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暴けよ闇夜を、俺達は生きている 前 (TOA ディスト愛され気味の雪国組)

登場人物:ディスト ジェイド ピオニー

CP傾向:ディストが愛されているはず

制作時期:2006年冬

相変わらずのED後捏造話。
暗くもなく明るくもなく奇妙な雰囲気の中
ジェイドが色々あって昇進するんだぜーって話です。

※ この作品は古い作品なため文章が稚拙です。
 本来なら削除したいのですがマイナーなので残してあります。
 それでもいいよ!という方のみお読み下さい。









 牢屋への道にしてはやけに明るく小奇麗な通路を、ジェイドは一人歩いていた。
 幼馴染を想ってかどうかは知らないが、執拗に出入りする皇帝の為なのだとわかりつつ、苦い笑いを隠せなかった。一番奥の最も生活感溢れている牢屋に辿り着くと、そのまま鉄格子の扉を開く。ここに鍵がかけられなくなって、もう随分と時がたっていた。

「ディスト、居ますか?」

「おや、これはこれはジェイド・カーティス少将、貴方からここへ来るとは、珍しい事もあるのですね」

 ノックくらいして下さいよ、と口を尖らせて言われるが、そこは軽く無視しておくことにする。ノックができるのならばしてやってもいいが、生憎牢屋には叩くような所もなく、扉の前に垂れ下がった暖簾を潜り、堂々と牢屋入った。

 ジェイドはピオニーに比べて、この牢屋に足を運ぶことは少なかったが、それでも昔のよしみや、研究の状況などを聞きにたまに訪れる。
 前に来たときはもう少し物が少なかったような気がする、すっかり私物化されてしまった牢屋にげんなりしてジェイドは何も言えず溜息をついてしまった。

「それとも大将閣下とお呼びした方が良いでしょうか?」

「戯れはおやめなさい」

「ピオニーから聞きました、昇進が決まったそうですね。生きたまま二階級昇進する気持ちは如何ですか?」

 敵意を持った目を向けられることは無くなっていたが、今ではそれに代わり皮肉ばかりを口にする、白銀の髪を持つ幼馴染兼この牢屋の住人は、早速聞きつけた噂を掘り出してくる。
 誰のせいでこんなひにくれた性格になってしまったのか、と考えて、自分に答えが行き着いたジェイドは、やれやれと肩を竦めてこたえを返した。

「私はまだ少将です。それに二階級昇進といっても、特進扱いにならないように大将への任命は三ヶ月後ですよ。まぁ、私の昇格なんてどうでもいい……と、言いたかったんですがねぇ」

 普通に功績を立て、昇進するのなら威張り散らしてやればいいのだが、ジェイドにはそれができない理由があった。

「今回は、その件について話に来たのですよ」

 話を聞いて貰えますか?と目で問うと、丁度目があったディストは一瞬考えた後、小さく頷いた。

「分かりました、いいでしょう」

 ディストはだいたい話の筋は予想できたが、一応最初から話をまとめた方がいいだろうと考えた。

 ここは狭い牢屋だが、ピオニーに頼んで入れてもらった机と椅子。どう考えても囚人用ではないが、皇帝曰く「傷物」の天蓋付きベッド。物をしまっておく棚と、研究内容をまとめた本やノートがぎっしりつまっている本棚が完備されていた。
 もはや囚人として扱われておらず、牢屋に住み着く学者、それが今のディストに対する認識だった。ディストは唯一机に付属されている椅子にジェイドを勧めると、自分はベッドへと腰掛けた。

「で、何です?」

「……話の筋は大体分かっているとは思いますが、まず今回の昇進の軍功についてです」

「一つは、先日皇都で未遂に終わった『新生オラクル騎士団残党』によるクーデターの事前防止成功によるものでしょう?」

「ええ、あれを未遂と呼んで良いかは測りかねますがね」

 これはつい半月ほど前に起きた「新生オラクル騎士団」を名乗る残党兵による中規模のクーデター事件だった。「新生オラクル騎士団」の唯一の生き残りであるディストを教祖とし、教祖奪還と帝国政権の奪取の声明を上げ、難攻不落の帝都グランコクマを内部から制圧にかかった。
 それを事前察知したピオニーの勅命によりジェイドが鎮圧した。だが、仕組んだ首脳部を含むその殆どを捕らえるには至らず、帝都に傷跡を残すのみとなったのだった。
 祀り上げられたディスト本人は、その事を全く知らず、事後に報告を聞いて驚愕したほどだ。 暫く、ディスト周辺にも監視の目が付き厳重な体勢が敷かれたが、ディストに政権奪取は愚か反抗の意思はないとピオニーが判断し、あっさりとそれも解かれた。

「それはいいのです、それほど大きな軍功でもないと思いますが、以前から小さな武勲は立てていましたし、戦自体が減った今としては妥当なところでしょう。問題はもう一つです」

「貴方の研究内容が認められたという話ですね」

「そうです、しかしあれは……」

「9割は私が行った研究ですね。良かったじゃないですか、他人の功績を我が物にして苦労することなく昇進。奪った相手は自由も力も持たぬ、外界への道を閉ざされた囚人で……」

「……ッサフィール!!!」

 怒気をはらんだ声が牢屋に木霊し、ディストは口を噤んだ。まぁ、怖い。と揶揄るようにディストは肩を竦ませて小さく笑う。ジェイドの怒りはすぐに消えうせ、彼は苦い顔をした。

「冗談ですよ。……別に、私は恨んでなんかいません。私は私のやりたいように研究をして、それを監視する貴方がそれを取り入れた。囚人がしているような研究を上に報告するのは当たり前でしょうし、研究が有効であれば認められるのも当然です」

「しかし、理由や経過はどうであれ、私は結果的に貴方の本来の功績を奪ったのですよ!?」

「だから、私はいいといっているでしょう? 結果的に有効だと世間は私を認めたんです。ジェイドが……貴方が、私の研究は正しいと、認めた」

「だからといって私がその功績で昇進していいというものでもないでしょう」

「貴方が貰えるなら貰っておけばいいじゃないですか、私はこの国では他国籍の罪人らしいですから功績をいくら重ねようとも意味がありません。それだったら、意味のある昇進というものになったほうがいいじゃないですか?」

 無益な功績の擦り付け合いだと、双方が理解していた。こんな会話をしていても、皇帝の下で決定した事項は皇帝でなければ変わらないのだ。
 ただ、ジェイドは功績を奪ってしまったことがディストに申し訳なく。ディストはそれを捨てるくらいなら、好きな相手に貰っておいて欲しいと思っていた。

「さっき皮肉を言い過ぎた事が癇に障ったのなら謝りますよ。……私が悪かったです」

「やめなさい、ディスト……」

 ディストは普段の態度からは到底考えられないほど容易く、その身を折り、頭を下げた。答えることも拒否しようとするジェイドとの間に、気まずい空気が流れる。

「おーおー、やってるやってる。俺も混ぜてくれよ」

 だがそこへ、明るい声が割って入った。
 金の長髪に、海の青さを連想させる力強い瞳。大雑把に服を着こなしているものの、その歩みには気品と人を従わせる力があった。彼こそがこの国を束ねる現皇帝、ピオニー九世だ。

「ピオニー!」

「陛下……」

 ピオニーはさも当然というように、鉄格子の扉を開けて中へ入ってくる。それをまるで煙たそうなものをみるような目つきでディストは迎え入れた。ジェイドはというと、こんな部屋といっていいのかわからぬ牢獄の中でありながら、臣下として座ったまま迎えることはできずに、起立して迎え入れた。

「アナタ、何処から聞いてたんですか?」

「ツンデレのデレが見え始めるちょっと前くらいだな」

「ッ!!!」

 ツンはともかく、何時自分がデレたのかと聞き返そうとしたが、続くピオニーの言葉にその思考は流れる。

「てか、俺はジェイドからこの件について、階級昇進はクーデター分一つでいいともう聞いていてな」

 な、と目線を向けられて、当然のようにジェイドが頷く。

「だってどう考えてもおかしいでしょう、私は報告者に過ぎないのですから」

「だがお前の名前で研究が発表されたのも事実だ」

「だから甘んじて受けておきなさいといってるんです! この私が許してあげてるんですよ?」

 ピオニーが味方についたとばかりにディストが口を挟み、ジェイドを見やる。だがディストの押し付けがましい物言いの横槍は、ただジェイドを熱くさせただけであった。

「はぁ? お前が許す? 何故、お前の施しを受けて私が階級昇進せねばいけないんですか!? 自分の功績でもないのに! たとえ施しであってもね、私はそんな下衆な横取りはしたくはないんですよ! 思い上がらないでいただけますか!?」

「な!……んですって!? じゃぁ、じゃぁ私の研究による功績は無に帰すとでも」

 気圧されたディストも、興奮で顔を紅く染めて反撃するが、語尾がだんだんと弱く、涙声に変わっていくのが分った。

「あ~~~! はいはいはいはいはいはいはい」

 その相変わらずも無益な押収を収拾するべく、ピオニーは手を叩いて注意をひきつけた。何ですかと言わんばかりの非難の目でディストとジェイドがピオニーを睨む。

「止まれって、どっちの言い分も解かった上でな、解決策を講じにきたわけよ」

「はぁ? 解決策?」

 ジェイドが首を傾げる。そんな話、聞いたことすらない。
 そもそも双方が理解できる形で落ち着ける方法など、ジェイドには考えられなかった。

「とりあえず、座れ……ほらサフィール泣くな」

「な、泣いてなんかいません~っ」

 ぐすっと鼻を啜る音と共に、ディストは再びベッドに腰を下ろした。









まだ前の連載が終わってないので、ずっと上げるか迷ってたんですが
このまま置いておいても拉致があかないと思いupしました。
また中途半端全開な妄想話です。

ジェイドって絶対昇進してるだろう!とか
ディストに人間としての生活をさせてあげたくって
ない脳みそひねって頑張ってました。
まだ穴はあるだろうけど、そこは見ない方向で……



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