登場人物:フェブルナルド レオノアーヌ
CP傾向:レオフェブ
制作時期:2008年5月上旬
ここまで妄想だけで突き進むのかもどうかと……
という捏造っぷり。
フェブルナルドがやたら暴力的。
レオノアーヌはとにかく最低。
「くっ……ッ……」
人の立ち入らないテラスで、エルヴァーンの少年は一人、声を殺して涙を堪えていた。
そのテラスから見える、サンドリアを覆う空には、今にも降り出しそうな重い雲がかかり、心を慰めてくれたであろう星と彗星は陰っている。
泣いている少年、神殿騎士団長フェブルナルドは先日葬儀を終えた故人を思い出していた。あの方の優しさ、強さ、聡明さ、そして……偉大さ。今の自分では到底及ばない。
「……ムシャン様、私は……どうすれば…?」
呟いて、曇り空を見上げる。誰よりも尊敬していた、あの方の意思を継いだ。暗殺を恐れてか、重役を恐れてか、跡を継ぎたがらない者だらけの教会中で、ただ一人立候補した彼はあまりにも若く、皆の目が言っていた。
「「あんな若僧にあの大役が継げるはずがあるまい」」
ただ、陰口は生まれこそすれ、誰も反対はしなかった。落胆。絶望。呆れ。侮蔑。その様々な目に耐えて、痛くても辛くても、できることは何でもした。
その中で願ったのは、あの方の進めていた『神殿騎士団と王立騎士団との共同戦線』それだった。中核をなす前神殿騎士団長ムシャンが狂刃に倒れ、流れてしまいそうなその計画をどうしても繋ぎたかったのだ。
ただ上手くいかない。想像した以上にこの地位は重かった。
若さでできることもある。だが若さではどうしようもない事も知ったのだ。
このままでは、流れてしまう。それでは駄目なのだ。
この計画を進めると、自分も殺されるかもしれない。けれども、敬愛していた方の遺思がついえてしまうくらいならば、この身を切り刻んだ方がマシだ。
どうすればいい?
答えが見つからない。
泣いても何も変わらない。
分かっているのに、涙を止めようとしても止まらなくて、必死で声を殺して、全てをサリットの内に隠した。
「なんだテメェ、泣いてンのか?」
「ッ!!!!?」
不意に気配のなかった背後に、研ぎ澄まされた氷ような魔力を感じて、ほぼ反射的に青年は振り返った。
「…レオノ……アーヌ…殿」
あまり会いたくなかった相手だった。相手は何故か自分のことがお気に入りらしいのだが、思想が違い過ぎて、何かにつけ反目することが多い。
声は辛うじて振るえる事はなかったが、既に何故か泣いていることがバレているのだから……絶対に揶揄られる!そう、思わず身構えてしまう。
虚勢でいい、張らなくてはならない。
付け込まれてはいけない。
自分は神殿騎士団長として強くあらねばならない。
弱みを見せるなんて、以ての外だ。
だが
「泣くなよ…」
声から感情は読み取れなかったが、彼にとってその言葉は意外で、無感情であるはずなのに、不意に優しく聞こえてしまった。
「ぅ……レオノアーヌ殿……すみま…せんっ……!」
絞り出すように、そう告げる。
そうだ、泣いていても何も始まらないのだ。
気の弛みで弱気になっているだけなのだ。
しかし次に続いた言葉に彼は絶句した。
「鬱陶しい、泣くのはベッドの上だけにしておけ」
安心しかかっていた心に激情が灯る。こいつ……なんて事を!
「貴方……最っ低ですね!!!」
こんな奴に慰められかけたなんて、少しでも信じた自分馬鹿だった。無視してしまおうと早足で横を通り過ぎようとするも、腕を捕らわれて足が止まる。
「ヒャハハ、褒め言葉だな」
「放してください、貴方とお話することは何もありません」
ニヤニヤと笑みを浮かべる、鋭く整った顔を、サリットの中から射殺さんとせんばかりに睨み付ける。
その視線に気付いたのか、レオノアーヌはサリットを上げると、覗く目にキスをしようと顔を近付ける。
「……な!?」
咄嗟に目を瞑り、突き放そうとするも腕は解けず、焦りが生まれる。他人に……こんなところを見られたら……ただでさえ良い噂はないと言うのに。
「放し……やっ……め、ホーリー!!!!」
ほぼ反射的に唱えた光の魔法は、眩い閃光を放ち柱を生み出すと相手を包む。この程度で深手を負わせられるような相手ではない。
しかし、己の目も眩ませた光が消え、変わらず絶えぬ嫌味な笑みを浮かべる相手に、魔法がフルレジストされたことを知り、少年は奥歯を強くかんだ。癪に障る。
「フン、そんな弱っちい神聖魔法効かねぇよ」
「ッ!……」
そのまま易々と腕の中に納められると、耳に口許を寄せられて低く囁く声がする。
「おまえにはおまえのやり方があるし、これが全てではない……違うか?」
「え……?」
「今がだめなら次にすりゃいい。くよくよしてる時間がもったいねぇ。わかってんだろ?」
虚を突かれたところで、サリットをペシペシ叩かれる。これは……あやされている?
あのレオノアーヌ殿が、自分を……?
抱き込まれるついでに頭も固定されている為に、その表情は読み取れない。
「そう……ですね……」
「ならまだ折れるんじゃねぇ」
「そんなの、貴方に言われなくとも……」
「ハッ、上出来だ」
ああ、そうか。いつもの調子ってこんな感じか。
そうか、これでいいのか。
先程まで落ち込んでいた自分が嘘のように思えた。そうだ、弱気になってどうする。誰にも負けない強さを誓ったのだ。
「レオノアーヌ殿は……」
「あ?」
「時にとても強くてお優しい言葉を私にくださる……それは何故ですか?」
自分勝手で横暴で、正反対の嫌いなタイプの人間だが、反目しているのは自分だけで、案外悪い人ではないかもしれない。女神様も「見た目で疑うべからず」と唱えておられることを同時に思い出して問い掛けた。
「俺はな、俺の手でテメェが悩みもがき苦しむ姿を見ンのが好きなんだよ」
「はあ?」
「だからくだんねぇことでウジウジ悩むな、弄りがいがなくなる」
「……っっっ!!! く、くだらないって……!!! ほんっとうに貴方、最低ですね!!!」
「だーから、褒め言葉だっつってんだろ? 神殿騎士団長サマ」
やはりこの男、信用しないと決めた。だがその汚い笑みに、ほんの少しだけ、心の中で礼を告げた。
まとまってねーよ!むしろオチてねーよ!
と、いう感じですが一応まともに考えてみたレオフェブです。
ムシャン様の後見として神殿騎士団長になるフェブルナルドが上手くいかなくて悩みに悩む話。
ムシャン様はたぶん、かなり偉大な人だったんだと思います。
だってそうじゃないと、暗殺される意味が無い。
凡愚なら、敵は野放しにしてる方がやりやすいわけで
王立騎士と神殿騎士の共同作戦をどうしても止める必要があったために暗殺したんだと思います。
(ちょ、レオフェブに触れてない)
もっと極悪非道なレオノアーヌ×超潔癖エリート思考フェブルナルドでもよかったなぁ。
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