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その扉を開けた時、君が笑ってくれるなら(燭竜×太上老君 ※元気封神)


注意:元気封神というサ終したソシャゲの二次創作です! 詳しくはこちら

【登場する人】
燭竜、太上老君

【CP】
燭老

【備考】
今回は太上老君が燭竜の手で闇落ちさせられた『太上魔君』の存在について
と、彼に関わる二人のお話。






「これは……!?」

 見た瞬間、思わず絶句した。「良いものを造ったんだ、見てよ」。彼は高慢ないつもの笑顔を隠さず、スッと鏡を差し出す。その綺麗な鏡に映し出されていたのは、かつての自分の姿だった。自分と同じ姿なのに、ひと目でわかる。これはもう自分ではない。

「君の体を使ったんだ。まだ君は外の世界では元気に僕を封じてるって思わせておかないといけないしね」

 そうだ。数ヶ月前、燭竜に封神台の権限を奪われた時、同時に魂も肉体から離れた。その残された体を使って、彼はこの肉体を奪ったのだろう。

「君と混同したら分かりづらいからね。太上魔君と名付けたよ。表向きはまだ君だけど。魂が不安定だから、精神も不安定でね。僕の名前を呼びながら後を付いてくるんだ、カワイイでしょ」

 魂を封神台へ飛ばす時、全ての魂を飛ばすわけではない。魂が再び返りやすいように少しだけ魂を残して、よすがにしておくのだ。
 だから、この堕とされた己の肉体は、自分であって自分ではない。だが間違いなく、僅かだが『己の魂の欠片と思考』を持っている。かの魂は、三清であるという自負と共に、燭竜に抱いていた憧れや思慕という矛盾した想いを残してしまっていたのだ。その自分に課せられた『役職』という枷を外せば、当然『想い』だけが残り、そうなるだろう。

「そうか、わしの身体をそなたのモノにしたのだな」

「そうだよ。いい出来でしょ。これで僕も外の世界に出られるんだ。最近は少しばかり借りている時もあるよ」

 それを聞いて、太上老君の突如視界がぼやけた。目頭が熱い。
 ぽろり。ぽた、ぽた。
 思いがけず涙が溢れ出す。

「どうしたの、いきなり泣いて。そんなに嫌だった?」

 黙ってふるふると首を振る。そんな感情ではない。泣きじゃくる事もなく、涙は止まることを知らずに湧くように出てくる。

「じゃぁ何? もしかして怒ってる?」

「違う……」

 怒りなどはない。なんとも言えない感情に整理をつけたくて、鏡を見ながら思考する。

「こんな事で泣かないでよ。現実を見せつけて少しイジメてやろうと思っただけじゃん」

 彼に造られた新たな自分。
 それはきっと、ここで自分の魂が果てても彼の傍に有り続けるのだろう。彼が「もういらないや」とその手を離すまで。そして枷のない自由な心で、しがらみのない真っ直ぐな想いで、彼に尽くすのだろう。
 そう、それがただ。

「羨ましいのじゃ……」

「は???」

 意味がわからないと燭竜が首を傾げる。

「そなたはこの『造った体』に満足しておるのだろう」

「当然でしょ。君の体だよ? 力も性能も申し分ない、最強に近い神の体さ。ぼんやりしてて自身で考えて動けないから、そこは使えないけどね」

「じゃろうな。だからわしは、嬉しくも思う」

「勝手に体を弄ばれてるのに?」

「不安定であろうが、残された魂の本質は変わらぬ。現に、そなたに懐いておろう?」

「ああ、うん。そう言えばそうなるね」

 確かに、燭竜は思い返す。『自分が入っていない時の彼』は、限りなく上の空に近くぼんやりしているが、己の言うことは必ず聞いたし、常に後ろにいた。まるで親鳥を追いかける雛鳥のようだ。

「当然じゃ、枷の取れたわしは、そなたと共にあれて嬉しいじゃろうからな」

「君……」

 ああ、そういうことかと燭竜も理解した。この変な矛盾だらけの神様は、自分の事が好きらしいのだ。邪な思惑で封じられた神様を、その封じた善なる神様は愛した。ただ、己の役目を全うする矜持と、世界を憂う優しい心は変わらないまま。
 まるで狂ってしまったかのように見えて、その矛盾はとても人らしいものだ。今もその想いに苦しんで、ここにいる。いつか自分が斃れ。燭竜が復活する時まで。
 助けを求めることなんていくらでもできたのに、彼はそうしなかった。
 己がここにずっと閉じ込められていても、邪神である己が変わることはないと思ったのだろう。だから愛する己に自由を返して、変わるチャンスを望んだのだ。
 けれど、邪な思いで世界を混沌に沈めて欲しいわけでもない。だから彼はそれなりの策を打ったと言った。
 ただ、その博打のような未来に、太上老君という駒は存在していない。封印が破られし時に死ぬからだ。

「わしも、そなたと世界を旅してみたかったのう」

「……。」

 思わず押し黙る。自分も思い描いていた、絶対に叶わぬ夢。

「同じ景色を見て、そなたを守り、守られ。隣で眠りたかった」

「僕は悪いことをするよ?」

「そなたが何をするかは今は別の話じゃ」

「だって隣にいたら、僕のすることで君は悲しむだろうし、絶対に僕を止める」

「そうかもしれぬ。だから、羨ましいのじゃ。何にも縛られず、善悪にも捕らわれず、そなたに愛され、傍にいられる『違う己』が。お主の力となり、手と足となれる『違う自分』が。どうしようもないと知っておる。感情が矛盾しておるなど百も承知じゃ」

 けれどな、と太上老君は続ける。

「どうしようもなく、嬉しく、同時に悔しいのじゃ。そうじゃな、この感情の名は……嫉妬と言うのであろうな」

「そこまで泣くなら、さっさと僕のもとに来れば良かったのに……」

「できぬ。そう知っておろう」

 善悪で区別するなら、太上老君は善なる神だ。燭竜が悪の神であるように。その根源を変えることはとても難しい。
 だが、太上老君は賭けた。自分のいない未来に、きっと燭竜が自分らしく、そしてかつての友に諭されたように、悪い神としてではなく生きられる道があると。
 そんな未来はあるのだろうか。自分とて邪神になりたくてなったわけじゃない。自分の言い分を、やりたいことを、それ相応の地位を、望んだらこうなったのだ。善悪の判断を行うとすれば、確かに悪い事にも手を染めた。だがそれは過程でしかない。
 今回だってそうだ。ここから出るための策を練って実行に移した。ただ、その過程で彼が死ぬことを良しとはしていない。

「僕だって、君の魂ごと全てを滅ぼしたいわけじゃないよ」

 面白くなさそうに燭竜が愚痴る。他の道があるならば知りたいし、そちらを選ぶ。

「わかっておる」

 しかし、この封神台から出るには術者を殺すしかない。
 でなければ、こんな傀儡を造らないだろう。

「のう、燭竜よ」

 鏡に映る、同じ姿をしているのにどこか陰鬱に見える自分を見ながら、太上老君は語りかける。
 なんとなく、その言葉の続きを聞きたくない気がして、燭竜はあえて聞こえないふりをするために顔を背ける。それが無駄だとわかっていても。

「わしの魂がここから消えても。……このわしを、どうかずっと傍に置いてやっておくれ。お願いじゃ」

 それは精一杯の虚勢だった。手の届かなかった想い人に手の届く、虚ろな自分。でもそれでもいい。偽物のような残りかすのような自分でもいい。彼の力になれるなら、嬉しいと思った。
 自分はなれない。隣にいても永遠に矛盾する想いを抱いて、もがき苦しむだけだ。自分は困ったり苦しんでいる人を放っておける性格ではない。それはもう、魂に刻まれたようなものだ。だからその魂が変質しない限り、彼の力にはなれないのだ。

「そなたには地獄の数千年であったかもしれぬが、それでもわしにとっては幸福な時間だったのじゃ。今はもう、それで良い。さあ、この鏡は返そう。見せてくれたこと、感謝するぞ、燭竜よ」

 彼は泣きながら、悲しそうに笑った。その表情に燭竜の胸に痛みが走る。こんな顔をさせたいわけじゃなかったのに。
 太上老君は丁寧に鏡を返すと、顔を隠すように踵を返して去っていった。燭竜は返された鏡を抱えながら、呆然と立ち尽くす。

「嫌だよ。誰が頼まれてやるものか」

 この数千年が地獄だった?そんな事、誰が決めた。
 確かに野心溢れる毎日だったし、入念に計画も練ってきた。だが不幸だったなんて誰も言っていない。自由は欲しかったが、ずっと隣にいた彼が気に入らなかったわけじゃない。外に出たかったが、壊したいわけでもなかった。
 手に入れて、自分のものにして、自分だけを見るようにさせて、ずっと隣に置いておきたかった。それができるなら、不幸でもいいから傍に居て欲しかった。
 だが、現実はこうだ。

「いや、まだだ……。まだ諦めたりしない」

 自由も、彼も、全て貰う。否、奪ってやる。全てを奪えなくて、何が邪神だ。
 彼は宙に鏡を捨てると、未来へとゆっくり歩き出した。






太上魔君が実装された時が私の転機で
あのスカした顔してるウチのアタッカーの燭竜に
『太上老君』が闇落ちされた姿なのだと知った時は、たまげました。
なにそれえろい……

でも待てよ? じゃぁ太上老君はどうなっているんだ?
死んだわけでも分裂したわけでもないよね???
と、考察もしましたが決定打は最後まで出ず……でもおそらく
「外の身体を太上魔君にして操れるようにした」のと
「本来の太上老君の魂は、まだ封神台の中で燭竜の本体を封じている」
で間違いないと思われます。
燭竜も同じく外には出られないんですが、スパイは放ってますし
既に封神台の実権を握っているからこそ、操る(乗っ取る)かたちであれば外に出られるのかな~
とか……

まぁ、考えるだけで真実は謎のままなんですけどね!


でもうちの太上老君は燭竜の事が好きだから、複雑な想いを抱くんだろうな
と思ってかきあげたのが今回です。
燭竜は野心が優先だし、太上老君も世界を優先させてる。
けれど互いに好き。一番の存在ではないだけ。
っていう私の萌えドンピシャな話になるだけでした……てへぺろ。

あと燭竜はすごく分かりづらいけど太上老君の事が好きなので、魔君は別ですね。
想いの強さとしては
燭竜 →(→→→→→)←←←(←)太上老君
        ①↑    ②↑               ③↑       ④↑
①:好き
②:支配欲、憧れ、承認欲求、ヤンデレ、ツンデレ
③:好き
④:でも世界を混沌にさせてはいけない

って感じです。複雑……


しかし、自分だけが楽しいやつだな、ほんと。

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