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黒の夢 (幻水3 ユーバー×アルベルト)

登場人物:ユーバー、アルベルト

CP傾向:ユバアル

作成時期:2003年くらい

ユーバーがアル兄に甘える話。
兄は兄気質。(ありえない)

※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
 本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
 それでもいいよ!という方のみお読み下さい。


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 音もない、風もない、静かな夜だった。
聞こえる音は、自分が字を書くペンの音とランプの燃える微かな音。
そして、時に紙が捲れる音のみ。

 ふと窓の外を見ると、先程までそこにあったはずの月がなく、揺れもしない木の葉だけがあった。

もう、このような時間か…。

と、心の中で呟くと。
赤毛の男、アルベルトはペンを置くと、書類を纏め始めた。



 そこへ、タイミングが良いのか悪いのか、騒がしい足音が一つ…。
次の瞬間、ノックするでもなくいきなり扉が開く。

しかし、大体誰が来るのか予想できていたのか、アルベルトは見向きもせずに就寝の準備を進めていた。

「おい、赤毛!!」

 断りもなく、ずかずかと部屋に上がり込んで来た男の声は、一応扉を閉めることを知っていたのか
けたたましく蹴り閉める。
自分を指す言葉に、渋々振り向いたアルベルトは、入って来た男の異様な姿に、一瞬言葉を失った。

「何だ、ユーバー…いきなり。しかもその変な格好は…」

 いつもの黒服の下によく着ている、こだわりの「黒」のタンクトップに、いつものズボン。
邪魔そうに垂らしてある、三つ編みをほどいたストレートの金髪。
 毎夜、休む前にユーバーが好む服装である…そこまでは良かった。
おかしいのは、その上から…否、頭から被ってある薄手の毛布。

あからさまに怪しい…。

 アルベルトは、まだ密かに驚いてはいたが、あえて平然を装ってベッドに腰掛けた。

「アルベルト、俺と寝ろ」

「…………は?」

 いきなりユーバーの口から飛び出した意味不明の言葉。
自分と体を重ねろ、という意味なのだろうか?
ならば、どうして毛布を頭から被る必要があるのだろうか…
それに、体を重ねたい時は「寝ろ」ではなく「遊べ」と言ってくる事が多い。
 とりあえず、言葉の意味が理解できずに、首を傾げてユーバーに目をやると



そこに、小さく震えているユーバーがいた。



これにアルベルトは心底驚いたらしいく、ギョッとしながらも問いただす。

「寝ろ、とはどういう意味だ?」

「?……そのままの、意味だ」

「………………。」

 じっと、少し青ざめた顔を見据えたまま、相手の動向を探る。
あからさまに何かがおかしかった。
いつものように、強引ではない行動…いや、それにこしたことはないのだが。
あまりにいつもと違う雰囲気に違和感を強く感じた。

「その言葉が、本当に「寝る」だけならば…」

 小さく溜息をつきながら、座っている自分の隣をぽふぽふ、と叩いて寝ることを許してやる。
自分自身、何故許したのか分かってはいないのだろう、
ユーバーが隣に腰を下ろすまでの間、始終眉間に皺を寄せていた。





「何があった?」

言葉短く、単刀直入に聞いた。

「煩い、黙れ…何もない」

少し、声に怒気をはらせながらも…柄にもなくユーバーが顔を隠すように俯く。

「何があったのかは知らないが、いきなり部屋に来て「寝ろ」などと…
私にも、何があったかくらい聞く権利はあると思うのだが?」

 自分を頼って来たというのに、完全に突き放す行動を取られたアルベルトは、
追いかけて問い詰めるように、ユーバーの顔の覗きこんだ。

 そしてまた絶句することとなる。
そこで見た表情は、怯えに彩られた、両目色の違う瞳であった。

「ユー…バー…??」

「………」

 今度はバツが悪そうに、ふいっと反対に顔を背けてしまった。
また、アルベルトが不服に思うだろうか…
 しかし、次の瞬間襲って来たのは、暖かい体温に、首と背中に絡まる柔らかい腕、
髪と首筋から香るふわりと優しい石けんの匂い…。

「なっっ……アルベルト!?」

 文字通り、『優しく』抱きしめられたユーバーは、珍しく困惑の声を上げていた。
別に嫌なわけではなかったが、驚いて服と肩に手をかけて引きはがそうとする。
しかし、次にユーバーはそこで大人しくなっていた。驚いた顔のまま…。

 それはまるで、怯える子供をあやすように優しく。
アルベルトが、ユーバーの背中を優しくぽんぽんと撫でていたからだ。

「よしよし…大丈夫だ、何も怖くない。だから怯えなくていい」

 耳の近くで囁かれる綺麗な声音は、暖かい子守歌のようだった。
ユーバーもまた、アルベルトの背中に手を回して、あやされるままに瞳を閉じた。





 何分の時が過ぎたのだろうか。
暫く両方とも目を閉じたまま、体を寄せていた二人は
アルベルトが背を撫でるのをやめ、軽くユーバーの肩を押したことで、同時に目を開いた。

「これで、落ち着いたかな?ユーバー」

少し皮肉も込めて、にやりと笑って相手の調子を確かめる。

「まぁな」

などと、曖昧に流しながらも、フンッと突っぱね気味のいつもの調子で答えが返って来くる。
 アルベルトは満足したのか、不適に笑ったまま、ごそごそと布団に潜り込んで行った。

 暫く、気恥ずかし気にしていたユーバーも、後を追うように布団に潜って、ぴったり体をくっつける。

「夢を見た…、時々見る黒の夢だ…」

ユーバーの顔は直接見えないが、声が忌々しげに震えていた。

「俺は…望んでいない…黒の、夢など…ッ決して…」

「もういい」

ふわりと頬に手を添えてやって、制止の言葉を出す。

「もう聞こうとなど思っていない、無理に喋る必要もない」

 油が切れかけのランプが、今にも消えようと火を揺らめかせていた。
暫時、沈黙が流れ、部屋に月の光だけが届くようになると、押し黙っていたユーバーが口を開く。

「……アルベルト。さっきから思っていたのだが、それは誘っているのか?」

ガバッといきなり身を起こして、覆い被さるように顔の横に手をついて目を見る。
 いきなり何事かと、無表情のまま驚くアルベルトの口を、口で塞ぐと、
灰色のカッターシャツの合間から、すっと手を差し込む。
一瞬、びくりと体を強張らせるが、思いっきり睨め付けられた後
腹に痛くもない一発を入れられて、ユーバーは渋々手を止めた。

「少し慰めてやっただけで、すぐに調子に乗るな…そんな意味ではない」

「ふん、その割には慣れた行動だったではないか」

「人の話を聞け…。とりあえず、これ以上事を進めるようであれば部屋から出て行って貰うぞ?」

 やんわりとユーバーを手で押しのけてどかすと、顔を背けるようにして寝返りを打つ。
ユーバーは、とりあえず組み敷く事は諦めたのか、大人しく布団の中に戻った。

 月の光が、雲に遮られ、部屋に暗闇と静寂が訪れる。
気まずい沈黙を、先に破ったのはアルベルトだった。

「シーザーが…。弟が幼いときに、ああやってよくあやしたものだ」

 遠く昔を懐かしむように、瞼を閉じると、本格的に寝るつもりなのか大人しくなる姿を見て、
ユーバーは不機嫌そうな表情をおもむろに出す。

「…。ほう、それは妬ける話だな」

まるで、小さな子供が拗ねたような顔と声音で、相手がぎりぎり聞き取れる程度に呟くと、
今度は自分も瞼を閉じて布団にくるまる。

「妬ける?妬けるも何も…私の弟が、今は反抗期だというのはよく知っているだろう?」

 少しだけ目を開けながら、ぼんやりとまどろみの中で出す声には、
珍しく秋風のような寂しさが籠もっていた。
窓から降りてくる、微かな青白い月の明かりが顔を半分だけを照らし出す。

「あれは、もう私の手を離れた。何を妬く必要がある?」

「………おやすみのキス」

「はぁ?」

 毎度ながらの突然に意味不明な言葉に、思わず間の抜けた声を上げる、
それと同時に、閉じていた目を開いてしまい、恐ろしく真面目なユーバーの瞳と当たってしまった。
ユーバーが目で語りかけてくるが、本当に意味が分からないので続きの言葉を待つことにした。

「するのだろう?人間は。…だから俺にもしろ」

「…付き合ってられん。もう疲れた、先に休ませて貰う」

 この人外はいつもそうだった、いきなり突拍子もなしに要望を吐く。
心底こいつの相手は疲れる。
そう思ったアルベルトは、完全に無視を決め込むつもりなのか、寝返りを打ち、背を向けて沈黙してしまった。
 ユーバーは、と言うと。
暫く、むっすりとした顔で、着痩せしている灰色の背中を見ていたが、
何を考えたのかもっそり体を起こして体を覆い被せて来た。

「ならば、俺からやろう…。良い夢を、アルベルト」

耳元で低く囁いたかと思うと、白い頬にキスを落として布団へと戻っていった。

すぐさまユーバーの、規則正しい寝息が聞こえだすと、
アルベルトは、やれやれといった感じで口元を少し緩ませていた。









コンセプトは怖い夢を見て甘えたがりなユバと
お兄ちゃん気質でほっておけない、世話焼きアル兄…でした。

あまっ……
というか、混沌と黒の夢は違うの?とかつっこんではいけません。
(ぇーーー)

ちなみに「黒の夢」は某RPGのラストダンジョン名です(笑)
当たった人おめでとう!(いねぇよ)
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