ユリウスのクズさも当然好きだった。
読み進めていると、イグノールとウィルがお友達になってかわいいな~!
って、普通ににこにこして見てたんですよ。
六年生たちかわいいねぇ!
そしたら塔に登った先で、イグノールが大好きな彼女に首輪はめられるのが公式?
とかいうバレを盛大に踏み抜いてしまいました。
そんな酷いことある!? どうして!??
そして気づいたら漫画を買っていました。
そこで気づいたんですけど、エルファリアも「ウィルは!私だけの!お嫁さん!」って言ってるんですね。
そっか、そういうこと……だったのか。
ということは、イグノールもエルノールのお嫁さんが公式なんですね?
わぁぁ、美人長髪エルフ優男が嫁~!最高では!?
結果的に一人で萌えることになってしまい、飢えたので書きました。
あ~、また女✕男のぼっち沼に来てしまったァ~~!!!(※ゲブケセの再来)
でもイグノールに抱いてしまった劣情はどうしようもないので
これからもぶつけていこうと思います。汚れていてごめんなさい。
ハァ、さみしい~!
お友達はいつでも募集中です(この作品をもって言えることなのか???)
お友達になれない人はせめて感想とかください。
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