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汝の罪は4 (TOA)

登場人物:ディスト ライナー ジェイド

CP傾向:アシュディス

制作時期:2006年 秋


ED後200%捏造アッシュ×ディスト!3の続き。
尚も登場人物全員に、別人注意報発令中!(特にD)
穴だらけ注意!











 かの日から、幾週の時が過ぎた。
 アッシュはあの朝以来、ここを発ってから音沙汰はなく、ディストはライナーと共に日々を静かに送っていた。
 相変わらず食は細いが食事は美味しいし、あれだけよく患っていた持病もほとんど症状を見せることはなかった。
 アッシュが気掛かりであるといえばそうなのだが、置いて行かれてしまうという焦燥は何処にもなく、ここで帰りを待っていればいいのだと、かの者は必ず戻って来てくれるのだと不思議と理解していた。
 朝早く起きて、質素な朝食を摂り、庭園に水をやり、ライナーがダアトの市場で纏め買いをしてきてくれる布で得意の裁縫技術を振い様々なものをつくる。刺繍や編み物をしながら、楽しそうにくるくると動き回りながら畑作や家事をするライナーを穏やかに眺めているうちに一日は終わる。

 一通り、殺風景だった部屋を飾るカーテンやテーブルクロスなどの家庭用品を作り終えると、余り出した布で衣服やるいぐるみなど、実に様々な物を作ってみた。少しでも生活費の足しになればいいと、丹精込めて縫う針仕事はなかなかに楽しいものだった。
 普通に働くということは、こういう事なのだろうか?
 もし自分が、至って普通に生を送っていたなら……。そう思い、苦笑する。これまでの生き方に後悔はなかったが、決して満たされたものではなかったのだということを改めて実感した。

 時に想いを寄せる赤毛の青年を思い出し、なんともいえない寂しい想いを抱くこともあったが、こんな日々が続けば良いと願うようになったのだ。




 そんなある日のことだった。いつもと同じように朝の水やりをし、縫いかけのコサージュに針を通していた時だ。血なまぐさい戦争が終わった今、ダアトには参拝者が増え、装飾品などが特に売れ行きがいいとライナーがいってた。流石に四十になる自分が花をつけようなどと思わないが、今を生きる女性達が着飾る様子を思い浮かべながらデザインしていると、なんとも楽しい。
 もしこのまま見つからなければ、服飾デザイナーをしていくのも良いかもしれないと心で思った。
 ライナーは浴室で鼻歌をうたいかながらシーツを洗濯しているようで、いつもながらの上機嫌ぶりに思わず笑みが零れてしまう。
 そう、今日も穏やかな時が過ぎようとしていた。


 しかし、その暖かい空気は、瞬時に打ち破られることになる。
 鳥が一斉に羽ばたき喚く声が聞こえるとともに、ディストに何ともいえない不快感を感じた。これは獣ではない、空の住人は獣程度であそこまでは乱れない。同じく、少数の人間に対しても。戦争をしてきた、軍団長としての勘だ。
 つまりは複数の人間がこの森に入り込んだということになる……。
 何の為に……? そんなもの、考えなくとも答えは出てくる。
 ああ、いつかこんな日が来るのではないかと、心の何処かで想定はしていた。大国マルクト帝国の追っ手など、この狭い世界で簡単に振りほどけはしないのだ。
 ただ、捕まるのは自分のみだけでなければならなかった。可愛い部下には何の罪もない。だがここにいれば共犯で捕まることになる。

「ライナー!」

 時間がない、このままでは……。焦る気持ちを押さえ付けて付き人を呼ぶと、ライナーが両手を拭きながらひょこりと顔を出す。どうやら、戦闘を不得意とする彼はまだこの異変に気付いてはいないようだった。

「はい、何でしょうディスト様」

「用事を頼みたいのですが良いですか?」

 何気ない顔で話しかける。マルクト兵が迫っていると知ったら、剣すら扱えぬこの部下は、包丁を取り出して来て振り回しかねない気がした。それでは困る。

「勿論です! 何ですか?」

 彼に気取られず、すぐさまこの場所を離れさせねばならない。

「裁縫で使う縫い糸を切らしてしまったんです。今ここを出立すれば、夕食の支度までには戻れると思うので、少し買いに行ってきて貰えませんか?」

 空っぽにしておいた糸巻きいれを、残念そうに溜め息をついて見やると、ライナーはすぐに頷いた。

「はい、このシーツを干し終えたらすぐに向かいますね。少々お待ちください!」

 駄目だ、それでは間に合わない。

「いえ、糸が切れてやることがなくなって暇ですから、それくらい私がしておきますよ」

 不自然に思われてしまうだろうか。どうか気付かないでと祈りながら、取り繕うように微笑んだ。

「ですが……」

「そんな事より、貴方が夕食の準備にとりかかる時間までに戻れるかの方が大事です!日が暮れると危ないですからね。大丈夫ですよ、シーツくらい干せますから」

「わかりました。では夕食が遅くならないようにすぐに買って参りますね」

「ええ、頼みましたよ。ライナー」

 ライナーはすぐに買い出し用の肩掛け鞄を手にすると「いってきます」と笑顔で小屋を出て行った。ダアト港の方角に気配はあるから、今から早足でここからダアトに向えば行き違い、見つかることはないはずだ。
 小さくなっていく背中をガラス越しに見て、彼の無事と幸せを祈る。
 どうか、貴方に幸せを。もう追いかけては来なくていい。

「身勝手でごめんなさいね。でも、貴方と、アッシュと暮した日々を忘れる事はありません。この生の中で、一番幸せな時間でしたよ」

 ありがとう、そしてさようなら。
 心でそう呟いて、幸せだった時間と区切りをつけるようにカーテンを引いた。



 三人で暮らすには充分だが、決して広くはない居間を見てディストは一つ溜め息をついた。このいつもの風景を見るのも、最後になるのだろうと思うと感慨深い気持ちになる。だがこうしてはいられない、ここを離れるまでに為すべきことを考えなければならなかった。
 せめて、帰って来た彼らに納得できるようにと、寝室に戻り手早く伝言を書き置いた。助けて貰ったお礼と、ここでの暮らしのこと、そしてここから去る悲しさと皆を巻き込みたくないという気持ち。ライナーなんかは簡単に納得はしないだろうが、できるだけ苦にならないようにと工面した。
 次に最期くらい落ち着いて迎えたいと、できるだけのきちんとした身なりに着替えて、長く伸ばして整えてある髪を纏めて一つに括る。
 ここを包囲するつもりなのだろう、兵士達の張り詰めた気配を感じて居間に戻ると、先ほどの椅子に腰掛けて、造りかけていたコサージュを手に取った。
 ふいに玄関のドアを強く叩く音が響く。

「どうぞ、開いていますよ」

 これから捕まり、拘束されるのだと言うのに、ひどく落ち着いた対応だった。ドアが開き、数人の兵がなだれ込む、それと同時に懐かしい声が耳に届いた。

「どなたですか、とは聞かないのですね」

「ええ、分かってますから……お久し振りですね、ジェイド」

「お久し振りですね、サフィール。随分探しましたよ」

「私が見繕った場所ではありませんが、素敵な所でしょう?」

「そうですね、まさかこのような所に居るとは思っていませんでしたよ。さて、用件は言わなくとも分かりますね?」

「……見ての通り、抵抗するつもりはありません。ですから部屋を荒らしたりはしないで下さい」

 下手に荒らされたりなどしたら、きっとライナーが心配する。そうはしてほしくなくて、目を伏せた。

「いいでしょう」

 ジェイドは一度だけ注意深く室内を見渡すと、軽く手を上げて合図をする。待遇していた兵士達は、素早くディストの両腕を掴むと無感情のまま、小屋から連れ出した。鳥の声はしないが、陽気を浴びて青く輝く木々が、風にさやさやとそよぐ。
 暖かい光の世界に、目を細めて最後のさよならを告げて、ディストは歩き出した。



汝の罪は 5 へ




そんなわけで、アシュディス「汝の罪は」4です。
アッシュがいません!!!!!

誰も読んでないと思っていたら拍手で続き楽しみにしてますと言われて驚いてアップしてしまいました。
相変わらずぐだぐだ駄文でスミマセン、楽しんで頂ければいいんですが……

ジェイディスになっちまうかと危惧したんですが、面倒なのでジェイドとの会話を大幅にカットして回避しました。
アシュディスかいてるとジェイドに嫉妬させたくなります。
ジェイディスかいてるとディストを甘やかしてあげたくなります。
(だいたいJDはディストが苛められちゃうので)
不思議!

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