CP傾向:ハンス×アドレット
制作時期:2015年10月2日~16日
※ Twitterで一日一回やっていた、ハンアド+お題で140文字ショートノベルの半月分のログです。
※ 6巻ネタ大好きなので、当然のようにネタバレ出ます!ご注意!
※ あとがきに作品解説や妄想や補足といった+αがあります。
「何が言いたいのかさっぱりわからん^^」というものは解説読むと書いてあるかもです。
(その時点で失敗作では?というツッコミは許して下さい……)
『善意の裏返し』
走行中、ふと目の前に脚が現れた。
不味いと意識すると同時に宙へ飛ぶが、勢いを殺せず盛大に前へ転がる。
「おいハンス!何すんだよ!」
ハンスは得意気に笑った。
「にゃあ、話しかけても上の空で返事がねぇだ。危ねえと思って意識を戻してやっただよ」
「それは善意じゃねえ!」
ただの悪意だ!
『友情の一歩先』
きっとアドレットは自分に友情を感じているのだろう。
時折、不穏に感じるほど無防備な時がある。
自分はどうなのかと自問する。
感じるものはあった。
顔を上げるとその彼はフレミーと何やら幸せそうに話し込んでいる。
その横顔を見て酷く安心した。
ああ、大丈夫だ。
まだ自分はこの男を殺せる。
『50/50』
ハンスに敵うものなんて何一つ持っていない。
体力、技術、センス、そして経験、全てにおいて完全に劣っている。
羨ましいと思った。
聖者でなくてもあのような強さがあることに、ただ魅せられた。
けれど、自分は地上最強なのだ。
それは理屈ではなく絶対であらねばならなかった。
アドレットは凡人だった。
しかし己が負ける要素など一つもない……とは思わなかった。
体力、技術、センス、経験、それらを超えるセンスとひらめき、そして精神力を兼ね備えている。
それは脅威であり愉悦だった。
「見くびったことなんてねえだよ」
彼は、それを知っているだろうか。
『ただいま』
「おらには昔、3つ下の妹がいたにゃ。虫も殺せない優しい娘だっただよ。
おらはせめて人なりの幸せをみつけてやりたくて、嫁ぎ先を探しただ」
「今考えただろ、それ…」
「にゃひひ、おらの過去を聞きたいとおめえが言うから」
「捏造しろとは言ってねえぞ!はい次!」
「にゃー…」
『最後は私と』
今は絶望の只中でもいい。
希望も夢もなくていい。
前が見えなくてもいい。
綺麗じゃなくていい。
誇りがなくたっていい。
ただ……明日は無くすな。
諦めるな。生にしがみつけ。
暗闇の中、ハンスは彼の手を引きながら呟く。
「最後はおらと笑うだにゃ」
まだだ、まだ終わらせない。
『迷子のお知らせ』
おぼつかない足取りで暗闇を歩く。
どこに向かえばいいのか、どこに行きたいのか、思い出そうにも思考が霞んで答えは出ない。
ふと腕を引かれていることに気づく。
それは知っている手だった。
「なぁ、どうして来てくれたんだ?」
「にゃぁ、迷子の知らせを聞いただよ」
『こりないやつ』
自称地上最強、曲がった事は嫌いで常に前向き。
好きな娘につれなく当たられてもめげる事なく献身的。
逆境も不屈の精神で乗り越えて見せる男。
それがアドレット・マイアだった。
「懲りない奴だにゃぁ」
揶揄るように笑うも、そんな男が満更でもなく気に入っているのだ。
『見ないふり、見えないふり』
あの時、死を覚悟した顔は嘘ではなかった。
亡くした友のために流す涙は偽物ではなかった。
しかし、それでも七人目ではないという確証はない。
迷いを捨てろ、それはいつか致命傷になる。
感情より勘を選んだハンスは、眼を閉じて獲物を握りしめる。
さぁ、さよならの時だ!
『足して割って、ちょうど』
「ほんと、甘いだにゃぁ」
「いいだろ、別に」
「いつか寝首を掻かれても知らないだよ」
「本当にまずい判断だったらお前が止めてくれるから問題ない……だろ?」
「にゃにゃ!おらに甘えるつもりだか」
「甘えじゃない。これは、信頼だ」
「物は言いようってやつだにゃ~」
『サービストーク』
「なぁハンス、俺のことは気遣ってくれなくていいぜ」
「にゃ?」
「お前にしちゃ俺はまだまだ子供かもしれないが、大丈夫だ。世界の非情さくらいちゃんと理解してる」
刺すようにハンスを睨むと、その金の瞳は満足そうに弧を描く。
そう、彼とはできる限り対等で在りたかったのだ。
『貴方の心臓が欲しい』
失意のアドレットを前にしてハンスは言葉が出てこなかった。
あの時、生きるために殺した感情は確かに告げていた。
この男が好ましいと。
だが違う。
今、男は腕の中にいるのに、己の心の中には乾いた風しか吹いていない。
はたと気づく、本当に欲しかったのは、失われた心臓なのだ。
『嫌いになれない』
「困ったべにゃぁ……」
己の感情はある程度律することができる。
それは暗殺者としては最大の強みであった。
今だって七人目とわかれば直ぐに喉元を掻き切ることはできるはずだ。
だが、想像すると何とも言えない虚無感を感じるのも確かだった。
そう、何処まで行ってもあいつが……
『大人しく降参して』
実際気に入っている部分は多かった。
そんな事は百も承知だ。
だが、この感情だけは認めてしまったらもう戻れない気がする。
「どうしたにゃ」
そんなに酷い顔をしていただろうか、くしゃりと頭を撫でる手に安堵する。
「何でもない」
本当は甘えたい。
けれど今はまだ矜持が許さない。
『君の最期に』
「もし自分の命と引き換えに世界が救えるのだと言われたら、どうする?」
「んー。粘りに粘って死ぬ直前に命をやるだにゃ」
「…傲慢な答えだな」
「それに六花に選ばれた時点で似たようなもんだべ」
「確かに」
「そんな時がもし来たら」
答えは決まっている。
「笑え、だな」
「にゃ」
『ゼロ距離告白』
血の気のない額に己の額を合わせる。
心も体も傷ついたアドレットは今、泥のように眠っていた。
全てに裏切られ信じるものすら失った世界に、再び目覚めたいと思うだろうか。
起きても絶望のような戦いの日々しかないのに。
それでもハンスは祈った。
「帰ってくるだよ、アドレット」
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