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跡観20のお題小話集(跡部×観月)


2023年5月4日に開催された跡観プチオンリー『ローズガーデンティータイム』
開催記念を祝して事前にぽつぽつ書いていた、跡観20のお題にちなんだ小話集。
私の書きかけが如何にセリフだらけか、今……明かされる!!!

以下公式様のリンク
ローズガーデンティータイム様公式ページ 跡観20のお題






【公式戦】
「僕に許可を求める必要がどこにあるんですか?」
「いや、そうなんだが。あくまでこれは報告であり連絡であり相談でもあって」
「ふぅん、何か後ろめたいことでも?」
「ない。ないんだが、お前が不機嫌になるのは……嫌だ」
 夏を終わらせた学校はここだけではないだろうに。なのにわざわざ開催地枠での復活の了承をここまで取りに来たのだ。
 柄にもなく困った顔で素直にそう打ち明けるものだから、思わず笑みが溢れてしまった。そんな特別、他にはないだろう。
「んふっ、良いですよ。そういうのも運でしょうし、あなた達が自ら手繰り寄せたものでしょう? ですから、思いっきり頑張って、次は負けないでくださいね」
 悔しくないわけではないが、彼らと青学の戦いは素直に称賛に値する。何より、優先されたという事実に気分がとてもいい。これくらいの激励は送ってもいいだろう。
「なかなか言ってくれるじゃねぇの、当然だろ」
 再び始まる彼の夏を、共に追いかけるのも悪くはない。
【ティータイム】
 口に含み、存分に香りを楽しんだ後に、ふと漏れる穏やかな笑みが好きだった。元々誰かを笑顔にする事は好きな方だが、こんなにも充足感が得られるのだ、これを特別と言わずして何になるのか。
「僕の顔に何かついてますか?」
「何もねぇよ」
 まぁ、直接言ったことはないのだが。
「少し視線が痛いんですけど……もしかして、僕の顔けっこう好みだったりします?」
「まぁな」
 特に隠しもせずに笑みを浮かべ、頬杖を付きながらまじまじとみやった。瞬間に、ぶわりと沸き立つように赤面していく観月が見える。ああ、これはとても気分がいい。
「そ、そういう冗談はやめてください」
 赤くなりながらも冷静を装って、紅茶で口を湿らす姿を見て、笑みを深める。そのまま本気になるのもありかもしれない。
【薔薇の庭】
 バラを見に行きたい。そう言われてやってきた都内の薔薇園。バラという花が好きなのも、愛でたいという気持ちもわかるのだ。分かるのだが。ここ一時間ほど全く視線が合わなかった。いや、見られてすらいない。流石にこれは、バラに嫉妬するというものだ。
 まぁ、でも。バラを見つめる顔がいつもより柔和で、それに満足して全てを許してしまった。
 とりあえず家にもっとバラを植えよう。
【非情】
 赦されぬ罪なら許さなくていい。割とそのように思っていて割り切っているし、罰を受けねばならないほどの過ちを犯した事もないつもりだ。
 それでも噂というものは立つもので、燻る煙が流れてくる事もある。
「誰の事だ?」
「僕のことでしょう」
「は?」
「本当に知らないんですか。まぁ、別に大した話でもないので教えるつもりもありませんけど」
「不二の弟を唆したとかなんとか言うやつか?」
「なんだ、知ってるんじゃないですか。そのようなところでしょうね。好きに解釈して下さって結構ですよ。ああ言われるのにも慣れてきましたし」
「あー? 本当にそんなぞんざいな扱いをした相手から、今も変わらず好意を向けられるとかねぇだろ。そこんとこ、あの弟も解ってんだろ」
「さて、どうでしょうね」
「でなきゃ、あんなに穴が空きそうなくらい睨んでこねぇよ」
【ストリートテニス】
「実は行ったことがないんですよね」
 休日にはそんな所にも行ったりする、と部活で言われて気になっていた。聖ルドルフの夏が終わるまで、休日というものは個人練習や敵情視察をするものだと思っており、あまり余暇や休息も取っていなかった。話を聞きかじっただけで今に至るというわけだ。
 ストリートテニスだと思わぬデータが取れるかもしれない、とも思うが、目当ての選手を引き当てる確率は低い。なので選択肢にさえなかった。
 しかし、聞けば彼は似合わないことに行ったことがあるというではないか。なのでまぁ、誘ってみたというわけだ。
「だめだ」
 だが、返ってきたのは否定の言葉だった。何故。
「何か事情でも?」
「俺はよくてもお前はだめだ」
「何ですかそれ、ちょっと理不尽すぎやしませんか?」
 流石に怪訝な顔をしてしまう。一体、彼と自分にどんな差があるというのだ。そんなに実力を問われる世界だと言うのか。
「テニスがしたいなら俺んとこのコートや家のを使えばいいだろうが。やりたいなら相手も用意してやる」
「それはもうストリートテニスと別物では?」
 年齢性別を含めて、どのような相手とあたるかわからないから楽しめるものなのでは?と思うのだが、認識が違うのだろうか。
「とにかくだめだ」
 もう話をしたくないとでも言うように顔を背けられる。ここまで否定されるのは初めてなので、一応は食い下がる。 
「せめて理由くらい聞かせてください」
「うるせーな、嫉妬だよ。そこいらの雑魚にお前のテニスを簡単に見せてたまるか」
 あまりにも理由が可愛すぎて、思わず笑ってしまった。
 なお、後日に樺地くんも交えて行くことになったが、説き伏せるのに予想以上に時間がかかってしまったのはここだけの話。
【制服】
「お前のところの制服、かわいいな」
「何ですか当然、藪から棒に。うちの女子生徒でもいました?」
 ふと、見ていたであろう視線の先を見るが、特に学生らしき姿は見当たらない。
「てめぇだよ、てめぇ」
「はい???」
「あん???」
 思わず出た疑問符に疑問符が返ってくる。いやいや、理解不能。今更ながらに視線を感じる。そんな高圧的に見ておいて言うセリフではないと思う。つい、恥ずかしくなって目線を反らしてしまった。
「そんなに跡部くんのところと違うようにも思えませんけど、何をそんなにお気に召したんですか」
 ブレザーも互いに落ち着いた茶色であるし、ネクタイもえんじ色でそんなに変わりがない。ズボンで言えばチェック柄の氷帝の方が少しオシャレな気もする。正直、そこまで意識して考えたこともないのだが。
「刺繍が」
「ああ……」
「綺麗に見える」
 手が伸びてきて首元に触れる。なるほど、刺繍を見ていたのか。
「んふっ、ありがとうございます。まぁ、僕の場合は素材も良いので」
「そうだな、おまえの顔があるから『かわいい』になる」
 わざと冗談を言ってやったのに、どうしてそんな言い返せない事を言うのか。出かかった声を咳払いで濁す。とても調子が狂う。
 ただとても楽しそうにしているので、手は払わないでいてやった。

【引き継ぎ】
「実は僕、部長ではないんですよ」
「知ってる」
 全国区クラスの赤澤が部長というのは、しっくり来る話だ。テニスの実力、性格、器量、そんな部類に置いては最も秀でているのがわかる。
「なのに、やたら引き継ぐ事が多くて……何故でしょうね」
 しかし、現実はこうだ。実際のところ、聖ルドルフの色や空気を作っているのも、裏で手を引いているのも観月だった。おそらく、するべき事はだいたい観月が指揮権を持ってしまっているのだろう。特に手をわずらいたくもないので、そのままだというわけだ。
「なんでだろうな」
 事実、観月のようなタイプがいるなら任せてしまうだろうなと思う。あえて言わないが。
 ああ見えて聖ルドルフの中でも人望はあるから、好かれているのだろうし。
「なんで不機嫌そうなんですか?」
「べつに」
 まだこちらだけを見てくれる状況にはほど遠いようだ。こうして会える時間さえ少ない。早く終わってくれないか。
【さくらんぼ】
「なんでさくらんぼのイメージは二個の実がくっついている姿なのか、ご存知ですか?」
「流石に雑学がすぎるな」
「んふふ、そうでしょうそうでしょう」
「なんで嬉しそうなんだよ」
「なんでも知っている相手とか面白くないですからね」
「なんでもは知らねぇよ」
「花の数で決まるんです。二個が多いのは二つ花をつける事が多いからです。で、ここだけの話ですが、そろそろ花をつける時期なんですよ」
「へぇ、見せてくれんのか」
「今年は忙しいのでダメですね。でも来年まで、僕の傍にいてくれたら、見せてあげないこともないですよ?」
「言ったな。その言葉、忘れんなよ」
【破滅】
「何とかならないんですか?」
「何がだ」
「語感が強すぎます」
「実際、俺様は強ぇからな」
「そうでなくて。跡部くん、相手のプレイヤーにそんなものを願った事はないでしょう?」
「テメェもぼこぼこにしただろうが」
「言い方……。はともかく、そんな僕を今でも隣にこうして置いてる人の台詞とは思えませんね」
「わかったわかった。ならどうすりゃお気に召すんだ」
「そうですね。んふっ、次はもっと優雅に、華麗に、美しく、です」
【海】
「行きませんよ、海なんて」
 そもそもどうして行くと思ったのか。実際に忙しくてそんなスケジュールを挟める余地はない。学生をなんだと思っているのだろうか。
「あーん? 嫌いなのか?」
 余裕そうに見下されているのがわかる。ええい、腹の立つ。それでは否定開始だ。
「僕の事について全く知らないとは言わせませんよ。潮風でうねる髪、張り付く浜の砂、何もするにも汗ばむ陽気と炎天下、ただでさえ日焼けを気にしているのに海水浴とか言語道断、絶対に嫌です!」
 ここまで一気に言い切る。
「別に泳がなくてもいいだろ、何なら浜辺で」
「潮干狩りも却下です。砂浜の歩きにくさや砂っぽさも、春に連れて行かれて後悔しましたので」
 誰と何処に行ったかは伏せておくが、誘われたからとホイホイついて行って後悔した。そもそも山育ちで海は禄に体験せずに来たのだ、何をどうやって遊ぶのかちょっと気になりはしたが、何とも言えない磯っぽさも苦手だった。
 だが、ここで口を閉じている跡部ではない。
「昼はテラスでティータイム、夕方は室内でテニス、温泉で汗をさっぱり流してからのディナータイム、からの夜に花火だ。翌朝は日の出を見に海岸を散歩、昼には返してやる。どうだ?」
 すらすらと並べ立てられる言葉を、一つずつ咀嚼して飲み込む。
「……。随分と急なスケジュールですね」
 まぁ、悪くはない。好みとしては。
 ただ、もっと長く滞在したいと請われるかと思った。
「何倍でも増やせるが、俺もてめぇも時間がないだろ」
「一体、そんなスケジュールをキツキツにしてまで僕と何がしたいんですか?」
「今、ぜんぶ言っただろうが」
「旅行ですかね」
「青春だろ」
 言い切られてしまって言葉をなくす。確かに良い思い出にはなりそうだ。
「まぁ、悪くないですけど」
「安心しろよ。冬には山で世話になってやるよ」
「はいはい、わかりましたよ。フェアに行けるならそれで」
 ようやく自分の理解って来たらしい。施されっぱなしは気に食わないのだ。
 しかし、そこでふと考え込む。初めから彼は夏にも冬にも予定を組む計算だったのでは?
「それでいい」
 気づかない間に近づいてきた顔が近づき、額に一つキスを残していく。
「まったく。その自信、どこから湧いてくるんですかね」
 頭を押し返しながらごねる。少し油断をしたらこれだ。
「お前を見てたら、無限にな」
 自信に満ちた笑みは今日も翳らない。
【ボディクリーム】
「おまえ、肌きれいだよな」
 と言った後に何故か叩かれた。
「いって! なに怒ってんだよ。褒めてんだろーが」
「人前で言っていいことじゃないでしょう! 相手が忍足くんだから良かったものの、空気読んでください!」
「なんか俺の扱いが粗い気がすんねんけど、まぁええわ。おたくらそういう関係なん? 別にええけど」
「違います! そんな破廉恥な事してません!!!」
「いや、普通に一緒に風呂入ったら分かるだろ!?」
「言っておきますけど、あなたのために塗ってるわけではありませんからね!」
「そもそも一緒に風呂入るあたりで仲ええやん」
 とは言ったものの、風呂の中で隣の相手の肌の調子を見ているくらいには見ている事実に変わりはない事に気づいた。忘れよう。二人は先程の勢いのまま、目の前でぎゃんぎゃんと喧嘩している。
「……あー、青春やなぁ」




あとがき。一言感想とか付け足しだよ。
【公式戦】
氷帝が開催枠とかいう都合(笑)で復活することになったという話やで……。
律儀に観月さんに確認しにくる跡部はいる。知らんけど。
【ティータイム】
跡部は観月さんの顔が好きです。
観月さんのほっこりした顔が見たくてお茶してんですよ。たぶん。
【薔薇の庭】
観月さんにもっと家に来てほしい跡部くん。
【非情】
観月さんの非情さと
跡部の非情さって割りと似ているのでは?
っていう話。
【ストリートテニス】
人目にできるだけ観月さんを晒したくない跡部はいる。
みんなには観月さんが可愛いって知られたくないのだよ。
【制服】
ルドルフの制服って可愛いですよね!?って言いたいだけの話。
でもやっぱり観月さんが着てるから万倍かわいいと思ってる跡部。
【引き継ぎ】
引き継ぐことが多くて構ってもらえないので不貞腐れてる跡部だけど
そういう観月さんだから好きなんですよ。……知ってた?(知らん)
【さくらんぼ】
来た!セリフしかない私のプロット(笑)
跡部が知らない事もあるし、観月さんが知らない事もあるといい。
けどあれ、あれしたいのよ。
「何でもは知らないよ。知ってることだけ」ってやつーーー!!!
賢いキャラをいまいち書ききれてないは言ってはダメです。
【破滅】
どこぞやの輪舞曲とかいう技、語感強すぎじゃねぇ???
と思ってるのは私です。
【海】
海に行きたがる跡部とあんまり乗り気じゃない観月の論戦話。
そんな時間があるのか?と我に返ってしまった。
【ボディクリーム】
唐突に出てくる忍足侑士は、ずばりセリフだけを書いた時に関西弁なので書き分けがしやすいし、キャラの性格的にもわりとお節介焼いてくれそう、かつ好きなキャラ!
という色々が詰まっております。
全部は書ききれなかったのですが、書きたいなっていうネタは拾えたので良しとします。
跡観はネタが出てる数だけなら段違で多いので、それっぽい話は今後も書いたり書かなかったりするかもしれない。
これ!お気に入りだから!書けよ!今後も出せ!!!みたいなのあったら教えてください。


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