登場人物:サタン レムレス
CP傾向:サタレムを目指して滑った
備考:やや真面目な短文。
サタレムを目指してシェレムに終わったが
なにものにもなれなかった。
『人助け』と言えば、聞こえだけは良いのかもしれない。
だがきっと、これはただの依存なのだろう。
「駄目ですよ。だって、僕はあなたの希望になれないでしょう?」
レムレスは、伸ばされた手をするりとかわして逃げた。
つい先ほど「俺のものにならないか」と言われた。あまりに唐突だったもので、言葉の意味を理解するのに、一呼吸も置いてしまった。
そして、先の一声。
「そうだな」
問うた彼は、拒否の言葉を紡ぐことは、予め予測されていたのだろう。すぐに気のない相槌が打たれ、伸ばされた腕は下ろされた。
きっと、この人は今この一瞬が寂しかっただけなのだ。王ゆえの孤独、とでも言うのだろうか。人と違うものを持っている者は、人に馴染むことが容易くない。強大な力を持つこの魔王も、そうなのだろうか。
そんな事を考えて、少しだけ手を取らなかった事を悔やむ。
けれど。けれども。
きっと手を握ったとしても、その先はないのだ。
「あなたは僕を手に入れても、満足はできません。幸せにもなれない。だから、駄目です」
「そうか、駄目か」
くつくつと、彼は笑う。まるで言い当てられたとでも言うような顔で。
「あなたには、求めている希望がある。あなたという希望を求めている者もいる。だから、僕は必要ないはずですよ」
「何でも欲しくなるのだ。サタン様だからな」
何が関係あるのやら、見当もつかない。が、悪魔の中には強欲を司る者もいる。魔の王である彼も、そうだというのだろうか?
いや、そうではない……。
「何でもは手に入らないと、既に知ってらっしゃるでしょうに」
賢いこの人が、気づかないはずがないのだ。驕れども、王だ。しかも、長い時間を生きてきた。聡明で、思慮深い。
それでも乞わずにはいられない。恋わずいられない。求めずにはいられない。手を伸ばさずにはいられない。それは、人の心だった。
それが希望か絶望かは、レムレスには分からなかった。けれど、言えることが二つある。
一つは、彼にとって『自分』が希望にはなり得ないこと。そしてもう一つが
「でも僕は……そういう子供みたいな純真さは嫌いじゃありませんよ」
という事だった。
魔であれ王であれ何であれ、レムレスは希望を追いかける人が好きだった。そんな人の力になりたくて、ここまで来たのだ。
「全く、サタン様の方が何倍も生きているのだぞ? 子供扱いしおってからに」
そういう声に、嫌はない。寧ろ楽しそうだった。やはりこの人は、寂しいのだ。
「すみません。けれど、その心が残っているから、ずっと希望を追いかけていられるんですよ。希望は、間違うと一瞬で絶望に変わります。それを、あなたは知っている」
「知らんな」
そっぽ向くサタンの姿に、少しだけ笑みが零れる。
「いいえ、あなたは、悲しむアルルやカーバンクルを見たくないと思っているはずです。それですよ」
窓の外を眺めるサタンが、ひとつため息を零す。
「……全く、うまくはいかんな」
それは枷なのだろう。けれど、魔王はそれを外す気はない。
想いは通り過ぎ、伝わっても響くことはない。もう、そうやって幾年が過ぎたのやら。だけれど、彼は追うことを止めない。
そんな彼が、とても美しく見えた。レムレスはただ、その想いが大切にされるよう、祈るしかなかった。
「そんなものです」
「そうだな。そんなものだ」
「お菓子、食べますか? 慰めくらいには、なりますよ」
「ああ、貰おうか」
あなたがいつか、希望に届きますように。願いを込めて。希望を込めて。
「全く、奴の何処が気に入ったのやら。言っておくが、私よりもあいつの方が、性格は悪いぞ。悪いと言うか、愛を知らん。闇は孤高でいられるからこそ、闇なのだ。故に人を傷つける」
「そんなことは、させません。彼が僕をそばに置いてくれる限り、彼が僕を裏切っても、僕は彼を裏切らない。……傷つけさせませんよ。彼も、彼からも」
それが、僕の望んだ希望。
ちまたでサタレムが流行っていると聞いた時に、よーし私も!と試しに書いてみたら……
さ、詐欺だーーー!!!という結果になってしまいました。
サタレムと言うにはおこがましく
シェレムで落ちているのに浅い……まさにナニモノにもなれなかった話。
レムレスのセリフの中でも、特に『15th』のvsゾウ大魔王のセリフが好きで、すっかり私の中で希望依存の子になってます。
誰かの夢の力になりたいなんて、なんて健気で、自己犠牲的で、キラキラしいんだろう。だがあえてそれを『依存』で締めくくるのが私。(ひどい!)
その希望を叶えて照らし続けていたい、頂点の人がたぶんシェゾです。
タイトルの意味は『希望依存症』……わぁ、ろくでもない!
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