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幸せになってくれなんて嘘だ、不幸でもいいから傍にいてくれ・前(エルイグ)

いきなりはじまる、なんちゃってギャグ世界線(※面白くはない)
エルイグとエルウィルとウィルイグが混在する真のカオス。
エルイグのどすけべシリーズの流れは組んでいるけど単体でも読めます。
いきなり終わるんじゃなくて後編に続く予定だった(未定)


※ これより1つ前の『星より遠い、冥土の牢獄』(エルイグ4作目)は中身のないエロで呵責に耐えられなかったので伏せました。
どうしても読みたいというガッツのある人は書き手までお問い合わせください。





それはある日の休暇だった。まだ風は冷たいがよく晴れた日で、窓辺で日向ぼっこするには最適な陽の光が降り注いでいる。
 ここ、妖聖の派閥も静まり返り、多くの者が塔から降りて休みを満喫したり、部屋で余暇を過ごすなど各々に自由な時間を楽しんでいた。
 最近はエルノールも塔に降りてきており、今日という休日を自室で密かに楽しんでいる。降りてきている間にしか手に入らない蔵書の数々を、ゆっくりと読み耽る算段だった。
 そこへ一人の女性の声が響く。

「た~のも~!!! エルノール! 出てきなさーーーい!!!」

 凛と響く華やかな声は大音響で、派閥全体を揺らしたかのようだ。声の主はここまで自力で抜け出してきた氷の派閥の長にして、今ではすっかり女傑として有名になってしまったエルファリア・アルヴィス・セルフォルトだ。中庭で仁王立ちをして、目的の窓を睨みあげている。
 その窓の奥から、ドタンバタンと何かが倒れる音がした後、一呼吸置いてばたんと開く。

「うるさいぞエルファリア!!! 貴様何しにきた!!!!!」

 顔を出したのは、この派閥の長であるエルノール・リヨス・アールヴだった。
 声で誰が来たのか、既に察しているようで、ものすごい怒りの剣幕だ。こんな冷静ではない彼女は、エルファリアの前以外では見ることはできない。

「ちょっとぉ、聞いたわよ! あなたイグノールをいじめてるんですって!?」

 窓の下からエルファリアが大声で話しかける。幸いにして長の部屋がある階下に不審な者はいないはずだが、休みの日であるからこそ、どこに人の耳があるかはわからない。いきなりの言いがかりにエルノールは周囲の気配を探りつつ怒鳴り返した。

「はぁ!? 何処からそんな根も葉もない噂を! でまかせを言うな!!!」

 叫びながらも、エルノールは指で中に入るように指示をだす。流石に喧嘩をしに来たわけではないはずだ。
 それを見たエルファリアが大きく跳躍する。
 派閥の長が窓から侵入するなどあってはならない蛮行のように思うが、別の長が手引したのだからノーカンなのかもしれない。
 ちなみに彼女が出てきたのも窓だった。今頃きっとサリサが泣いている。

「嘘つきー! ウィルが手紙で「イグノールの元気がないみたいだから調べて欲しい」っていうから調べたら、やれアナタがイグノールに首輪をつけてるだの、夜な夜なすけべな事してるだの、山ほど証言が出てくるじゃない!」

 窓辺で仁王立ちをしたエルファリアは、丁寧にも手紙の項をぺんぺんと指さして解説し、糾弾する。

「うぐっ!!!」

 それを聞いたエルノールは言葉に詰まった。
 まあ、ほぼほぼ事実だからだ。口止めはしているはずだが、人の口を完全に封じることなどできなかったようで、それなりに噂になっている事は知っていた。
 全ては派閥内で起きている内輪揉めの状態なので、誰も干渉してくるとは思っていなかったのだ。

「あんなに良い子で健気なイグノールになんて仕打ちするの!? ひどい! サイテー! 鬼! 悪魔!!!」

 矢継ぎ早に飛び出す悪口に一瞬たじろぐが、彼女もここで黙っている性格ではない。

「うるさいうるさい! お前がウィルをお嫁さんにするなら、私だってイグノールをお嫁さんにしたっていいだろうが!?」

 もっともらしく抗議しているが、二人とも真に正しいことは何も言えていない。ウィルもイグノールも脳内で嫁にされていることなど露も知らないのが事実である。

「嫁の定義おかしいし! そもそも私とウィルは両思いだも〜ん!!!」

「ぬかせ、ずっとストーカーのごとく、仕事サボりまくって下をじろじろ覗いていたお前には言われたくないわ!!!」

 プライバシーという言葉は既に二人の間には存在していなかった。そんな理性が残っているなら、こんな会話になることはない。ボケとボケならぬ、ツッコミとツッコミ、それも双方ともネジが飛んでいるツッコミという戦いなのだ。

「確かにずっと覗いてたけど、だからこそイグノールがどれだけいい子か知ってるんだから!! それはもう、ウィルと仲良くなった時の二人は可愛くって尊かったんだからぁー!!!」

「勝手に人のトラウマを覗くなど悪趣味にもほどがある! 尊さを説くなら先に人の尊厳を学んでからにしろこの非常識女ァ!!!」

 そう、これはどんぐりの背比べである。が、ここには他に人がいないので真面目につっこまれないのだ。
 なお、初手の時点でエルノールが周囲に風による防音魔法を敷き、既に一帯に声は漏れていない。
 まさにタイマン、これは至高の五杖の女性の長たちが繰り広げるデスバトルというわけである。

「なにをー!? そもそもイグノールはアナタのために塔に上がったんだから、そんなモノつける必要なんてなかったじゃない! なんでそんな酷いことするのよぉ!!」

「ここから出ることができない我々を、いつ見捨てて下に帰ってしまうかもわからんのだぞ!? こんなチャンスを捨てておけるか、兄様がどう思おうがもう絶対に逃がさん!!!」

 同レベルの攻め女子の会話は不毛に続く。
 本当は掴みにかかりたいくらいである双方だが、エルノールは部屋を荒らされたくないらしく、エルファリアも部屋を荒らしたことで言いがかりをつけられる事を避けているため、なんとかギリギリの均衡を保っているのだ。
 室内では先に手を出したほうが負けなのである。故に口論なのだ。

「どういう精神構造してるのよこの陰キャ! どうせ好きだって伝えてもいないんでしょう!? このヘタレ! わがまま女!!」

「そうだ悪いか!? お兄様が派閥に入ったからには長の私が絶対だろうが! 囲って何が悪い! おまえだってウィルを囲おうとしてた癖にでかい口を叩くな! この破廉恥ちゃらんぽらん女!!」

 一歩も譲らない戦いは白熱しエスカレートしていく。
 魔法を一切使わないかわりに、二人からバシバシと叩かれている部屋の机は、今では地震に遭っているかのように揺れていた。きっとそのうち割れる。

「権力にものを言わせて無理矢理お手つきするのはもっと悪いでしょうが! あと私とウィルは相思相愛だもん囲うとか言わないでもらえますぅー!?」

「エルフいちの美人でかわいいお兄様が、汚い男どもが山ほどいる下界なんぞに帰ったらどんな仕打ちを受けるか想像するに恐ろしい! 私には兄様を守る義務があるのだ、傍に置かねば守れんだろうが!」

 物に被害を与えられない二人の女は、顔の横で拳をぶんぶん振ったり、相手に指を何度も突きつけたりと大忙しだ。

「エルフなんて大体みんな同じ美形じゃない。それに私はアナタの仕打ちが酷いっていってるの!」

 とうとうエルファリアの拳をエルノールが受け止める。互いに互いの手を握ると、ものすごい剣幕で睨み合う。

「ぐぬーっ!!! ……お兄様を囲えるなら、私は……私は悪にだってなってやる……」

「きぃーっ!!! ……執着がやばすぎてお話にならないわ~!!!」

 ここまでに取っ組み合いにまで発展していた二人だが、間にようやく沈黙が混ざる。力がないので疲れたともいうが。
 先に手を離したのはエルファリアだった。ぱっと力を抜くと、一つ息をつく。

「いいわ、特別に私の力でイグノールを見せてあげる。これを見て後悔しなさい」

 エルファリアはふっと背中を向けると、適当に椅子からクッションを剥ぎ取る。そして懐から一つの水晶玉を取り出すと、机の上に敷いて水晶玉を固定した。勝手知ったるというわけでもないのに、とても鮮やかな手つきだ。
 というか、そんな大ぶりの水晶玉をどこに隠し持っていたのだろうか。全くわからない。

「この私に後悔を説くか? フン、笑わせる」

 近づいてきたエルノールは、乗ってやったとでもいうように水晶玉を見下ろす。興がのったようだった。

「くらえーっ!!!」

 エルファリアがそっと手をかざすと、水晶玉が仄かに光を帯びる。そこに浮かび上がってきたのは、今のキキ視点の世界のようだ。
 今日のウィルとイグノールの予定はただの休暇。それはまさしく、塔から降りて二人で会っているらしい風景だった。
 大喧嘩を繰り広げていた二人とはうってかわって、水晶玉に映る二人の雰囲気はとても和やかだ。
 何の話をしているのかまでは聞き取れないが、何やらカフェ的なテラスで談笑しているのは伺える。話をしながらイグノールはキキに構っているのだろう、頭を撫でたり、首の下をかいているのか視界が上下にブレる。その顔は晴れやかだった。素晴らしい動物効果だ。

「こ、これは……お兄様の笑顔!? うそ、こんな幸せそうに笑って……。私にはこんな顔見せてくれた事がないのに……」

「ほらあ! ウィルといる時はいつもこうなんだから! わかったらもう彼を解放してあげて!」

 にこにこと笑い合いながら朗らかに談笑している風景はあまりにも清らかだ。そんな水晶玉の光景を瞳に映して見入っていたエルノールだが、すぐに癇癪をおこした。

「やだーーーっっ!!! いやだ、だめだ。こんな可愛いお兄様、すぐ攫われるに決まっている、戻ったらもう二度と私の部屋から出さんー!!!」

「なんでそうなるのよぉ、このヤンデレクソエルフー!!!」

 半ばヤケクソ気味になっているエルノールと、それに合わせてエルファリアのヤケ気味な叫びが響く。綺麗に防音魔法でかき消されているのだが、劈くような二人の圧で、外から見ても部屋が揺れていたのだという。

 その後、説得はできなかったが現状を伝えたことを良しとしたエルファリアが窓から飛び立ち。頭を抱えて呵責に苛むエルノールが部屋に残されたのだとか何とか。







エル(ノール)イグとエル(ファリア)ウィル、書いててやっと気づいたけど、どっちもエルなんですね。
いやぁ、二人共かわいいお嫁さんを迎えられるといいナァ……。
ぼかぁ女攻め好き女男推しの民なので応援しています。
なお、ミリだけ存在するウィルイグ、ここのCPが平和すぎて他全部焼け野原にみえる。
後編も頑張って書きたいところですが、逆にすけべじゃなくて需要あるのか?
って気もしてきました。
この一つ前が本当にひどくて、封印してある(笑)くらいです。

この後は謎のシリアス展開になる予定です。





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