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忘らるる僕から、幸せを君に(イナズマイレブン グラン×レーゼ)

登場人物:グラン レーゼ

CP傾向:グラレゼ

制作時期:2011年


ゲーム寄り設定のグラン様とレーゼの小説モドキです。
適当にセリフだけのプロットに補足を付け足したものなので、あくまでモドキで……。






「とうとう、負けちゃったんだね」

 暗い暗い、無機質な部屋に、静かで抑揚のない声音が響く。
首を垂れて、地を見やったままの彼は無念なのか、はたまた消沈しているのか、感情を瞳の奥に秘めたまま遠くを見ていた。

「申し訳……ありません……覚悟はできております」


(そんなこと言わないで)


 言えない言葉を、心で呟き、敗者の姿を黙って見据える。
沈黙が場を支配してしまう前に、彼は顔を上げると、初めて意思を宿した目でハッキリと告げた。

「お願いがあります。私はどうなっても構いません。どうかメンバーの者達にはご慈悲を」

そうだ、この子は優しかった。昔からそうだった。
今だって、変わってなどいないのだ。
仲間を思いやる心は、人一倍強い。

「考えておくよ」

本当は、抱擁して慰めてやりたかった。
結果は伴わなかったが、よくやったと言ってやりたかった。


(君はただ、僕たちの先兵となっただけなのに。何も悪くなどないのに)


けれど、今のこの世界は、情けなど不要だったのだ。
ここで情をかけたとしても、きっと同じ事が繰り返される。
そして、この子は苦しみ続けてしまう。

だから……

一歩進むと、明るみに出た。
きっと強い光で、自分の表情は彼に見えないだろう。
好都合だと思って、淡々と処理を告げる。

「レーゼ、お前はエイリアの力で記憶を消して、ここから追放する」

それは、マスターランクの我らが相談した事でもあり、エイリア学園が取り決めたものだった。
もう絶対に覆らない。それを彼も知っているはずだ。
彼の瞳が、痛ましげに瞬いた。

「グランさま……私はもう、不用なのですか?」


(違う。けれど君はここに居てはいけない、もっともっと辛い目にあうかもしれないから)


本当の事は、いえない。
だから、極力無表情を装って、短く答えた。

「そうだよ」

沈んだ表情を隠さずに項垂れる彼を、諭すように語り掛ける。
無表情を装うけれど、決して君に悲しい思いをさせたいわけじゃないんだ。


(幸せになって)


「君はレーゼという名前を捨てて、一からやり直すんだ」


(そんな悲しい顔をしないで、忘れたらきっと幸せに笑えるから)


カツンと一歩、階段を降りる。

「最後に、レーゼ」

「……はい」

カツンカツンと彼に近づく。
彼は死刑宣告をされた囚人のように、消沈した顔で虚ろだった。
こんな彼を放り出すなんて、嫌だ。ただ、そう思った。
どうせ、忘れてしまうのだもの、少しだけならいいじゃないか。
そう踏ん切りをつけて、つと、手を伸ばした。
そして囁く。


「僕は君が好きだったよ」

「え?」

息の仕方を忘れたかのように止まる彼を、優しく抱き締める。
そう、ずっと、君とこうしたかった。
抱きしめて想いが伝わればいいのにと心から願った。
僕は君を傷つけたいわけじゃない。
びくりと彼の肩がはねて、身を硬くするのがわかる。
彼にとって、僕は怖い存在なのだろう。
そう躾けて来たのだから、今更彼を怒れなかった。

「お願い、拒まないで」

できるだけ、優しく問いかける。


(もう君は、僕のことを忘れてしまう)


(例え最低な奴だと思われていても)


(破壊の道具にして、そして捨てた事を恨まれていたとしても)






(それでも君に忘れられる方が、よっぽど苦しいよ)






きっと、これが最後だろうから。
もう二度と会えないだろうから。
全てを忘れてしまう彼を、忘れたくなくて。

「大好きだよ、レーゼ。幸せにね」





 遠い日の秋空を思い出した。
おひさま園の遠足で、僕は遠巻きに遊んでいる彼を見ていた。
彼の髪は、今よりも短かったけれど、秋の落ち葉に流れた髪は、春を思わせるくらい鮮やかだった。
でもそれ以上に、みんなの、そして彼の笑顔が眩しかった。
懐かしい気がするこの匂いを、絶対に忘れないでいようと、心に誓ったのだ。

 そんな彼と、さよならの時が来た。
道を間違ったなんて、とうにわかっている。
それでも譲れないものがあったのだ。

胸に下げた、エイリア石が強く輝いて、彼を包み込んだ。
彼の記憶を消して、幸せな世界に帰してあげて。
この子は悪くない、何も悪くないんだ。
さよならを告げるように、トンと肩を押した。
ゆっくりと、彼が離れていく。
まだ、腕に温もりが残っている。

そうだ、僕はこの温もりを絶対に忘れない。

彼は、目から涙を溢れさせて、叫んでいた。
それももうかすれて殆ど聞こえないのに。
ただ、自分を呼んだことだけはわかった。
それだけで、思い残すことはない。

「グラン…さま……私は…………私も、貴方のことが………!!!」




光が消えたら、君は全てを忘れているのだから……



「さようなら、僕のレーゼ」




幸せを君に。







基山ヒロトと緑川リュウジでなく、あくまでもグランとレーゼな二人を書きたかったんですけど、ムムム……。
フィーリングで流し読みしといてください……(あ、逃げた)

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