実はトラオムの後あたりで書きかけていたカドぐだ♂
を無理矢理修正して奏章4後に続くように魔改造したお話。
奏章IVネタバレ注意!
おもしろくないかもしれないけど
とにかく二人を仲良くさせたくて必死だったんですよわかって!?!
友達以上恋人未満みたいなやつがすき。
夢は見るけど覚えていない事が多い。そう感じ初めたのは最近になってからだった。
マスターというものは何かと夢に介入される事が多く、カルデアは対処を考えた。今では安眠を妨げそうな夢の介入を防ぐように処置をしてくれている。それで軽度なパスは睡眠中に切ることができるというわけだ。夢に介入をしたがっていた一部のサーヴァントには不評だったらしいが、戦いが激化する中では睡眠の質は重要で、致し方ない処置だった。
そうして、ふわふわとした夢の中で、覚えていられるような事象は減り、今では覚えていない夢だけになった。
今日もピピピと騒ぐ電子音に起こされて、ぼんやりと目を覚ます。大丈夫だ、安心していい。ここはいつものカルデアの見知った天井だ。
少し前まではなんてことないアパートの、少し古めいた和式の照明と木製の天井を見上げていたのを思い出す。隣にはカドックがいて、よく起こされていた。狭いけれど居心地はよくて、早めに目が覚めると眉間にシワを寄せているカドックの寝顔が見られたりする。そんな日々が今では遠く、愛おしかった。
そこで、涙の跡に気がついた。目頭が熱い。きっと彼の夢を見ていたのだと気がついた。
だからもう慌てなくていい。探しに行っても、彼はもうどこにもいない。
ただ、彼の残してくれた手帳だけが枕元にある。
目元が潤みそうになるのを堪えて、手で両頬を軽く叩いた。
まだ傷は癒えていないけれど、彼らのいた世界を取り戻すと決めたのだから。
「カドックが居てくれて良かった」
これはいつの頃からか、カドックによく言うようになったセリフだった。
敵として認識するしかなかった彼が翻り、自然と隣にいてくれるようになって、勝手に救われた気持ちになっていた。
彼は別に、好意をもってして接してくれているわけではない。生きるためにそうするしかできなくて、強制的にここにいるのだ。そうは理解していても、隣に立って手を貸してくれる等身大の青年として、彼の存在は日に日に大きくなっていった。
だって、カドックは何でもできる。立派な魔術師じゃないなんて彼は言うが、そんな基礎知識さえ持たずにやってきた自分には何でもできるように見えた。
知識の量も豊富で、真面目なようでいてユーモアのある返答をしてくれたりする。
それでつい、ボケた事をいってみたりすると、ちゃんと欲しかったツッコミを返してくれる。中には思いつかないような返しもあったりなんかして、それが楽しかった。
少しずつ、互いに笑顔が増えて、任し任される部分が増えていく。人はそれを信頼と呼ぶのだ。そう気がついた時には、素直に好きになっていた。愛だとか、恋だとか、どういう類のものかはわからない。ただ、その感情に名前は必要なく、そのままに隣にいられるだけで良かった。
ずっと、ずっと友達でいたい。隣に立てるだけの強さがほしい。その時はカドックが合わせてくれているのだと知っていたから、精一杯背伸びして、隣に並んでいた。
「僕もマスターになれるからって、逃げるなよ?」
いつものように感謝の念を伝えたら、そう返された事がある。
カルデアにいるサーヴァントとのパスが繋がっているのは自分だから、代替えなんてもう効かない。
カドックの瞳を見ると、それはなんてことない冗談なのだとわかる。
だからお返しに茶化すように笑った。
「……逃げないよ。ていうか、もうそんなところ、とっくに過ぎちゃってるし」
「……」
すぅっと、カドックの目が細められる。あれ、返答を間違えたかもしれない。
じゃあ、本心を話そうか。きっと、いずれ言えなくなる時が来るのを、その時は恐れていた。
「信じるものも、裏切るものも、拾いたいものも、拾えないものも、ぜんぶ決めたのはあの日の俺だ。今更もう、逃げる道なんてないんだ」
あえて、カドックの目は見ない。目線をそらしたまま手袋に隠された右手の甲をさする。肌色の上に、赤い刻印が浮かんでいることだろう。
「けどさ、拾いたくても拾えなかったものはいっぱいある。好きじゃなくても、分かり合えなくても、切り捨てたいわけじゃなかったものもたくさんあるんだ。それらを掴みとるための力が見合ってないとか、それを許される強さがないなんて事も理解してる。俺は本当に強くない、ただの運のいいマスターだから」
謙遜だと取られるのは嫌だけれど、カドックの評価はいつだって恐ろしいほどに正確だ。なので、これくらい言っても大丈夫。
「運も実力のうちだろ。と、言い切るには複雑な心境なんだがな」
「カドックはそれでいいよ。それでも、こうやって隣に並んでいられる時間があるのが、今は嬉しいんだ」
にこりと笑って言い返す。カドックは少し気圧されて照れながらも、何も言わないでいてくれた。
それは、ささやかな愛の告白だった。生きている間に思いを伝えなければ、伝えられなくなる日が来るかもしれない。
そんな結末は嫌だけど、あの時はそう思っていた。だからいつもの言葉に織り交ぜておいたのだ。
「まったく、おまえは、とんだお調子者だな」
「うん、そうなんだ。よく言われる」
へらりと笑う。
だって、せっかく一緒にいられる時間に、笑っていないともったいないじゃないか。喧嘩なら殺すところまでやった。もう二度と、傷つけたくなんかない。
「僕は死にたくないからこうしてるだけだぞ」
そうして彼は呆れて、少し困った顔で一番最初の建前を続けた。もう既に形骸化しかかっていることは本人もわかっている。
きっと隣で気楽な顔ばかりしている同僚を、少し困らせたいだけなのだろう。
「うん、わかってる。ずっとそうしていてほしい。命を一番に考えて、汚くても生きていてほしい。俺の事も、カルデアの事も、好きになったり大切にしなくていい。それは俺たちが決めて勝手にしている事だから。カドックには自分と想いを大切にしてほしいな」
だから、更に続けて本心をぶつける。それは一つの願いでもあった。大切な人との思い出も、全部捨てなくていい。もう失わなくていい。助けてくれるのは嬉しいけれど、何よりも自分を一番にしていてほしい。
「後は忘れないでいてくれたら、充分だよ」
ゆえに消えるのは自分が先だと思っていたのだ。
どうか、覚えていてほしい。君の記憶に片隅に残っていたい。君と同じ時代に生まれて本当に良かった。
けれど、カドックは相変わらず面白くなさそうな顔で、ため息をついた。
「僕も一応は人間だ。魔術師だが人間なんだが……」
「ん、どういうこと?」
うまく察することができなくて、カドックの目を見る。次はカドックが目をそらす番だった。
言いづらそうに声のトーンを落として呟く。
「情に絆される時もあるから気をつけろって事なんだが……」
「カドックが?」
ありえない。あの冷静でいつでも俯瞰して物事にあたれるカドックが、情に流されるなんて。
でも、そんな存在になれるのだとしたら、きっととても嬉しいのだと考えてしまった。
綻んだ心境が顔に出てしまっていたのか、居た堪れなさそうにカドックが頬を掻く。
「はあ、そんな甘い考えで救われる世界とか、矜持が傷つくな」
「あはは、ごめんごめん」
それは何に対して言った言葉なのか、流してしまったからわからないけれど。
「でも、ほんとうにさ、生きていてくれてありがとう、カドック」
その時、伝えられる最大の感謝を、ありったけに込めて。言葉と態度で表したのだ。
ちゃんと伝わっていただろうか。
全てをなくした君に、少しでも心温まるものを、届けられていたらいいのに。
そんな遠い――否、わりと最近に交わしていたやり取りを思い出していた。
またなくしてしまった。二度と失いたくないと思ったものを手から零して、今日も歩いている。
あの時に紡いだ言葉は、もう自分の心にしかない。それがひたすらに悲しかった。
カルデアの廊下の、大きな窓から見える景色は、烟るような雨空だった。
それでも諦めたくはなかった。
もう一度、もう一度だ。諦めないで、生きて、未来を掴んで、彼を取り戻す。
他にも手から零してしまったものを取り戻す。
その時に、もしかしたら、自分がいなくなっているかもしれない。それもありえる話だった。
「手紙でも書くかな」
君が手帳をくれたように。何かを残しておこう。
そう思うと少しだけ心が晴れた。
うん、大丈夫だ。まだこの心は折れていない。
一緒だったあの時はことは思い出せるし、カルデアでの世界が白に包まれた生活も、煉獄や地獄でのあせた空の下でも、その全てが楽しくて、ただただ綺麗だったから。
その全てを綴って、伝えて。
いつかまた、君と同じ時代を生きたいから。
カドックを殺さないでくれ!
と一年以上は叫び続けて、夏イベ一緒にしたいとジタバタして
妖精双六虫籠遊戯イベントでとうとうトンデモイベを一緒にできた!
と思ったら夢オチになり
奏章IVでとうとう……
という事になってしまったので、トラオム後に書いていたネタを引っ張り出してきて
加筆修正して書き上げましたつらい~~~~!!!!
絶望ばかりでないのは良かったけど
あそこで隣にいてくれたカドックにはもう会えないのかと思うとつらいです。
いや、でも怠惰生活したり同棲したり楽しかったですね。
うちのぐだおは一生カドックと一緒に生きた時間をひきずっていきます。
あ、元ネタはこれね。
ゆめをみて めがさめて きみがいなくて
.
[0回]
PR