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勇気か無謀か……(三国無双 夏侯惇×司馬懿)

登場人物:司馬懿、夏侯惇

CP傾向:惇懿

制作時期:2004年かな?

とある戦場にての二人。

※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
 本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
 それでもいいよ!という方のみお読み下さい。











 夏候惇は前線にて大剣を振るっていた。
敵の腹を裂き、胸を突き、腕を落とす。
余裕のあるときは血しぶきを交わし、更に懐に飛び込んで一閃すれば、
周囲の敵は血ヘドを吐いて崩れ落ちてゆく。
 前線だけあり敵の数は多いが、戦意や士気は低かった。
怯えた敵兵を一瞥すると、逃げるように後退する。
夏候惇は面倒くさそうに舌打ちをした。
バラけると一気に敵を屠れないので面倒きまわりない…。
 しかし武将は戦で敵の息の根を止めること仕事だ。
面倒で敵を切らない…などとはいきはしない。
仕方なく、割と固まっている方向に向き直り、武器を構えると、勢いよく地を蹴って間を縮める。

その時だった。

 背後の辺りで激しい閃光と共に脳天に響く音が鳴る。
こんな芸当ができるのは魏の中でも数える程しかいない。
嫌な予感もし、何者かと思い振り替えると、左頬の真横を紫電の熱線が通りすぎて行った。
続いて響く男の高笑い。

「ウヮーーッハッハッハッハ!」

……は?

 ピリッと頬に刺激を感じながらも振り返ると、そこには予想通りの人物が羽扇を構えて立っていた。
 紫と紺を基礎とする、戦闘に似合わぬ鮮やかな色の文官衣。
走り辛そうな丈の長さに、かろうじて頭部の防御に被られた鎧。

「司馬懿、何故おまえがここにいる!?」

「夏候将軍!無事のようだな」

「人の話を聞け!何故軍師のおまえがここにいるかと問うている!」

 そう、信じがたい時もあるが、このにやりと不適に笑うこの細い男こそが、
我が国きっての知将であり、現在の総兵を統括する大軍師でもあるのだ。
軍師とは策を練り、戦闘中あらゆる物事に対処し指令を飛ばす、指揮官である。
いわば、総大将である曹操に次いでの重要人物。
最優先に守られるべきである、こちら側の急所。
その軍師である司馬懿が、戦争のまっただ中この前線で自ら武器を振るっているのだ。

「当然、敵を倒す為であるが…何か?」

 先程の無双乱舞で残った敵兵を、素早く屠って、夏候惇の方へ向き直る。
運動は慣れていない為、浅く肩で息をしているが、その顔には絶対なる自信の色が写されていた。

「馬鹿か!不本意だが貴様の身に何かあれば士気が落ちる、確実にな!
そんな事もわからんか!?」

「敵軍はもうすぐに撤退行動に出るだろう。そう読んだ」

「…だから人の話を聞け!」

「敵の戦意はない、分かるか?戦う意思はないのだ」

人が怒鳴っているにも拘わらず、しれっとそっぽ向いて語り続ける。

「少なくとも、民兵にはな」

「しかし、貴様が前線で孤立すれば、立場は逆となるだろう?」

「だが、敵の総大将を倒してしまえば、この戦いは終わる」

……一体何をいっているのだ、この男は?
このまま行けば必ずや勝利はできる。それは数で有利だからだ。
田舎の小さな反乱など、すぐに片がつく。
何故軍師が突撃せねばならんのか?
何も無理して危険を冒してまで勝利を急ぐ必要はないのだ。
夏候惇には理解できなかった。

「将軍。戦いとは何で戦うか知っているか?」

「………。」

「国ではない、武器でもない。人だ。そして士気が大きく関わる。
決して欠かせないのは人。例えこのような小さな戦でも戦死者は出る、分かるか?」

「ああ」

「軍師の務めは、自軍を勝利に導く事以外にもう一つある。
自軍に最大限損害を出さずに勝利を収めることだ。
そして敵兵を心腹させ寝返らせる……それこそが軍師の役割」

「だからといって、自分の身を危険にさらしても良いというわけではないだろうが?」

「何を言うか」

 司馬懿が狐のように不適な笑いを口元に浮かべる。
不吉なように思えるがー実際考えていることは不吉なのだがー
親しい者にだけ見せる、素顔の一つでもあるのだ。これが。

「その為にそなたの所へ赴いたのだ、危険に曝されるはずがあるまい?」

やっぱりか、と言ったように肩を落とした夏候惇の肩に、司馬懿の手が合わさる。

「付いて参れ、そして私を守って見せよ」

そう言って、彼は手短な葦毛に跨り始める。
やれやれ、と身を起こした夏候惇は、小さく溜息をつくと大剣を再び握りしめる。
司馬懿は魏にとって、大切な存在であったが。
夏候惇を動かした感情はそれだけではなかった。また別の特別な想い。

「理屈は分かった、しかしその根性は軍師として厄介極まりないな」

「曹丞相閣下にはもう申してある、許可も取った。
成功すれば少しながら褒美も下さる、ということだ…それを全てそなたに回す。
それで、良かろう?」

「もう何でも構わんわ」

 夏候惇自身も手頃な馬に飛び乗り、綱を引く。
その、割とやる気のありそうな夏候惇を見た司馬懿は、
先程とは違うような柔らかい狐の笑みを見せると、馬の腹を蹴る。
目指すは総大将の首一つ。



 数刻後、魏の軍勢に勝利の歓声が上がった。







突発で書いた、惇懿SSでした。
もっと最初は長かったんですが、大幅カットしました。
……ら、なんかもひとつな面白みにかける話になってしまいますた。

惇懿にも私なりの拘りがありまして。
司馬懿は強気だとか
軍略を練ったり必要な時は冷静のくせに割と普段は喜怒哀楽が激しい奴だとか。
高笑い必須だとか。
惇兄はちょっと尻にしかれ気味な感だとか…。
……よ、夜は違いますがね!(ぇ?)

ちなみに孫子兵法では
どんな姑息な手を使おうとも損害を出さずに勝つのが
上策とされていた……はずなんです……よ?

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