登場人物:赤也 幸村
CP傾向:赤幸
制作時期:2008年1月
「愛してる?」10のお題。その8。
微シリアス。
※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
それでもいいよ!という方のみお読み下さい。
暗き地の底より美空を目指す
付き合い始めて一か月、赤也は相変わらずもどかしい思いをしていた。
大好きな彼は病人で、本人からも先輩からも「無理はさせるな」と言われている。
そんなことは自分が一番分かっているのだが
“触れたい”
その本能はなかなか消えなかった。
それでも、たとえ自分が若くて青くても
大事にしたい……傷つけたくはない
という想いを胸に刻んで、赤也は黙って幸村の傍に居るのだった。
今日も、まだまだ春を感じさせない冷たい風の中、部活が終わって一目散に幸村の元へ走って来た赤也は、幸村のベッドの隣で一日の報告をする。
流石に毎日とは行かないが、既に日課にはなりつつあった。
真田も赤也の報告に任せて訪問の頻度を控えるにまで至っている。
「そしたら丸井先輩が副部長の声マネして『たるんどる!』って、もう真田副部長カンカンっすよ」
「あははは、赤也のも似てるよ。 あ~、俺も聞きたかったな」
「んじゃ次は丸井先輩連れてきまーっす! あの人ここ来るとお見舞い食えるからいつもノリノリだし」
「うん、ついでに真田も宜しくな。ツッコミがいなくなるし」
「りょーかいっス!」
楽しそうににこにこと笑う幸村は、前より覇気が衰えたと思う。
その穏やかすぎる表情に、赤也は不意に胸を締め付けられた。
あの日見た涙は忘れることはない。
「でも、早く帰って来て下さいね、部長」
「ああ、分かってる」
「幸村部長がいないと真田副部長がボスみたいなんですもん」
嫌そうに赤也が不満を漏らす。
「実際そうだろ?真田は、先輩が引退した今、立海では一番強いだろうし」
「俺は幸村部長がいいっス」
「赤也は甘えっこだなぁ」
「何スかそれ、戻っても甘やかす気ないんでしょーに」
それを肯定するように、軽やかに笑う幸村を「それでもいいから戻ってほしい」なんて心で呟いて、その横顔をぼんやり見る。
しかし、それでセンチメンタルに浸っていたことを見抜かれたのか、幸村は不意に手を差し出した。
「赤也、手」
「へ?」
「いいから、合わせる」
「え、えっ?へい」
何か犬が『おて』をするようになってしまったのだが、幸村は気にした様子もなく、さも当然のように手を組み替えると、優しく握りこんだ。
最初は少しひんやりしたが、柔らかくて滑やかで、ほんのり暖かい。
「幸村部長の手、すべすべっすね」
握る手に少し力を込めると、逆に幸村の手から力が抜ける。
「そうか……な。 俺だってテニスプレイヤーだったんだし、こないだまで硬かったんだぞ?」
幸村は少し寂しそうに笑うと、小さく息を吐き出す。
本当に小さな溜め息なのに、二人しかいない部屋では、しっかりと耳に届いた。
視線を落として接続詞の続きの言葉を待つも、チッチッと時計の針の音しか聞こえない。
「マメ、なくなっちゃった」
「え?」
「それが、ちょっと悔しくてな」
「……」
「でも、まだ感覚がある、赤也の手のぬくもりは、わかるよ」
体が動かなくなる病気に対し、既に恐怖心が芽生えていると言っていた幸村は、体に感覚があることが幸せでならないらしい。
幸村は握ったままの赤也の手を、愛おしそうに頬に摺り寄せて目を細める。
そんな幸村を見て、赤也は胸を少し高鳴らせた。
「久々にテニスとかしたら、手の皮剥けたりして」
「大丈夫ッス、最初は俺とゆるいラリーにしましょーよ」
「フフ、そうだね」
だから、早く帰ってきて下さいよ、幸村部長。
あんたと一緒にテニスがしたい。
ちょっとそこ、オチてないから。(……)
いや、いつものことですけど。
またgdgdと喋ってじゃれてるだけの話ですが
マメがなくなって悲しい幸村を書きたかったんです。
それだけなんです。それ以上でも以下でもありません。
二人が一緒に居れば幸せ!ってどうなの?それは。
ちなみに一応「愛してる?」10のお題その8なのですが
サブタイトルに『暗き地の底より美空を目指す』が入るんです。
青い空が遠いって話。
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