登場人物:ジェイド ディスト
CP傾向:J×D
制作時期:2006年
放置してあったgdgd文。
暗いシリアス。
※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
それでもいいよ!という方のみお読み下さい。
薄暗い地下牢、外界との接触を絶たれたこの空間は入るだけでも気が滅入りそうだった。
監守のために掃除は行われてはいるが、この独特の圧迫感だけはぬぐいされないようで、ジェイドはあまり足を運んでいなかった。
自分も軍人としての仕事は山のようにあるし、時間を割くのが惜しかった。それでも何度か時間を割いてやったのだからありがたく思え、などと心の中でごちて暗く湿った階段を降りていく。
「ディストに話がありますので、通らせて頂きますね。」
「ハッ!!」
「話が終ったら声をかけますから、外で待機していてもらえますか?」
「は、しかし……」
「ピオニー陛下に会ってこいと命令されてしまいましてね。大丈夫ですよ、陛下みたいに牢の中には入りませんから」
「分かりました、お気をつけて」
小さく愛想の張り付いた微笑を浮かべると、監守の兵士は敬礼して去っていった。
「ディスト! 来て上げましたよ!」
カツカツと靴音を立てて牢屋まで来ると、囚人の彼は驚いた様子でぽかんとしていた。
「ジェイ…ド……何故ここに?」
どうやら食事中だったらしく、シチューを掬い上げたままの手が止まっている。
「このような時間に夕食ですか?」
「ぇ、ああ。失礼……貴方がここに来るのは三日後と予測しておりましたので」
既に夕食の時間などとっくに終わっているはずなのだが……?
しかし、ジェイドはその疑問を押し退けて話を切り出した。
「まぁ、いいでしょう。で? 私を呼んだ理由を聞かせて頂きましょうか」
「はぁ?……ああ、ピオニーですね」
「ええ、陛下から直々に会いに行くように言われましてね。激しく面倒で嫌でしたが来てあげましたよ」
嫌と言葉にとげとげしい音が含まれていたが、ディストはむくれただけで反抗はしなかった。
とっくに冷めているであろう、シチューの容器をトレイに返しながら、気だるげに話す。
「それはどうも、貴方に頼るのは癪だったんですけどね……」
「なら帰りますか」
ここぞとばかりにジェイドが背を向ける。
「って、えええぇっ!!待って下さいよ!!」
貴方にしか聞けない事なんです!そう、痛みの含んだかすれ声で言われて、ジェイドは歩を止めた。
「くだらない事だったら半殺しですからね?」
揶揄りながら、ちらりと当人を見やると、珍しく真摯にこちらを見つめる紫水晶の瞳とぶつかった。
「六神将の……死に様と、その過程を教えて下さい」
「……知ってどうするのです?」
「やはり理由が必要ですか?」
「質問を質問で返すなと、前に言ったはずですけど」
ぴしゃりと言うと、ディストは少しだけ言い詰まり、やがて力を抜いたように溜息をつく。
「知りたいからですよ。それでは理由になりませんか? ただ死亡したと聞いても実感が沸かないのです」
「おや、裏切っておきながら戦友気取りですか?」
「きいいぃ! うるさいですよ!! ……裏切ったのは目的が違ったからですよ!」
実際、ディストが信託の盾に入隊したのは、ヴァンが『目的が違っていても構わないから力を貸せ』と勧誘したのであって、利害が一致しなくなったその時、自発的に裏切る事になるのは暗黙の了解だった。
「もういいですよ。それ以上は聞きたくありません。どうでもいいですから」
「んなっ! 相変わらず勝手な人ですね!」
「煩いですね、聞くんですか?それとも、やめるんですか?」
「うぅ……分かりましたよ。……ジェイド、お願いします」
ディストは手短なメモ帳とペンを取り出すと、驚くほど素直に、その頭を下げた。
「黒獅子ラルゴ、ヴァンの行く末を信じ我々の前に立ち塞がり、アブソーブゲートにてナタリア王女の矢により絶命」
淡々と語るジェイドの声音が静まり還る地下牢に響いていた。その中で小さく、カリカリとペンの走る音が混ざる。
「貴方達は彼と王女の関係は知っていたのですか?」
一文を記し終ったのか、手を止めて……だが顔は上げずに問われた。
「ええ、王女本人も知った上です」
「皮肉ですね。知らなくても良かった事でしょうに」
隠す必要もないことなので素直に話した。
「アリエッタ……の死亡は知っているのでしたね」
「はい、アニスに負けたのでしたね。……ラルゴからききました」
「では次ですね。リグレット……エルドラントにて我々を襲撃し、返り打ちとなり死亡」
「彼女は最期までヴァンに付き従ったのですか?」
「ええ」
「変わりませんね。最後まで年上ぶって……小言ばかり言われましたよ」
悪態をつくその言葉はひどく優しく、そして切なく闇に溶けていった。
「烈風シンク。同じくエルドラントにて我々と戦闘になり死亡……。ディスト、彼を生み出したのはお前ですか?」
「ええ、教育を施したのも私です。彼は私に対して何か言っていませんでしたか?」
「……? いいえ、何も。ただ世界に、生まれた事に絶望して死んでいきましたね」
「恨むなら、私を恨みなさいと、言っておいたのですがね」
さらさらと紙に綴りながら「次、お願いします」と小さな声で催促された。
「では、アッシュですね。エルドラントにてルークに先を往かせて、教団兵に討ち取られました」
「大爆発ではないのですね?」
「そう言ったでしょう? 彼は戦士でした。戦いの中で死ねたことは彼として誇り……だったと、思いますよ」
「そうだといいのですがね……あの子は、優しい子でしたから……」
「ところで、ディスト」
「あ」
少し待ってください、と手で静止され、ジェイドは止まる。懸命にメモを取る、白い横顔は暗い部屋の中で青くも見えて……ジェイドは目を怪訝に細めた。見るからに痩せ細った手や腕、元から折れそうな繊細な線を持つくせにやたら体は頑丈だったので、手荒に扱っていたことを思い出す。今だと簡単に折れてしまいそうだった。
「ヴァンの事は一応、ピオニーから聞きました」
「そうですか、ピオニーに話したのは私ですから、聞く必要もありませんかね」
「ええ、大丈夫です。……これで、全員分、まとまりました」
バラけていたらしいメモを紙の束から引っこ抜いてきて、ディストが満足そうに束ねる。
「聞いてまとめて、どうするつもりなんですか?罪人の伝記でも作る気なんですか?」
揶揄るような罵りの言葉に、彼は目を閉じて答えた。
「遺書に書いておこうと、思いましてね。隠滅したければ、私の死後に燃やしてください。でも、できれば残しておいて欲しいですが」
「……遺書?」
「貴方達から見れば罪人ですが、私達は『世界に利用され、はじかれた者』同士の、仲間だったんですよ。そんな存在もあったのだと、後世に遺しておきたい……それだけです」
「ちょっと待ってくださいッ!!!」
「え? はい」
「遺書とは……どういうことですか?罪人に勝手な死を許すほど、マルクトは甘くないはずですよ」
「別に、死にたくて死ぬわけじゃないんですけどね」
ディストがちらりと退けたシチューのトレイを見やる。手をつけているとは思っていたが、その量は全く減ってはいなかった。
まさか―――!!! はっとなって、ディストに視線を戻すと彼は悲しげに微笑んでいた。
「食べ物が、食べられなくなりました」
「――ッ!!! いつからですか!?」
「だいぶ前ですよ」
何故もっと早く気づかなかったのだ!
否、報告書には彼の食事量が減っているということは書いてあったはずだ。
ピオニーだって、よく足を運んでいるから状況は分かったはず……何故!?
「何となく、自分の最期もわかるんですよ」
「ピオニーは何と?」
「私から延命治療はもういいといいました。諦めていますから」
そういって、笑みを深くする。彼の笑顔を見るなんて、何時ぶりだろう。
しかもこんな状況で見るなんて……眩暈がしそうだった。
「遺書、どうか燃やさずに……頼みますね、最期のお願いですから」
それくらい、聞いてくださいよ。
gdgdですみません。ゴミ同然の扱いで未完成放置プレイしてあったんですが拾ってみました。おかげでgdgdです。
この話は、タイトルまんまですがー……
世界から誹りを受けながらも、六神将は同志だったんだよって話です。
存在が語り継がれない彼らを、自分が死ぬ前にディストは後世に残したかったんです。
って話なので暗いですね!
ジェイドはディストを失うと分かって、初めて好きだったことに気づく……というのが好きみたいなのでそういうの多いですねー。
[1回]
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