登場人物:リシュフィー
CP傾向:リシュフィー→宰相
制作時期:2007年6月
死を目前にして、彼は何を思ったか……
短いリシュフィーの独白。
某FF11のうpろだ様に上げさせていただいたもの。
僕は絶対 最期まで 貴方の名前は呼ばない
「クルト4よりアスランへ……クルト4よりアスランへ……アルトゥンはさらわれた……」
青空が見える空洞の中で、リシュフィーはただ、報告を続けていた。
じりじりと迫る、マムージャ達の姿が辛うじて霞んで見える視界に移る。多勢に無勢、嬲り殺しにするつもりなのだろう、彼らは確かに笑っていた。先ほど受けたダメージで、全身が軋むような悲鳴をあげている。既に、かの冒険者を逃がした時に、命を捨てる覚悟などとっくに出来ていた。
だが、逃れることができない死を目の前にして、改めて恐怖を感じた。
震えるなよ、僕の声……ッ!『声が震えてました』なんて、そんな格好悪い報告が、あの方に届いてしまったらどうするんだ。あ、でもあの方は僕らしいと、少しでも笑ってくださるだろうか。
だめだだめだ、馬鹿らしい。
「繰り返す……アルトゥンはさらわれた……」
己を叱咤し、振り絞るように声を出す。自分という護衛が付いていながら、聖皇であらせられるアフマウさまを目の前で連れて行かれるとは拭えない失態だ。
ただ、任務でなく、アフマウさまを敬愛しているからこそ、本来役不足である自分に任されていた仕事なのに、本当に不甲斐ない。悔しくて涙が出そうになった。
あ、震えるなってば僕の声……ッ!最期の報告が怖くて泣いてましたとか、あの方に伝わったらほんとどうするんだ!
情けない奴だと思われてしまう。
でも、やっぱりあの方は僕らしいと思ってくださるだろうか。
だめだだめだ、馬鹿らしい。
「……我、山猫の傭兵に追跡を託せり……」
もう、後がない……。自爆するなら、そろそろ行動に移さなければいけない。青魔法の印を組む前に取り押さえられれば、意味がなくなってしまうからだ。
死ぬ前に、人は思い出を走馬灯のように思い出すというが、まさにそうだった。決して長い人生ではなかったけれど、最期までトチってしまった人生だったけれど、それでも守りたい人達ができて、少しの間でも幸せだと感じることができた。十分じゃないか……。
本当は、自爆なんて教わった時から、怖くてたまらなかったし、臆病な自分に使う日が来るなんて、使える気合ができるなんて思わなかったし、今でも、怖くてたまらない。
でも、それでも、僕はあの方が認められた、不滅隊の隊士だから。あの方は、冷静で厳格でとても……そう、冷徹な人だから。きっと僕の死なんて軽く聞き流して終わるんだろう。
あの方が、僕に求めているのは不滅隊隊士としての行動、だから。だから僕はやれる!
生きていたい心も、あの人を想う心も今は必要ないものだから。
だから僕は
僕は絶対 最期まで 貴方の名前は呼ばない。
さぁ、全て爆ぜ割れてしまえ!!!!!
最期に、立派に敵の小隊を巻き込んで果てた事を、貴方が褒めてくださいますように。
「繰り返す……我……」
終
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