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何処を探したってきっと、綺麗な水なんかない(皇国 ラズファード×リシュフィー)

登場人物:ラズファード リシュフィー

CP傾向:宰相×リシュフィーにいずれなるかもしれない

制作時期:2007年3月中旬

書いた順番では宰相×リシュフィーの二作目。
二人の出会い編、宰相一人称。短文。






 ああ、こいつは駄目だ。


 それが、奴を初めて見たときの第一感想だった。





何処を探したってきっと、綺麗な水なんかない










「今日を持って不滅隊に配属になりました、リシュフィーです」

 そういって、畏まって膝をついたのは、まだ年端もいかなさそうな少年だった。細い腕に、細身の体。紛れも無く、不滅隊特有の青魔道士の装束を身に纏ってはいるが、他の不滅隊からは感じられるような、底の見えぬような強さを微塵も感じさせない。

「面を上げろ」

 不滅隊は……否、青魔道士は顔を隠す。それは私情を一切持ち込ませない、私情を挟まないという、不滅隊の方針に基づく装束であるからだ。
 遵って、顔を上げても、顔の造形はわからない。
 だが、目は見える。それだけでいい、そこさえ見れば、ある程度は推し量れるのだ。緊張しているのか、ゆっくりと上げられた彼の面、そこには、純粋な蒼色の綺麗な瞳が輝いていた。


 ああ、こいつは駄目だ。


 そう、思った。これは、不滅隊にしてみれば、目が綺麗すぎる。
 青魔道士が不滅隊になる頃には、大抵の者の目は、濁る。それは魔物の血肉を、体内に持つ証。そして、世の、決して綺麗とはいえない真理を垣間見た証。
 世の中は、特にこのアトルガンは、決して綺麗な世界ではない。一人前の不滅隊になるころには、この国の汚さを知る。その手足になること、それこそが生きる道なのだと、体……否、魂に刻み込まれる。
 だから、こんな綺麗な目をした不滅隊は、とても少ない。居たとしても、弱い。使い物にならない上に、早く死ぬ。
 ゆえに、こいつは駄目だ。直感でそう思ったのだ。

「…………」

 せめて顔だけは覚えていてやろうと、射すような視線で、嘗め回すように彼を見る。その視線くらいは感じるのか、彼は顔を伏せて身を低くすると、許してもいないのに口を開いた。

「今日から三日間、臨時ではありますがお世話をさせて頂きます。配属されたばかりの身、至らぬ点ばかりかと思いますが、何卒ご指導下さい」

 見掛けにしては、少し高めの青年の声が部屋に響く。声からも、本来不滅隊が併せ持つ、隠された強さは感じなかった。

 つい先日のことだ、側近を務めていた不滅隊員を東部戦線へ送ったのは。彼は側近として能力は申し分なかった、逆に仕事を持て余していたくらいではないだろうか。戦闘能力が高かった為、戦力不足の上に、配属されていた不滅隊が負傷したと喘ぐ東部戦線へ彼を派遣することに決めた。
 新たな側近を見繕うのに最低三日はかかると言われたが、とりあえず不滅隊の報告と身辺の世話をさせるために、一人でいいから寄越せと、そうラウバーンに言ったのだが。

「……ふん、ラウバーンの奴、こんな使えなさそうな新米を寄越すとは……余程人材が不足しているらしいな」

 わざと聞こえるように、強い口調で呟く。
 しかし、そこは腐っても不滅隊というべきか、顔を伏せたまま微動だにもせず、口は強く結ばれたままだ。

「まぁいい。……私の事は知っているな?」

「当然でございます、ラズファード様」

「ならば付いて来い、やるべき仕事を教える」

「は、ありがとうございます」

「……いいか? 一度しか言うつもりは無い、一度で覚えろ。いいな」

「はっ」

 それくらい出来なければ、三日限定の側近など務まらない。笑ってはいないが、期待に輝かせている彼の瞳を見て、自分の心にドス黒い感情が表れるのが解る。この感情は、汚いものを知らない純粋な者への、妬みなのだろうか。世の中は、そんなに綺麗ではない。希望で満ち溢れているなど、あるはずがない。欲しいものは渇望し、貪欲なまでに求めなければ手に入らない。
 それこそが勝利者に必要なものだ。それこそがこのアトルガンで生きていくために必要な力だ。
 こんな、何も知らない目……。そう、汚したくなる。壊したくなる。




 短い時間であれ側近が務まらなければ、即刻前線の監視哨にでも送ってやろうと思った。そこで地獄を見てこれば、もっと使える顔になるかもしれない。ああ、もっと死んだ目になればいい。
 そんな事を考えながらも、表には一切出さず、無言のまま執務室へ誘った。




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あると思っていたのになかったので、悔しいので書いてみた
ラズファード×リシュフィーの出会い話。

これを書いたあたりは、皇国に来た順番が全くわかっておらず
後に矛盾が出そうになって焦りました。
一作目あたりも手直ししないと世に出せません……

何よりも問題なのが、宰相とリシュフィーが出会ったときは
まだマウではなく、前皇帝がいる時間軸なんですよね。
困った。

ちなみに三日コースで話考えてますが、続くかは謎。

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