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歩き続けて往く為に(過去 ロベルアクベル×カモロドミロ)

登場人物:ロベルアクベル カモロドミロ

CP傾向:ロベカモ

制作時期:2008年4月下旬

まさかのタルかぷ。
まさかのロベカモ
処刑後の120%妄想
ひたすら暗い。











「ここから出せ、ロベルアクベル」

 薄暗い部屋に、怒りを含んだ声が響く。ロベルアクベルと呼ばれた覆面のタルタルは、食器を机に置くと、短く「それはできん」と告げた。
 質素なベッドと、質素な机、そして本棚しかないその部屋は星の大樹の小部屋の一画で、とびきり陽の向きが悪く、小さな窓すら樹の幹でほとんど塞がれて隙間しか空が見えない。まさに閉鎖空間だった。

「できぬ相談だカモロドミロ、もう貴下は外では既に死んだことになっていると言ったはずだが」

「くっ……」

「自分のしでかした事を、忘れてはおるまいな? 覚えているのなら無駄な足掻きはしないことだ」

 そうキッパリと返されて、カモロドミロは唇を噛んだ。
 彼がここに連れて来られて幾日かが過ぎようとしていた。歴史に残るような敗戦を招いてしまったのは、確かに愚かでわがままな欲望のための独断行動が原因だ。聖都陥落は免れたが、何百何千という兵の命を失った。その重さを知らないわけではない。
 処罰は免れないという事は容易に考えられたし、それなりの覚悟もした。だが罪を着る事は怖くて、許しを乞うたら……こうなった。
 ウィンダスを率いる優しき神子のことだ、身を落すような重罪にはならないだろうと高を括っていたのだ。そもそも神子の命なしに、魔導団の団長を重刑にできるはずがない。ましてや処刑など、神子や元老院の議会を通さずに、大魔元帥だけの意向で行えるはずはないのだ。
 そう、甘い考えでいた自分を恨む事になるとは、出頭した時は思いもしなかっただろう。
 現にここに、自分は生きている。
 だが……。

「さて、カモロドミロ」

 ウィンダス魔導団員としての自分は、目の前の者に完全に殺された。

「食事を運んで来たのだが、食べられるかな?」

 黒魔道士として命と等しき利き腕を、切り落とされたのだ。魔道士は魔法を発動させるだけならば言葉があれば問題はない。だが印を組んで魔法を集中させコントロールできなければ、ただの無差別爆破と変わりはしないのだ。
 そう、利き腕を失った時点で、エリート魔道士としての道は、ウィンダス魔導団としての生は失われたに等しいのだ。
 あの時、処刑されると思ったほどの激痛は、命までは奪わなかった。奪われたのはそれ以外のほとんどであったのだ。

 魔力
 生活力
 身分と階級
 そして自由

 あまりにも一瞬で全てを無くしてしまい、身体の痛みは消えかかっているが、心の穴は消えそうにもない。腕を切ったロベルアクベルを心底憎いと思うし、自分に非があったとしても、全てを奪い去った彼を許す事はできない。
 だが今はそれよりも、喪失感の方が勝っていた。

「問題ない、一人で食べられる、いらぬ節介は無用だ」

 なけなしのプライドは、最後の抵抗だった。そうしないと、無くしたものが多過ぎて心が壊れてしまいそうだった。
 自分の姿が見つけられない。
 生きている自分
 生かされた自分
 否、生かされて生きている自分にそうやってでも価値を見つけなければ、折れてしまいそうだった。カモロミドロは鬱々とした気持ちで、低いタルタル用の椅子に腰掛けると、震える左手で木のスプーンを握った。

「理解しているとは思うが、ここでは魔法は効きにくい。故に魔法で傷を癒すことができん……しっかり食べて回復に専念せよ」

 静かに震える手で、スープを口に運ぶ姿を見ながら、ロベルアクベルはベッドに腰を下ろした。

「貴様が切って置きながら……ッ!」

 恨みを込めて睨みつけると、黒の包帯の隙間から見える目を細めて大魔元帥は笑った。

「ほう……なら、首を落せば良かったかな?」

 悪戯のような問い掛けだが、事実、彼はそれを容易く行うことができるのだ、今すぐにでも。
背中に冷たいものが流れた。

「……ふん、こうやって命を弄ばれるくらいなら!」

 そう言って、乱暴にスープを掬って口に突っ込んだ。真っ赤な嘘だ。ただの負けたくないという虚勢だ。死ぬのは……怖い。きっとその恐怖を、処刑される間際に彼に読まれた。そして、生かされたのだろう。
 二度と反逆できないように力を摘まれて。外で生きて行けないように……翼をもがれて。

「大魔元帥よ……我に何を求める?」

 もはや価値はないはずだ。生かしておく必要はあるのか。
 情け?温情?
 そんなものが、あるわけがない。大魔元帥ロベルアクベルの噂を知り、実を知っているのだから鼻で笑ってしまう。
 では何故?

「何とは?」

「はぐらかすな、我をこうやって生かしておく理由だ!」

 ガタンと音を立てて、椅子が倒れた。激しい怒りの瞳と涼しい金の瞳が交わって、一瞬音が消える。

「いずれ分かる。今は身を休めるがよい、いずれまた働いてもらおうぞ」

 彼はそう言うと、笑みを消さぬまま室を出た。






まさかのタルかぽーです。
過去ウィンクエで、まさかタル萌えに走るとか思ってなくて
タルは使ってる種族でもあるので不可侵領域だったのですが
まぁ、せっかく萌えたんだから
カモロドミロが処刑されてようが妄想のままに書いてやろうかと……思っただけだった。

で、こんなカオスになったというわけですね。

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