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未来ある王達の間違いと過ち(跡部×日吉)

登場人物:跡部 日吉 忍足 向日

CP傾向:跡部×日吉

制作時期:2007年春

日吉が大好きな跡部様の苦悩話。
跡部がちょっと痛い人……
氷帝の日常を目指したつもりがノリが変。

※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
 本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
 それでもいいよ!という方のみお読み下さい。

















「なあ日吉、キスしようぜ?」

そう言って不意打ちで日吉の口に迫る。
いつもキスを嫌がりはするが、それは照れがあるだけで、少し強引に迫れば日吉は許してくれることを跡部は知っていた。

今日もいい朝だ。愛する想い人とおはようのチュー
この後、日吉が真っ赤になって反論してくる。
それを想像するだけでも幸せだった。

しかし、今日に限っては、その願いは聞き入れられなかった。






ドカッ






鈍い音が朝の空に響く、ついでに跡部のくぐもった短い悲鳴も響く。

「な!?何をいきなり」

「っつ~!!!キスに決まってんだろーが」

「だだだ駄目に決まってるじゃないですか」

「なん……ッ」

「絶対嫌ですからね!」


日吉はそう強い口調で吐き捨てると、腹を抑えて膝をつく跡部の隣をすり抜けて校舎の方へ走って言ってしまった。

この反撃は初めてだ。
日吉に拒まれたことは数知れないが、殴られてまで拒否されたことは初めてだ。
自分が何かしたのか?
思い返してみても跡部には全く心当たりがなかった。















「日吉がキスを拒否りやがった、何でだ?」

そう文句を垂れつつ、跡部が忍足と向日の教室に訪れたのは二時間目の中間休みだった。

「はぁ?いつもの事じゃねぇの?」

「バーカ、いつもは嫌がる素振りを見せつつも素直にやらせてくれんだよ」

怪訝そうに出迎えた向日は、どう返したらいいのかわからない惚気に更に顔をしかめて
適当に「へいへい」などと相槌を打つ。
そんな向日の後ろの席の忍足は苦笑を零しながら跡部を見た。

「じゃ、気に触ることとかしたんちゃう?何か覚えてへんの?」

「それもねぇよ。
さっきまでずっと考えてたけど何もねぇ……昨日ヤった時だってよがってたし、その後も怒ってはいなかった」

「……俺が日吉なら、跡部のそういう無神経なところにムカツクと思うな!」

向日が椅子で舟を漕ぎながら呆れたように笑う。
そんな向日に忍足は「こけるなや」とひとつ注意すると、頬杖をつきながら跡部と向日の顔を交互に見上げる。

「でもそれやったら、これまでだっていくらでもぶちキレる要素はあるやん?」

「おいどういうことだ」

「跡部そこはまだつっこむところちゃうで」

「っ…てめぇこそ、ここはつっこむところじゃねぇだろうがバーカ」

「とりあえず無神経な跡部に怒るなら今更やいうてんねん、日吉はそこで怒ったんやないんや、良かったやんか」

跡部の冷たいつっこみをさらりと躱して、忍足はにこりと笑う。
一見人好きのするこの笑いは、実は自分達の恋愛事情を聞いて楽しんでいるだけなのだと
跡部は知っているのだが、生憎相談する相手が跡部にはいない。
ジローには不得手そうな話だし、宍戸など問題外だ。
鳳も聞き上手だが、経験の方を考えると話したくない。
ちなみに、滝にこういう相談を持ち掛けたこともあるのだが、思い出したくもないほど酷いことになった。

「いいわけあるか、お前ら人を馬鹿にしやがって」

「馬鹿になんてしてないぜ!事実だっつってんだよ、この無神経お坊ちゃん!だから日吉に嫌われるんだろ」

「~!!」

「まぁ聞きぃや、跡部。
俺が思うに跡部に問題があるんやなくて、日吉の方に問題があるんやと思うで?」

忍足は机に前の授業の教科書とノートをしまうと、次の授業の用意を始める。

「日吉に……?」

「まぁ、跡部が聞いても日吉は答えへんやろうな」

「……。」

「……ったく人騒がせなカップルだな……なんなら俺が聞いてきてやってもいいぜ?」

向日の言葉に、跡部は眉をしかめる。
少し考える素振りを見せるも、意外と素直に首を縦にふった。

「借りは作りたくねぇんだがな……」

「そんなんじゃねぇし。
いちいちここまで来て無神経な惚気話とか痴話喧嘩に巻き込まれんの、うぜぇだけだっての」

「……フン、ぬかりなくやれよ」

跡部はようやく納得できたのか、ひとつ頷くとチャイムの音と共に帰っていった。
学園の王子様が去った後のどよめきを面白そうに眺めていた忍足は、向日に顔をむけると
次は向日の頬を突いて軽くからかう。

「岳人やさしぃなぁ♪」

「うるせーよ」

一瞬で突いてくる指を叩き落とし岳人は忍足に背を向けると、だるそうに教科書をひっぱりだした。















「ってわけでさ、どうなんだよ日吉」

購買で買ったパンにかぶりつきながら向日が尋ねる。

彼に捕まったのはついさっきだった。
昼食を食べ終え、飲み物を買いに行こうと席を立ったら、何故か向日が丁度訪ねてきたのだ。
三年の向日が二年の校舎にくるのということは間違いなく自分か鳳に用があるのだろう。
そのまま「俺もまだ食い足りねぇし購買行こうぜ!」と半ば無理矢理に連れてこられたのだ。

そこで聞かれた質問に、日吉は思わず首を捻る。

「どうと言われましても……何のことです?」

何の事だかさっぱりわからない。
「何で跡部を避けてんだよ」と聞かれても避けたつもりなど全くないのだから。


「はぁ?朝、キスしようとしたら殴られたって跡部が凹んでたぜ?覚えてねーのかよ」

パクパクとパンを口に運びながら器用喋る先輩を横目で見ながら、日吉はジュースのパックを口から放す。

「ああ。……そういえば」

朝に殴った記憶を思い出して、日吉は苦虫を噛み潰したような顔になる。
思い出さなかったら普通の顔をして部活に行けた気がする、と
思い出してしまったことに少し後悔した。

「たぶんそれだ。何でいきなり殴ったんだよ、跡部が朝に嘆きに来てうぜぇったらありゃしねぇ」

向日は食べ終わったパンの袋を、跡部への恨みを込めてくしゃくしゃと丸めると、ゴミ箱へ投げ捨てた。

「ちょっといろいろありまして」

「だからそのいろいろを聞いてんだよ」

はぐらかそうにもそれが本題らしく、先輩殿は逃がしてくれそうにもない。
日吉は諦めたような不貞腐れたような表情を浮かべる。

「……跡部さんには言わないでくださいよ」

「それは確約はできねーな、一応跡部に教えるために聞いてるんだし」

「……。」

「別に、跡部さんが悪いとか嫌いになったとかそんなんじゃありませんので」

「わかってるよ、ゆーしがそう言ってた」

まったく、自分がいないところで勝手に話が進んで推測されてるなんてたまったもんじゃない。

「……。今朝、遅刻しそうだったんですよ、俺。顔を洗う時間もなくて、歯磨きもできなくて」

朝の喧騒を思い出す。
今日は朝練がないからとすっかり油断していたのだ。
起きたら家を出る10分前だった。
決して前日の疲れが残っていたのではなくて……

「で、キスがいやだったんだ?」

「それもありますが……」

「なんだよ」

急いでいながらも、朝食を進める母だけは断れなかった。
実際、食べなかったら逆に身体が持たないことも分かっているから急いで食べたのだが
そこである失態をしてしまったのだ。

「納豆食べたんです、朝に」

「はぁ?なんだそれ」

「臭うかなと……」

それだけといわれればそうなのだが、それ以上でも以下でもない。

「跡部、納豆きらいなのか?超うめーのに」

「いえ、食べたことないって言ってましたから……匂いでダメになったら勿体ないじゃないですか?おいしいのに」

「うっわー、くだんねー超くだんねぇぇ……てかわっかんねぇその思考」

納豆がウマイのは超同感だけど、と付け足して向日は頬を掻いた。
まさかことの真相がここまでくだらない話だったとは。

「ちょっと、強く殴りすぎたかなとは反省してるんですよ、これでも……でも」

「あいつ、ちょっと嫌がっただけで止まるような奴じゃないもんな」

「……です」

「わかった、跡部にいっとく」

「あの……」

「解ってる、できるだけ上手くいっとく」

「ありがとう……ございます」

くだらない理由をうまくまとめて、あの跡部に報告を……と考えるだけで向日は腹の底から溜息をつきたくなった。








「おい跡部」

6時間目が終わり、終礼までの時間に見事跡部を捉まえた向日に
報告を待ちきれんばかりの勢いで跡部が詰め寄る。

「で、どうだったんだ?!」

「落ち着けよ」

「落ち着いていられるか!お前の報告でこの後の俺の行動が決まるんだ」

「とりあえず、先にこれを約束してもらう」

「何だ?」と怪訝に眉を顰める跡部に、向日はびしっと指を突き刺すと
瞳を燃え上がらせて強く言い切った。




「お前の明日の朝食は納豆以外許さないからな!!!!」












それで明日納豆嫌いとか言ったら、日吉との仲を引き裂いてやる!













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拍手を除けばテニスの初駄文な気がする、あとひよです。
跡部×日吉の日常とか大好物なんでそれを目指したつもりが
またもや何とも言い難い話になってしまいました。

向日の納豆ネタ書きたかったんですよ。
ちょうど納豆食べてるときに思いつきまして(……)

日吉の実家は古武術やってるくらいだから絶対和風だと思って
家で普通に納豆とかでるんだろうなーとか妄想……。


しかし、うちのところの跡部様って殴られ役なんですかね?
超不遇ですよね。

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