氷帝学園テニス部。そこは部員数が二百人を誇る関東屈指の強豪校だ。近年は跡部財閥の財力の力を直接受ける事もあり、今ではこの国で部活にてテニスをする学校では最も設備に優れていると言っても過言ではないだろう。
その世界の頂点に君臨するようなテニス部の正レギュラーとして華々しく、中身は泥臭くも返り咲いた宍戸亮という男は、それなりにイキっていた。鳳長太郎と組んで出たダブルスの試合は最高の結果をもたらしたのだ。チームとしては負けたが、試合には勝っているのだから鼻が高い。
氷帝はエスカレーター式で、他校への受験を望まない限り高校受験というものに縁がない。つまり部活は任意で続けられるのだ。敗れた氷帝ではあったが、未だに部活内の士気は高く、宍戸も休まず部活に出続けていた。
この氷帝学園テニス部の素晴らしい所は、ただテニスをプレイするだけでなく、そのプレイを通して各々をデータ化されているという点だ。瞬発力、持久力、技術力、成功したサーブの回数、決まったポイントの種類、サーブやスマッシュの最高速度など、おすすめのプレイスタイルから筋力や癖から算出されたラケットのガット数までそれなりに細やかにデータベースに記載されている。何が得意で、何が不得手、そして鍛えるべき点や伸ばしたい点もそれを見ればわかるというわけだ。これぞ数に物を言わせた情報力の力と言うものだと宍戸は思う。
久々にそれらを確認しようと部活後に部室のレギュラー部屋まで上機嫌でやって来た宍戸は、部内のパソコンを覗いてカチカチとマウスを操作する。最後に確認したのは長太郎と特訓をする前だから、きっと飛躍的に色々な数値が伸びている事だろう。成長を数値で感じられるという喜びに心を踊らせながら彼はデータを開いた。
「は???」
おかしい。いやいや、そんはずはないと二度見するも何も画面は変わっていない。何故だ。もう一度、更新を押す。だがそれは謎の焦りを生むだけだった。
「どうかしたのか? 宍戸」
カチカチと苛立たしげにマウスを動かす宍戸の、僅かな差異に跡部が気づいたらしく声がかかる。その間に宍戸は普段見ることがない他の正レギュラーのデータにもアクセスしていた。やっぱり、おかしい。
「クソッ、なんでだ? 俺のデータだけ二週間くらい前から更新されてねぇんだよ」
そう、自分のデータだけ書き換えられていなかった。楽しみにして開いたのに、誰だ作業をサボったやつは。彼はそう心で言ちながら、変わっていない数値に戻る。最終更新日が変わっていないのだから、変わるはずがない。
「てめぇ、滝とあれから何かあったか?」
状況を認識したらしい跡部から出てきたのは意外な名前だった。
「なんでアイツが出てくんだよ。何も言ってねぇよ。ここまで自分の事で精一杯でそんな余裕なんてなかったのは知ってんだろ、そもそも関わってもいねぇんだよ」
「それだろ」
「はぁ?」
意味がわからない、という顔をする宍戸に跡部は淡々と言葉を返す。その顔は、既に何かを察しているようだ。跡部は少しだけ話すかどうか悩んだ後、一息ついてパソコンをコンコン叩いて指した。
「そのデータをまとめていたのは滝だ」
「何だそれ、じゃぁ嫌がらせで俺の分だけ更新してねえって事かよ」
「ばぁか、違ぇよ。あのデータは全部、滝が取って滝が任意で更新していたものだっつってんだ。てめぇだけ更新されてねのは嫌がらせじゃなくて、てめぇにその価値がねえって事だろ」
「アァ? 聞いてねぇし」
とても痛いところを突かれている宍戸は画面を閉じて席を立つ。滝が全部データを取っていた?しかも任意という事は誰かに命じられてやっていたわけでもなく、個人としてやっていたという事だ。あの緻密さをずっと?そんなバカな。
確かにやれ測定だのデータだの、嬉々として取っていたのは知っている。その方面に強い正レギュラーは他にいない。樺地は適正がありそうではあるが、二年生という手前で強く出ることが出来ないだろうし、何かと跡部以外が部員をまとめる時は滝がやっていた事も知っている。
だから意識に残っているのだ。跡部の右腕のような存在として侍っているようにも見えたから。
整った容姿をしているが、どこか近づき難く気高い印象を持たせている彼は、同時に線の細さ故か儚さも漂わせている。女性にも男性にも隠れた人気があるらしく、普段は柔和な笑顔を絶やさないでいるし、誰とでも気さくに話しかけていたりする。蹴落とせるなら誰なのか、という人選で浮かんで来たのは確かだ。
「俺は自分で自分で管理できるが、他の奴らはそうじゃない。滝が実質マネージャーまがいの事をやってたんだよ。そうなると色々抱えてる分、実力不足になるのは当然だろうな。まあ、俺は結果に関して文句はねぇし、アイツもてめえに負けた事は納得してたはずだ」
「そうなのか?」
人がいる手前、気を使ってはいるようだが、跡部と滝は名前で呼び合うくらいには気心が知れているらしく、古くからの付き合い……謂わば幼馴染という間柄に見える。
結果というのは宍戸が滝を倒した件だろう。二人はその後にそういう話もきっとしたのだ。だから宍戸の気づくことのできない話も、跡部ならば知っている。
「理由は本人に直接聞けよ。とりあえず、問題は他にあるだろうな。勝利の報告くらいはして来ていいんじゃねぇか?」
「……試合、見てただろうが。長太郎のサーブの測定までやってたの見てんだからな」
わざわざ報告するまでもないと思うが、けじめをつけろという話なのだろうか。
「そうかよ。じゃあ、やる事がわかったんならさっさと行け」
「やる事?」
「アイツから奪ったんだろうが。後は好きにしろ」
奪った?確かに正レギュラーの座は直接でないにしろ奪った。ダブルスの座もまぁ、似たようなものだ。やはりそれに怒っているのか?でも、今跡部は確かに滝も納得していると言った。ますます意味がわからない。既に跡部は後ろを向いて我関せずのスタイルだからこれ以上聞きようもない。
「わっかんねぇよ! クッソ!!!」
イライラして、つい吐き捨てる。滝の立場や心境なんて考えた事もない。宍戸とて苦い思いをして上を目指したのだから。
「あー、あー。……なぁ宍戸。滝なら生徒会室の跡部の部屋でパソコンいじる言うとったで」
静観していたらしい忍足が横から声を挟む。忍足は察しがいいし機転が利く。遠回しに助言してくれているのだろう。それを聞いて宍戸はようやくひらめいた。思いついたら即行動に移す。そのまま自分の鞄を掴むと扉に向かう。分からないことをぐだぐだ考えているだけ時間の無駄なのだから、居場所がわかれば直接聞けば良い。
「長太郎に今日は戻らねえって伝えといてくれ」
それだけ言い残すと、宍戸は振り向かずに部屋を出た。
残された部屋には忍足と跡部が残され、シンと静まり返る部屋に宍戸の立ち去る音が響く。
「もうちょい言い方ってもんがあると思うねんけど。まぁ、跡部にしては甘いんよなあ」
「馬鹿言うな忍足、アイツに甘くするわけねぇだろ。自業自得じゃねーか」
「ちゃうちゃう。跡部が気にしとるんは宍戸やなくて滝の方やろ?」
「……」
無言は肯定だと受け取って、忍足が笑う。宍戸につい口出ししてしまうのは、宍戸を思ってのこともあるが、何より重要なのはここ暫く心ここにあらざりという風の滝萩之介の件に間違いはない。
結果が全てだろうし、それを生むために努力したのだろうから、と割りとあっさり負けを認めた滝を、跡部と数人の三年生も知っていたりする。ショックはあったであろうに、早期に立ち直りチームの補佐の為に変わらず力を尽くしてくれていた事も知っている。それでも何か、宍戸に譲れないものがあったのだ。
いや、おそらく、たぶん、できたのだ。長い間、滝と一緒にいる跡部だからこそ知り得ている事もあるのだろう。
「跡部が出たら一発で解決やろうに」
「それじゃ意味ねぇんだよ」
答えを導くことはできても、きっと最後の最後に答えを出すのは彼らだ。と、そういう事なのだろう。人の心というのは、客観的に見ていられるうちは冷静さを保てるが、いざ自分の事になるとてんで解らなくなるというものだ。
「確かになぁ。上手くいくとええな」
「……泣かせたら許さねえけどな」
「私情だだ漏れやん。こわいわー」
忍足はモヤモヤしているらしい跡部を見つつ、出ていった背中に思いを馳せる。
本当に、上手くいくといいのに。友と呼ぶのなら、背中くらいは押してやりたいではないか。
「滝! いんのか? 入るぞ!!」
人の気配を感じて断りもなく扉を開ける。少し派手に開けすぎた気もするが、すかさずそのまま扉をぴしゃりと閉めた。何度かここには来たことがあり、勝手知ったる何とやらだ。滝以外にも人がいたなら場所を替えようかとも思っていたが、幸いにして滝しかいないらしい。
「宍戸じゃん。どうしたのさ、練習もう終わり?」
「っざけんな! てめえ、なんで練習にこねぇんだよ」
窓から入る西日のせいで顔が見えづらくて、そのままつかつかと詰め寄る。
「失礼だな。途中まではちゃんといたよ。今はこうして戻って委員会の仕事とか会計の仕事してるってだけ。誰かさんのおかげで正レギュラーの免罪符もなくなっちゃったからね。言い訳せずにやる事やってるってわけ」
「んな事はどうでもいいんだよ。おまえなんだよあれ、データ!」
手頃な椅子に鞄を放ると、滝のいるデスクを強く叩いて迫る。一瞬、目が近い位置にあったのだが、ふと滝が視線を反らしてしまった。綺麗な髪がさらりと揺れる。
「ああ、あれねー。別にさ、定点カメラに映ってるだろうし、自分でデータ取ればいいんじゃない? 長太郎や樺地にも教えてあるから、やり方は相方や後輩に聞いてよ」
まぁ、そう言われるだろう。何も知らないまま怒っていたならもっと食ってかかっていたかもしれない。が、跡部に事を伝えられて来た手前、ひとまずは食い下がる。
データの収集なら自分でやればいい。整理もできなくもないだろう。だが、これまで当然のようにあったものが、自分だけなくなると言う理由くらいは聞かないと納得できない。
「正レギュラーで俺だけ取らねえのは何でだよ。腹いせか? ダッセェことしやがって!」
「あれは俺の趣味みたいなものだったからさ、別にわざわざ嫌いな奴に時間割く事なんかないよね〜って思ったのかもね」
考えるより先に手が出ていた。まずいと思った時には滝の肩を強く掴んでいた。キャスターがついているらしい椅子が強く揺れて、カチャンと音を立てる。
「いっ……たぁ! さいってー、何なのさ!?」
「確かに俺はおまえを蹴落とした。回り道をしたとしても、俺は正レギュラーに戻ったからな、その認識で間違いねぇよ。でも他には何もしてねぇだろ。罵ったわけでもねぇし。何をそんなにキレてんだよ。その理由がわかんねえんだ、他にあるなら俺に言えよ!」
「はあ!?おまえがそれ言うの!?」
掴んでいた肩の手を叩きおとされる。意外と痛い。負けてなるものかと睨みつける。
「言うに決まってんだろ!」
「そもそもさぁ、俺が好きでいられなくしたのは宍戸でしょ。俺はみんなの事が好きでやってたのに、俺が嫌いになるような事したのはそっちじゃん。何で俺がそんな事を言われないといけないのさ」
下から睨み返されて視線が激しくぶつかる。両者一歩も譲らぬ喧嘩になると思いきや、宍戸はわりと傷ついて我に返った。
「おまえ、俺の事がそんなに嫌いだったのか?」
いや、まあ確かに正レギュラーから蹴落としたのだ。恨まれない事はないと思う。
しかし、この氷帝においてレギュラー落ちした者は他のレギュラーを倒さない限り戻ることはないのだ。その掟を知るからこそ、常に上位の争いがされ、それなりに納得もしたりする。宍戸はしなかったわけだが。
「何言ってんの、俺の事を最初に嫌いになったのはそっちだろ! 俺に興味がなくて、部で一番嫌いで、いつも会計とかデータ取ってて練習量が少なそうだったから俺に目星つけて蹴落としたんだろ!? あれから一言も口聞いてくれなかったくせに、どうやって好きになれって言うのさ!」
「好きになれとまで言ってねぇだろうが、正レギュラーとして普通に接しろよ!」
ここまで言い返される事を想定していなかった宍戸は混乱してきた。
興味がない? そんなわけがない。何気なく選んだつもりで挑む相手はそれなりに考えた。
一番嫌い? そんなわけがない。一度も嫌いだと思ったことはない。
目星をつけて蹴落とした? それは合っているかもしれない。けれどそんな理由じゃない。
一言も口を利かなった? それは事実かもしれない。本当にそんな余裕がなかった。
一つ一つ脳内で答えを出して行くも、どう伝えれば良いのか分からなくなってくる。
「できるわけないって言ってんの! 俺はデータ取るためにずっとおまえのこと見てたのに、なんで俺だけ見てなきゃいけないのさ!」
ずっと、見ていた? それには本当に気が付かなかった。もう理由なんてない。これは言い負けるかもしれない。と宍戸が思った次に、見えたのは潤んだ滝の瞳だった。
「ああ、もうきらい! きらいきらい、大っ嫌いになったもんね! 謝るまで許してやらないから!」
ああ、これは負けたな。嫌いを連呼されるのは想像以上に傷ついた。そこに気高くて綺麗でちょっと嫌味な、滝萩之介は何処にもいなかった。いたのは傷ついた一人の少年だ。まぁ、宍戸も今まさに傷ついたわけだが。
「あー、わかった。わかったから泣くな」
ここまで来たら折れるしかない気がした。
とりあえず慰めようとするも、一度ついてしまった火はまだ消えない。
「泣いてないし、泣いてたとしたらおまえなんかに負けた悔し涙だよ!」
「わかった。あや、謝るから。俺が謝るから。悪かった、ごめん!!」
腹を括って宍戸が謝る。どうにでもなれというか、流石にここで泣かれたら自分が悪い気がするからだ。謎の焦りに突き動かされるまま、頭を下げる。
「いきなり謝るなよ! 心にも思ってないくせにさあ!」
「泣かれると……こまる」
潤みながらも睨みつけてくる瞳を真っ直ぐ見返すと、たじろぐように目を逸らされた。滝の声は震えていて、少しだけ勢いが弱まる。
「……嫌いだから知った事じゃないし」
「あと、おまえがいないと、困るんだよ。謝るから帰ってこいよ」
「何それ……勝手に困ればいいじゃん。ずるすぎる」
溢れる前にその涙は指で回収されたようだ。そっぽ向いたままの滝が目の辺りを拭っている。
「な?」
「俺に、他に言う事あるでしょ」
泣きかけの滝が、恨めしそうに少しだけ宍戸を見やる。
「んあ?」
「倒されてやった爪の甘い優しい俺に、言う事……あるでしょ」
「…………」
全くわからない。全くわからないので宍戸は致し方なく思いついた言葉を吐いた。
「……お、俺をみてろよ?」
「ちっがーーう!!! なんでそうなるの? 何だよその歯が浮くようなセリフ。そうじゃなくって、俺に報告することあるって話だよ」
報告、となると鳳とペアを組んで勝利を収めた事くらいだ。滝も見てたであろうになんで、と思わなくもないが、そういえば跡部がしておけと言ったのだから、滝には重要な事なのかもしれないと思い至る。同時に今のセリフが大失敗だった事に気づいた。いや、でもとりあえず滝が自分を見ていたらそれで万事解決なのではないかとも思うわけだ。
「あ、ああ。えーと、おまえを蹴落として成り上がった正レギュラーだけど、ちゃんと勝ってきてやったぜ」
「それ。ちゃんと聞きたかったの。……遅いんだよ、言うのが」
ようやく振り返った滝はまだ不貞腐れているようだが、怒髪天のような怒りは収まったらしい。宍戸は心底ほっとした。言うべき言葉もどうやら当たりらしい。確かにまあ、力を借りてレギュラーに返り咲いておきながら、もうレギュラーでない事を理由に相手にしないのは悪かった気がする。
「悪かったな」
「……だけど、……まぁ、今日のところは許してやるよ。バカ宍戸」
そんなに親密な中でもなかったのだ。こんなにごねられると思うはずがないくらいには普通の同級生以上の友達未満だったはずだ。けれど、やっとの思いで少しだけ笑い返してくれた姿が嬉しかった。
滝が落ち着きを見せた頃には、空は薄暗くなり始めていた。日が長くなってきたとは言え、そろそろお腹も空く時間だ。下校時間はとうに過ぎていて、人の気配も殆どない。
つい先程、抱えている案件を終わらせてしまうからと、滝はパソコンの作業に戻ってしまっていた。
「なあ、確認なんだけどよ。俺のことを恨んでねぇっていうのは」
一瞬だけ、滝の手が止まる。
「それは本当だよ。俺もそこまで馬鹿じゃない。気持ちの整理はつけてるし、おまえの努力家なところはちゃんと認めてるよ。俺はマルチタスク型で、おまえは一極集中型なんだから、そりゃ本気で来られたら敵わないでしょ」
「さり気なく皮肉混ぜてんじゃねぇよ」
すっかり調子を取り戻した滝は、いつもの少しすましている滝だ。嫌味がまぶされている気がするが、泣かれるよりかはマシだった。昔、女子をケンカで泣かせた時以来の焦りを感じた。別にいじめたりなど一切していないというのに。
「周りのこと全く見えてなかったくせに」
「そりゃ、見てる余裕なんてなかったんだよ。って、お前、俺のこと見てたんじゃねーか!」
「当然でしょ。ずっと見てたのに、お前は全然気づかないし、無視されるし」
「してねぇよ」
これは本当に本当で断じて無視などしていない。のだが、結果的にしてしまって滝を悲しませていたというのが真実らしいので、少し言いにくいはある。
「うっそだー! 俺のこと空気か何かと思ってたでしょ」
「思ってねぇよ。マジで余裕がなかっただけだよ。ダセェこと言わせんな」
周囲が見えないほどに真剣だったと言うのもあるが、あんな顔をさせるくらいならちゃんと見ておけば良かったと宍戸は思う。
それが顔に出てしまうというのが宍戸という男であり、チラリとその横顔をみやった滝は、できるだけ素振りを見せずに呟く。
「……じゃあ、たまには俺のところにも、来てよ」
本当は、ずっとそう言いたかった。けれど、本当に自分に興味がなくて嫌いなのだとしたらと考えると怖くて、滝は先に逃げてしまった。宍戸の性格を考えれば余裕がないなんてすぐに理解できたはずなのに、結局のところ互いに余裕がなかったのだ。
それでも、と今は願う。やっと気持ちをぶつけられたから。なんだかんだで宍戸は優しかったりする。というのもとっくに知っている。はずなのだ。
「おまえ、面倒くさい女みたいな事いうな」
「うるさい。俺のデータがそれで買えるなら、安いものじゃない? ご機嫌取りってやつ」
「なんで俺だけおまえのご機嫌を取らないとダメなんだ? まぁ、来るだけならいいけどよ」
言ってしまえば、そういう事を蔑ろにする奴ではない事も思い出して、無駄に涙を見せかけたと滝は少し後悔した。
しかし、こうやって着地は出来たのだから良しとしよう。その返事は何気なくとも、とても気分がいい。
自分自身の事ながら、これは隠しておいても良いものだろう。悟りたければ悟るといいと、挑戦的な笑みを漏らす。
「さぁ、なんでだろうね~」
そうして滝はパソコンの電源を落とした。
唐突に真面目に馴れ初めしなおそ?って考えてひらめいて
書きたくなって書きはじめたのですが……
めちゃくちゃ楽しかったケンカップル宍滝ハッピー!!!
これまでも小話とかに宍滝は書いていたりして
日滝とは違う良さがあるし、ここにしかない滝さん成分あるよなぁ……
って思ってたんですが、本当に唐突でした。
誰もついてきてないので安心してください。
これ、長すぎたので途中でぶった切りました。
そのうち続きを書くかもしれないし、そのまま放置かもしれない。
これ、書きたいこと伝わります?大丈夫???
私が下手すぎてミリも伝わらないとかない???
不安しかない。