登場人物:シンドバッド、ユナン
CP傾向:シンユナ
マギ本編その後の100%妄想話、五作目で最終作です。四作目はこちら
本当は書きたいところだけ書くのが二次創作なんでしょうが
この話に至ってはここまで書ききらないと終われないな、と思ってました。
結果はどうあれ、私なりに二人を幸せにくっつけようと足掻いた結果でもあります。
どうか、最後までお付き合いいただければ幸いです。
5:残響、君の在ぬありあけ その日、何度かユナンは目を覚ましたが、いずれも短い時間だった。それでもシンドバッドは付きっきりで世話をし、何かと話しかけ、隣で書物を紐解いて読み聞かせてやったりもした。
しとしとと降り続ける雨の音だけだと、あまりにも寂しかったからだ。
たまにユナンが喋りたそうにするが、何言か言葉を交わしただけで、すぐに眠ってしまった。
眠り続けるユナンに、せめてこの声が子守唄になって届けばいいのにと念じながら、ユナンが眠ってもなるべく穏やかな声でシンドバッドは語り続けた。
やがて夜は更けていき、朝が訪れる。土曜日。話が真実ならば、今日が最期の日だ。
朝からユナンは目を覚ます様子が全くなかった。シンドバッドは寝ている間にいなくなられては困ると、隣の椅子に座ったまま、ユナンの手を握りながら毛布に突っ伏して一夜を明かした。
多少は重いだろうに、ユナンは呼吸を乱すこともなく、苦しむ事もなく、静かに眠っている。おそらくはこの死は老衰に近いものなのだろう。そこに苦しみはないはずだ。きっと眠るように逝く。愛する者の最期が、苦しみに満ちていない事だけは救いだった。
しとしと降り続けていた雨脚は段々と酷くなるばかりで、このままではユナンが起きても声が拾えないんじゃないかと一抹の不安がよぎる。だが、シンドバッドはまだ温もりのあるその手を、祈るように握りしめていた。
時たま、思い出したようにユナンに話しかける。初めて会った日のこと。聖宮へ連れて行ってくれたこと。金属器の使い方を教えてくれたこと。まさか伝説のマギだと思ってもいなかったこと。それに気づいた時の何とも言えない高揚感。暫く会えなかった時と、完全に存在を忘れていた波乱の時代。そして国を失い絶望した日々と、再興した後のやりとり。記憶を消され、それでも色々語り合ったこと。長い間、腐れ縁のような悪友としての付き合いも、実のところ嫌いではなかったこと。マギと王の器というものに憧れ、嫉妬していたこと。アルバに戦いの報告を聞かされた時は何とも思わなかったが、帰るまでに何度も思い浮かべたユナンというマギの存在。そうして、この世界に戻った時に、たったひとり残っていてくれた嬉しさ。最後に想いが通じた喜び。
それらは、これから失う絶望を、必ずや緩和してくれるものだった。
「シン……」
「ユナン! 目が覚めたのか!!」
「良かった。まだ、少しだけ……目が……開いて」
「いい、無理に喋らなくても」
「ううん……話をしたいんだ。君と、ずっと、こうしたかったから」
汗ばんた手を、少しだけ握り返される気配を感じた。ぴくりと動いただけの微弱なものだが明確だ。シンドバッドは反応する。
「手なんかいくらでも握っててやる、ずっとずっとここにいてやるから」
目を開けたユナンに、シンドバッドが焦る。絵空事でもいい。なんでもいい。ユナンに少しでも安心して、笑って貰いたかった。ユナンはそんなシンドバッドを細めた目で確認すると、困ったように笑ってから再び目を伏せる。おそらく、もうあまり見えていないのだろう。
「ダメ、だよ。君はまた、世界を……見に行くんだ」
「俺を知ってる奴が誰一人としていない世界をか? お前のいない世界をか?」
なんて酷なんだ。
そう思うが、言葉にはしなかった。それくらいの分別はシンドバッドもわかっている。
「そう……。君の冒険譚は、終わって……ないもの。世界と君は……まだ、繋がってる。だから、ぼくの……だいすきだった……君のおはなし。きけなくてもね、紡がれるよ。必ず」
「ああ、わかってる。わかっているさ」
「君は……冒険者の方が、向いてるよ。きらきらしていて、たのしそうで……いつだって、輝いてた。おうさまの……君は、ちょっと……こわいな」
茶化すように、ゆっくりとユナンが喋る。たくさん喋るとしんどいのか、紡がれる言葉はゆっくりだが、それでよかった。声が少しでも長く聞けるのであれば、全てはそれでよかった。一言も聞き逃すまいと、シンドバッドは手を握り続ける。
「わかった、王もやめる。お前がいなくなったら、もう王になる必要もないからな」
「うん、うん。それがいいよ。……ああ、そうだ、言い忘れる……ところだった」
ふと、ユナンが思い出したように瞼を開ける。そこにはもはや虚空しか移されていなかったが、その分、意識が少し覚醒したようだ。
「何をだ?」
「アラジンがね、君に……遺したもの。君にだけ入れる……迷宮だよ」
「は? 迷宮?」
「ふふ、おもしろい、でしょう。もう、誰も殺さない……アラジンのつくった……やさしい、やさしい迷宮、だよ。もしも、僕が……君に会えないまま、ここで潰えていたら、きっと君は……その迷宮に行くだろうって。その最奥に、ここの……場所を伝える者が……いるんだ」
確かに、ここを知らないまま世界に出て、迷宮がまだあったなら、間違いなくシンドバッドは挑戦していただろう。そこまで読まれての計らいである。思わず舌を巻いた。
「ここに来させるための策は打ってあったのか。ったく、賢しい奴らだな」
「ふふふ、僕たちマギだもの。抜かり……ないでしょ」
「ああ、ここを出たら必ず行く、お前も連れて必ず行く」
その最後の迷宮の守護者に、ちゃんとここに辿り着いた事を報告しに行こう。そう強く約束する。ユナンの云う「世界との繋がり」は例え長い時が経とうとも、こうして存在しているのだ。終わりじゃない、ここがきっと始まりだ。
「ありが……とう、シン。ほんとうに、さいごに……会えて良かった。あのね、僕は……しあわせだったよ」
「ああ、ああ……俺もだ」
「ほんと? だったら……うれしいな」
「本当だとも。例え結末がこうだとわかっていても、俺はお前が生きていてくれて嬉しかった! 幸せだった!」
「そっか。……ああ、やだな。もう……寝たくないのに。熱が、遠ざかって……瞼が、重くて……君が、遠くに……いってしまう」
だが、それが分かっていても不思議と目頭は熱くなった。誰かを亡くす時の胸の痛みは、昔も今も変わらない。鼻の奥がツンと痛い。ああ、いなくなってしまう。とうとうその時が来てしまう。
「ここにいる。俺はここにいる。お前の隣にいる。お前の王だ」
シンドバッドは声が震えないように極力努めながら、祈るように握っているユナンの手を額にあてた。
「……ん、こえ……、きこ……る……よ……。…………。」
どんどんか細くなっていく声は、とうとう口が開くだけで掠れるようにしか鳴らなくなり、やがて沈黙が流れた。それを認めたくなくて、シンドバッドは顔を上げると、ユナンの耳元で問いかける。
「好きだ。ユナン。なぁ、まだ聞こえてるか? 届いているか? ありがとうな、長い間苦しみ続けて、短い間でも一緒にいて、俺のマギになってくれて。……愛してる。愛してる。なぁ、届いているか? まだ俺の声が聞こえているか? 俺の想いは届いているか?」
もうユナンは殆ど顔の表情も動かないのに、それでもシンドバッドは感じた。ユナンが笑っている。いつものように、少しだけ困ったような、優しい苦笑を浮かべて笑っている。作り笑いじゃない、本物のユナンの微苦笑だ。
「なか……ないで……。どうか、しあわせに…………ね」
ユナンの瞳が静かに閉じる。それがもう永遠に開かぬものだと、シンドバッドは直感で理解した。
それが最期の一言だった。最期の最後で泣いている事を見抜かれてしまったのは悔しいが、それよりも心を締め付けるような虚無の方が痛かった。握っていた手から力が抜けていくのがわかる。それでも滑り落ちないように、シンドバッドは握り続けていた。
「ユナン!」
「…………」
声を張り上げて、かの者の名を呼び叫ぶ。
しかし、もう返事はなかった。わかっている。わかっているのに、名前を呼ばずにはいられなかった。
「…………ユナン……ユナン」
まるでいつものように、少し眠っただけの、本当に美しい亡骸だった。これも暫くすると塵芥となり消えるのだと言う。
シンドバッドは涙を袖で拭うと、その遺体に一度だけ触れるだけのキスをした。
もう動かなくとも、クローン体であったとしても、愛した者の亡骸に変わりはない。
頬を撫で、髪を指で梳いていると、少しずつ光に溶け込むように体が消えていくのがわかる。同時に、隣室から扉の開く重い音が聞こえた。
ここには何も残らない。彼が着ていた白い衣服くらいだ。シンドバッドは袖で涙を拭き、意を決して立ち上がると、果物ナイフを一つ手に取り、ゆっくりと部屋を出た。
ユナンが息を引き取った後、中央の白い扉が開く。それは床に伏せたユナンより聞かされていた情報だった。そこには288年の時を重ねたユナンの本体があり、クローン機能停止をもってその扉は開かれるらしい。そして、役目を終えたのちに滅ぶ。
「もし、僕が死んだら、すぐさま神殿の奥に行くように」
と、それだけ言い含められていた。何故かと聞いたら、長くは開けておけない設計にしてあると言われた。意味がわからないままも頷いていたが、今なら何となくその意味がわかる。
いつものリビングに出ると、やはり神殿への扉は開いていた。これまで開けようと思ったことはなかったが、押しても一人で開きそうにないように見えるくらい頑丈で重そうな石造りの扉だ。それがきれいに左右に開かれている。
中に入ると少し薄暗い廊下が真っ直ぐ続いていた。両脇にはリビングへ流れ出ている湧き水が通っている。それらを不思議な光の苔が照らし、なんとも神秘的な雰囲気をつくりあげていた。
途中に部屋が2つ3つあるが、どこも施錠されており、開ける術もないシンドバッドは真っ直ぐと奥へ向かう。そうして、薄い光の膜を通り抜けると、そこは正しく神殿だった。
光る苔のおかげか不思議と明るく、いたるところから流れ出た水が周囲を循環している。これらがリビングに流れ込んでいるのだろう。部屋の中央には祭壇のようなスイッチだらけの卓上板があり、その奥に棺のようなものが設置されていた。そこにはいくつもの管や線が装置に繋がっており、どうやら先程まで動いていたようだった。
真っ直ぐにその棺に近づくと、シンドバッドの予想通り、そこにはユナンの遺体が横たわっていた。
半分は透けた物質で覆われており、体は見える。クローンと同じように真っ白の衣を身にまとっていた。だが、顔は見えなかった。目の周囲には何か取り付けられており、口と鼻にも覆うように何かが取り付けられている。皺の寄ったか細い腕にはいくつもの管がとりつけられており、この装置自体がユナンを生かすものだったことが伺えた。
例え顔が見えなくともユナンだとわかる。好きだった白金の紙は白い銀の髪に。きれいだった顔は皺だらけに。しなやかだった手足もやせ細り皺だらけだった。今や昔の面影はない。
だが、こうまでして生きようとしてくれていたのだ。自分のために。たった一週間、共に生きるためだけに。
ただ愛しいと思った。それを美しいと思った。迷わず触れたいと思った。最後にその顔だけでもひとめ見たいと思った。装置の開け方がわからず、少し四苦八苦したが、適当に触っていたら、空気の抜ける音とともに何とか透けている部分が開いた。
「ユナン……」
まだ硬直が始まっていない体は仄かに温かい。先程まで生きていた証だ。装置をゆっくりと取り、その頬を撫でる。見たかった瞳はもう瞼に隠されてしまっていたが、最後まできっと優しい空色だったのだろう。
チリチリになってしまった髪は、相変わらず三つ編みに結ってあった。シンドバッドは懐からナイフを出すと、一言ユナンに声をかけた。
「ちょっとだけ、貰ってくな」
金色を失ってしまったが、それでも美しい銀色をしていた。艶はなくなってしまっていても、とても綺麗な髪だった。持っていた木綿の布にそれを大切に包む。そうしていると、棺の中のユナンの手に、何かが握られている事に気がついた。手紙だ。
それをそっと抜き取り、裏を見て、表を見る。そこには予想通りの名前が刻まれていた。
『シンドバッドへ
走れ!』
やはり、自分が死する可能性も考えて、あらゆる策を打ってきたのだろう。この手紙も、おそらくユナンが自分に伝えたかった一部だ。
だが、それを確認したと同時に、激しく足場が揺らいだ。よろけるシンドバッドは棺にしがみつき、転倒を回避した。同時に奥から岩が崩れるような轟音が聞こえる。
「何だ!?」
シンドバッドは手紙を服の中に、落ちないようにしっかり詰め込むと周囲を警戒する。するとどうだ、少しずつ部屋の奥から亀裂が走っていくのが見えた。手紙に書いてあって投げやりな一言の言葉。それを咄嗟に理解する。ここは今から崩れるのだ。
もっとユナンの顔を見ていたかったが、生前の彼がこの施術自体が禁忌であると強く言っていた事を思い出す。全てが終わった今、その役目を終えたこの体は神殿ごと破棄されるのだ。二度と人が触れられないように。禁忌を外へ出さないように。トリガーはおそらく、ユナンの棺を開けた事だろう。
シンドバッドは一目散に廊下へと走り戻った。本当はもっと長く顔を見ていたかったし、ゆっくりお別れもしたかった。だが、その余裕はないらしい。ただ、ここにいる者が逃げられるだけの猶予を持って、奥から少しずつ崩壊していく。周囲を確認しながら走る余裕はあった。パラパラと天井から小石や砂埃が落ちていくのが見える。崩落を止める術はない。
最後に一瞬、ユナンの棺を振り返る。そこには底が抜けて地底へ沈みゆく装置が見えたのみだった。どこまで崩壊するのかわからないシンドバッドは廊下を走りきり、いつもの部屋から外へと出た。
暫くは岩が崩れ去る轟音が鳴り響いていたが、やがて音は止み、いつもの静かな庵に戻っていた。そこでいつの間にか雨も上がっていた事に気づく。
安全を確認しながら部屋に戻ってみると、どうやら崩壊はこの居住区までは及ばないらしく、見事に『きれいに神殿への扉が閉まっている』いつものリビングがあった。設計的にここは守られる造りだったらしい。
勿論、ジュダルの黒い部屋も無事だ。だが、神殿の両脇から流れていた水の一方は止まり、もう片方は濁った泥水を流していた。それでも水が絶えないようにという設計だったのだろう。じきにこの濁流も清い水の流れに戻るはずだ。
こうして、様々なものを失ったシンドバッドは、その日だけは何もせずにリビングの椅子に座って宙を見つめていた。
この数日で色々な事がありすぎた。悲しいのに涙はもう出てこなかった。
ユナン曰く、言葉には力があるのだ。
『なかないで』
最期にそう願われてしまっては、どうしようもなかった。否、泣いても良かったのだ。誰も見ていない。誰も聞いていない。けれど、ユナンの顔を思い浮かべると、悲しみと同時に、胸が熱くもなった。ここで起きた全てを忘れたくなくて、時間をかけて思い出し、忘れないようにと心に刻む。
日曜日に、彼はいなかった。それは最初からわかっていたことで、決められていたことで、覆せない宿命だった。だが、もうシンドバッドはその宿命を恨むことも、妬むこともしなかった。
それは、彼が必死に、友と作り上げてきたあの時間と空間を踏みにじる行為でもあるからだ。
悲しみは尽きない。けれども、笑って前を向こうと思った。
数日後、全ての書物や遺品に目を通した彼は、身支度を整えていた。
黒い部屋に食物を詰め込んで、いつでも来れるように置いておく。部屋も清掃したし、ユナンの墓も作った。そして、一年に一度ここへ来ることを誓ってシンドバッドは新たな門出を開くのだ。
誰かの願いが通じたのか、その日も清々しいほど晴れていた。
「ここの天候は、人の心理を読むんだな。なるほど」
流石に出来すぎていると感じなくもないが、門出にこれほど良い日はない。
「じゃあ、ユナン。みんな。行ってくるな!」
完璧な旅支度に、様々な贈り物と、何よりも大切なユナンの手紙が詰まっている袋を肩に担いで、シンドバッドは庵を出て歩きだす。
さて、まずは何処から世界を周ろうか。
彼の足取りに未練はなく、迷いもなく、しっかりと踏みしめられていた。
七海の覇王、シンドバッドの冒険はまだ続く。
おまけ
『ユナンの手紙』
君がこれを読んでいる時は、もう既に僕はこの世にはいないことだろう。僕が死ぬまでに君に会えたのか、会えなかったのかはわからない。だから、もし君に会えなかった時のために、この手紙をしたためておこうと思う。
僕が君に伝えたかった事はたくさんあるのだけれど、どうしても伝えたいことはたった二つだ。少しの間だけ、この手紙に付き合ってほしい。
さて、まずひとつ目に伝えたかったことは、僕の『王の器』は君だったということ。アルバに宣言したから、もしかしたら君の耳にも入っているかもしれないけれど、僕はきっと最初から君のマギだったんだろうね。
でも僕は転生し続けるマギだったから、過去の失敗を恐れて誰も選ばない選択肢を選んだ。だから君が「マギになってくれ」と言ってくれた時、本当に本当に嬉しかったし、同時にとても怖かったよ。
本能ではこの上なく嬉しいのに、それを人の理性で抑え続ける事を僕は選んだんだ。僕は『失敗を続けるマギ』である自分のことが怖くて、この力があっても世界を平和にできるだなんて確証が持てなくなって、疑心暗鬼になっていたんだ。長いこと、君につれない態度を取ってしまったことを謝るよ。ごめんね。
君が世界を変えて、戦いの少ない世界になったと聞いた時は、本当に嬉しかった。 そんな君の世界の邪魔をさせたくなくて、僕は君のマギとして武器を手にとってアルバと戦ったんだ。それが例え、君の意思でないとわかっていても。君の傍にいるマギが誰かわかっていても。
さあ、ここでふたつ目に伝えたかったことだ。
僕は君の事が好きだったんだ。
書いてしまえば何てこともない文章だね。この気持ちがどういう好きなのかは、長く時間を生きすぎた僕にはわからないし、ただのマギの本能なのかもしれない。けれど、僕は確かに、君を愛していた。
それなのに僕は怖がって、一切それを君に伝えては来なかった。あんな事があって、君がこの世界からいなくなって、二度と会えないかもしれないとわかった時、僕は初めて、とても後悔したし反省したよ。
もしあの時、僕が他の選択肢を選ばずに君を選んでマギになっていたら、何か変わったのだろうか?それは僕にはわからないけれど、何故それまでに一言でも気持ちを伝えようとしなかったのか、本当に僕はバカだと自分で呆れたよ。
君に会いたい。そしてこの気持ちを伝えたい。君がいなくなっても想いは増すばかりで、消えてくれそうにもなかった。だからこの気持ちを手紙に遺すよ。
君を愛してる。君が何をしても僕は君の事を愛し続けているから、だから君は、君らしくこの世界を生きてほしい。
最後に、この施設は、君に何かを遺したり伝えたかったりした皆が遺した、君のための神殿だよ。同時に僕の墓標でもある。僕にかけられていた施術は残念ながら後世に伝えてはならないものだから、ここで破棄されるけれど、その他の君のために残されたものは全て君のものだから、気にせずに使ってほしい。
それじゃぁ、ここでさよならだ。あまり湿っぽいのは好きじゃないからね。
僕が転生することはもうないけど、だからこそ君のために削ったこの命を誇らしく思うよ。最後までありがとう。
だいすきだよ。
君らしく元気でいてね。
あと、めいっぱい幸せになってね。
親愛なる王の器へ
君のマギより
長くて読みづらい文章の中、驚異の6万字近く……お疲れ様でした。
同時にここまで読んでくださってありがとうございます。
シンユナを好きになってしまったマイナー人間としましては
最後までシンドバッドとユナンの因果が描かれなかった事が本当に悔しくて
「誰かユナンさんが延命して、みんな亡くなって独りになった世界で、シンドバッドを待ち続ける……そんな話書いてよ~!」とかTwitterで呟いてたんですが
マイナーな上に、私に書ける話は私しかいなくて、結局書くことになったのがこの話です。
でも、おかげでやっと言えます。
これが!私の!!シンユナだーーーー!!!!!!!!!ラストを迎えたのでいつも以上にgdgd語りますよ……!
読みたい方だけどうぞ……
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私はシンドバッドが行った「人としての行動(聖宮を強奪するという略奪行為や、我欲での世界洗脳)」は許されざるものだと思っていました。おそらくそれらは、シンドバッドが国として軍隊を持っていた頃、間違いなく禁じていた『人としてやってはいけいこと』だからです。
なので、そんな彼が、あのエンディングの後に笑って皆がいる世界に平然と戻って来て、皆に許されて受け入れられるとか、それは流石に嫌でした。
彼の行った行為に対し、因果応報……また信賞必罰で、然るべき罰は受けるべきだと、本誌を追いながら常々思ってました。だから個人的に、彼には『皆のいる世界』に帰ってきてほしくなかったんです。
けれど、それだとシンユナ的にユナンさんはシンドバッドへ想いを伝えられる事もできないわけなんですよね。そんな描写、一切されてない。
仮にそれ以前にシンユナが恋人や愛を成就させていたとしても、その後にそれが『シンドバッドが捨てた世界』に含まれてしまうなんて、悲しすぎる。
では、どうすればいいんだ? と色々考えた結果がコレでした。
元居た人々は皆もう死んでしまって、残った彼も余命幾ばくか、それが彼にふさわしい罰というか、戻るならそれくらいでないと私が許せなかったんです。
本当に本編で二人の因果が全く描かれることもなく、本編もドバ冒も終えてしまって、シンユナに残されたものは平和な世界ではなく、絶望と虚無でした。
自分で「私の中のシンユナ」を描ききらないと、もう前にも後ろにも進めないと思ったんです。
あくまでこれは私の妄想、でもシンユナだったらこうなって欲しかったという願望でもあります。
他の人が読んで面白いかどうか、今でも疑問に思います。
だって推しが死ぬ話ですよ?w(※前にもそういうの他ジャンルで書いてますがw)
読んでる人、未来が一話で見えてるけど大丈夫???と思いながら書き終えました。
ちなみにこの『君のいない日曜日』というシリーズタイトルなんですが、タイトル見ただけで話の内容が予測できるという爆弾的なシリーズ名になってしまいました。
勿論『神様のいない日曜日』のパク……じゃないオマージュです。私あれのアニメ3話が大好きでして。今回のシンユナもあんな優しくて幸せで、それでいて悲しくて辛くて、心がキュっとなるような話を書きたくて頑張ってみました。そうなってるかは謎ですが!w
なので、ここまで読んで、少しでも面白かったり、心に何か残っていたとしたら、私はとても嬉しいです。
いつか誰かに認めてもらえるような作品になってるといいな~……(遠い目)
それでは、ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!!!感謝!!!!!
またネタが出たらシンユナを書くこともあると思います。その時は宜しくお願いしまーす!
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