登場人物:アッシュ ディスト
CP傾向:アシュディス
制作時期:2006年初夏
何をトチ狂ったのかアッシュ×ディスト。
ED後200%捏造してあるお話。
ディスト、アッシュ共にしょっぱなから別人注意報!
水上帝都グランコクマ。その、構内を静かに走り行く影がある。
あたりは暗く、星が散りばめられた空と、ぼんやりと輝く十三夜月がその者を、照らし出していた。
薄暗い中でも、燃えるような赤色の髪は、風に揺れ踊り、やがてそれは皇居に繋がる軍部へと消えた。
今日は、寒い。そう思いながら、男は牢の鉄格子窓を見上げた。何もすることがない生活で、一日にこの窓を見上げる回数は多い。しかし、そこから見えるのは空でも海でも、兵士の足元でもなく……何も映さぬ滝だった。朝か、夜か、晴れか、雨か、嵐か、その程度はわかるが、そこから得る情報はあまりにも少ない。
今日は比較的、晴れで、冬の近付くこのグランコクマでは、一昨日から急激に気温が下がったということ。男は、その程度しか状況を知らなかった。
自分がここに収監されてどれほどの月日がたったのだろうか。
肩にかかる程度であった白銀の髪も、今では背中に流れるほどに長く、埃っぽくも鈍く輝いている。
己を捕まえた幼馴染みは、一度フォミクリーの話をしに来て以来、見ていない。
たまに来ていた、幼馴染みでもあるこの国の皇帝は、罪を軽くするかわりに軍属の研究に携わることを頑なに拒むと、諦めたかのように姿を見せなくなった。
ならば、早く処刑してしまえばいいものを。
全ての自由を奪われた今、これ以上生きる意味を見い出せなかった男は、自らの命を絶つことさえできずに、やがて来るであろう死を待つばかりであった。
死ぬのは単純に怖い。
だが、それよりもこれまで自分が培ってきたものが、意味もなく切り捨てられるてしまう、そんな未来を選び取る方がもっと怖かった。
恐ろしいほどの静寂が闇を支配する。ここは出入り口以外、完全なる密室にちかい。鉄格子の窓など、もし手が届いたとしても鼠くらいしか通り抜けられないほどの幅で、抜けたとしても滝下の海水に包まれているのだと聞いた。
それ故に、夜は無駄な警備をすることはなく、極少数だった。
時たま他の牢に入ってくる囚人もいたが、数日で何らかの形でここを去るのだから誰もいない、この場所は滝の流れ落ちる轟音しか聞こえなかった。
男は、薄い毛布を体にくるめて、目を閉じる。小さな溜め息が白く浮かんで消える。静寂の中、男は何を考えることなく、唯一の自由の世界へと意識を沈めていった。
靴音を聞いて、男は目覚めた。
いつもと違う、食事を運んだり、身の世話をする兵士のものではない。早足なのは一緒だが、どこか焦りを含んだような、そんな早さだった。
その音は徐々に大きくなり、やがて近くで止まる。相手はこの真闇に近い中で、夜目が利くのだろうか。足音は真っ直ぐとこちらに向かい、そして牢の前で止まった。後一歩、前に出てこないと、相手の顔は暗くて見えない。
「どなたですか?」
顔だけ向けて、その姿を確認しようと凝視する。久々に紡ぎだした声は、どうやら言葉の発し方を忘れているらしく、掠れて力なく闇に消えた。
「やはりここだったか」
「その声は……!!」
信じられないというように、ふらりと立ち上がる。彼はビッグバン現象が起こる前に死んだと聞いた。それはもう、何年も前のこと。好きだったかの人と、最後にした会話で、紡ぎだした言葉の……
「ぁ……アッ……!」
しかし、名前を呼ぼうとして止まった。
一歩踏み出し、淡い月の光に映るその姿は……ルーク・フォン・ファブレ。そう、思ったからだ。
「……ルー……ク?」
アッシュとルークの顔は同じだ。いでたちも。
だが、生み親として若干の違いは雰囲気でわかるつもりだった。
目元、表情、そして喋り方と性格。これはルークのはずだ。
「私を笑いに来たのですか?」
「わざわざそんな事をする為に、こんな所まで忍び込んでくるものか! 牢獄生活で脳みそまで屑になったのか?」
「え、あなた……アッシュ?」
そうだ、ビッグバン現象が正しく起きるならば、アッシュである可能性が高いのだ。
しかし、限りなくルークに見えるアッシュは「そうだ」と短く頷くと、懐から鍵を取り出し
すばやく牢の鍵を開けた。
「あなた……これは、どういうことですか?」
簡単に開いてしまった世界に、怯えるように躊躇う。どうして?何故?
今更、戻ってきたアッシュが、わざわざ忍び込んで自分を連れ出しにくる必要がある?
だが、怯んでいる囚人の腕をアッシュは引き寄せるように掴むと、その翠色の激しい瞳で顔を鋭く睨みつけた。
「うるさい、詳しい事は後だ。来るか気はあるのか? ないのか? ディスト」
わからない。全く何もわからないが……まだ、自分の偽名を呼んでくれるかつての同僚がいることが嬉しくて。その同僚に、ここから出た後、瞬殺されても、それはそれで本望だと自ら牢の敷居を跨いだ。
だが、長いこと歩く事をしなかった足は、筋肉の使い方すらわすれたのか、かくんと力を失い、バランスは崩れる。アッシュは、そんな男を抱きかかえるように腕を掴むと、そのまま軽々と肩に担いだ。
「上等だ! ……ここを、出るぞ! 帰りの策は考えてねぇ、強行突破するからしっかりつかまってろ」
「あ、アッシュ……!」
邪魔にならないために、暴れるようなまねはしない。だが、未だ混乱する心を隠しきれずに名前を呼んだ。
「こんな事をして、捕まったら……貴方でも、貴方でもどうなるかっ」
その言葉を、聞こえているのか、無視しているのか知らないが、気にも止めずに、一気に階段を上がる。
兵士の休む部屋でもあり、地下牢獄へ続く間は、気絶して寝ているふりをさせられている兵士二人。上手い事やったものだと、そして更に戦いの腕は上がったのかと、混乱している反面、冷静に状況を読む。
廊下にでて暫く走ると、どこからか「不審者だ!」「脱走だ!」などと怒声が上がった。だが、アッシュはひたすらに奥へ奥へと走ってゆく。策がないとはきっと嘘で、何かに向かっているのはわかる。
しかし、自分にできることは何もなく、ただ大人しく担がれているだけだ。
悔しいと思った。昔、ここまで自分を助けに来た、アリエッタやシンクに対してそんなことを感じた事はなかった。助けに来て当然だと、あの時は思っていたのだろう。
だが、今は自分のためにこんなありえない危険を冒すアッシュが、どうしようもなく心強く。そして、そんな彼に何もできない自分が悔しかった。
暫くして、逃げ道はなくなった。兵はまだきていないが、三方を囲まれた行き止まりである。
アッシュは慌てることなく、担ぎ上げていたディストを下ろすと、片手で抱き寄せて壁を睨んだ。
瞬時にわかった、第七音素が急激に高まる。これは、そう、超振動……しかも、完全な……第二超振動だ!
凄まじい破壊音とともに、壁は跡形もなく消え去った。力をぶつけたために、粉砕されている箇所もあるが、殆どは超振動の力で消え去っているのだろう。
「息を吸って止めてろ、潜るぞ」
上から声が降ってきて、その命令に従うままに息を吸い込む。
そして、二人は粉砕した城の壁から飛び降りた。
汝の罪は 2 へ--------------------------------------------------------------------
アシュディスですってよ!!
ずっと暖めてたネタがあったんですが、誰が相手でも上手くゆかず
ある日アッシュのことを考えたらピンときました。
ディストがラストでマルクトに掴まって
幸せか幸せでないか、続きはどうなるのかはまぁ想像におまかせだと思うんですが
これはもろに幸せになってない方向です。
結局、世界にはじかれて世界に敵対してしまったディストだけど
見方によっては彼は悪くないんだと
誰もディストに罰を下すようなことはできないんだ!っと言いたくて
アッシュに浚ってもらうことにしました。
まだ未完成なので完成するか怪しいところですが^^^^^^
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