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慈愛で世が灰になろうとも(燭竜×太上老君 ※元気封神)

注意:『元気封神』というマイナーソシャゲの燭竜✕太上老君です。

※原作が中国版で話がややこしい上に、未完結でサ終を迎えたため
勝手に二人の話をできる限り考察した上で捏造してしまえ!という魂胆です。

以下の情報を考察して書いています。

元気封神特設ページ


【登場する人】
燭竜、太上老君

【CP】
燭老

【備考】
勢いで書いた燭老処女作
万仙会がおきる直前はこんな感じだといいなぁ……







「のう、そなたは『愛』というものを信じるか?」

 重い頭をもたげて、それ以外動かない少年は静かに問うた。見上げた先の少年の顔は逆光で、表情は見えない。己を見下ろす格好で、ふわふわと宙を浮いている。

「どういう定義で『愛』と言っているかわからないけど、愛憎ならわかるね。それは一番人を陥れやすい感情だよ。何に執着してるかさえ見据えられたら、後は簡単なものさ」

「ふむ、では人が人を『慈しむ』という気持ちはわかるかのう」

 見上げている頭が重たくて、地につける。彼の宙に浮いた足が見えるだけで面白くはないが、致し方なかった。顔を見て話がしたい、などと言える立場ではもうないのだ。

「さあ、わからないね。そんなもの、所詮は自己満足のための偽善だろう。それに、それを信じていたら、こんな事してると君は思うかい?」

「そうじゃな……」

 力を奪われてしまったあの日。入念な計画の上、不意を突かれたと言っても、太上老君は強い抵抗をさしてしなかった。しようと思えばできた。奪われる前に力を叩きつければ、もっともっと彼の壮大な計画を遅延させられ、その間に異変に気づくものもいただろう。
 けれど、彼はあえてそれをしなかった。彼はどこまでも慈悲深かった。

 この空間と宮殿、そしてこの庭は彼のために作ったものだ。神として封じた。彼が世界に憚る悪しき者だと、神や仙人が定めたからだ。
 その封じ手として己は手を挙げた。師兄たちにはそれぞれ、大きな役割がある。末師弟である自分が一番身軽だったのだ。ただ、封じた彼を、その先で身動きが取れないような状態にはしなかった。
 本来ならするべきだったのかもしれない。かたい鎖で縛り、札力で強く封じて、暗い頑丈な結界部屋に閉じ込める。そうすべきだったのかもしれない。
 だが、ここには今日も朝日が昇る。大地を照らし、夕方になると沈んでいく。雨はない、風も強くは吹かない。季節はあるが、住めないほどではない。ここはまるで封じられた理想郷のような空間だった。
 それから何年、ここで彼と過ごして来ただろう。時には旅に出て帰らない時もあったし、自分の弟子たちの面倒を見にいったり、気ままに囲碁を打ちに出かけたりもした。だが、帰ってくるべき場所はいつしかここになっていた。監視役も兼ねているのだから当然だ。
 けれど、戻れば必ず彼がいる。それは封じ手の彼にとって、ささやかな幸せだった。

「わしはのう」

 地に這いながら目を瞑る。そこにはかつて彼と暮らしていた風景が映る。

「そなたが好きだった」

 何かを企んでいるのは知っていた。だが、一緒に暮らしていた彼は心から笑っていた、時には怒っていた事も、拗ねていた事もある。悪しき心があっても彼の心は全てそれで染まっているわけではないのだ。

「ふん、それは情が移っただけだよ。言っただろう、僕はそういう感情を操るのが得意なんだって」

「ふふ、そうか……そうかもしれぬな」

「こんな事をされて、まだ笑う余裕があるのか」

 宙からタンと音を立てて舞い降りてきた彼が、屈んで少年の若草色の髪の毛を乱暴に払う。

「わしはこう見えても、三清と云われた仙人なのじゃぞ」

「ふぅん、動けないくせに」

 そのまま隣に座った少年は、寝たきりの少年の頬を撫でる。
 彼の生命力は強い。力を奪ったあの日、身動きが取れないくらいまでには力を奪い尽くした。本来なら立つことも、喋ることもできないはずだ。だが、彼は今もこうして生きている。勿論、殺さないギリギリのところで生かしているのだが、彼から放たれる神のような霊気は毎日絶たれる事がなかった。

「じゃがな、それは間違っておるぞ、燭竜よ」

「は? 何の話さ……」

「わしがそなたを好きになったのは、もっともっと前じゃ。でなければ、このような空間を作ってはおるまい」

「……このふわふわした空間、君の性格だったんじゃないのか?」

 太上老君が朗らかで慈悲深い事など知っている。だから隙をついて、少しずつ世界と干渉する力や技術を培っていけたのだ。

「知っておったよ。そなたが何をしているのか、そしてわしをいつか殺して、世界に再び戻るのだと。例えそれが世界に大きな波乱をもたらすと分かっていても……じゃ」

「バカだな君は、それを知っていて、まんまと見過ごしたっていうのか!?」

 ふと陰が落ちる。何事かと瞼を開ければ、剣呑な紅い瞳が真上にあった。問い詰めるように、彼が覆いかぶさっているのだ。

「そうじゃ」

 ゆらゆらと揺れる耳飾りが陽の光に当たってキラキラと揺れている。それを見ながら太上老君は目を細めた。ああ、幸せだ。

「何故」

「と、思うじゃろう。最初に言った。わしはそなたが好きなのだと。この通り、騙されてもいない。対策も練った。そなたの全てを肯定することもできぬ。それでも、己が命くらいはやれてしまうほど、そなたが好きだったのじゃ」

 残り僅かな時を、それでも共に過ごせる。己が死んだ時、彼は世界に解き放たれるのだという。
 自分は平和が好きだ。元気に満ちた封神の世界が好きだ。新しいものへ移りゆく活気ある世界が好きだ。優しい世界が好きだ。
 だが、そうありたいと願うが自分では何ともできない事も知っている。悪を知るゆえ、善でありたいという偽善に悩むこともある。完璧などではない。

「そなたの悪しき心は永遠に変わらぬかもしれぬ。だが、そなたが言ったのだ。人の心の汚れがなくならない限り、悪しき心は消えぬ。それと同じで、人が生き続ける限り愛もまた普遍であるもの。故に、じゃ。わしはそなたの全てを愛そうと思ったのじゃ」

 そう、完璧ではないからこそ、完璧ではない彼を慈しむのだ。

「だから僕に愛を語るのか? それで僕が変わるとでも思ったのか? そんな安っぽい感情で揺らぐとでも?」

 見上げる燭竜は、自分の力も得て生気に満ちている。その輝きは彼に隠れている陽光よりも眩しい。対する己は、今にも消えそうな蝋燭のように貧弱なのだろう。

「燭竜、それも間違っておる。愛は語るものでも伝えるものでも押し付けるものでもない。ただそこに、あるものだ。わしが消えて、いなくなっても、そなたをわしが愛していたという、ただそれだけは残る。それで何かが変わるとなど思ってはおらぬよ」

「だったら……無意味じゃないか」

「わしには意味がある。こうして、そなたが隣にいるだけで、今も幸せなのじゃからな」

 死ぬのが怖くないわけではない。世界を裏切ってしまう行動だともわかっている。故にそれなりに手も打った。
 ただ、燭竜には自由でいてほしいと思った。悪さをするなら誰か怒ってくれる人がきっといるだろう。そのための礎になれるのであれば、それも悪くないと思ってしまったのだ。

「本当に馬鹿なのか!? そんなに僕の事が好きならいいさ、このまま君を襲うよ。嬲って、犯して、蹂躙して、僕がどういう存在なのか嫌というくらい心身に刻むといい! 絶望して、そのまま闇に堕ちればいいさ!」

 激高した燭竜が、覆いかぶさった彼の体に体重をかける。元々身動きが取れない彼だが、これでは腕すら動かせまい。
 遠き日に、謎の神器でふわふわと自由自在に宙を浮く彼を、ふと思い出す。己も宙に浮くことくらいはできたが、ここでは制限されているようで、同じ空へは行けなかった。
 いつか地に落としてやる。そう思ったことも確かだ。その日が来て、ようやく計画も最終段階まで来た。
 どうせ、もういなくなる仙人だ。自分を好きというなら、せめて……。
 そう考えた途端、ズキリと胸が痛んだ。
 同時に目の前の太上老君の霊気は希薄になる。
 
「すまぬ。申し出は嬉しいが、少し喋りすぎたようじゃ。ひどく……ねむい……」

「って、このタイミングで寝るつもりなのかい!?」

 わかっている、閉じられた瞳が開くことはない。これは眠りと言っても気絶に近いものだ。力を使いすぎたのだ。腕の下の太上老君は完全に意識を失っていた。

「どうしてだよ」

 もう届かないと知りつつ問いかける。
 胸が痛む。意味がわからない。

「どうせ、僕を置いていくくせに……」

 盤古も自分を見限って消えてしまった。

「どうせ、僕の事を理解できないくせに……」

 そういって仙人や神たちはこの世界に自分を閉じ込めた。

「なんで今更、僕を愛するなんて言うんだ」

 怒りなのか、悲しみなのか、わからない何かが胸を叩いている。
 意識のない太上老君からそっと身を引くと、ゆっくりと彼を抱えた。筋肉のついてない薄い肩、細い棒のような腕、自分と同じで成長しない、少年らしい脚。それらを確認しながら、春の若草のような明るい黄緑色の髪にそっと口づける。どこを触って抱きしめて、何度口づけても、彼の体は朝露のように冷たかった。

「……好きだ」

 誰も聞いていない世界で、ポツリと零す。柔らかく吹く風だけが二人の髪と衣を揺らしていく。

「ああ、僕も好きだよ」

 手を握り、頬に擦り付ける。冷たいその手に、少しずつ力を流し込んだ。
 癒やし手の彼は人を傷つける術を持たない。力を封じる事はできても、削ぎ続けることには向かない。これまで様々な対策が取られて来たが、どれも直接傷つけるような手法ではなかった事を思い知る。
 自分が同じ立場であれば、力で捻じ伏せて、傷つけて力を奪って、縛って閉じ込めておいただろう。それをしなかったのは、ただの慈悲だと思っていたのだ。上から目線の恩着せがましい薄っぺらい感情。偽善的な支配。
 そうではなかった。それはこれまで知らなかった愛でできていた。
 彼の心を堕として手に入れても、己を愛する彼には絶対にならない。
 ああ、もっと早く知っていれば。違う未来もあったかもしれないのに……。
 太上老君を腕に抱いたまま、燭竜は怖いほど青く澄み渡る空を仰ぎ、一言呟いた。

「ははは。……この世界は、本当に残酷にできているな」






フジリュー封神を元にしたアニメ『覇穹 封神演義』を更に元にしたセンカイクロニクル。
サ終が決定する頃にはバグだらけで、原作ファンとしてよりゲーマーとしてちょっと許せないので
サ終とか、この駄目仕様のソシャゲでならない方がおかしいわ~……
(※そこそこ課金勢で闘技場も常にトップだったのでお間違えなくw)
というあたりで、適当にやっていた、もう一つの封神ゲー『元気封神』にハマりました。

まさかだよ……!?

しかもセンクロより遅く始まって早く終るw
でもゲーム性がとても良く、シナリオも中国っぽさが滲み出ていて
ようやく戦力が整って話が読めるようになった矢先に終わりました。

ここで引き起こされてしまった萌えはどうなるの!?
お話も途中のまま(というか推しがどうなってるのかやっと語られる場面で終了w)
しかも人が居なくてサ終したから、オタク的に話してる人がTwitterにすらいない!
やばい……もう、書くしかない!というわけでこうなりました。


同志がいる奇跡すら信じられないほどのマイナーなので、もし好きだった方がいたら握手してください……。

いつか、いつか本編の話の先を知りたいです。

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