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本当の声で僕らは話せないけど(燭竜×太上老君 ※元気封神)

注意:元気封神というサ終したソシャゲの二次創作です! 詳しくはこちら

【登場する人】
燭竜、太上老君

【CP】
燭老

【備考】
相変わらず封神台の中でわちゃわちゃしてるだけのお話。









「これ燭竜! 返すのじゃ!!」

「やーだね。そんなに大事なものならここで取り出さなかったら良かったのに」

 誰もいない封神台の中を黒っぽい影と金ピカの何かに乗った少年が二人、追いかけっこしていた。
 黒い少年、燭竜の手には金ピカのおしゃぶりが太陽の光を受けてキラキラしている。
 燭竜は金ピカに乗った少年の軌道から上手くズレてを繰り返し、なかなか奪い返すことを許さず手にあるものを守り続けている。逆に金ピカの少年は直接ぶつからないようにかなり力を抑えているのか、やや消極的だ。速度も遅い。

「う、それはそうじゃが。いきなり襲って盗っていく奴がおるか!」

「あのねえ、僕はすご~くワルイコなんだから、もうちょっと気をつけたほうが良いよ? 君、ちょっと人が良すぎるんだから」

「むぐぐ……」

 封神台の中なのだ、やろうと思えば強制的に拘束して取り戻せるのに、太上老君はいつも可能な限り実力行使に出なかった。今日だってそうだ。

「ところでコレ、何なの? とてつもない力は感じるけど……ただの金ピカおしゃぶりだよね。君っていくつだっけ」

 空に高くポンと投げて燭竜が再びキャッチする。手を伸ばすが寸のところで取れなかった太上老君は悔しそうに宙に浮き上がった。

「むう、幼児用ではない。わしにとっては大事な仙器なのじゃ。それにお主には使えん。わし以外が使えぬようにしてあるからのう。ただのおしゃぶり、そなたにとってはガラクタじゃ。さあ、返すがよい」

「へえ、残念。僕には使えないんだ……?」

 キラリと光るおしゃぶりを見る。先程はまだ唾液がついていたが、今ではすっかり乾いてしまっている。そうなるとただのキラキラのおしゃぶりだ。

「そうじゃ。わしは修行している間も、治癒の修行をしている方が多くてのう。故に法仙や玄仙と違って己の霊気を枯渇するほど多く使う事がなかったのじゃ。三清となった後、師兄がそのあまりある霊気を溜めておけたらと造って与えてくださった」

「じゃあここにはこれまでの力が……」

「蓄えられておる。じゃがそなたのようなワルイコに悪用されぬように、わしの霊気に干渉してしか取り出せなくなっておるのだ。だからおぬしには使えぬよ」

 確かに、莫大な霊気を感じるが、取り出せる気配は感じない。
 だが、燭竜は心の中で笑み曲いだ。彼の霊気にしか反応しないというならば、彼ごといただいてしまえば良いのだ。

「そっか、なら……」

「うむ、それでよい」

 太上老君が返すようにと手のひらを出す。燭竜も返すと思いきや、スッと手を引いた。

「ねえ、一回舐めていい? これって間接キスになるかな」

 やっぱり勿体ないとでも言うように、おしゃぶりを手の平に戻した燭竜はニヤニヤ笑いながら太陽にそれをかざす。

「ふあっ!?!!! そなたは何を考えておるのじゃ!?」

 流石に太上老君は狼狽する。

「っていう君の反応が見たくてね。あははははは!!!!」

「ばか! 馬鹿者!!! そんなに口寂しいなら今度から飴くらい作って来てやるから!! や、やめるのじゃ~!!!」

 流石にやられかねないと判断したのだろう。太上老君が宝具の大幣を取り出す。だが、強制的に手から取り返される前に燭竜は軽くおしゃぶりを太上老君へと投げた。咄嗟の事で慌てつつも、寸のところでキャッチする。

「っと! これ燭竜、危ないではないか!」

 燭竜の気まぐれな優しさと意地悪に憤慨する。

「ごめんごめん。でも返してあげたでしょ?」

「もう二度とそなたの前では出さぬわ」

 太上老君は、また盗られないうちにとさっさと服の内の異空間へしまい込む。全く、油断も隙もないとはこういう事だ。
 否、本来ならこの封神台の中でこのように自由にさせるべきではないのだろう。今のが外に出られるようなものであれば致命的だ。
 だが、彼とてそこまで気を抜いたつもりではなかった。
 ――否、どちらにせよこの牢はいつか破られる。彼の力を削ぎ続けて、出られないようにずっと見張っていたとしても、きっといつか。彼は外に出る。
 自分の役目は、その日を少しでも長く伸ばす事なのだと、既に理解している。
 人柱。いや、仙人を贄にした牢獄。それがこの封神台の本質だからだ。
 ならば、少しでも互いに良い時間を過ごしたいと太上老君は思う。それを燭竜が願っているわけでもないと知っている。ただの己のエゴだ。

「いいよ。僕はそっちの君の方が好きだし」

「ふむ、そうなのか? ……やはりこの外見でおしゃぶりは違和感があるかのう」

 太上老君の外見は幼さを残しているが幼児には見えない。だが、この歳で身体は年齢を重ねるのを止めてしまった。だから人前では威厳も兼ねてあまり咥えないようにはしている。戦闘では不意に大きな霊力がいる可能性も考えて咥えている事が多いが、できるだけ頼らないようにもしている。
 それに、好意を寄せている相手にあまり気に入らないと言われたら、それなりに考えものだ。
 そんな事を考えていたら、隣まで来ていた燭竜に軽く笑われた。本当に、こんな屈託のない顔で笑うものだから、嫌いになることができない。

「違う違う」

 燭竜は左手で太上老君の服を掴み、右手でさっと頬を捉えると、さも当然のように唇に唇を押し付けた。一瞬、にゅるりと彼の舌が入ってきて、前歯をなぞって出ていった。ちゅ、と聞き慣れない音が、何も考えられなくなった脳に木霊する。

「ないほうが、こういうこと、しやすいでしょってコトさ」

 相変わらずの不敵に煌めいた表情の燭竜が見える。瞳がギラギラを光っていて、まるで肉食獣のように見える。対象的に太上老君は一瞬ぽかんとしていた。が、すぐに我を取り戻す。
 大体彼の考えていることは碌な事ではないのだが、思わせぶりな行動にすぐ乗せられてしまう。

「な……な、な……何を……」

 太上老君も負けず劣らず、湧きあがる怒りに身を震わせていたが、顔だけでなく耳まで真っ赤になっていた。怒っているのではない。羞恥に震えているのだ。

「燭竜の大馬鹿者~~~!!!!!」

 怒髪天を衝くような大声と共に、太上老君は一度だけ大幣で燭竜の頭を叩くと、ゴトリと音を立ててそのまま金壺の中へと帰っていってしまった。その壺もやがて亜空間へとスッと消える。
 その一連の動作に、燭竜は思わず声に出して笑ってしまった。頭に食らった一撃も全然痛くない。そして大声で空に話しかける。

「次は飴ちゃんも持ってきてよね~!」

 この声はきっと聞こえている。ここは彼の封神台の中なのだから。

「ほんと、かわいいねえ。初めてだったのかな? 流石にそんな事はないよね」

 でもあの顔、軽くからかったつもりが、本気の反応を返されてしまった。可愛くて可笑しくて笑ってしまう。封神台に自分を閉じ込めた相手が、あの高圧的な元始天尊や、何処か見下すような態度の通天教主でなくて良かったと改めて感じる。閉じ込められる苦しみがないわけではないが、少なくとも彼がいる時は楽しいからだ。
 さて、次会う時はどんな顔をして来るのだろうか。封神台の中に閉じ込められながら、こんなに彼が来るのが楽しみに感じる事が来るなど思いもしなかった。
 いつか、ここを出ると心に決めている。勿論、結界を破るのだから、彼はその時に死ぬことになるだろう。

「でも、欲しいなあ……」

 あのキラキラ輝く黄金と、太陽の光に愛されたような輝く若草色の髪に、翡翠を溶け込ましたような透き通った瞳。自分と同じで、あれ以上成長しない細身の身体。そしてこんな自分に恐れながらも、手を差し伸べる優しすぎる性格。誰でも慈しんでしまう、何千年も汚れない心。でも自分にしか見せないであろう数々の顔。思い出す度に強い支配欲にとらわれる。博愛の権化のような神聖なる存在。
 だが、全て騙して、全て奪って、全て自分のモノにしてしまえばいいと……そう思っていたのに、それでは何かが手に入らないような気がする。何故だろうか。

「うーん……難しいな。ま、少しずつ詰めればいっか」

 いずれこの軽い「欲しい」という気持ちは本気になる。が、それはまた別のお話。







太上老君のおしゃぶりについて……あれ魔封環ですよね?(幽白でコエンマが咥えてるやつです/笑)
っていう妄想から生まれたお話。
でも悪用されたら困るし、彼しか使えない設定にしたら
後に出る『太上魔君』が生きるな~と思いつくままに書いてました。

太上魔君についてですが、燭竜が彼を乗っ取って動いている時もあれば
太上老君の記憶を微かに持つぼんやりした抜け殻みたいな時もあるんですかね
じゃないと同時に存在している理由にならないもんなぁ……

うーん、そのあたりの設定も知りたかったな><
今じゃもう妄想するしかないので、できる限りの事を今後の自分のためにしますw

マジでぼっちすぎてやばい、このジャンル……たすけて……


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