登場人物:ガダラル
CP傾向:特にナシのはず
制作時期:2006年8月
かなりの勢いで過去捏造。
炎蛇将になりたてあたりの苦いお話。
血もでてるし人も死んでます、ダメな方ご注意下さい!
灼熱の太陽光が照り付けるアルザビで、今日も爆音が鳴り響く。
朝早くからマムージャの奇襲を受けたアトルガンでは、激しい防戦が起こっていた。
傭兵を募り出したものの、まだその数は楽に防衛できるほどに達しておらず、いきなりの
戦いで、民が乱れ逃げる中、至るところで激戦が繰り広げられていた。
「そこの遊撃兵、下がれッ!邪魔だ!!」
そんな中、先日炎蛇将に昇進した男の姿があった。
名はガダラル。
弱冠二十歳で、東方戦線にて羅刹の二つ名で恐れられた黒魔道士だ。
人民街区の近くを担う彼は、その両手で扱う両手棍で敵を振り払うと
隙を見計らい古代魔法の咏唱を始める。
「大気に潜む無尽の水、光を天に還し形なす静寂を現せ!……死ね、蛮族共ッ!フリーズ!!!」
耳をつんざく氷のはぜ割れる音が、マムージャの断末魔に書き消され、青空に響き渡り。
やがて喧騒の世界に再び戻る。
精霊の力が抑制されるアルザビ構内の中、何度敵をほふっただろうか、
じわじわと魔力は限界に近付きつつあり、肩で荒く息をする。
汗がこめかみを流れ、深紅の鎧の上にポタリと溢れ落ちた。
大きな怪我はなかった、ひっかき傷のようなかすり傷がヒリヒリと痛んだ。
「ちっくしょッ……まだいやがる!」
「ガダラル様!人民区で一度おやすみ下さい!」
将兵である自分もそうだが、有志の兵や少ない皇国兵も体力の限界は目に見えてわかる。
民の避難も完了しつつあるが、まだ幾人姿が見当たらないと、閉じられた砦の向こうか
ら、子供の名を呼ぶ母親の声や家族を探す嘆きが聞こえた。
他の五蛇将達の担当区の状況は全くわからず、まさに最悪だった。
「うるさい!蛮族共を目の前にして、この俺に撤退の文字はない!」
刀を振りかざし迫ってきたマムージャを棍で受け止め、ガダラルが叫ぶ。
「しかし、もう持ちませんッ!!」
「では、負傷者を優先して兵も人民区へ撤退しろ!戦う意思が残ってない奴もだ!
ここは俺が止めるッ」
すかさず次の咏唱に入り、威力を高める為に意識の集中を開始する。
暫く唖然としていた副将も、すぐに我を取り戻すと、敬礼して頷いた。
「わ、わかりやした!将軍、御武運を!」
「ああ、早く……しろッ!」
呟くような呪を紡ぐ声は、やがて魔力の渦となり、爆風はマムージャの一団を飲み込んだ。
負傷兵や民間人の避難も大方終わっただろうか、周囲で戦う兵も順々に後退させながら、
ガダラルも少しずつ後ろに下がる。
このままではまともに戦えない、逃げることになるが一度態勢を立て直さなくてはならない。
もう少しで、撤退は完了し、防衛門を閉ざすことができる。
さすれば態勢を整えて、反撃することもできるだろう。
しかし、撤退が完了する直前に、彼等は現れた。
血み泥に全身を染めたアトルガンの兵士と、それに守られるように抱えられた、幼い少年。
背後から数匹のプーク達がその兵に迫り、新たな獲物に気づいたマムージャ達が一斉に牙を剥く。
「な、まだ生存者が……ッ!?」
「ガダラル様、無理です!もう門を閉めないと間に合いません!」
避難を完全に終えたらしく、副将が門の奥から声を上げる。
だが、彼はとっさに走り出していた。
「ガダラル様、なりませんっ!!!お戻りを……ッ!!!!」
魔力なんてとっくにない。
傷つき、疲労に酷く振るえる腕は使い物にもならない。
限界を越えて動かす足は、本当に走れているのか解らない。
頭には激しい己の鼓動だけが鳴って、世界は無音だった。
ただ、助けたいと願うだけの心に支配されて、泉を発動させた。
「や、っめろおぉぉぉ!!!!!!!」
マムージャの長槍が、兵士の胸に突きたてる瞬間が鮮やかに見えた。
あまりにもの恐怖でショック受けていた少年の顔が、更にこわばり声にならないひきつった悲鳴をあげた。
プークがなだれ込み、マムージャが取り囲むのが目に写る。
「聞けぇッ精霊よ!今一度俺に、力を……天空を満たす光、一条に集いて…」
あの子供から、敵の注意を向けなければ、間に合え……間に合え!!!
がむしゃらに呪文を唱えて、祈り続けた。
「神の裁きとなれ!サンダガ!!!」
閃光が天を貫き、視界を奪う。
落雷の轟音が鼓膜を震わせ、帯電している気が頬をなぶり、よろめきそうになるほどの突風が渦巻く。
固くつむっていた目を、そろりと開ける。
その視界に写ったのは、黒く焦げた、モンクのマムージャと
それに首を絞められた、少年の姿だった。
雨雲を生み出すほどの激しい雷に打たれたプークやマムージャは即死で、
そうでない者ももはや虫の息だ。
だが、遅かった。
少年の体には、既に力が入って……いない。
「ちっ……くしょ…」
自分を射抜くように見てくる、蕃族共の視線は畏怖と憎悪に塗れて、ただその焼け跡と一人の男に注がれる。
ガダラルは敵の存在も忘れ、力無く倒れる亡骸に足をもつれさせながらも近寄ると
崩れ落ちるようにその小さな体を掻き抱いた。
「畜生、畜生……くしょ……ぉ……」
遠くで、敵の撤退の雄叫びが聞こえる。
兵士のや民衆の勝利の歓声が、空に響く。
ガダラルは、ただ、声を殺してむせび泣くと、急激に疲労を感じて、その場に崩れ落ちた。
いつからだろう、この国の盾になりたいと思うようになったのは。
自分に魔力の才能があると聞いたときには、何かになってこの国を守ろうと心に誓っていた。
潜在能力と魔力だけで、魔法論の把握には時間がかかった。
ただ、努力した。
できることは全て。
強くなる
守りたいのは、国、街、民、人……。
そこには、人種や階級差もなく、ただ戦うために蛮族達を強く憎んだ。
血も、敵も、恨みも、戦場も怖くはないのに、アトルガンの民が傷付くのが怖かった。
だから、多くを投げ捨てて戦って来たと言うのに……
また
目の前で
大切なものを……。
俺は、そんなにも無力……なのか?
伸ばしたその腕に掴めなかったもの
あの子は永遠の夏の陽炎
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初、FF11モノです!!!尻切れトンボですねー!
実はここで終わりでなく、続きがあったんですよ(心の中では)
まぁ、面倒だしこれでいいやと(まてまてまて)
ガダラルがまだ両手棍とか使ってますよおくさん。
五蛇将なりたてーくらいの勝手に妄想捏造設定です。
配置も競売ではないです。
ガダラルがむやみやたらに範囲魔法を使うのは
PCには見えない人民を護るためだとカコイイな!とか思って書き始めたのに……
いつのまにか80度くらい脱線してます。
同じ「FF11でプロマMお題」使うのもあれかなーっと思って
自分で編集してた「バクホンの好きな歌詞でお題」からタイトル抜粋。
バックホーンの「上海狂騒曲」からです。
誰か文才ください……いや、本気まぢで。
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