CP傾向:両方右概念のササライとナッシュの主従(基礎概念にあるものはルクササと坊ルクと坊ササ)
制作時期:2024年2月くらい
あらすじ:太陽暦475年に終結した英雄戦争(3の話だよ!)から数年後。
ハルモニアにて和平の道を模索していたササライが、とうとう権威の座から追われる事となった。
ただ、彼には切り離してでも生きて欲しい男がいた――。
!注意!
※ ササライもナッシュも右概念なので実質百合()
※ ササライは3の後に坊ちゃんと一度だけ会ったことがある設定(脳内)
※ うちのナッシュは自分の命以上にユーリ(妹)が大事な重度シスコン
※ 書きたい所しか書いてない
「ナッシュ、妹を連れてすぐに逃げろ」
「は? 何……を」
緊急に呼び出しを食らったと思ったら、会って最初にそう言われた。その言葉に頭の中が真っ白になる。想定していた以上に状況が悪そうなのは確かだった。
「少々まずいことになりそうだ」
「どういう事か、教えてください」
「時間がない。用意しながら聞いてくれ」
話が掴めなくて、動揺に声が震える。普段ならば絶対に手を出さないが、その細い肩を掴むと、僅かに震えているのが伝わった。普段あまり焦りを見せないこの上司までもが、今の状況に恐れを抱いている。
息を吐きながらゆっくり手を離すと、ササライは後ろを向いて戸棚を漁り出す。
「今日の神託会議で決まった。ハルモニアの次の標的はゼクセン地方だ。私は前回の働きを考えれば当然、こうなると理解してはいたが……ここまでされるとは思っていなかった。甘かったよ」
前の遠征で確認された四つの五行の紋章。ササライが有していた土を合わせると五行が揃う事になる。真なる風の紋章はいずこへか消えてしまったが、他の紋章は全て所在が割れた。
と、言っても突然それを口実に戦争が起きるはずもなく、先の戦争に行き当たってしまったササライが尽力して和平が続いている。
つまり、ゼクセンとの温和な状況を作っているササライが消えてしまえば、一気に不穏になるわけだ。
「今、ゼクセンは力を結束している状態です。ハルモニアとて介入するには早すぎるのでは? 手を出したとして、真の紋章を相手すれば無傷ではすまないかと」
「私もそう考えていた。動くのにも最低三年、普通に見ても五年はかかる。だが私が出ていた間にも内部で動きがあったようだ。逆に真なる土の紋章を脅威と取ったのだろう。私の管轄の軍は凍結、実質は解散して統合される。権限は名目上だけは残るだろうが、実権はほぼ剥がされたと思っていい」
実権の剥奪。罪もなくそれを課すにはあまりにも重いが、最高権力者が裏工作をすれば容易いのだろう。何せ一人の神官将の口を閉じて、事情を知る数少ない者を始末してしまえば済むのだ。
だが、あまりにも酷すぎる。生まれてこの方、この国にササライが背いたことはない。成果も上げている。ゼクセン地方とも外交は上手くいっているし、あの戦いで真なる紋章の所在がわかった功績は大きい。
「そんな、これまでずっとササライ様は国のために……」
働いてきたではないか。
その為に幼い頃から教養を身につけ、真なる紋章を宿した神官将として厳しい教育も受けてきた。当然のように執務をこなし、言われるがままに国に尽くしてきた。
だが、先の戦いで知ってしまった。己の器は紋章を入れて置いておくためだけの器ということ。それで心が揺らがないはずもないが、それだけで祖国を裏切るほどササライはこの国を捨てきれてもいない。
ナッシュもそうだった。妹を連れて国を離れる事もできたが、そうではなく妹を祖国ハルモニアに残す選択肢を選んだ。
あの戦いからハルモニアに戻れば、こうなる覚悟もあったかもしれない。だが、その秘密を知る者は誰も国に報告しなかったのだ。
「そうだね。私はこの国を裏切ることはないよ。でも、その上で自由を許さないとは、こういう事なのだろうさ」
ちら、と見せてくれる手の甲には赤い痣が浮かんでいる。これは封印なのだろう。力を封じられた、本当にただの真なる紋章の入れ物ということだ。その痛ましさに、思わず顔を背ける。
「ではササライ様は……どうなりますか」
「僕は……暫くは死にはしないさ。良くて軟禁、悪くて監禁だろうけど、このくらいの猶予があるから前者かな」
飼い殺し。嫌な言葉が頭に浮かぶ。
ナッシュもササライとは、それぞれの益を兼ねて手を取り合っていたにすぎないが、同じ時間を過ごし、苦楽もそれなりに過ごした自覚はある。
無理難題を押し付けてくる厄介なところもあるが、本来の優しい心根も、中立公平に見せかけて情に弱いところも知っているから仕えていたのだ。それだけは嘘ではない。例え体はコピーでも、その心は人間だと理解している。
年下の上官は、生きにくいこの神殿で、それでも様々なものを背負って生きていた。国内で民衆派を囲っておくという覚悟は、そう簡単にできるものではない。
だが、何のしがらみもなかった彼は、己の要求を聞き、そして頷いてくれた。思えば彼も同じだったのだ。『絶対に裏切らない存在がほしい』という願い。望み。はたまた希望。
それはナッシュも同じだった。この人間は、自分が真摯に働く以上、絶対に自分を裏切らない存在なのだと、確信めいたものがあった。
「そんなに怖い顔をするな、生きるために足掻くくらいはしてみせるから。それに、僕にはまだ考えたい事もある。ちょっとした休暇なのだと思えば諦めもつくさ」
「俺には、諦めがつきません。利害が一致したから貴方を守ってきたのは……確かにそうです。けど、だからってそんな情が薄いわけでは」
「だからだよ。君はね、優しすぎるから、僕がちゃんと言うよ」
情に絆される性格なのは知っている。でも、それがなくては元から仕えてすらいないだろう。絶対に破られる事のない取引きだと信じていたから、守り、守られてきたのだ。
神官だった男は、いつもの顔を悲しげに歪ませながら、言葉を吐いた。
「君との契約は、ここでおしまいだ」
「ッ!!!」
言葉で殴られるとは、このような気分を言うのだ。妹を絶対に守ってくれる存在が欲しかったのは確かで、そのために仕えてきたというのも間違いではない。
けれど、違う。それだけじゃない。ここまで築き上げてきた信頼を、優しさを、笑顔を失うのが怖かったのだ。
「いいかい。君の差し出した忠誠と引き換えに、僕は君の妹を守ることを誓った。今や僕はその力を失っている。だから速やかに、妹を連れて逃げるんだ。民衆派の生き残りを生かしておくほどこの国は甘くはないだろう。すぐには来なくても、ここに留まるべきじゃない。一番大切なものをはき違えてはいけないよ」
今ここで、一番冷静なのは彼だろう。ここぞという時に判断を間違えない。だから信頼していたのに。それすらも守ることができない。
世間から弾かれた存在も、許して匿ってくれた彼。そんな彼も世間に弾かれる時が来た。いや、そもそもこちら側だったのか?
否、あの仮面をつけた男が、連れて行ってしまったのか。最後の導として、彼はたった一人、あの男の言葉を継いでしまった。その言葉を全て聞き流せるほど、情に疎くはなかったのだ。だから、きっとこうなった。
「ほら、そんな悲しい顔しないで。僕はいつもの君が好きだよ。不思議とね、君なら何とかしてくれるんじゃないかなって、つい甘えてしまうんだよ」
「わかりました……。ユーリを連れて、俺はいきます」
悔しさの中、絞り出すように出した答えに、満足そうに頷く。
本当にこの数年間は、忙しないながらも悪くない生活だった。これ以上のものを望んでもいなかったのに。また培った何かを切られる思いだ。
「でね。ここからは、命令じゃなくてお願いだ。ユーリの無事を確保できてからでいい。新たな主に咎められたら、なかった事にしてもいい。時が来たと思ったなら、ゲドとトランの英雄に助力を乞うてくれ」
そう言って二通の手紙を取り出すと、地味な麻袋にそっと忍ばせる。そこには、先程から部屋内の様々なものが詰め込まれていた。おそらくは資金にしろと言う事なのだろう。
「ゲドはともかく、トランの英雄? 門の紋章戦争を勝利に導いた指導者でしたっけ。俺は会ったことも見たこともないですが……」
「情けない話だが、もう彼らくらいしか頼めそうな人がいなくてね。別に命が惜しいわけではないが、僕はまだやらなければいけない事がある気がするんだ。それまでは死なないように頑張るから。ね、お願いだよ」
可愛く両手を合わせる元上司は、どうやらいつもの調子のようだ。やせ我慢かもしれないが。
「不服ではありますが、そこまで言うならお受けしましょう」
「ありがとう、ナッシュ。君が役不足とか、そういうつもりはないんだ。君には君の守るべきものがあるということを、ただ知っているだけだよ。ユーリに宜しく伝えておくれ、もう会えないけど元気で、と」
あらかた部屋の高価そうな物を詰めたのか、持ち歩くには少しずっしりとした袋を寄越される。これが命と引き換えにした退職金であり、暫く頼らざるを得ない資金源なので仕方なく受け取ったが、こんなもので釣られたと思われるのも癪だった。
「必ずまた来ます。俺もですが、きっとユーリもこんな別れ、絶対に許しませんよ、ササライ様」
「そうだね。また会えるなら、その時は身分に関係なく、友達になってほしいな。さあ、もう行ってくれ、これ以上は君でも危険だ」
そっと開け放たれた窓は、漆黒の空のみを映している。今来た道ですら既に危険だと云うのだろう。
「どうか、幸あらん事を」
「ああ、君もね」
そうしてナッシュは、振り向く事なく窓から飛び出た。闇夜に消えゆくその旅路を星に祈る。
多くを失ったが、それは全てではない。希望は残した。けれど、あの穏やかな日々はもう永遠に訪れる事はないのだ。
誰もいなくなった部屋で、ササライは窓を閉じると、静かにカーテンを引きながら呟いた。
「ああ、信じられるものがなくなるのは、こんなにも辛いのか。さよなら、僕だけの優しい君」
推敲をほぼしてないので削りが甘いかもしれないけど
読めそう&続き書かなさそうなので放置します!いえーい!
と出した妄想の塊のナッシュとササライの妄想未来話。
私の中ではどっちも右なんですけど
わりと互いに「絶対に守らなくては」という意識が働いていて
ナッシュは物理的にササライを守り、ササライは妹も含めて彼の存在意義を守っている。
それ故に「互いに絶対に裏切らないだろう」という強い信用と信頼関係がある主従である。
ていう妄想なんですよ。
それが崩された時に、初めて本心を言えるくらいかなって思って書いてました。
前提がひどすぎて、これまで地味に書いていた登場人物やCP傾向を「どうみてもこのCPだろ」と思いつつ書いてきたかいがあったと思いました。
こんな煩雑なCPが記載されてるとか意味わからないよね!
まぁ暇で何でも食える人は私の妄想でも読んでいってよ。
基礎概念にあるルクササと坊ルクと坊ササなんですけど。
ルクササは物語の根底にあって、ルックがササライの事を実はとても大事にしていたというお話。
実際、殺しておけばいいのに全く手を出せなかった。
ササライはルックの死後(終戦直後)にそれに気がついてしまう。
そのあたりで出てくるのが坊ちゃん、坊ちゃんは仲間の手紙でルックがいることを知って飛んできた(ここが坊ルク)けれど、間に合わなかったのでした。
間に合わなかったけれど、彼らの名前が刻まれた石版の前で、ササライに会います。
ルックとは明確に違う人間という認識をしつつも、やはり顔は同じのササライ。
そんなササライは、ルックが信じようとして愛しようとした存在である坊ちゃんを知り
ルックの本当の願い、叶え、成し遂げたかった事(真なる風の紋章を破壊する=秩序ある世界からの脱却)を坊ちゃんに伝えます。
ルックの犯した罪に向き合い、それとは違う方法で、秩序に支配される未来を回避する。
彼が願った人の時代、世界を救うという目標のために、意思統一した坊ちゃんとササライは共闘することを望みます(ここが坊ササ)
という妄想が前提に敷かれているので、やっぱり全部のCPが入るんですよ。
つきあってるとかそういう話ではないです。
まぁ、そんな妄想が私の中にはずっとあるけど、一文字も書いて……いや書いてあるかもだけど
世に出せそうにはないので、いずれ書きたくなったら書くかもしれないし書かないかもしれない。
そんな「うちの主従は仲がめちゃめちゃいい!」を言いたいだけの話なのでした。
……誰もここまで読んでないでしょ。だよねー。
[1回]
PR