登場人物:ディスト ジェイド ピオニー
CP傾向:ディストが愛されているはず
制作時期:2007年春
相変わらずのED後捏造話。
暗くもなく明るくもなく奇妙な雰囲気の中
ジェイドが色々あって昇進するんだぜーって話のおまけ。
短い上に一番電波で面白くないというやるせなさが特徴。
ハッピーエンドのはず。
数日後
かの日から幾日かが過ぎた。グランコクマは変わらず、平穏な時が流れている。
「おや、ジェイド・カーティス少将ではありませんか」
「これはこれはサフィール・ワイヨン・ネイス男爵、ご機嫌麗しゅう?」
「ええ、おかげさまでとっても」
皇帝の補佐官に無理やり引っ張ってこられたディストことサフィールも、すっかり馴染んでおり、このバチバチと音を立てそうな視線のぶつかり合いも、今では日常茶飯事になっていた。
「おーい、皇帝の俺を無視して挨拶すんのやめろよー」
不貞腐れたように、書類をぺらぺらしながらピオニーが不満の声が上げる。その声が休戦の合図だというように、二人は視線を外して顔を背けると、ジェイドは報告書の束をピオニーの机に置く。
「陛下、まだ使ってるんですか? ろくに補佐もできないような男爵殿を」
冷めたような目を向けられて、ディストが侮辱されたと思ったのか焦ったように声を荒げる。
「ばっ……補佐くらいできますよ!」
「いいじゃねーか、そのために爵位返還したようなもんだし。サフィールもできるっていってるし」
貧乏貴族といえども、その末席に名を連ねることになったディストは、貴族に戻ったその日からピオニーの呼び出しを受け、勝手なわがままで勝手に人事が行われ、ピオニーの独断で空席であった皇帝の執務補佐の席を押し付けられたのだ。
「別にやりたいとは一言も言ってませんッ! できれば部屋でのんびり研究してたいんですけど、貴方がどうしてもというから……っちょ!?」
「あれが部屋ねぇ……」
あの居心地が良くなってしまった牢屋は、領地に戻ることもできないディストがそのまま使用して良いことになり、更に改装が加えられた牢屋は、今ではマッドな研究所のような出で立ちになっていた。
「うるさいですよ、実際私が住んでるんですから、立派な部屋でしょう?」
「まぁ、関わりたくありませんから良しとしましょう」
「むかっ! そういうなら二度と来ないでくださいよ!?」
「そうはいきませんよ、あそこは一応牢屋ですし」
そんなピオニーの部屋に常駐することになってしまったディストと、遠征がないかぎり頻繁にピオニーの部屋に訪れなければならないジェイドの無駄ともいえる攻防は今ではこの城の名物ともいえるものになっている。
「あーーーーはいはいはいはいはい。だから皇帝の俺を無視して話進めるのもやめろって」
二人の言い合いを見かねたピオニーが手を鳴らして会話を止める。腐っても国の皇帝に止められた二人は、訝しげな顔を浮かべながらも押し黙った。
いつもの青い空に、朗らかな滝の音が響く。
「ちったぁ、馬鹿な先祖にも感謝しなくちゃならんだろ? ……な?」
「そう、ですね」
「……そうですか?」
「ジェイド、いちいちつっかかるな」
「はーい」
「ま、なんだ。お前達に乾杯ってことで!」
ここはグランコクマ、暴けぬ闇と遮ることのできない光が混合する都。
≪ 未来ある王達の間違いと過ち(跡部×日吉) | | HOME | | 暴けよ闇夜を、俺達は生きている 後 (TOA 後編) ≫ |