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ササライ様の有意義な半日 (幻水3 ササライ)

登場人物:ササライ、ナッシュ、ゲド、バーツ、ディオス、他

作成時期:2003年

CP傾向:意識してないけど、見方によってはバツササ?

ササライとバーツが仲良しなお話。
ハルモニア部下組がいいかんじに扱われています…。

※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
 本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
 それでもいいよ!という方のみお読み下さい。


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 今日の報告書類を簡単にまとめて、一息つこうと窓のカーテンを引いた。
 この、もうけはじょう城に来て早二週間。
日々目まぐるしくもあるが、仕事内容は「本国への報告」と、「行動を共にする部隊の報告と監視」くらいで、特に気を張ることもなく。
真なる土の紋章も取り戻せた今、とても落ち着いている。

 今朝も日差しは柔らかく、湖を渡って吹き付ける北西の風は心地良いくらいに涼しい。
じじくさいと言われてしまうかもしれないが、僕はこの朝の雰囲気が一番好きだった。

おっと、あれに見えるは僕直属の部下ナッシュじゃないか。
今日も忙しなく周囲をきょろきょろして小走りしている。

「ナッシュ、おはよう。またルビークの虫と追いかけっこでもしているのかい?」

 窓辺に頬杖をついて、薄く微笑んで挨拶してやると、
案の定、苦そうな苦笑を向けてぺこりと礼が返って来る。当たったようだ。

 彼は一応、ハルモニアの上流貴族だから、気品はあるし礼儀も知っている。
運はないが、特殊工作員としての腕は悪くない。
頭の切れも悪くないし、僕が彼の妹を保護している為、忠義心に揺るぎはない。
何とも便利な男なのだ。

「お早う御座いますササライ様、先程バーツが探しておられましたよ?」

「そうかい、分かった。後で訪ねてみるよ、ありがとう」

 素直に嬉しかったから、もしかしたら顔に出てしまったかもしれない。
彼の作る野菜や果物は格別に美味しいのだ。
そんな事を考えているうちに、遠くの方から黒い物体が空から近づいてくる。
あれ?…あれってもしかして…。

「ナッシュ、そろそろ行った方が良いのではないかい?」

「ぇ、あ…はい。ではこれで失礼しま…」

そう言って駆けだしたが、どうやら遅かったらしい。
彼は人外に好かれやすいタイプらしく…熱烈なファンである一匹のルビーク虫に、さらわれて行ってしまった…。
 ナッシュは私より戦闘能力は高いから大丈夫だろうとは思うが、夜になって帰って来なかったら部下に捜させるとしよう。

 出来るだけの上司心は見せたと思うんだが…。
とりあえずバーツの畑に行こうと、報告書の束の上に重石を置いて、服のチェックに向かう。

 自慢じゃないが、僕はあまり物事に頓着する方ではないので、朝方だと寝着のままであることさえある。
今日は一応、神殿内用のローブに着替えてはいたが、ベルトも締めていないし、ブーツの紐も結んでいない。
面倒だから髪は手櫛で梳いただけ…これでディオスに見つかったら叱られそうだな。
 先日、ネグリジェのまま廊下に出て散々説教されたばかりだし、これ以上彼を困らせるのも可哀想だ。

 とりあえず、身につける小物がゴチャゴチャしている遠征用の制服は面倒なのでハンガーに掛けたまま、
ローブにベルトだけを通して、靴紐を軽く結んで、髪に軽く櫛を通して、勢いよく部屋を出た。

通気する風がまた心地よい。

「あっ!ササライ様ッ!!」

 階段を降りようとすると、後ろの方からよく聞く声が…なんだ、ディオスじゃないか。

「やぁ、おはようディオス。私は朝ご飯、外で摂って来るよ。執務は夕方には戻ってこなすから、後は任せた、じゃぁね」

「え、あ……はぁ。……あ、ちょっササライ様!正装に着替え直して、あ……」

 後ろから、僕の名前を連呼するディオスの声が聞こえるがあえて気にしないでおこう。
手間をかけさせないように、栄養を偏り無くきっちりと、安っぽい民家料理でないものを、と
三食運んで来てくれるのは良いんだが…自分の好みで選べないのが何とも不満。
ディオスはキッチリしすぎていていけないな、真面目で真っ直ぐな所が彼の取り柄であり
短所でもあるのだが…。
まぁ、あれでいて補佐役としては有能なので良しとしよう。

 階段を駆け下り、正面の扉をくぐると、思っていたより強めの日差しが体を包んだ。
これは日向ぼっこに丁度いいかもしれないな、と考えながらもぬくぬく歩を進める。
今日も駆け回る犬に子供、訓練している兵達に、自由商売に張り切る商人達、
この城独特と言うのだろうか?ハルモニアでは感じられない田舎ののどかさが感じられる。
こういうのも、悪くない。

 しかし、困ったことにここは何処だろう…何度来ても、レストラン以外の場所は覚えられなかった。

 ああ、あんな所に部下発見。
僕は、この城内ではかなり権力の高い位置にあるのだから、誰に聞いても平気なのだけれど、
部下だと道案内も気軽にお願いできるからいいね。

「ゲド、おはよう」

「………これは、ササライ様。おはようございます」

 ハルモニアの辺境警備隊第12小隊隊長のゲド、見た目は少し怖いかもしれないが、僕は意外といい人なのだと思っている。
 ハルモニアの辺境部隊だから直属というわけでもないし、戦士としてはゲドの方が上だろう、
更に真なる雷の紋章まで持っていると聞いたが…なんといっても、
ハルモニアの元で働いているのなら、僕の部下に間違いはないのである。
使わないに手はない。

「また、道に迷ったんだ。悪いが、畑まで案内してもらうよ。」

 否を言わせない物言いで働き掛ける。
彼は律儀な性格だから、必要はないのだけれど、少し行動がのんびりしていて読みにくい。
まぁ、つまりはさっさとこちらから決断させてしまえばいいわけだ。

「……はい、了解しました。」

ほら、考える必要がないから早い早い。
小さく頷くと、彼は先導して歩き出してくれた。



 階段の隣にある小さめの畑、そこが彼、バーツの持つ畑だ。
バーツは、僕の姿を見つけると、屈託のない朗らかな笑顔を向けて挨拶してくれた。
僕もにこりと笑って挨拶仕返す。

「おはよう、ナッシュが「捜していた」と言っていたから来てみたよ。
何か収穫できる野菜ができたのかい?」

 彼は、私が園芸に興味があると知ると、収穫できる野菜ができる度に呼んでくれるのだ。
土弄りするのは、あまり得意ではないのだけれど、収穫は楽しい。
彼の作る野菜は素直に美味しいから、とれたてで一番上質のものを一番に貰えるのも嬉しかった。

「前、トマトが美味しかったって言ってたよな。こっちのトマトが収穫期だから数個どうかと思ってよ。どうだ?」

 そういって、よく冷えていそうな水入ったバケツの中を指さしてくれる。
嬉しいな、朝ご飯を抜いてきた甲斐があったよ。

「後ろのナイト様も一個どうだ?とれたてで上手いぜ、食べていけよ♪」

ナイト様?ああ、すっかり嬉しくてゲドの事を忘れていたよ。
ずっと後ろで待機していてくれたんだね、律儀な男だ…。

「この後、用事でもあるのかい?バーツもこう言っているのだから、一緒にどう?」

「ぁ…はい。では一つだけ……所用が残っておりますので」

バーツの作る野菜が嫌いな人が居るわけないさ、うんうん。
 良かった、と笑顔を見せると、珍しくゲドの口元が緩んだ気がした。
珍しいこともあるものだね、まぁ、本当に美味しいトマトなんだから当たり前だが。

「はい、どうぞ。所用は外出かな?行くのは良いけれど、報告書を後で届けるようにね」

 バケツの中から、特に美味しそうな一個を取り出すと、ゲドの手に乗せてやる。
彼は小さく頷いて「はい。」とだけ言うと、貰ったトマトに噛りつきながら階段を上がっていった…。
 その姿が、どこか可笑しくてクスクス忍び笑いをしていると、
バーツがカゴに山盛りの野菜と果物を更に持って来た。

「朝の取れたてさ。どうせ、この時間に来たということは朝飯もまだなんだろ?」

「あはは、聞いてすぐに飛び出して来たよ。よく分かったね。」

 カゴを真ん中にして隣に座ると、貰うね?と了承を取って、小さめのトマトを手に取った。
これまでずっと、冷やしてあったのか、丁度良いくらいにひんやりとして気持ちいい。

「ああ、横髪が変な方向に跳ねたままだしな」

「…………」

彼はけらけら笑ってカゴの中のキュウリをひっつかむと、バリボリと隣で食べ出す。
僕としては恥ずかしいのだけれど、彼の見せる笑顔が好きだから何故か許してしまう。
こんな美味しい野菜をつくれる人に、悪い人はいないね。

「ディオスを無視してすっとんで来たからね。後で叱られるかも…?」

君のせい、だというように揶揄を含めて笑い返すと、
一瞬きょとんとしたような顔をするが、またニカッと笑みを向けたかと思うと一言。

「ははは、そんな時は俺のせいにしとけって!」

いいなぁ、農民の人はあんな頼れるセリフを言えて…温室育ちの僕としては憧れるよ。





 その後はたわいもない世間話をして、農作業に勤しむ彼を横に少しお手伝い
――今日は取れた野菜を洗う作業――をさせて貰い。
レストランに野菜を届けるのを手伝って、そのままお昼を同席することとなった。

 バーツは安値で質の良い野菜を届ける変わりに、食事がタダになるらしく、
おごり――もといタダ御飯――でオムライスをご馳走して貰った。

 まぁ、ハルモニア辺境警備隊、第13小隊の皆が近くに居たから、
変わりに代金を支払って貰っても良かったんだが。
折角だというから、バーツのお言葉に甘えておくことにした。

「しっかし、ハルモニアの神官将様だというのに、畑に来るの好きだなあんたも」

働いた後の御飯は旨いらしく、ガツガツとカツカレーを平らげていく彼を見ながら首を傾げる。

「そうかい?来るだけで、特に手伝えるような事もないし、本当に来て食べるだけだけれどね」

「いいんだよ、それで。美味しいと言って貰える奴に美味しく食べて貰えるのが、俺は一番嬉しいからな!」

 こちらを見向きもしないで、ガツガツとカレーを口に運ぶ彼を見ていると
つい口が綻んでしまう。
あれ?これって嬉しいのかな、僕…。

「何時でも来いよな!と言いたいところなんだが、庶務とかあるんじゃないのか?平気か?」

水をぐぃっと一気に飲み干して、一息ついて真っ直ぐ見てくる強い瞳に一瞬たじろいでしまう、
すごく真っ直ぐで強い目をしているんだよ。本人分かっていないだろうけど。

「私は、君の作った美味しい野菜を食べられるのなら、努力は惜しまないよ」

しかし私も負けていられないし、ふふりと不適な笑みを取り戻して「大丈夫」と頷いやる。

「よく言った!俺も、あんたに美味しく食べて貰えるんだったら、努力は惜しまないぜ」

その物言いと、真剣な表情を見て、僕は久しぶりに声を出して笑った。
何が可笑しいって?さぁ、僕にも分からない。
嬉しいのと、何かくすぐったいような気持ちがごちゃ混ぜだったからね。






 夕方になり、畑が名残惜しくも執務兼寝室に戻って来た僕は、
勝手にディオスかお付きの従者が片づけた小綺麗な部屋で、報告書のまとめを仕上げる。

 どうしようか?あの事を書いたら「さぼってる」とかヒクサク様に叱られるだろうか?
ならば嘘を書いておこうか…美味しい物のために嘘をつくのも悪くはないよね。

 そんな事を考えながらペンを進めていると、ようやく帰ってこれたナッシュとディオスがノックをして入ってきた。
ナッシュのことをすっかり忘れていたよ、無事だったからいいか。

「ササライ様、あの…」

「ご苦労様。ナッシュ、災難だったね…大丈夫だったかい?」

とりあえず、風の入る窓を背にナッシュに話しかけてみる。勿論ディオスの言葉を遮って。

「はい、お陰様でなんとか。一応戻ってきましたので、今日の…報告書含むこの三日間の報告書を…」

今日の…という言葉に哀愁が感じられる…可哀想な人だね…。

「サ、ササライ様!今日の夕飯はこちらでお摂りになりますよね!?」

と、隣から口を挟んでディオス。
ふう良かった、お説教をくらうことはないらしい。
年下に説教されるような事をする僕も僕だが、面倒極まりないからな。

「ああ、もう少し後で運んでくれ。用事はそれだけかい?さっさとこれをまとめてしまいたいから、下がっていいよ。」

二人の顔を交互に見ると、つけ離すようにしてまたペンを進める。
あちらも、こちらの意図が掴めたのか恭しく礼をすると大人しく部屋を出て行った。
権力バンザイ。

 とりあえず、ばれない程度の嘘と真実を混ぜ合わせた報告書を書き上げて、机の端にまとめる。
今日の面倒な仕事は片づいた、でっち上げ半分だが。
ペンを置いて、思いっきり伸びをすると、後ろの窓から綺麗な夕焼けが見えて、
何だか生きている実感がした。

窓辺から外を見ると、まだフル稼働中のレストランに
酒場に吸い込まれていくような人々。
湖を渡る、湿り気を帯びた風は優しく、髪を遊んで頬を撫でて行く。

 ふと、窓際に置いてある鉢植ミニサボテンに手をやって集中すると
真なる土の紋章が反応して、サボテンに花をつけた。

 昔、こうやってトマトを栽培してみたことがあった。
ほんの気まぐれ、ただの暇つぶし。
最初は普通に世話していたけれど、面倒になってしまって「真なる土の紋章」を使って、すぐに大きく成長させた。
 見た目は、今日バーツがくれたトマトと変わらない大きさ。
だって真なる土の紋章だもの、普通の紋章を遙かしのぐ力を秘めた紋章でできたトマトは
少しばかりか魔力も帯びて、部下の魔法兵にあげると評判だったくらい。
でも自分にとって美味しいと思うトマトではなかった、不味いわけでもなかったが…
こんなもんかと思って、それ以来やめた。

花は綺麗に咲かせることができるのにね?

 だから、バーツに美味しいトマトを貰って口にしたとき…
そうだね、あれを「惚れた」というのかな?
自分が作りたかったトマトがそこにあった。

野菜は愛情で作るものなんだね。
例え僕に愛情がなくても、愛情で育ったトマトをくれる人が居るんだから、それでいいか。

羨ましくも嬉しかった時、自分の中で何かが変わった。

それが何かも分からないけれど、人が言う『幸せ』という感情はこれに似ているんだと思う。



「ササライ様~御飯をお持ち致しました。」

 ディオスがまた恭しく礼をして綺麗なお盆に夕食を運んできた。
もうそんなに時間がたっただろうか?ずっとぼんやり外を眺めていたらしい…
これではまるで、鳥籠の中の飛べない鳥だな
自分でやりたいことは、自分が動かないと始まらない…か。

「ディオス!私はバーツとかと一緒に酒場で食べて来るよ!その料理は君が食べていいから、後は任せたよ。じゃぁね。」

「は?……ぇ、ええぇぇぇええぇ~~!!?さ、ササライ様ーーッ!!」

 僕はディオスが驚いて声をあげる前に隣を抜けて走り出していた。
さて、今夜のディナーはトマトサラダと何にしようかな?♪











後半はバツササと見せかけた、至って普通のお話。
一人称は書きやすいが、三人称書けるようになりたい。

うちのササライ様の性格は黒いようなそうじゃないような…
悟ってるようで子供のような不思議な性格です。
権力者的な我がままさはありますが、人間的にはすごく情の強い人です。
しかも、トマト好きのバーツ好き。(笑)

仲良しはいいな!書いてて楽しかったー!!
………私はトマトもキュウリも嫌いなんですけど☆(ヲイ偏食家!)

ちなみに、ササライ様だと一瞬でお花咲かせられそうというイメージから、このお話ができました。
ササライ様は土や植物達のアイドルなんです。


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