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言えない言えないサヨナラなんて(シオユリ)

制作時期:2024年12月

これの続き
今回は塔に上った後のシオユリ夜会話。すけべはナシ。
設定は今回も適当に盛ってありマシマシです。
相変わらずのツンデレケンカップルだけど、びっくりするほどイチャイチャしてます。
前作までの空気が合わない人にはオススメしません。









 それはすっかりと陽が落ち、星と結界が浮かぶ空が鮮明に見える夜だった。
 まだ息を吐くと少し白さが残る。特に高い位置に存在している塔は、この時間になればそれなりに冷えこむ。
 その中で男は足早に廊下を歩いていた。この程度なら制服の防寒耐性でどうとでもなるし、何なら今は火照って暑いまである。今日も派手に走ったり転げたり燃やされたりなどした。火傷を見るに加減はされているらしく、それが忌々しく思えてならない。
 塔に登ってからというもの、ずっとこのような感じだ。最初の一週間こそ第二開祭まで待つためか、基本的な塔の配置や生活に慣れるために重きを置いていた。修行でやることも学生時代とそう変わらず、あくまで準備期間であったのだと後に思い知ることになる。火の派閥の長でもあり、現至高の五杖でもあるキャリオットとの謁見で取り巻く環境がかわったのだ。
 派閥に入りたての者が至高の五杖に敵うなどとは最初から思ってはいない。だが、差が大きすぎて厳密にどれほどの差があるのか、それすら把握できていない。一目置かれているくらいはわかるが、あくまで一番マシな後継を選び抜いたに過ぎないだろう。それがまた悔しくて躍起になってしまう性格なのだからしょうがない。今日も制服が燃える寸前までバチバチにやりあっていた。そこで密偵の件なんざ気にしている余裕はほぼないと言っていい。
 もう少し座学で教えることはないのかと思わないでもないが、炎の属性というものはこういう側面が多い。聞くより慣れろだ。性に合っているといえばそうなので、文句は言っていないのだが。
 ヘトヘトになりながらも何とか夕食を腹に詰め込み、後は汗を流して寝るだけだ。と、大浴場に差し掛かるところで声がかかった。

「やっと来たか、シオン!」

 スイ、と何かが弧を描いて舞い降りてくる。咄嗟に周囲を警戒し、杖に手を伸ばす。
 だが、すっかり聞き慣れた声と共に現れたのは、見知った氷の小鳥だった。間違えようがない、ユリウス・レインバーグの氷囀の護人だ。そのまま目の前で爆ぜ割れたかと思ったら、霧散した強い魔力が収束して人の形になっていく。

「おまえ……ユリウス!?」

「周囲に敵がいるとかじゃない、知らせに寄越されただけだ」

 ユリウスの使役する魔法、”白の芸術”だ。だが、使い魔から変化させるのは初めて見た。おそらくは腕を上げたのだろう。そういう小細工に関しては勘が良く、覚えが早いことは知っている。
 形どった氷人形はやけに軽装だった。ふんわりとした白のブラウスに、前髪を片方だけヘアピンで留めてある。おそらく室内着なのだろうが、なんだこのチャラい格好は。
 とりあえず瞬時に何か異変があっては困ると身構えたが、そうではないらしく杖をおさめる。

「全く、人使いが荒いやつらだ。明日の19時、『雌鳥と豆の木亭』に集まれだとさ、コレットからだ」

「おまえが伝令役か?」

 ユリウスは生み出したばかりの”白の芸術”の調子を確かめているのか、手を握ったり開いたりしている。成功したらしく調子は良さそうだ。敵の裏をかくために形成時に音を出さないとはいえ、一瞬でできあがる様を目の前で見た。本当に技術だけは抜群に高い。

「そうだ。他の奴らも大体はおまえみたいにボロボロになるまでしごかれてるからな。伝令を飛ばすような余力もないんだと。魔力を使う余力があるのは私とコレットだけだ」

「は? おまえは?」

 確かに毎日ボロ雑巾にでもなっている気分だ。他の連中を気にしている暇もなかった事を思い出す。随分と余裕そうな顔をしていて腹が立つ。

「私? 私は稀代の天才だぞ。どうやらそんな特訓は必要なかったようだ」

「ざけんな、チャラチャラした格好しやがって、ムカつく!!!」

 そう言いながら彼は自慢げに笑う。いや、ヘアピンは似合っていて正直かわいい。ブラウスも品があって悪くはない。が、前を開きすぎだ。そんな格好で絶対に出歩いてくれるなよと心で念じる。
 何より余裕そうなのが気に入らない。派閥に入れなくてあんなにショボくれていたというのに、こうして収まった今は随分と精神的に余裕……いや、安定したようだ。良いのか悪いのか。結果として良いのだろうが、少しくらい凹んでいた方が大人しくてよかったのではないか。

「派閥の制服はコストが高すぎる、そもこの時間まで制服を着てる奴なんておまえくらいだぞ、シオン」

 確かにそれはそうだ。時刻にして22時、こんな時間まで制服で修行している奴なんざ他にいないだろう。改めて派閥の長と己の正気を疑った。
 肩に煤が付いているのを見つけたらしい。ユリウスは指で落とすと、フッと指先に息を吹きかけて見せる。所々焦げているのだから仕方がない。わざわざ見せつけるな、嫌味か。嫌味だろうな。上からちらりと見える胸元が妙に気になる。
 はあ、無性にイライラだかムラムラだかしてきた。

「暗におまえは今、その格好でだらだらしてるってことか。よし、砕いてやる」

 襟首を掴んで引き寄せて、もう片方で拳を握りこむ。

「おいこらグーはやめろッ、冗談じゃなく壊れる!」

「もう一回くらい壊してやってもいいんだが? 前のように他の手でいくか?」

 感情のままに顔を近づけると、流石にユリウスも慌てた声をあげて逃げる。珍しく弱い力ながらに抵抗された。

「バカ! せめて話が終わってからにしろ。それに私だっておまえを見つけるのに苦労したんだからな、大浴場には来るだろうと張り込んで一時間だ。少しはありがたく思え!」

「まだ話があるのかよ」

 そう言われて拳を下ろして、掴んでいた襟首から手を離す。伝令ついでに新しい力を見せつけに来たのではなかったようだ。
 確かにずっと死合っているような修行の日々の中で、他に潤いなどもなく、欲を感じる間もなかった。そこへわざわざ使い魔を飛ばしてでも姿を見せに来てくれたと思うと、まぁ拳はやめておいてやろうと思う。
 別に恋人でもないし、好き合っているとか互いに口にしたこともないが、全く気にかけていないわけではない。

「しかし、酷いやられようだな。火傷に擦り傷、打ち身もあるか、ボロボロじゃないか?」

「うるさい。おまえと違ってこっちは暴君の相手で大忙しなんだよ」

「ふぅん」

 引き寄せたのは自分だが、距離が近い。ユリウスは上から下までジロジロ見ながら検分しているらしい。かかる息が近い。人形に呼吸なんかいるのか? とも思うが、喋れる以上は呼吸もあるのだろう。見た目の精巧さは認めるところで、その容姿は本物と同じなのだ。
 うるさい、こっちは健全な元学生だぞ。そういうものを全て吹き飛ばして修行に明け暮れていたというのに、一度気がついてしまうと、意外とそういう欲を抑えるのは下手なのだと悟る。まぁ、炎属性は直情型が多いからな。
 そのまま腰に手を回して引き寄せると、体が密着する。そこでようやく距離に気がついたようだが、遅いんだよおまえは。ひんやりとした体が心地良い。

「はあ、おまえをかき氷にして食べてやりたい」

「やめろ、勝手に食べ物にするな」

 引き離そうとユリウスの腕に力がこもるが、そうはさせまいと顔を寄せて首筋に埋める。勢いのままぺろりと舐める。ユリウスの腰にまわった手は裏側で見えないが、構造くらいはわかるのでブラウスを引き抜くと、その中に手を忍び込ませた。やはり冷たくて気持ちがいい。

「多少冷やしてやるくらいはできるが、ッ! おい、首を舐めるな! 服の中に手も入れるな~!!!」

 このまま人気のないところへ連れ込んでしまうのも手だと悪知恵を働かせようとしたところで、そこで思いきり、一発殴られた。思わず呻いたが、パンチの威力は弱いし、何なら先程までの修行のほうが痛かった。痛くないと言えば嘘にはなるし、手加減はしているのだろうが、弱いなコイツ。

「っつ!!! とにかく、健全な男子の前で胸元を開けるような服はやめろ」

 いや、だって、見えるだろうが。今更、どこの何がとは言わないが。男のそんなものを見て嬉しいのかとか聞かれたら、咄嗟に返答には困るが、ほらあれだ、まだ開発とかしていないからな。そういえば開発したら氷人形でも胸で感じたりするのだろうか。そのうち試してみたい。
 そんな事を考えていたら、正面切って怒られた。

「こんな事をしてくる奴は貴様しかいない!」

 確かに、それもそうだ。






 その後、二人で大声をあげておいて今更だが大浴場の前から場所を移した。そもそも一時間近くまともに人も通らなかったらしいし人気も感じないのだが、念の為だ。炎の派閥は境界祭での事件で最も被害が大きかった派閥だ。そのため構成員も他に比べると少ない。
 大浴場から少し離れた位置にあるガゼボを見つけて腰掛ける。当然ながら人影はない。風の通りやすい構造なのか、夏は涼める場所なのかもしれないが、冬に来るところではないというのが正直な感想だ。あと今のユリウスに寒さは関係ないのだろうが、見た目が寒すぎる。実際にその薄着だったら秒で風邪をひきそうだ。
 そんな事を全く気にせず、淡々とユリウスが話の続きを進める。

「一応、こちらの状況も伝えておく。エルファリア様はシロだ。サリサ教官はわからないが、エルファリア様の感覚に間違いがなければシロだろう。ここは境界祭の時、至高の五杖や側近は一堂に会していたから、アリバイがあるとも言えるが」

 全く疲労感の見えないユリウスはまともに調査をしているらしい。そういうのは明日の報告時に言え、と思いつつも耳を傾ける。

「何を根拠に? 弱みでも握られたのか」

「弱みなら魔導大祭の時からアウトだ」

 怪訝そうにユリウスは言う。そういやコイツ、やらかして派閥に入れなかったんだったな。貴族なんだから発言には気をつけろと思うが、まさかあれが至高の五杖にまで届いていたとは本人も思うまい。

「……。ああ、それもそうだな」

「次やったら同じことしてやるって笑顔でいわれた」

 半ば呆れかえる。それも因果応報だろう。本人は相当に面白くないらしくぶすくれている。いい気味だ。

「ああ、なるほど、丸裸」

「わざわざ言うな!!!」

 ここで揶揄っておかないのはもったいないだろう。
 しかし丸裸か、既に剥いたなとふと思い返す。

「まあ、おまえの丸裸なら既に僕が見てるが」

「それも言うなよ! 人前で言ったら承知しないからな!!」

「……言うかよ。僕にも面目くらいある」

 秘密だなんて綺麗なものでもないが、あれを独り占めしておくほどには欲があるつもりだ。面目という名でカモフラージュはしておくが、できる限り今後も出し惜しんでいただきたいものだ。





 それからユリウスがおおよそ掴んでいる状況の説明を受けた。本当にどこも似たような感じで、程度は違えど過酷な修行を行っている派閥が多いらしい。その中で人を判断するのは難しく、どの派閥も同じくらいに動きはなさそうだった。そもそも脅威が何かもまともに知らないのだ、それを駆け出しの新人たちが探せるはずもない。
 こちらの情報もそう大したことはない。皆しごかれていてまともに捜査ができていないのもあるが、何より境界祭での人員削減が相当に痛手だったからだ。戦死したもののリストを洗ったが、実に数年分の人材の損失だった。まぁ、これは明日にでも共有すればいいだろう。
 他の派閥の空気感や世間話じみたものを随分と聞かされた。世間話の中にヒントがあるかもしれないとのことだが、別段ひっかかるところはない。
 そもそもだ。派閥に来たばかりの者たちに、異常を見つけろというのは難題だ。何故なら、平常と異常の違いすら満足に理解できていないのだから。

「まぁ、そのくらいか……。以上だ」

「それだけか? その程度なら使い魔だけで済むだろうが」

 意外と喋るな、と思いながら報告を黙って聞いていたが、有益そうな情報はやはりない。雷の派閥が特に物理的にやばそうというくらいだ。炎があんな脳筋みたいな派閥じゃなくて良かった。毎日ボロボロにはなるが、地味に走るよりかは実戦形式の方がいくらかマシだ。
 しかし、この程度の話をするためにわざわざ? と思わないこともない。小鳥の使い魔でもこと足りるだろうに。

「当然だ。他のやつらはウィルのところ以外、皆そうした」

 即座にカチンとくる。その名前は起爆剤だと理解してるだろうに。いや、別に嫉妬しているとかではない。どうせ感謝されたいとか、そんなくだらない理由だろう。

「アイツのところには”白の芸術”を送ったのか」

「いちいち噛みつくなよ。私がお膳立てしてやって派閥に入れたんだから当然だろう。今はリアーナと一緒に相当しごかれてる。おまえもうかうかしてたら置いてかれるぞ」

 いかにも面倒くさそうに袖にされる。派閥に入るまでに随分と仲良くやっていたようだが、詳細は聞いていない。少し心がもやもやする。

「暇人しているおまえもだろうが」

「私はいいんだ、天才だからな! ……いや、そうでもないか。一応エルファリア様に教えは請うているし、”白の芸術”の使い方も教わっているからこうして来てるわけで、何もしてないわけじゃないぞ」

 確かに腕はあげている。”白の芸術”の上達もその範疇だ。
 元からどちらかと言えば氷魔法や土魔法は細かい操作を要求される。それと違い風や雷、炎といった属性には形がないので細かい扱いよりも火力重視になる傾向にある。畑がかわると意外とイメージがわかないものだ。
 ユリウスはその分野において学園内で右に出るものはおらず、魔法の上達も肉体的な強化よりも構造の把握や感覚を研ぎ澄ますことが上達に繋がるらしい。前に筋肉がないとからかってやったら、確かそんな事を言われた気がする。

「ほぉ」

「……ばか、少しは察しろよ! わざわざ、わざわざ苦労して氷人形を持ってきてやったんだからな!?」

 なるほど、そういうことか。流石に二回言われたらわかる。思わず口元を歪めてしまった。喉奥でくつりと笑う。

「おまえはたまに可愛いことを言うが、いちいち回りくどいな」

「性分だ!!!」

 怒ってはいるが、どうせ本気ではないのだろう。いつもの照れ隠しとかそういう類だ。手を伸ばして引き寄せてみると、大人しく腕の中に収まってくれる。温かくはないし、この距離でならいつも香るユリウスの匂いもしないが、いまさら高望みはしないでおく。

「なあ。もうちょっと頻繁に来れないのか、休みの日とか」

「使い魔が出せないこともない。が、”白の芸術”を頻繁に使うのは無理だ。コストが高いし、人に見つかる可能性も上がる。他の派閥では怪しまれるだろう?」

 頬に手を添えて輪郭をなぞる。それだけで腕の中のユリウスは気恥ずかしそうに目を瞑った。暗い中でも僅かに頬が紅潮しているのがわかる。本体の意識が濃く反映されているのだろう。

「僕は使い魔でもいいぞ」

「ん。使い魔に私の意識を移すことは……できなくはない。けどな、でもダメだ。あれは鳥目なんだ、夜は何も見えん」

 初めて聞いた。そもそも使い魔に知覚を与えるなんて所業はレベルが高すぎる。自分が炎で召喚する火鷹にはそんな機能すらない。できて追尾だ。鳥目でも見えるだけで高性能というわけだ。

「で、わざわざ今日は”白の芸術”を用意したのか」

「……だからありがたく思えって言っただろう。別に、顔も見たくないならいい。今後一切よこさないが?」

 そうやってすぐ拗ねる。が、最近は彼なりの構ってほしいという合図なのだと理解している。慣れると可愛く思えるものだ。なので素直に感謝しておこう。

「そうだな、ありがたくはあるな」

「ふふ、そうだろうそうだろう」

 目が合い、どちらからとも知れず、顔を寄せ合うと唇を合わせる。思えば最初よりかはまともなキスをできるようになっていた。
 冷たいながらも燃えるように求めた。暫く、というか飽きるまでユリウスの口を愉しんで、ようやく離してやる。はぁ、と息をつきながらも、いつもなら苦しいとか疲れたとか喚きそうなユリウスが、うっとりとしつつも珍しく笑っていた。

「優しくて寛大なユリウス・レインバーグをちゃんと覚えておけよ、シオン」

 満足したような、少し名残惜しいような、そんな笑みだ。思わず一瞬見惚れたなんて、口が避けても言わないが、素直にいってそれは綺麗なものだった。

「おまえがそういう態度の時は、碌なことがないんだよな」

「失礼な」

 ユリウスは自分で思っているより人に優しい。また優しい人に懐くようだった。
 プライドが高いのは事実であるし高慢なところはあるが、その実、悪ぶっているように見せかけているだけだ。
 猜疑心が強く他人との間に壁を作り、容易に懐へ踏み込ませないようにしているが、そうでない相手には驚くほど素直な面を見せることがある。それに気付いたのは最近になってからだ。
 実際に心を許しているらしい友人たちにはあどけない笑顔を見せていることもある。自然と目で追うようになってから、それに気がついたというわけだ。
 ちなみにまだそこまで穏やかな笑顔は向けられた事はない。だが、初めての夜のことを思い返すといずれはあり得るかも知れない。

「甘えたでチョロいおまえの事なら覚えておいてやるよ、ユリウス」

 そういう所につけ込まれてるんだぞ、と思うが、そういう話はしたことがないのでどう思っているのかは不明だ。
 じろりと一度、睨まれた。怒って凄んでいても綺麗に見えるのだから、これは相当にやられていると自覚する。

「異議はあるが、まぁいいか」

 いいのか。こういうところで随分丸くなったと感じる。呆れたようなため息を残しつつも、ユリウスが体を離して席を立つ。

「帰るぞ。おまえももう戻れ」

 今日はこれでお開きということだろう。名残惜しいが腰を上げて追いつく。

「そうだな、流石に僕も限界だ。さっさとシャワーでも浴びて明日に備えるさ」

 逢瀬で気分的に飛んでいた疲労が、再び体へ戻ってくる。ものすごく重たいことを今更に思い出した。明日はなんと言って早めに抜けようかと考え始める。いや、定時上がりなら間に合うはずなのだが。

「私はこの後、痕跡を消すためにシャワールームで魔法を解くから、水でもかけておいてくれ」

 脱衣所に人はいないであろうが、警戒しながら中へと入る。一時間は軽く無人だった浴場は、今も無人らしい。服に手をかけようとする隣で、ユリウスが浴場への扉を開く。温かな湿気っがふわりと流れ出す。そこで何かを思い出したのか、ユリウスが振り向いた。

「あと、そうだな。今は気分が良いから、片手くらいなら食べてもいいぞ」

 そう言って、彼は不敵に笑った。その中に少しだけ、これまでに見たことのない温かみがある事に気付く。

「了解」

 それでまた気分が上がったのだが、それは言わないでおいた。







派閥に入れたので承認欲求ぐだぐだだったユリウスは元気になり
かわりにシオンがぼこぼこにされてへばっているという
入閥後の二人が書きたくてやりました。

塔に上ってからユリウスが死ぬまで本当に時間がなくて
なんとか繋げようと足掻いた結果とも言えます。

「さよなら」と「いってきます」をする話でもあるんですが
正確に伝わっているといいなぁ……。

ところで私、ヘアピン私服ユリウスのシーンに脳を焼かれ続けてますよねェ。
はやく戻ってきてそのかわいい私服をもっと見せて欲しい。
なお、最後のユリのセリフを言わせるためだけに考察書きました!
察してくれんか……!!!

この後どう転ぶかは本誌次第です。
夢くらい見たいじゃないですか。ねぇ……。
なおタイトルは私の好きなアニメ『絶園のテンペスト』の
後半のOP「大好きなのに」からですが
別にあの曲がシオユリだということはないです(笑)

そもそもこいつら、こんなイチャついてるけど告白もしてないし付き合ってないですからね!
わはは。

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