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半分(赤也×幸村)

登場人物:幸村 赤也

CP傾向:赤幸

制作時期:2007年11月


「愛してる?」10のお題。その7。
また食べ物ネタですかそうですか。

※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
 本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
 それでもいいよ!という方のみお読み下さい。













ああ、やばい。
そろそろ本気で目眩がしてきた。
きゅう、と腹の音が聞こえる部室で、切原赤也は虚ろな目で天井を見ていた。

「今日は幸村部長と一緒に帰るっス!だから誰とも帰らないでくださいね!」

という赤也のわがままを快く受け入れた幸村は、文字通り誰とも帰る約束はしなかったが、部誌との面会だけは避けられなかったようで、赤也を待たせて睨めっこすることになった。
そんな幸村を待つ、空腹に気力を奪われた赤也は、普段の明るさなど微塵も感じさせずに、かれこれ20分ほど椅子で死んでいた。
時たま、ぐーやらきゅるるやらと腹の虫が鳴く。
今更恥ずかしくもないが、その音はシャープペンが紙を走る音だけを残して、静かな部室によく響いた。









「あ」

「?」

 何度目かの腹の虫が盛大に鳴ったその時、不意に幸村が声を上げた。
破られた静寂に、赤也が不思議そうに顔を上げると、こちらを向いている幸村と目が合う。

「お昼の残りのジャムパンがあるかも……。ちょっと待ってろよ」

そういうと足早に席を立ってロッカーを開ける。
お世辞にも綺麗とは言い難いが、赤也や丸井のロッカーよりかは整頓されている――半分以上は柳の手助けである――。
その中からガサゴソと取り出された一個のパンは、端の方が見事に潰れていた。

「あー……みてくれはあれだけど、味には支障ないし、赤也食べるだろ?」

パンのビニール袋の口を開きながら幸村は戻ると、椅子を引き摺って赤也の隣につけた。

「まじっスか!?もうお腹空いて死にそっす」

天の恵みとばかりに目を輝かせる赤也に、幸村は苦笑を浮かべるとパンを取り出しながら

「じゃあ半分個な」

と頷いた。

「俺もお腹空いちゃってさ」

「やっぱこの時間お腹空くっすよね、今日に限って丸井先輩のロッカーにお菓子入ってないんですもん」

「丸井のお菓子パクってるのか?見つかったら殺されるぞ?」

「平気っすよ、だって俺もよく補充してますし」

「そうなのか、よっと」

喋りながら幸村がパンを勢いよく割る。
だが…

「「あ」」

パンは見事に真っ二つ……








にはならなかった。

9:1と言える、その天才的なまでに大きさの違うパンに二人は一瞬言葉を失ったが、幸村はあははと笑うと小さい

パンを持つ手を赤也に突き出した。

「えぇええぇ!?」

「何だよ赤也」

「そんな殺生っすよ部長!」

赤也がまるで捨てられた子犬のような目で抗議すると、幸村は初めてぱちくりと目をしばたかせた。

「確かに貰う身分っすけど、それはあんまりっすよ~」

「赤也、俺がそんなことすると思ってるのか?」

「へ……?」

幸村には白米弁当の前科があるものだから――あれは素だが――赤也はてっきり1割の方しか貰えないのだと思っていたのだが……。

「更に半分に割るから、先にこっち食べろって言ってるんだよ」

「ぶちょ……っ」

流石にそれは、今の動作では計り知れない。
のだが、赤也はただその言葉に感動していた。

しかももしかしてこれって「あーん」というやつでは!?

「部長!お先にいただきまっス!!!」

「どうぞ」

感激と感動のあまり、ここぞとばかりに
かぶりついたそのパンごとさりげなくその指を舐めたりなんかした赤也だった。







何このバカップル。
そんなつもりはなかったのに!
てか、赤也に幸村の指を舐めさせるつもりだった、それだけだった!
相変わらずオチが甘いのはいつものことだから気にしない。

ところで、これの本当のタイトルは『半分=9:1』です。
幸村というか、王子あたりとか本気で9:1に割ってしまいそうじゃないですか?

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