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小話詰め合わせ(シンドバッド×ユナン)

登場人物:シンドバッド、ユナン

CP傾向:シンユナ

308夜以降の本誌の内容+未来妄想設定のシンユナの小話詰め合わせです。
とりあえずユナンさんをシン様の隣に置いただけで、設定をしっかり考えていません!
なんでも許せる方のみどうぞ。最後R15くらいの話です。






【慈母の呪言】




 それはある夜の事だった。一日を終え、辺りは静寂に包まれている。
 その中に明かり一つだけ灯された部屋がある。少し薄暗いが、これから夢の世界へ誘われるならばこれでいいのだろう。
 ユナンはそこで静かに、膝の上で寝入ったシンドバッドの髪を梳いていた。図体はでかいのに、まるで子供のようで、思わず昔を懐かしむ。

「君は知らないだろうけど。昔、君のお母さんにね、君の事を頼まれたんだよ。何かあったら導いてやってくれって……」

 遠い昔の事のようにも感じるし、つい最近の事のようにも思う。長く生き過ぎて狂ってしまった体内時計は物差しの役割を果たさなかった。
 しかし、あのシンドバッドの母親の、あの表情、あの声、あのルフだけは鮮明に思い出せるのだ。
 もしかすると、あの時すでに、何かに囚われてしまったのかもしれない。

「すごいよね、母親って。僕がこうして、君を選んでしまうことがわかっていたのかな」

「マジか……」

 ふと膝上から発せられた声に、ぎくりとユナンの身が固まる。

「やだ。起きてたの、シンドバッド。狸寝入りなんてヒドいなあ」

「誰も寝たなんて言ってないからな」

「起きていたらこんな話はしないのに」

 もそもそと体を起こすシンドバッドを少し恨めしそうにユナンは見やると、己の役割は終わったとでも言うように立ち上がる。

「じゃあ、本当なんだな、母さんのこと」

「そうだよ。その時は、君を王に選ぶつもりはなかったんだけど」

「そうか。流石は俺の母さんだ。最高の置き土産だな。こうしてお前はここにいるんだから」

 しめた、と笑みを浮かべる主が憎たらしくて、ついと宙へ浮かぶ。

「……不本意ながらね」

「ユナン、こっちにおいで」

 シンドバッドが腕を伸ばしてユナンを呼ぶ。このまま帰ろうかと浮いていたユナンは、小さく溜め息をつくと、ふわりと床へ戻る。
 しょうがない。惚れてしまった方の負けなのだ。

「仰せのままに、なんて僕は言ってあげないよ」

 そう口では悪態をつきながらも、すんなりとシンドバッドの腕に引き寄せられた。








【それは、栄誉なのか否か】




「ユナン! ちょっと待て!」

「どうしたの、そんなに慌てて」

 呼び止められ、何事かと振り返ったら、珍しく大真面目そうな顔のシンドバッドが小走りに近付いていた。
 その勢いのまま両肩に手を乗せられたかと思うと「見せろ」と口に出すと同時に服をはだけさせられる。

「ちょっと、シンドバッド!???」

 意味がわからない。
 いきなり服をはだけさせられた男、ユナンは混乱極まれりだ。普段から前を開けた服を着ているのだから、肌を晒す事にそこまで抵抗はないが、これとそれとでは話が違う。
 幸いにして人の往来はないが、いきなり人を脱がすという行為は正直どうなのだろうか。

「やっぱり……」

「いきなりどうしたの、怖い顔だよ」

 困惑しているユナンにようやく気がついたのか、シンドバッドは脱がした服を丁寧に着直させる。先程よりも前をきっちり閉められてしまったのは気のせいか。

「肩の傷」

「え? ……あ、ああ」

 やっと合点がいった。アルバとの戦いで負ってしまった肩傷は、傷口こそ塞がったが未だに消えていない。深く傷ついているから、おそらく完全に消えることはもうないだろう。わざわざ消すほどの事でもないとユナンは思うが、こんな顔をされるなら、アラジンに頼んで消しておくのだったと、少しばかり後悔する。

「大丈夫だよ、もう痛くはないから」

「そうじゃない。痕が残ってる」

 珍しく悔しそうな顔をするシンドバッドに、ユナンは苦笑する。やっぱり、そんな事を気にしているのだ、彼は。

「自分で戦うと決めて負った傷なんだから、君が気に病むことなんて何もないんだよ」

「そうかもしれない。けど、俺のせいじゃないのか」

「僕のためだよ」

 ユナンは慎重に言葉を選ぶ。
 悩んで考えて、考えて、考えぬいた末に見つけ出した答えだ。
 ただシンドバッドを守りたかった。そのために戦う。それが自分の選んだ道だ。
 シンドバッドのためではあるが、結局のところは彼を王に選んでしまった己の為なのだ。
 ふいに抱き締められる。その強い包容に息が苦しくなる。

「勝手に知らない所で戦って、勝手に傷つかれた俺の身にもなれ!」

「僕が、僕のために、君を守りたかったから。だから、これくらい何てことないんだよ。確かにとても……とても怖かったけれど。誰かと命を奪い合うことが、あんなに恐ろしいことなんだって、久しく忘れていたから」

 守ると言う事はそういうことなのだ。これまで見て見ぬふりをしてきた。アル・サーメンが世界で暗躍していても、直接交戦することは徹底的に避けていたくらいだ。
 今でも夢に見る。圧倒的な力量差、指し伸ばされる手、貫かれた痛み、消滅しないアルバの肉体、動かない自分の体、そして堕転させられるあの恐怖を。

「二度とお前を傷つけさせたりしないさ」

「ありがとうシンドバッド。でも本当に悔いなんてないんだ。また同じ事が起こったら、僕はまた戦うよ」

 囁く言葉が嬉しくて、ユナンは思わず笑みを浮かべる。けれども。

「だったら、そうならないように、俺がお前を」

「シンドバッド。僕を『守る』だなんて言わなくていいよ。君は王様なんだから」

「何故だ、王の器が自分のマギを守ろうとするのは当然だろう」

 腕を緩めてシンドバッドが様子を伺うが、ユナンはゆるく首を振って返した。

「それでも僕を守ってくれるのだとしたら、まずは君が危険に近付かないことだね」

「……難しいな」

「そうだね。君には難しいのかも」

 シンドバッドをあらゆる危険から守る。それはシンドバッドの中のダビデも含まれているのだが、どこまで存在が融合しかかっているのか、計り知ることができない。ならば、本人の意志で危険を避けてもらうのが一番なのだが。
 消えたアルバは消滅していない。きっと、何らかの手を使って、また接触をしてくるだろう。
 それまで、もう少しだけ、この平和な時間が続けばいいのに。そう願いながら、ユナンはシンドバッドの服を少しだけ掴んだ。






【簡明直截が常に良いとは限らない例】




 想いは伝えた。そしてそれは重なり合った。願ってもない幸福である。
 しかし……ならば体も、と思うのが若い男の本能なのだと、彼はすっかり忘れていたのだ。



「やりたい」

 真顔で飛ばされた直球に、ユナンは気が遠くなった。このタイミングで、それがどういう意味なのか、解らないほど子供ではない。
 時間は夜。湯浴みも済ませて、さぁ明日のために休もうかと言った時だった。勿論シンドバッドの職務は多く、すっかり夜も更けている。

「え。今から?」

「そうだ」

「今から街に降りるのかい?」

 そろそろ外の繁華街も、花街以外は閉まってしまうだろう。

「俺がやりたいのは、お前とだ、お前と」

 早とちりかと話を逸らそうとしたが、直球すぎてブレそうにもない。

「何かの冗談だよね?」

「そう見えるか?」

 どうやら、ジョークでもないらしい。いよいよ八方塞がりだ。

「……僕にも、気持ちの整理というものが」

「じゃあちょっとだけ待ってやる」

 ふんぞり返ったまま、シンドバッドは大人しくなる。ここでいきなり心の整理をつけろと言うことなのだろうか。実に早急で横暴だ。こんなところで王様ぶられても困る。
 シンドバッドと肌を合わせたいかどうかと聞かれると、正直よくわらかない。そんな事を考えた事もなかった。
 選んだ王の器として傍にいたいとは思うし、力になりたいとも思うし、守るために彼を選んだのだから勿論好きだ。……きっと、触れて貰えたら嬉しいだろう。
 しかし、だ。

「……あのね、シンドバッド。知っているかもしれないけど、僕はその、とても長い長い時間を生きてきたんだ。……だからあの、もう枯れてるんじゃないかなって」

 そんな行為のことはすっかり忘れてしまった。欲情するとは、はて、どんな感情だっただろうか。

「そんなのやってみないと分からないだろう。要はやりたいかやりたくないかだ!」

 その問いも、直球の前では真っ二つだった。

「ううん、何とも言えないなあ……」

「煮え切らない返事だな」

「僕は痛いのは苦手なんだよ」

「その点は問題ないぞ。なんたって俺は百戦錬磨だからな! 絶対に痛くしない。どうだ!」

「どうもこうも、僕は見てくれはこうだけど、男だよ? 君の言う百戦錬磨は女性に対してのみでは」

「俺を舐めるなよ、ユナン!」

 あまりにもキリの良い返事に、なんとなくその経験値を悟る。

「……うん、ごめん、舐めてた。素直に謝る事にするよ」

「じゃあ!」

 さっと出そうとする手を[[rb:防御魔法 > ボルグ]]で弾く。危ない、あの手に捕まって甘く囁かれたら、ころりと女性達が落ちてしまうことを、よくよく知っている。

「まだするとは言ってないよ」

 とんとん拍子にする話になっているが、ここは冷静になって考えなければ、後でつらい事になる。

「何だよ、処女じゃあるまいし」

「……この身体では、初めてなんだよ」

 生まれ落ちて幾百年。記憶の上では情事はあるが、もう思い出せないくらい昔の話だ。それこそ最初か、その次の体くらいで、その後の記憶はない。
 つまり、事に及ぶのだとしたら、この身体では初めてと言うことになる。きっと痛いに違いない。

「本当か。じゃあやっぱり俺が初めてを奪いたいな! よしやろうユナン!」

「……」

 やたら元気にはしゃいでいるシンドバッドが恐ろしく若く見える。かつてここまでジェネレーションギャップを感じたことなどなかった。

「ユーナーンー! なあ、いいだろ。絶対に痛くしない。ちゃんと優しくする。怖かったら止めるから、だから頼む! 先っぽだけでいいから!」

 手を合わせて懇願するシンドバッドが、何故そこまで必死になるのか理解できない。段々とユナンは面倒くさくなってきた。どうせ興味本位だろうし、抱いてみたとしても男なんてかたくて面白くない事にすぐさま気がつくだろう。次からは素直に花街にでも行くはずだ。

「わかったよ。そこまで言うなら……」

「やったーーー!!!」

「ただし、興が冷めたら、続けなくていいからね」

 子供のようにはしゃぐシンドバッド見て、少し懐かしい気分になる。
 直ぐに飽きるだろう。なんて軽い計算違いをしたユナンは、暫くしてわりと後悔した。






ユナンさんがシンドバッドを自らの王に選んだと言っておきながら、全然シン様にお会いにならない本誌なので
原作の時間の合間を縫うタイプの二次創作をする私としましては
「何にも書けねえ……」
だったのですが、あまりにもシンユナに飢えはじめて……
自分の脚を食べるタコになる選択肢しか残されていませんでした。
そして、とりあえずでっちあげ設定でも妄想をかたちにしておこう、という境地に至りました。

一作目が、ドバ冒読んで、お母様、その呪いGJ!と思ったという話(笑)
二作目が、やりたかった肩傷の話。
三作目が、「……この身体では、初めてなんだよ」と「先っぽだけでいいから!」を言わせたかっただけの話です。

馴れ初め厨なんで、これからも馴れ初めをたくさんこさえたいですね!!!

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