登場人物:幸村 赤也
CP傾向:赤也×幸村
制作時期:2007年6月
赤也告白編の続き。まだ先に進めない赤也……。
微EROかもしれないフレンチキス有。
また短かくも長くも無いSS(´д`)
※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
それでもいいよ!という方のみお読み下さい。
「ゆきむらぶちょー」
みんなが帰った病室で、一人だけ残った切原赤也は
もぞもぞと服の裾を弄りながら、やけに甘えた声で彼の名前を呼んだ。
つい先日に告白して――好きとは返されなかったが――付き合うことになった
王者立海の気高くも美しい部長、幸村精市。
病気で弱っていたときは、本当に儚げな雰囲気を漂わせていたが
手術が成功してからは、以前どおりの気丈で凛々しいオーラが回復しつつあった。
だが、体力がまだ追いついておらず、数日後に退院を控えてはいるものの
まだリハビリ中らしく、病床から抜け切れては居ないらしい。
そんな幸村を見舞いに来た立海のテニス部レギュラーメンバーは
見舞いが終えると、気を使って早々に立ち去っていった。
勿論、二人の仲を知っているからだ。
去り際に副部長である真田が
「幸村に無理をさせたら、ただじゃすまさんぞ」
と少し怒気の孕んだ声音で注意していたのを思い出す。
赤也から「俺達が付き合うことにしたの話していいッスか?」なんて直入に聞かれた。
確かに、隠す必要も感じなかったし「いいよ」と二つ返事で返したのだが
なにもそこまで気を使ってもらわなくてもいいのにな、なんて苦笑を漏らしてしまう。
真田も柳も柳生も、ちょっとお固いところがあるから……それも仕方が無いか。
急に二人っきりになってしまったことによって、緊張してしまったのか
赤也はドギマギと視線を彷徨わせると、
次に思い立ったかのように声を上げた。
「ゆ、ゆきむらぶちょー」
「ん、どうしたんだ?赤也」
自信満々で話しかけてくるかとおもえば
いきなり意識しすぎなくらいにそわそわしたり
褒めてやれば、太陽のようににっこりと笑ったり
からかってやれば、フグのように膨れて拗ねたり。
赤也は本当に可愛い。
きっと、今回は意識しすぎてるんだろうな、なんて微笑ましく思いながら
幸村は出来る限り優しく声を返した。
「あ、あの……その……」
「うん?」
「ちゅーしていいっすか?」
うわー、また単刀直入な……。
でも、赤也の顔は真剣というか、切羽詰っていたものだから
幸村は躊躇うこともなく頷いていた。
好きな人と付き合っているというのに、その相手は今は入院中で
きっと、若くて落ち着きが無い彼のことだ、もやもやしてるんだろう。
キスの一つや二つくらいは、許してやろう、減るものじゃないし。
嬉々として近づく赤也に向かって、軽く顔を上げる。
こうすると、赤也が少しかがむだけで丁度いい高さになるはずだ。
赤也は、右手を頬に、左手を肩に添えると、ゆっくりと顔を近づける。
行動が遅く感じられるのは、赤也があがっているからなのか
自分も緊張しているからなのか、幸村にはわからなかったが
心臓の音がやけにリアルに感じていた。
ふわりと重なった唇。
赤也の唇は、温かく湿っていて、柔らかい。
しかし、その柔らかさを堪能していたら、不意に舌を差し込まれた。
「っ!」
咄嗟に驚いてしまって、肩が跳ねた。
キスとは唇が触れるだけのものだけがキスじゃない。
そんなことは知っているけれど、されたのは始めてだから、やはり驚く。
知識はあっても経験はないというやつだ。
赤也の口は、先ほどまで食べていたらしいチョコミントの微かな味がして
ちょっとだけ甘かった。
「……んっ……!!」
舌が絡み付いて、歯の裏をなぞられる。
ただそれだけのことなのに、背中がぞわりとして、頭がぼんやりしはじめた。
軽く、赤也の肩を押してはみるが、全く離れる気はないようで、
肩に添えられていた手で、いつの間にか押さえ込まれていた。
少し、息が苦しい。
鼻で息をしてみようとするも、上手く行かなくて
本当に息が上がってきてしまったものだから、赤也の肩を平手で切りつけるように打ち叩いた。
「!!!!!」
「あか……や、くるしい」
「ぃっで~~、幸村部長ひどいっすよ~~!!!」
「いつまでも……放さないお前が……悪いんだ……ぞ、赤也」
やはり息は上がってしまっていて、酸素を求めて空気を吸い込む。
今更ながらに、目が潤んできた。
「いや、悪かったっス、つい……」
「つい、じゃない。全く、誰からそんなキス教わってきたんだ……」
赤也と口付けするのも、これで数度目、これまではそんなフレンチキスをしてくるような気配は
全く無かったというのに。
まぁ、あらかた検討はついているのだが、色々試したいであろうお年頃の赤也に
きっと面白がって教えたに違いないと思うとちょっとムっとする。
だが、問いかけに声が返ってこない。
先ほどと変わらぬ位置に居る気配はするのだが、微動だにしない。
「聞いてるのか、赤也」
そんな赤也が気になって、伏せていた顔を上げると
そこには先ほどより更に切羽詰った……ような赤い顔をした赤也が立っていた。
「赤也……?」
またこの子はどうしたのだ。
そう思った瞬間、首に抱きつかれてベッドに押し倒されていた。
「ゆ、幸村部長!!!」
「わ、赤也、何だ……!?」
「部長、めっちゃかわいいッス!」
「はぁ?」
懐いてくる猫のように頬を擦り付けられる。
自分に言わせて見れば、赤也の方が可愛いと思うんだが……
そこは先輩目なのだろうか。
「あの、部長……ヤりたい」
しかし、その次にいわれたセリフに凍りつく。
超直球、要求そのままの言葉に一瞬理解が追いつかなかったが
そんなのダメに決まってる。
「だめだ」
「えー。だって部長のこと好きすぎて、キスなんてしちゃったからムラムラきて
俺耐えられないっすよ~」
「バカ、俺はまだ病人だぞ?耐えろ」
中学生なんて多感なお年頃なのはわかる。
しかし、だからといって時と場所と相手の状態を弁えないというのは、幸村は許さなかった。
「えーん、ぶちょーひどい」
「酷くない……まったく、駄々をこねるな。嫌いになるぞ?」
「ぐ…………もう駄々こねません」
「よろしい」
ゆっくりと起き上がって、渋っている赤也の頭を撫でてやる。
同性である自分を抱きたいだなんて、本当に好かれているのだと改めて実感する。
実感すると、可愛くて仕方が無いのだが、だからといってここで甘やかすつもりなどなかった。
「もう少し待て、赤也。退院したら、いっぱい遊んでやるから」
「約束っすよ?」
「ああ」
くせのある髪を梳いて、ご褒美とばかりに、その髪に優しくキスをしてやる。
赤也はくすぐったそうに目をふにゃりと細めると、幸せそうに笑った。
≪ 顔を上げて歩いて往くには 太陽は眩しすぎる(TOA アッシュ×ディスト) | | HOME | | 泣くためだけに生まれたわけじゃない(赤也×幸村 馴れ初めの続き) ≫ |