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信じた道を照らす光(皇国 ラズファード×リシュフィー)

登場人物:ラズファード リシュフィー アフマウ

CP傾向:宰相×リシュフィー

制作時期:2007年夏?

元拍手お礼文。
なんとも言いがたい日常?













 


「好きだ」

 たったその一言でいい。奴に言ってやらねばなるまい。

 

 

 

 アトルガン皇国の宰相、ラズファードは柄にも無く真剣に悩んでいた。それは、他の誰でもない、好意を寄せている不滅隊士リシュフィーの為だった。
 感情や想いを表すことがあまり得意ではない彼だが、彼は彼なりにリシュフィーの事を愛しているつもりでいた。体を繋げば、解ってくるだろうと思い込んでいた。
 だが、それはどうやら違ったようだ。
 昨晩、滅多に負の感情を表に出さなかった彼の表情が、去り際に切なげに……寂しく揺れていていた事を思い出す。リシュフィーは上下の関係上、何事にもとても従順だ。否という言葉は、彼の辞書にはないのかと思うくらい尽くす。それが当然だと思っていたラズファードだったが、昨晩の顔には心は揺らいだ。
 彼にそんな顔をさせたいわけではなかったのだ。「お慕いしております」と控えめに微笑む彼を、また手荒に扱ってしまった。その事に対し、怪訝な顔をするでもなく、不満を言うわけでもないが、ただ、傷心していることだけは感じ取れた。
 不安、なのだろう。
 そして不安を取り除く為の行動も、ラズファードは知っている。ただ伝えてやればいい。好きだということを。

 だが、ラズファードは肝心のその言葉が繰り出せないでいた。目の前でリシュフィーは朝の執務の為の書類を仕分けている。昨日の行為で体にだるさが残っているだろうに、それを微塵も感じさせない。
 そんな踏み出せない自分にイライラして机を指でカツカツ叩いていると、リシュフィーが顔を上げて不思議そうに問いかけてくる。

「ラズファード様、お疲れですか? 珈琲でもお煎れしましょうか」

 ふわりと零れる笑顔に胸が高鳴るのがわかる。疲れているのはお前だろうに……。いくら自分が上司とはいえ、そこまで気遣う必要も無い。

「いや、いらん。私には構うな」

「あ、はい。……失礼しました」

 言ってから、言葉を選び間違ったと気づく。表情からは汲み取りにくいが、明らかに意気消沈させてしまった素振りに、ラズファードは軽く唇を噛んだ。そんな事を言いたかったんじゃない。何故いつも傷つけて、その優しさに甘えてばかりなのか。
 否、だからこそ惚れているのも解っている。だからこそ、言えない自分が忌々しい。
 逃げるな俺、ただ一言言うだけではないか。国の宰相たる俺が、こんなところで怖気付いてどうするのだ!
 ラズファードは筆を握る力を強めると、意を決して口を開いた。

「リシュフィーッ!!!」

「は、はいっ!申し訳ありません、何でしょうかラズファード様!」

 威勢良く名を呼ばれて、リシュフィーはびくりと肩を揺らし、再び手を止める。叱責を受けると思っているのだろうか、驚きが混じるその瞳は少し不安に揺れている。
 少し怖がらせてしまったが、これで言うことができる。一瞬だけ間を置いて、その瞳を真っ直ぐに見据える。ここで退くことはできない、ラズファードはただ一言だけ、言葉を口にした。


「好きだ」


 ぽかん、と口を開けて驚いているリシュフィーを見て、口元で少しだけ笑いかけてやる。
 少し間は悪かったかもしれないが、青魔道士にあるまじき感受性の豊かな彼のことだ、確実に想いは伝わっているだろう。
 しかし、いきなりの告白に動揺したリシュフィーの口から「え?」と言葉が漏れると同時に……

「マウもーーーーーーーー!!!」

 部屋に明るい少女の声が響いた。どこから現れたのか、一瞬でリシュフィーの首に抱きつくと、そこを支点にぴょこんと跳ねて空中でV字型に体を折り曲げる。強制的に横抱きしろということなのだろう。心の中で「落としてしまえ」と思うが、優しいリシュフィーは慌てながらもちゃんと抱え上げている。

「アフマウさまっ!!?」

「おはようリシュフィー! おはよう兄様!」

「あ、おはようございます」

 何故リシュフィーが最初で私が後なのだと、密やかにツッコミながらも馴れ馴れしく擦り寄るアフマウを睨んで叱る。

「アフマウッ!!! 今は執務中だ、特に用がないなら後にしろ」

「えー、そうは見えなかったんだけど」

「どうせ今起きたばかりで朝食もまだなのだろう」

 遠くからアフマウを追いかけてきているアヴゼン達の声か聞こえる。ただでさえ三人――一人と二体――揃うとやかましいのに、これ以上騒がれたくはない。そもそも、せっかくいい雰囲気だったというのに……。さっさと食べて来い、出て行け、と顎で外を指すと、アフマウは面白く無さそうに脹れる。

「ちぇー。あ、でもお昼から街にお買い物に行きたいから、それまでにお仕事終わらせてね兄様」

 アフマウは、リシュフィーの腕からぴょこんと降りると返事も聞かずに出て行ってしまった。暗にリシュフィーを護衛に貸せということなのだろう。
 確かに彼は昼からは宰相としての俺の補佐でなく、不滅隊士としての任務に付くことが多い。勿論、聖皇であるアフマウの護衛は手を抜くことができない、最重要の任だ。しかも護衛役が変わると駄々をこねたり、変わった護衛役を撒いてしまったりするという、難儀なもので今ではすっかりリシュフィーは専属護衛になってしまっている。
 本当は違うのだ、本当は!本当は俺の補佐兼護衛の直属不滅隊士だ!心で叫ぶも誰にも聞こえることはない。



 難が去り、いつの間にか席を立っていた俺は溜息をつきながら、再び椅子に腰掛ける。リシュフィーはぺこりと会釈してアフマウを見送ると、にこにこと笑って話しかけてきた。

「アフマウ様は今日も元気でいらっしゃいますね」

「ああ、うるさいくらいにな」

 せっかくの雰囲気が台無しだ、意を決して口に出したのにアフマウのおかげですっかり無かったことになっている。全く腹立たしい。そもそもやはり慣れないようなセリフを口にしたことが間違いだったのだ。
 再度、書き掛けだった書類に目を落とし、羽ペンの先を軽く黒インクにつける。文字を綴り出したその時、頭上から声が聞こえた。

「あの、ラズファード様。先ほどの言葉、嬉しかったです」

 どうやら、流れたと思っていた言葉は、無事に届いていたらしい。

「まさか、宰相閣下の口からそんな言葉が聞けるとは思っていなかったので驚きましたが」

 ふふりとリシュフィーが微笑みを零す。それはもう、青魔道士とは思えんばかりの嬉しそうな笑みだ。
 こんな笑みが見れると言うのであれば、多少言い辛い言葉を紡ぐのも悪くは無い。

「ああ」

「でも、ラズファード様、無理なされておられたでしょう? とても言い難そうにしておられましたし、渋い顔なされてましたし」

「無理などしておらん」

「そうですか?」

 本当は、あんな言葉を言うのは得意ではないのだ、性分じゃない。
 だが、大切な者が暗い顔をしているなら、それくらいはしたい。

「嬉しいですけど、無理はなさらないでくださいね。僕、よく不安そうにしてるかもしれませんが、宰相閣下ができる限り大切にして下さってるということは解っているつもりなんです。ただ、あまりにも身に余る光栄すぎて……その……時々、忘れるというか……その、閣下のお心を……」

 つまりは、主従を考えすぎて不安を抱くと言うことか。言葉を無くして俯いてしまったリシュフィーの腕を取って軽く引くと、青い影がふわりと近づく。

「あの、でもお慕いしておりますのは本当です、どうかそれだけは忘れないで下さい」

「解っている」

 そして忘れるはずもない。言葉も必要だが、拭い去れない不安の前では大して役には立たないらしい。
 しかし、リシュフィーに対して多言は無用でもあるらしい。会話をしないわけではない、ただ少しでいい。少しの会話で汲み取り、感じ取り、そして満たされる。他の青魔道士にくらべ、人一倍心が優しく、気配りができるリシュフィーだからこそ、それで十分なのだ。

「私はお前の物にはなれないが、お前は私の物だ。滅びるまで、傍にあれ。悪いようには絶対にしない」

 自分にしてみれば、最高の殺し文句ではないだろうか?
 ただ、『はい』と微笑んで頷くリシュフィーが愛しくて、ラズファードはその指先に、静かに口付けを落とした。










 

そんなわけでやたら甘い元拍手お礼の宰相×リシュフィーでした。

書いといてなんですが、「愛してる」だとか「好き」だとか言うのは好きじゃないんですよね私。
なんか言葉に出してしまうといきなり安っぽく思いませんか?
(あくまでも作品での話であってリアルでは違いますよw)
特にCP小説で言うとなんか勿体無い気がしてですね……。
好きだと口でいうくらいならいくらでも言える気がして……ああ、閣下言えてないですが!
こう、好きっていう感情はもっと曲がってるものだと思うんで(ぇ?)

いや、やっちゃったんで、好きじゃないとかいっても今更なんですがね!(ぉぃ)

拍手なのでたまにはいいかと思って……。すみません。
あくまでオマケだったんで許してくださいorz
たまにはラブラブでもいいじゃないですか。

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