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好きなら好きって言わなきゃダメ(跡部✕観月)

登場人物:跡部 観月

CP傾向:跡観

制作時期:2022年9月

備考:押し倒してるけど結局特に何もしてない、ものすごく短い跡観。







 全てはなりゆきだった。別にこうしたくて呼んだわけではなく、触りたかったわけでも行為に及びたかったわけでもない。
 だが事実として、跡部は邸宅の自室にて観月を文字通り押し倒していた。一言にそう書くと品がないが、現にそこから退こうとしないなら、似たようなものだろうか。おそらく誰かに見られたら確実に勘違い案件だろうが、あながち間違ってもいないなと跡部は開き直っている。
 観月はというと、最初は驚いた顔をしたが、すぐにいつもの調子を取り戻して悩み込んでいた。いや、この体勢のまま思考に耽るというのもどうかと思うのだが。

「えっと、ひとつ良いですか?」

「ん? 何だよ」

 観月を観察して楽しんでいた跡部は、この状況で何を考えて何を言うのかを待っていた。

「跡部くんは、僕の事が好きなんですか?」

「あ?」

 ああ、この男は策士だと改めて思った。何故なら、このまま否と答えたのであれば、自分はとんでもないクズ野郎になると同義語なのである。というのを見越して問いかけてきているからだ。
 こういう思考に陥る程度には好んでいるが、まだ一度も口にはしていない。だから本当になりゆきだったのだ。しかし、なりゆきは成り行きで良しとした。なのでその問いにはあえて答えない。

「その答えで何か変わんのか?」

 ずい、と顔を近づける。観月の瞳の中に、自分が映るのが見えた。これはこれで悪くない。
 だが、そんな瞳を、瞼があっさりと隠してしまう。なんとも涼やかに対応されているが、内心はどう思っているのか、さっぱり読めない。敗者復活戦の時もそうだった。彼の心は、わかっているはずなのに全く読めなかった。ただ見た目は美しいまま、凛としているのも変わらずだ。青春学園との対戦で、それなりに熱い彼を見た気がするが、ついぞそんな姿は見れなかった。

「そうですね、とりあえず納得はします。嫌かどうかは別問題として」

「別問題かよ」

 嫌いと言われて嫌がらせで抱かれるよりは良いという事だろうか。随分と皮肉れたものだと思うが、次に開いた瞳はあきらかに視線を避けていた。

「まぁ、でも。あの。普通に……怖いですけど」

「全然そうには見えないんだがな」

 そう言った観月は相変わらずけろっとしている。視線を避けたくらいしか理解できないくらいには普段どおりだ。

「やせ我慢、得意なので」

 そう呟かれては、流石に引くほかない。

「……そーかよ。悪かったな」

 閉じ込めていた手で頬をそっと撫でてから、素早く離れた。観月は意図を読み取ったのか、溜息を付きながらゆっくり身を起こす。

「あの、僕を怖がらせて遊ぶのは、流石に悪趣味だと思うんですけど」

「何、半分くらいは本気だぜ? あとな、嫌なら本気で抵抗した方が良い時もあると思うがな。中途半端は是と捉える輩もいるってこった、気ぃつけろよ」

「跡部くんなので冷静に対処したまでです。というか、本当のところどうすれば良いのかよくわからなかったので」

 今もよく分かっていない。という顔で観月が首傾げる。

「おいおい、そのうち本気で襲われんぞ」

 実のとこと、観月はあまり自分の外見に頓着していない。趣味の柄や綺麗なものは基本的に好きだが、何故か外見だけは褒めても喜ぶ事はない。一目見て跡部も端正な顔立ちくらいには思ったし、容姿の評判だけで言うと悪くはないはずだと客観的にも思う。なお、忍足に聞いたら「たぶんそれ、跡部だけや」と言われたが、意味が理解できなかった。何がいけないのかよくわからない。

「失礼な、跡部くんじゃなかったら今頃地面に埋めてますよ」

「へぇ、言ったな?」

 なかなかに物騒な発言をするが、観月の気の強さを考えれば理解もする。それに、自分は違うと言われたら悪い気はしないものだ。

「OKって意味じゃないですからね。保留なだけですから、いきなりとか困るのでやめてください」

 これは数打てば当たるかもしれない、なんて考えていると、心を見透かされたように釘を刺された。

「後は……そうですね。僕の質問に答えてくれたら僕ももう少し考えますよ。では、今日はここのところでお暇します」

「は? 何だそれ。質問?」

 そんな謎掛けを出されて、観月が帰った後に最も重要な返答を忘れていたことに跡部は気付くのだった。普通はあれで気づくだろうと思うが、確かに言わなかった事は確かだ。
 否、そもそも好きでもない奴を押し倒す奴がいるか?というところで、ものすごくなりゆきだった事を思い出す。ことに関しては観月が上手のようである。
 数日後、聖ルドルフ寮にスーツに薔薇の花束を持った男が黒の高級車で現れて、騒然となった後に追い出されたとか何とか。






無理矢理はダメやで無理矢理は……ということで、世間でトレンドになっていた抱かない攻を横目に跡観を書いたらこうなりました。
いや、あの、違うの。うちの跡部は観月さんを大切にしすぎて手を出してないだけなの。
うちの観月さん貞操観念が高いのかもしれないけど。
清いおつきあい長そうな馴れ初めばっか書いてますね。
馴れ初め楽しいなぁ~!
1000パターンあっていいので何度でも書けます。

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