登場人物:ディスト、ピオニー、ジェイド
CP傾向:ジェイディスにピオニー横恋慕
制作時期:2006年春
ED後捏造話。J視点は逆に会話ばっかり…
※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
それでもいいよ!という方のみお読み下さい。
楼閣の下に
「……ぎゃあぁああぁぁぁぁぁっっ!?」
それはあまりに突然で、脈絡なんぞ全く無く。 理解する前にディストは、一目散に部屋を飛び出していた。
「おやおや……私としたことが、やりすぎましたか」
顔を真っ赤にして、全速力で逃げていった彼を思い出して苦笑する。
遊びに来ていたピオニーが、しっかりこちらを見ていたらしく、 呆れ顔で開けっ放しのドアを閉めに立ち上がった。 皇帝自らそんなことしないでください。
「ジェイド、おまえな……」
「なんですかピオニー」
何事も無かったかのように、デスクワークに戻る。
「ちょっと本気だっただろ、今の」
「10%くらいは本気ですよ? いやぁ、しかしあそこまで過敏に反応してもらえるとは思いませんでした」
「どうするんだ? 10%だけ本気のキスでも、相手はあのサフィールだぜ? 二乗くらいにはなってるんじゃないか?」
「だから頬にしておきましたのに、からかいがいのある男ですねぇ」
からからと笑って見せると、ピオニーは肩を竦めて「おっかないな」と溜息をついた。
私はきっとディストの事が好きなのだろうと思う。 自分でも「思う」というくらいなので、それほどその感情を認めているわけではない。
私には恋愛などというものより、大切なものが山ほどある。この国、この皇帝。この仕事。 かつての仲間達も総合的に見れば、あんな奇天烈な元幼馴染なんかより大切だ。だから10%でも多いくらいだと思っていたのだが。
「でも、10%だけの本気でサフィールからかってるんだったら、俺が貰っても文句ないよな?」
「とれるものなら、どうぞ」
あの男は50%ほどが私で埋め尽くされているのだろう。 昔とくらべて反発精神が育っているものの、特にここで私の研究助手となってからはより一層私しか見なくなった。
よくいえば純粋、悪く言えば馬鹿の一つ覚えのように私だけを見ている。 どれだけからかおうと、手を上げようとも、その瞳は揺らぎもしなかった。だから、いえる。
「うわ、ヤな自信だな」
「事実、ディストは貴方のことなんか目に入ってないでしょう? あれはそういう男なのですよ」
「でも、お前を恋愛対象として見ているわけでもない…」
「……。」
「なら、俺にも勝機はあるだろ? 絶対的な存在はお前かもしれないけどな」
「好きにするといい、貴方にはそれだけの力があるでしょう」
「力だけでは、人を好きになる心ってものは掴めないんだぜ? お前も知ってるだろ?」
小さく肩を竦めると「それじゃ、そろそろ戻りますか」などといって隣で眠っていたブウサギ(あの毛並みはネフリーだ)を小脇に抱えて立ち上がる。
「10%なんかの本気に負けるほど、俺は甘くないぞ? 本気で好きなら、ちょっとは頑張れよ、ジェイド」
宣戦布告をして軽やかに去っていったドアを見つめて、わけがわからず溜息をついた。
本気で好き?誰を誰が……否、全く否定をするつもりはないが。 これ以上気にかけるような気は全く無かった。取れるものなら取ればいい。 結局、あの目は私しか見ないだろう。
そろそろ、きっとディストはここに戻ってくるだろうから 私は最大限の愛情をもっていびり倒してやろうと、小さく口元に笑みを作った。
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