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汝の罪は2 (TOA)

登場人物:アッシュ ディスト ライナー

CP傾向:アシュディス

制作時期:2006年 夏


何をトチ狂ったのかアッシュ×ディスト!1の続き。
ED後200%捏造してあるお話。
登場人物全員に、別人注意報発令中!






 いつの間に意識を失ったのだろう、気がついた時には見慣れない部屋の中だった。
 時に目眩を感じて、気分は悪くないはずなのに、一体どうしたのかと閉じようとする瞼を無理に押し開く。

「気がついたか?」

 そこにいたのは、濡れ鼠になったアッシュで。夢ではなかったのだと、妙に安心した。いや、安心してはならない。こんなこと、してはいけなかったのだ。身を起こして、アッシュに問いかける。

「アッシュ、何故このようなことを……ッ!」

「俺がそうしたかったからだ。テメェの話を聞いたときにな」

「こんな事をして捕まったら、貴方だってただではすまないのですよ!?」

「先にいっておく。俺はアッシュだ。……だがな、あいつの……ルークの記憶をも持っている」

「なッ!!!」

「性格が変わったとか、昔の俺じゃないとか、あいつじゃないとか、そんなことはどうでもいい。ただ俺は、お前を自由にしたかった。 法というもので、人間を絶たれたお前がほっとけなかった!」

「バカじゃないですか!!……貴方は……戻ってきたのに、この世界に」

 久々に体を動かし、早くも悲鳴をあげている。少し息を荒げただけなのに、どうしようもなく息が乱れて。眼鏡を無くした目の前が酷く霞む。

「貴方は、私と違って「人として受け入れられる世界」に戻ってきたのに、何故……?」

「そんなこと、百も承知だといっただろうが。もう、俺はお前を連れ出したんだ。今更、もう引けねぇ」

「……う……っ……く……」

 涙が溢れてきた。自分は錯乱している、それは分る。
 だが、連れ出されて嬉しくて泣いてるのか、アッシュが生きていた事に泣いているのか
アッシュの言葉が悲しいのか、不安で泣いているのか、気が動転しすぎて、分らなかった。
 ただ、ただ流れる涙を、顔を手で覆って隠して泣いた。

「悪いようにはしねぇ、だから今は休め」

 アッシュはそういって、濡れてぐちゃぐちゃになった頭を、その胸に抱き寄せて静かに、ただ優しくその体を抱きしめた。






 次に、目を覚ましたのは木製のベッドの、柔らかな布団の中だった。どうやら、夢も見ぬほど深く寝入ってしまっていたらしく、あの後の記憶が全くない。だが、あれは夢ではないのだと、もう分っていた。
 木目の天井に、布団の暖かな柔らかさ。ゆっくりと身を起こして、部屋内を観察する。狭い、だが落ち着いた雰囲気のある木製の部屋だった。
 随分気分がいいと思い、腕を上げる。寝ている間に、身は清められたのだろう。牢に入れられていたときの不潔な気持ちの悪さはなく、清潔なカッターシャツにゆったりとしたパジャマのようなズボンを履いていた。髪も乾いており、埃が落とされた自分の白銀髪が、肩からさらりと胸元に零れおちるのがみえる。
 アッシュがやったものなのだろうか、いつも小奇麗に整理整頓していた彼だが、意識のない人の世話をここまで上手くやるのかと、少し感心する半分、仕方がないとはいえ、牢獄生活で痩せ細った貧相な体を見られたのかと、羞恥を覚えた。
 さて、ここは、どこなのだろう?錯乱していない今ならば、全てを聞けるかもしれない。
 とりあえず、アッシュを探そうと、立ち上がったところで、ドアが向こうから開いた。

「あ……」

「……あ、あーーーーーーー!!!!!ディスト様ーーーーーーー!!!!!!!!」

 目の前の人物は、これでもかといわんばかりの歓声と、笑顔を浮かべると、手に持っていたタオルごと、勢いよくディストに抱きついた。

「ら、ライナー?! え……えっ?!」

「ディスト様! ディスト様! ディスト様!!!!!! お目覚めになられたのですね!!!?」

「え、あ……はい。たった今……」

 涙ぐみながら、抱きついてくる姿は、神託の騎士時代の衣服ではなく、ラフな法衣だ。
 昔よりも成長した顔つきに、少し驚かされはしたが、声も立ち振る舞いも、ライナーだった。

「おい、ライナー! 衰弱中の病人相手に大声だしてんじゃねー」

 ライナーの大声を聞きつけたのか、廊下の奥からアッシュが出てくる。

「あ、アッシュ」

「アッシュ様すみません、あまりにも嬉しくてつい……」

 しょぼんと、だが嬉しそうなオーラはそのままで、ライナーはディストから離れると、昔やっていたように、静かにディストの傍らに付いた。

「アッシュ。起きたばかりですが、これまでの経緯と、現状を聞かせて貰いたいです」

「ああ、いいだろう」

 少し、足が体重を重く感じているが、震えて力を無くす事はなさそうだ。一つ頷いて、歩き出すアッシュの後を、追いかけるように歩く。
 そこは、小さな掘っ立て小屋のようだった。頑丈ではあるが、荒々しい木の作りで、最低限の生活用品がある以外は、物がない。この居間の広さ的には、大人が数人は過ごせる程度はあるが。部屋は、先ほどの寝室と、はしごを使って上る、屋根に近い二階があるのみだった。
 その居間には、おざなり程度のキッチンと思わしき台とかまど。切り出して簡易に作られたテーブルと椅子が並んでいた。

「とりあえず、適当に座れ」

 部屋を見回している間に、アッシュが先に椅子に座り、ライナーが椅子を引いて、自分を待っていた。もう自分の部下ではないのだから、そんなことしなくていいと言おうと思うが、やけに嬉しそうで言いづらく、先にアッシュの話を聞くのが先決だと思いなおして、椅子に腰をかけた。

 それから、半刻ほど、アッシュは喋り続けてくれた。これまで、こんなに彼が長いこと口を利いたのはなかったと思う。
 まず、ここはダアトの統治区内だということ。まだここまで来ていないが、間違いなく自分は脱走犯として指名手配されるということ。ライナーを含む、幾人かが脱走に手を貸してくれたということ。暫くしたら、ここも離れるが、離れる用意ができるまでここにいるということ。
 最後に、アッシュは立場上、マルクトが捕まえる事は不可能だが、睨まれている可能性があり、一度ここを出ると頻繁に戻ってこれないということ等だ。

「自由にしてやるとはいったが、世界の目はお前を自由にはしないようだ」

「ええ……」

「この小屋では好きにしてくれていい。が、今は、この小屋から極力出ない様にしろ」

「入用な時は私にお申し付け下さい、ディスト様」

「と、いうことだ。ライナーに言ってくれ」

 アッシュはライナーに目配せしてから、ディストを見る。

「しかし、ライナー。貴方はもう、私の部下ではありません。貴方には貴方の生活というものがあるでしょう?」

「いえ、私の生活は、ディスト様の傍にあることだと、私が決めましたので」

「ですが……」

「ディスト様、傍に居させてください」

 きっぱりと、はっきりした口調でライナーは言う。だが、ディストは困ったように俯き、自分の手の甲を見つめて黙り込んでしまった。

「ディスト様。ディスト様が捕まった時、処刑されると……思いました。僕はその時、ディスト様が殺されたらマルクトに報復してから死んでやろうと思ったんです」

 ディストが、少しだけ視線をずらして、ライナーのほうを向く。だが、険しい顔をしたままで、語るライナーの顔は一切見ようとしなかった。

「でも、ディスト様は生かされました。僕は理由なんてしらない。だけど、ダアトがディスト様の現状況を求めても何も言いませんでした。牢に繋がれたままだって、それしか。他の経緯はほとんど、アッシュ様から、つい最近聞きました。ディスト様が何を求めて、何をしたかも、全部知ってるつもりです。でも、僕はディスト様が悪い事をしたなんて、思ってません!」

 ディストが顔を上げてライナーの顔を見た。その顔は、昔と変わらず真っ直ぐで……なんて自分に相応しくない、優秀な部下だろうと、何度思った事か。

「悪いとは思ってませんが、私は、人を殺しましたよ」

「それは、戦争ですから当然です」

「マルクトの軍事機密を盗みました」

「それが何だって言うんですか? ここはダアトだ! マルクトが世界じゃない!!!」

「でも、それはダアト、キムラスカの間で結ばれた条約で……」

「世界がなんだっていうんですか! ならば、僕はディスト様をこの世界から連れ出す!!!」

「ライナーッ!!!」

「悪いが、俺もこいつと同じ意見だ」

「……アッシュ」

「これはエゴだ、俺たちのわがままだ。これまでの事を、悪いと思っていないのならば前を向けばいい。悪いと思っているなら、償いの意味でこれからを生きればいい。ただ、それを世界が許さないから、俺はお前を連れ出したんだ」

「アッシュ、私は……」

 言葉を返そうと口を開くが、言葉が出てこず、結局口を噤むことになった。
 そんなディストの様子を、アッシュはいつもの険しい顔で見ると、ガタリと音をたてて席を立った。

「時間はある、ゆっくり考えればいい。考えがまとまらないときは、無理に考えるな。とりあえず、何か食うぞ? 特にお前は、昨日から何も口にいれてないはずだからな」

「アッシュ様、私も手伝います!」

 そう、指摘されると、確かに空腹感を覚えて、久々の食欲に驚いた。
 牢獄では食欲などほとんど感じなかったから、水分は取るものも、食事は数日に一回しか摂っていなかったのだ。
 もとより、牢での食事など美味しいはずもなく、口にしては無理矢理飲み込んでいたようなものだったが。

 寡黙だがテキパキと素材を切るアッシュと、常に明るく、アッシュに話しかけながら用意を手伝うライナーに不思議と、感じた事のない安堵感を覚える。
 これまで、聞いたことしかなかったが、『家族』という絆は、もしかしたらこんな暖かさなのかもしれない。などと、考えながら……ディストは大人しく椅子に座って待っていた。



汝の罪は 3 へ

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そんなわけで1の続き。
ものすごい速さで急展開していきますね……。

お絵かき掲示板でも少し話してましたが、この駄文は設定からして
妄想爆発で痛々しくて、笑えもしません。

・牢獄生活が長くすっかりとネガティブに落ち着いてしまっているディスト
・そんなディストのために国を捨ててもいい勢いの漢、アッシュ。

まぁ、きっと需要がないので、誰も見てないと思うし
好きにやり散らしますw
まだまだ続くー(実は完成してなーい)

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