登場人物:アッシュ ディスト
CP傾向:アシュディス
制作時期:2007年5月
名前のお話。超短い。
※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
それでもいいよ!という方のみお読み下さい。
「サフィール・ワイヨン・ネイス」
彼が一言、自分の昔の名前を口にしたものだから、ディストは思わず顔を上げた。
「って言うんだってな、お前の本名」
「ちょっと、あなたどこでそんな事聞いてきたんですかっ!」
仕事が終わったからと、執務室に押しかけてきた赤毛の青年は、ディストの驚いた反応を見て楽しそうに口元を歪めていた。
何処だっていいだろーが?と、ディストの言葉を軽く聞き流した彼は、もう一度『サフィール』と名前を口にする。ディストは、一つ溜息をつくと、浮いていた腰を椅子へと下ろした。
「やめなさいアッシュ、その名では呼ばないで下さい」
「へぇ? 綺麗ないい名前じゃねぇか」
青い、透き通った美しい宝石の名前だ。
貴金属に興味はないから、身につけたことはないが、遠い昔、母親が見せてくれた婚約指輪は確かその石だったと記憶している。
「柄じゃありませんし、そもそも似合ってないんですよ、綺麗すぎて」
「まぁ、確かに宝石って柄じゃねぇな」
心底、不服そうな顔をしているディストは、手元の書類に目を戻すと、再び手を動かしはじめる。
「サファイアの宝石言葉、知ってます?」
「知らねぇ」
「『誠実』『慈愛』ですよ、ばかばかしい」
「欠けすぎてて笑えるな」
そんなものが備わっていたら、今頃もっと平穏に真っ当な人生を送れているだろうに……親は何を願ってそんな名前をつけたのか。名づけた親の顔すら思い出せないものだから、本当にどうでもいい。
「それに、今は『ディスト』ですから」
昔など捨てたのだから、今はその名前だけでいい。今の自分を認めてくれる者たちは、そう呼んでくれる。
「貴方だって、今更『ルーク・フォン・ファブレ』なんて呼ばれたくもないでしょう?」
「確かに、それもそうだな。俺は鮮血のアッシュだ……それでいい」
「そういうことですよ、アッシュ」
決して綺麗とは言い難い名前かもしれないが、今の自分には丁度いい。
しかし、何よりもこの名前が気に入っている理由は……アッシュ――貴方が呼んでくれる名前であるから。
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