登場人物:ルガジーン ガダラル
CP傾向:ぬっるいけど天×炎。
制作時期:2006年9月末
なんだかよくわかんないけど生き急いでいるガダラルと
とにかくガダラルを心配して諭し(ダメだし)にきてくれる上司ルガジーン。
誰かそっと守れる強さを
畜生、畜生、畜生……ッ!
何故だ、何故俺だけ!?
カラリと晴れたアトルガンの青空の日差しを受けながら、忌々しげに歩く男が居た。
背中に輝く白銀の大鎌に、五蛇将を示す赤い豪華な作りの甲冑に身を包んでいるその男は
荒い感情を隠そうともせず、悔しげに歪むその口から、
いつしか心で叫んでいた台詞を声に出して呟いていた。
「畜生、畜生!何の為の五蛇将だ……」
怒りに任せて、拳を壁に叩きつける。
防具で護られてはいるものの、その衝撃は緩和されず、痛みがじわりと腕に広がる。
だが、それすらも怒りと悔しさを煽るようで、青年は逆手を強く握るとただ無念そうに頭を垂れた。
ことの発端は今日の首都防衛会議だった。
内容は『五蛇将の配置について』
他国からの傭兵を多く雇い入れるというシステムが現実化され、多くの防衛要員が導入される中、
これまでバラバラで戦っていた五蛇将の護る箇所を決め、より五鏡を奪われにくくしようという事だった。
それ自体に、この五蛇将の一員である青年に何も異論はない。
彼が、癇癪を起こしたのは、その配置された場所であった。
「だからって、なんで俺が競売区なんだ!?封魔堂とはまるっきり逆ではないか……」
悔しい。
ただ悔しい。
まるで自分が役立たずだと、そう思われているのだと。
しかし、これも五蛇将の総大将の口より、聖皇の名の下に決定されてしまったため、
既に異を唱える事もできなくなっていた。
「待て、ガダラル!あまりそう急くのではない」
「ッ!……ルガジーン」
小走りで近寄ってくるエルヴァーンの壮年を、突き刺すような視線で睨みつけて、青年は足を止めた。
足早に持ち場に戻ろうとするガダラルを追って来た彼こそ、五蛇将を束ねる天蛇将・ルガジーンその人だ。
彼が今回の命令を不服に思っていたのは見抜かれており――当人も隠すようなことは一切しなかったが――
納得させに来たのだろう。
だが、ガダラルは話すことは何もないとでも言うように、顔を背けると、無視するように足を進めた。
「ガダラル、本当は解っているのだろう?」
「…ッ何をだ?」
「お前が激戦が予想される主戦場から外された理由だ」
去り往こうとする彼の腕を掴むと、ルガジーンはこちらを向けと言わんばかりに腕を引いた。
その強い力を振りほどこうとするが、その力に敵うはずなどなく
ガダラルは忌々しげにその顔を睨むと、短く吐き捨てた。
「……知らん」
いや、本当は知っている。外された理由を……。
「そうか、では私から言っておこう」
言わなくても解る、自分の短所故なのだと。
「まず、このアルザビは魔笛を護るために魔力結界がされていること。
その為に、お前の精霊の術は意力が半分以上削がれるということ」
「ッうるさい、黙れ!」
そんなこと言われなくとも、実際精霊魔法を操る自分が一番よく解っている。
だから、武器も魔力を高める棍から鎌に変えたのだ。
前に出て一匹でも多くの獣人どもを葬り去るために!
「次に、五蛇将の中でもお前の体力が一番劣っているということ」
悔しさを隠し切れず、ギリ、と唇を噛む。
皆がそれを疎んでいるわけではない。
寧ろ黒魔道士である自分の体力はそれ相応と見られていることは知っている。
だから、限界まで強くなろうと足掻いても見たのだ。
「そして最後に、お前が一番逸りやすい性格だということだ」
―――!!!
ルガジーンの冷静な瞳が、真っ直ぐに突き刺さる。
その眼差しは、ガダラルの悔しさに荒れ狂う心を更に乱し、胸を燃やした。
「……っくしょぉ……畜生、畜生ッ!!!」
「ガダラル、お前が劣っているわけではな……」
「黙れッ離せ、俺に……触るなっ!!」
ガダラルが、腕を掴む手から逃れようと激しく腕を捩る。
しかし、ルガジーンはその手を、きつく掴んだまま決して離そうとはしなかった。
「貴様、何のつもりだ、ルガジーン!命令には従うと言ったはずだ
これ以上俺に近づくな、俺に関わるな!」
「断る!!!!!」
「ッ!」
気が触れたように喚いていたガダラルだったが、珍しく声を張り上げるルガジーン気圧されたのか、
顔を曇らせたまま黙りこんだ。
「適材適所という言葉を知っているか?私は競売こそお前に護らせるべきだと思った。
逆に、競売にこそ、お前の防衛区に相応しいと思った。
ここでの戦いは防衛戦であるということを忘れてはならない、解るか?」
「……俺に自重しろと言うのだろう」
「ああ、そうだ。私には、お前が生き急いでいるように見える。
私は私なりに、お前の戦う理由を知り、把握し、理解しているつもりだ、
が、もしどうしても他の区の防衛を望むのであれば、聖皇様に陳情しても構わぬ」
「……?」
僅かに首を傾げるガダラルを見やって、ルガジーンは静かに、少しだけ笑った。
「だが、それはせめて競売区を一度見てからにしてほしい。
我々にはそれぞれ護るべきものがある、それがお前にとって何だったか、今一度考え直すといい」
「ルガジーン……」
束縛していた腕を解き、その打ち身で傷ついた手の甲にケアルを一つかけ、そこに祈るように口付けを落とすと、
鎧の擦れる音さえたてず、ルガジーンは踵を返した。
「んなっ!!?」
「忘れないでほしい、お前は私の大切な部下の一人であり、私の愛するアトルガンの民だということを。
決してお前が戦力的に劣っているわけではない」
静かに、だが想いの篭った声音でそう告げると、彼はアルザビの街へと消えていった。
その背中を、顔を顰めたままガダラルは見送ると、荒れ狂った心を落ち着かせようと傷が癒されたばかりの手を握る。
そこは不自然なほどに熱く脈を打っていた。
「なんなんだ……あいつは、畜生ッ!わけわからん」
その脈が心の臓を通り、顔にまで及んで来るのがわかる。
一度だけだ。
一度、競売に付いて気に入らなければすぐに怒鳴り込んでやる!
そう、心で吐き捨てると、ルガジーンの残した温もりから逃れるように、炎蛇の将は駆け出した。
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相変わらず文才ないんだけど、書きたいから書いていいよね?ね?
と、いつもながらに自信の無い管理人です。
これ、ガダラルにわりとはまりたての頃(今から約一ヶ月前)
くらいに書き出していたので……なんだかよくわかんない話になっちゃいました。
とにかく五蛇将最弱は君でキマリ!!!
炎受はとりあえず4蛇分ありますが、どれも素敵ですよねー!
男共は包容力がありそうですし、女の子組はとにかく可愛いし……
誰とくっつけても美味しくいただけます!
まぁ、誰が相手でも後者(×炎)なうちのところですけど。
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