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君がための囚人(ナタク×太乙)

【登場人物】ナタク、太乙

【CP】ナタ乙のつもり

【備考】
『楼閣の下に』と連動しているようで、そうでもない
崑崙山2にまつわる二人のやりとり。


※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
 本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
 それでもいいよ!という方のみお読み下さい。








 崑崙山2に乗船して、初めて見る師は、まるで囚人のようだった。

 呪のかかれた紐を幾多に巻き付け、更に身体中に管を付け、目を不思議なゴーグルで隠している。
そのなんとも言えない奇妙な姿は、彼にとって始めてみる姿でもあった。

「おい」

 呼び掛けても返事はない。 不気味な機械音がやけにうるさく聞こえる。
彼の師のつけるゴーグルの中で小さな光がチロチロと明滅しており、どうやら集中しているようだった。

「おい、太乙真人!」

 再び声を荒げると、ゆっくりと顔が上がった。

「おや、ナタクじゃないか」

 どうかしたのかい?と聞かれるが、真っ直ぐ睨んだままでいた。
何と話しかけていいか、彼は知らなかったからだ。すると、師はゴーグルを額に押し上げて少しだけ微笑んだ。

「調子は悪くないようだね」

「問題ない」

素っ気なく返すも、相変わらずかの人は笑ったままで

「今は面倒を見てやれないから、無茶してはいけないよ」

 そう落ち着いた口調で言うものだから、いつもの反発が上手く出て来なくて、一つだけ頷いて俯いた。
沈黙が空気を支配して、妙に心がざわつく。すごく嫌な感じがする。
特に、目の前のこの機械から。とても禍々しいものに感じられて心が逸った。

「太乙」

 顔を上げて名前を呼ぶ。 すると、向こうも再び閉じていたらしい目を緩やかに開けた。

「どうしたのさ、らしくない顔して……」

「おまえのニオイが、小さくなっている」

 言葉を遮って、思ったことを口にする。

「へ?」

何を言っているのか自分でも分からない。
けれどとても嫌な感じがした。この装置にずっと触っていてはいけない。そんな気がする。

「そこに居るのは、よくない」

 他に言葉が思い付かないので、そこで黙り込むと、暫くして合点がいったのか目を丸くして呟いた。

「ああ、これか」

太乙が軽く腕を上げると、何かよくわからないチューブが三筋ほどついてくる。
それは戒めのようにも見えて、ひどく重そうだった。
ナタクはまた一つ頷いた。

「これはね、私の作った宝貝だよ。これでこの崑崙山2を動かしているのさ。だから大丈夫」

へらりと威張り笑われて、イラッとした。

「顔色が悪いくせに何が大丈夫だ」

禍々しいものに力を奪われているせいだ。
それはハッキリとわかった。この装置は自分と似た存在だと気づいていたから。

「おっと、嬉しいじゃないか心配してくれるなんて」

「してない、壊すぞ」

ようやくいつもの空気に戻った気がして腕を上げて乾坤圏を向ける。

「っとわ!たんま!それは勘弁して!!!」

流石に焦りを感じたのか、身を庇うように腕を動かした。
だが、次の瞬間、その衝動で腕のチューブがプツンと切れて、数本だらりと落ちた。

「あ」

「……」

二人の視線がそこに集まる。動きを止めたままの太乙は、平静を取り戻したようだ。

「うーん、ふざけている場合じゃないね」

一つ溜め息を付くと、落ちてしまったチューブを見る。
拾おうとすると、髪や逆の腕についているチューブに軽く引っ張られてしまい、太乙は早々と拾うのを諦めた。
そして同じく動きを止めたままチューブを見ていたナタクへと顔をむけた。

「ナタク、すまないがそこの落ちたチューブをどこでもいいから腕に付け直してくれないかな?」

「いやだ」

「そう言わずに、頼むよ」

へらへらと困ったように笑う顔が鬱陶しい。
イライラはまだ残っていたが、頼まれるついでに「後で言うこと聞いてあげるから」と無下にされるであろう口約束を持ち出すものだから、仕方なしに動いた。
思いっきりこきつかって強い宝貝を作らせて、自分もパワーアップさせて、そしたら眠らせてやる……

「先がクリップになっていると思うから、適当にくっつけて。宜しくー」

しかし、拾ってみると、予想以上にざらついた感覚がした。
気持ち……悪い。これは……力を徐々に吸い取られて……?

「なんだこれは」

「宝貝だよ」

ギリ、とチューブを握る。
これは普通の宝貝じゃない、キモチワルイまでに仙力を奪われる何かだ。
“今のナタク”にとっては微々たるものだが、これまでの自分に置き換えると、その奪われる力は大きい。
喩えるのであれば、乾坤圏を常に使用しているくらいの力だ。
それが、1つじゃない。複数ついているのだから、計算はできないがかなりの力を奪われているはずだ。
だから、あんな顔色に……?
チューブを直す事を躊躇っていると、こちらの様子を見ていた太乙が名前を呼んだ。

「大丈夫さ、こう見えても私も十二仙なんだよ? そこらの仙道に負けないくらいはやれるさ」

それでも、腑に落ちない。

「ホラ、それに私って殺しても死ななさそうな顔してるじゃないか」

それでも、やはり腑に落ちない。
チューブを握ったままで黙っていると、また困ったように笑う雰囲気を感じた。

「大丈夫だよ、ナタク。私がちゃんと戦える場所まで連れて行ってあげるから。
だから頼むよ、私に宝貝を返しておくれ、これは私にしか……できないことなんだ」

諭すように、柔らかく紡がれる言葉に、思わず顔を背けた。

「君が戦うことが存在意義だと言う様に、私はこの能力でサポートするのが存在意義なんだよ。
私は戦うことができないから、普段仙力を使うことがないんだ。だからこれは私の仕事。ほら、返して」

 唯一、この一瞬だけ自由のきく腕で頭を撫でられて、悔しい気持ちになりながらもナタクは渋々チューブを取り付けた。
あれだけ力を奪われるものなのに、太乙は何でもないような顔のままそれを受け入れて、そして優しく、笑って言った。

「いい子だね」

「死ね」

「心配かけてごめんね」

「そう思うならするな」

「それはできないよ。さぁ、もうお行き」

再びゴーグルを下ろして、囚人に成り下がった太乙は、いつもの作業に戻るような風で退室を促した。

「死ぬなよ、おまえを壊していいのは俺だけだ」

「はいはい、わかっているよ」

 この戦いが終わったら、この禍々しい宝貝は一番に破壊してやろうと、心に決めてドアを開けた。









よほどこのシチュエーションが好きらしい。
親も子も、なんだかんだで互いに心配。そんなナタ乙です。

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