制作時期:2024年11月頭
設定がガバくて捏造具合がひどいシオユリ。
たぶんこれの続きだけど、これだけでも読めるかもしれない。
総合実習後の設定なので「シオンが思っているより、ユリウスはシオンのことを信頼している」と書いてありました。
つまりは……そういう事です。
なお、仲は良いけど付き合ってない喧嘩友達です。
総合実習が終わり、六人の生徒は無事に助け出された。教師の死という傷ましい結末を残し、後味の悪さが残るまま事件は終わった。
大なり小なり傷を負っていた生徒は、学院付きの病院に収容された。学院附属の病院は最先端の医療魔法が受けられるが、それでも中には数日間入院した生徒もいた。
そうして先日ようやく最後の生徒が退院したのだった。日常が戻ってきたのである。
といっても六年生は総合実習を終えて、次は最後のテストに臨む事になり、あまり日常に近いとは言えなかった。
絶対的な教師数の減少により、当初予定されていた筆記テストの一部が実技になるなど、イレギュラーな事態も存在した。
それが、今回の実技テストというわけだ。
本来は総合実習を実技点とみなすが、今年は多くの生徒が避難するなどしてまともな点数を稼いでいない場合も多く、その救済措置の意味もあるらしい。
今回の実習課題のルールはツーマンセルで近隣の森で耐久戦をするというものだ。
評価は測定された魔力の合計数、滞在時間、討伐した幻影魔獣の数だ。他のチームと協力するもしないも自由で、その部分は戦略や戦術として扱われるらしい。
敵はエルフの呼び出した魔獣で、人の命を狙うことはないが戦闘不能に追い込もうとしてくる小物がとにかく多い。更に通常の魔力使用量ではテストの時間が長引きすぎるため、魔法の行使に必要な魔力を2倍にするなど対策が取られている。
そんな実技テストで、シオンが相手に選んだのは、これまで徹底的に避けてきた犬猿の男、ユリウスだった。
総合実習で強制的に組まされた事で気がついたのだが、属性は真反対ながらも、戦い方としては決して相性が悪いわけではない。
性格は本当に悪いしいやらしいと思うが、秀才は秀才なのだ。戦いを有利に進めるための観察眼や知識は一級品だった。
近くを見ればリアーナとコレットが組んでいたし、ウィルとイグノールも組んでいた。ウィルと組むと魔力使用点が入らなくなるが、イグノールはそれでもいいらしい。
そもそもウィルが他のチームでないとやる気がでないので、それで良かった。
声をかけたユリウスは特に嫌がることもなく、二つ返事でOKしてきた。あの場にいた全員が、同じ力量であればあのメンバー内にしかいないことに、既に気づいているのだ。
結果として、最後の3チームになるまでユリウスと残り続けた。
まだ遠くでウィルとイグノールのチームが奮戦しているらしいが、リアーナとコレットのチームは先ほどリタイアした事を知った。つまり他のチームと大きな差をもって、リアーナ部隊の全員が好成績を残せた事になる。
楽な実習ではなかったが、得られた戦果としては悪くはない。
「おい、大丈夫か」
「問題……ないっ」
木の幹に背中を預けながら座り込み、ぜえぜえと肩で息をするユリウスの近くに降り立ち、声をかける。
この症状は魔力切れでもより深刻な部類に入る。生命に影響はないが、いつもは体に満ちている魔力が底辺まで枯渇している。息があがってつらそうだった。
今回、シオンとユリウスのリタイアが決定した条件は魔力切れだった。互いに互いの魔力量を把握しながら戦闘を行っていたが、僅かな差でユリウスの魔力が尽きたのである。
炎という属性は、超攻撃特化だと言っていい。その殆どが攻撃魔法だ。爆裂魔法になると圧も生まれるが、基本的に炎には実態がない。ゆえに、氷の魔法を扱うユリウスの方が補助に回りがちになる。
ユリウスの魔法の使い方は実に細やかで綺麗だ。大きな力を打ち放つだけなら、子供でも魔力があればできる。だが、その力を絶妙に加減して防御や補助に回すという芸当は、意外と難しい。
今回は大型の魔獣との戦闘ではなく、無数に襲いかかる小物相手との連続戦闘だ。咄嗟の判断、互いの息の合わせ方が重要になってくる。その点、ユリウスは采配が上手い。こちらのペースにしっかりと合わせてくれる。隣に並ぶ秀才としては、これ以上に秀でた者などいないだろう。
「戦果としては悪くないな」
「当然だ! っ、は。どれだけ、私が骨を、折ったと」
ポケットから魔力ポーションを取り出す。テスト中は魔力を補うアイテムは使用不可だが、終われば使用しても問題はない。一口くちに含んで飲み干す。じわりと魔力が体に染み入る。なお甘いが薬っぽくて美味しくはない。
途中まではユリウスも攻撃に参加していたが、補助に回ったほうが火力が出ることに気づいたらしく、そこからはずっと戦況の把握とサポートに回っていた。
そういう総合的な判断ができるところは、自分より優れており好ましい。
何より、自分の力を信じて攻撃を託してくれたこと。そうして出せる全力が気持ちよかった。気分は悪くない。案外、属性が逆でも上手くいくものだ。
「労いでもいるか?」
「いらん。結果なら、手に入れた。私は、魔力が戻るまで、まだかかるから、先に帰っていろ」
ユリウスほどの魔導士であれば、五分程度で息も整うだろう。戦闘を終えた生徒に対して、管理下におかれている魔獣は攻撃をしないし、確かに放って帰ってもいい。
しかし、ここまで尽くしてくれた男を置いて帰るのも気が引けた。
そこでふとひらめく。この残りのポーションでもよこしてやろうか。しかし、この潔癖そうな男のことだ、飲みかけなど嫌がりそうだと判断する。
なら無理矢理に飲ませてしまえばいいのでは? と、そう考えたのだ。
半分は悪戯めいたものだが、残りの半分は興が乗った。そんなところだ。
そして残っているポーションを口に含み、
「聞いているのか、シオ……」
ユリウスの顎を少し持ち上げて、強引に口づけた。中のポーションを流し込む。
「んっ!?!!」
全てを流し込み、唾液さえも流し込んでやる。最初にびくりと肩を揺らしたが、ユリウスは意外と大人しく、されるがままになっている。いや、おそらく驚いていて事態についていけていないだけかもしれない。
こく、と喉が嚥下する感覚を掴んで、最後に八重歯を舐めあげて口を離してやった。
「ぷはっ……な、なにを……」
「魔力ポーションだ。ちゃんと飲んだな?」
「え、なぜ……口移しで……?」
「さあな」
わからん。そこに綺麗な顔があって、苦しそうに喘いでいたから、だろうか。意外とこの顔は好きらしい。
白めの肌に雪色に近い薄い水色の髪に、同じ色の長いまつ毛。それらに縁取られた濃い蒼空を溶かした瞳は、今は薄っすらと濡れている。その造形の美しさだけは、本当に学園の右に出るものはいない。
「おい、人で遊ぶな。……まったく、何なんだ」
しかし、もっと大激怒して反撃にくるかと思いきや、強い声音は飛んでこない。それどころか、口元を指でおさえると、視線を外して赤くなったまま固まってしまった。
もしや、この行動は、初めてだったのだろうか。
そんな天下のユリウス・レインバーグが。あれだけ女子の真ん中でキャーキャーと黄色い悲鳴を浴びていた男が。
いや、でも彼は上流貴族だ。おいそれと女を作れるような立場ではない。軽く作れば作るほど地獄をみるだなんて事は百も承知だろう。つまりは、そういうことかもしれない。
どこかで、ついてはいけない所に火がついた気がした。めら、とその炎が燃えて、パチリと爆ぜる。
気がつけば、口をおさえていた腕を掴み上げ、もう一度口づけていた。もう片方の腕で頭を固定して上を向かせ、更に深く唇を貪る。
本当に興が乗った。こちらも先ほどとは違って本気だ。逃げる舌を追い詰めて、上顎を舐めあげ、揃いの良い歯並びを堪能する。微かに残るポーションの薬の味も悪くはなくて、ユリウスの舌とともに味わった。
「……ふ、……ン、……ゥ」
何度も角度をかえて口を合わせる。近すぎるので顔は見えないが、相変わらず強い抵抗はないし、くぐもった声と、どちらのものともつかない吐息がたまに聞こえるだけだ。微妙に甘い舌が美味しくて、粘膜が気持ちよくて、飽きずに貪っていると、流石に胸を押された。ようやく口が離れる。
「も、……い、だろっ!?」
そうして視界に入ったユリウスは、息継ぎも上手くできていないのか、完全にできあがった顔をしていた。その姿がユリウス・レインバーグらしくなさすぎて、つい呆けてしまう。
完全に涙で濡れている瞳に、上気に染まる頬、魔力は多少回復したであろうにまだ荒いままの息、微かにふるえている肩。美形にこんな泣かせ方をしたら、いやらしい他にないのだが。
「ハァ……苦、しいから……もうやめて、くれ」
上がった息を整えるべく、まだ息を荒げている。口を手の甲で拭ってはいるが、それほど嫌そうでもない。のぼせていて思考力が追いついていないだけかもしれないが。
「……おまえ。他の女とこういう経験は」
「ある、わけが、ないだろう」
訝しげにさも不思議そうに言われる。
いや、もしかしたらとそんな気はしていた。
思っていた以上に、ユリウスは厳格な貴族なのだろう。生粋の箱入りだ。
「は、真面目か?」
「言うなッ!!!」
いや、前も言ったぞ、このセリフ。しかし、やってしまったかもしれない。
エルファリア様を丸裸とか言ってたアレは何だったんだ。純情なくせに悪ぶるから、こういったしっぺ返しを食らうのだ。つい意地悪を言いたくもなってしまう。
貴族的義務でがんじがらめになっておきながら、それ故に清いまま育った男は、外面だけを悪ぶらせて生きてきたのだろう。予想斜め上の純情ぶりだった。軽い気持ちでいじめて悪かったとも思うが、それを優しく伝えてやることはしない。とりあえず今日のところは引き下がってやることにした。
暫く息が整ってやるのを待ってから、声をかける。
「立てるか?」
「当然だ。見くびるな」
最初こそ足をふらつかせたが、しっかりと立ち上がる姿を見て、先に歩き出す。
「それと、ポーションは助かった。礼を言う」
「……はあ?」
調子が崩れる。無理矢理迫る男に礼を言ってどうするんだ。
だいぶ理不尽な飲ませ方をしたのだが、何ならその後のキスは何なのだという話だが、そこに怒りはないらしい。
なんだか、この男の貞操観念が心配になってきた。そんな事を思うことになるとは想像もしていなかった。
なお、後になんだかんだでユリウスの信頼を勝ち取っていたのだとシオン・アルスターは気付いたのだった。
シオユリでやりたい話があるのですが、それまでにもうワンクッションあってほしいな……と思い書いた話です。
一歩進んでもらわんと私が困る。頼むから変な気になってくれ。
まぁね、設定を勝手にでっちあげる行為は得意なのでやりました。
いや、でもこれ他チーム分も妄想できるな。
リアコレとウィルイグが根底にあるのでいつかそっちの話も書きたいです。
次の話はすけべになるのが確定している中でかいてたので
結構脳内がお花畑な気もしますね。
馴れ初めってた~のし~~~!!!!!!!
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タイトルは何も考えつかなかったので、神撃のバハムート VIRGIN SOULのED『拝啓グッバイさようなら』からです。
適当につけたんですけど、私のユリウスのイメージ(概念)がわりとこの曲だなって後から気が付きました。
世界から捨てられたくないから虚勢をはって頑張ってしまう男なんですよ。
頑張るから過去の優しい自分を殺し続けないといけないんですよ。
自分がそんなに大したことない奴だって、実は知ってしまっているけど
そんな事を認めてしまったら心が壊れてしまうから、拝啓グッバイさようなら。
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