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跡観短編詰め合わせ(跡部×観月)

登場人物:跡部、観月
CP傾向:跡観
制作時期:2023年~2024年

ここ最近に書いていた跡観短編です。全部似た話な気がする。
・2023観月誕生日
・2023跡部誕生日
・2024バレンタイン






◆ 2023年 観月誕生日の跡観




「祝ってほしいなんて、一言も言った覚えはないのですが?」

 相も変わらず、そっけなさすぎる態度に跡部景吾は眉をしかめた。

「はァ? なんでてめぇはそんなにひねくれてんだよ」

 返し言葉にぐうの音も出ない。捻ているかどうかでいえば、文字通り湾曲している。特に今日は盛大に捻ていた。
 虫の居所が悪いといえばそうでしかなく、これはもう八つ当たりと言うのかもしれない。
 ごちゃごちゃと小競り合いのように言葉を交わしながら、寮の庭園まで来てしまった。流石にルドルフ寮の玄関口で騒ぐのも問題かと思ったのだ。季節は春を終え、夜に出歩いてももう冷えることもない。

「で、どうやったら機嫌を直してもらえるんだ?」

 そう切り出した跡部は、腹を探りに来ている。

「そもそも、僕なんかの機嫌を取ってどうなると言うのです」

「祝いに来たのにつれなくされるのは、流石に俺様も傷つくってなもんだ」

 跡部の言葉が正しい。最もである。

「はいはい、悪かったです。僕がぜんぶ悪かったですよ」

 誰からも全く祝われなければ、それはそれで怒る性格であるし、後からねちねち蒸し返すことだろう。
 が、この男はダメだ。これまでの付き合いでも調査でも、知っている。常識がおかしい人間が祝いたがっている時点で気をつけるべきなのだ。彼に愛されている樺地崇弘がどういう誕生日を迎えたか、知ったときには卒倒しかけたし、絶対に祝われてはならないと強く思ったのだ。

「だが、そういう子供みたいなところも嫌いじゃない」

 ほら、こうしてドヤ顔でこういう事を言う。

「はいはいはいはい本当に、本当に僕が悪かったのでそういう事を言うのはやめてください。ここは外なので」

「誰もいねぇだろ」

 どうして好かれているのか、未だによく理解していない。だが気に入られている、ということはルドルフのメンバーも薄々気づいては来ている。もしかしたら本人が一番理解していないのかもしれない。

「気持ちの問題でして。……で? 何を持って来たのか聞くだけ聞いてあげますよ」

「ああ、指輪」

「ッ重すぎます却下! お引取りください!!!」

 けろっと言う男を全力で突き放す。最早プレゼントを出す暇も与えない。そういうプレゼントはもっとこう、可愛くて綺麗な女性とかにするべきで、同性の友達にするようなものではないと思うのだ。故に観月は全否定した。

「と、言うと思ってだな……一応、薔薇の花束も用意させたわけだが」

「それなら……ありがとうございます。僕のこと、だいぶ解ってきたみたいじゃないですか」

 正直、花くらいで丁度いいと思う。再三、高い贈り物はいらないと言っているのに、この男は本当に理解しているかあやしい。そもそもスケールがおかしいのだ。
 しかし、跡部も跡部で黙って引きはしなかった。

「しかしなぁ、観月よ。誕生日くらいは普通に祝わせてくれ」

「あなたの普通は普通じゃないから言ってるんですけど、自覚あります? 指輪送り付けて来るなんて相当ですよ」

「アクセサリーくらい普通に送ったりすんだろーが、いいから貰えよ!!!」

 んなわけがない。

「その感覚が怖いっていってるんですけど!? 中学生男子が意味もなく指輪なんてつけるはずがないでしょうが!」

「野郎だってつけてるだろうが、なんかこう……ゴテゴテしたやつとか!」

「それはシルバーアクセサリーでしょう! 貴方が買ったものは?」

「いや、普通のやつ」

「バカですか!?」

 普通のやつ、という感覚が分からない。跡部景吾の普通が世間の普通と一致しているはずがないからだ。

「似合うと思ったんだよ」

「信じられない」

「ちゃんと薬指じゃないやつだ」

 男の誕生日に指輪を贈る男、まったくもって大丈夫じゃない。ちゃんとしていない。

「気にいらないなら捨ててもいい」

「そういう事を言われても困ります。買った物を大切にしてください」

「まぁ、開けてみろって」

「僕は乗せられませんからね」

 と、言い切ったものの、受け取らざるを得ない雰囲気がしてきた。
 完全に引きながらも、ベンチに二人座ってがさがさと包みを広げていく。豪奢なラッピングの中から出てきたこれまた高そうな硬い箱の中から出てきたのは、小さなシルバーの指輪だった。
 小さくあしらわれている彫金の薔薇、その中心に小粒の宝石がはめ込まれている。それ以外はシンプルで、派手すぎず可愛らしかった。
 これを男がつけるのか、と思いつつ指に通してみる。大きさ的に小指しか入らないだろう。

「どうよ」

「ええ、デザインは好きです。でも小指にぴったりで、これどうなってるんです? 教えてませんよね、そんなデータ」

「それはな、赤澤を買収しておまえが寝ている時に計ってもらった」

 いきなり飛び出すトンデモ発言に思わず観月はため息をつく。そこまでやるなら最後までネタを明かすな。

「はぁぁ……。僕はね、跡部くん。あなたのそういうところが嫌いです」

「素直に答えてやったってのに……」

 素直さは今はどうでもいい。まずそういう事を金で解決するなと言いたい。

「素直に吐くと言うことは、ずばり後ろめたい気持ちもあるんでしょうに。こんなものに散財してあなたと言う人はほんっとにもう……」

 どうしようもない事をしでかして来そうだったが、予想以上にしでかしてくる。
 だが、跡部はセンスは悪くない。あまりにも可愛すぎる気がするが、綺麗なものは観月だって好きなのだ。だからこそ、見たくなかった所もあるのだが。小指を着飾る銀色は、確かにとても見えが良い。

「これでも抑えてるんだがな。とにかく、俺と会う時だけでもいいから、持ってろよ」」

「わかりました。身につけはしませんが、大切にしますよ」

 やっぱり押し切られてしまった。だからこの男のプレゼントなど嫌だったのに、結局のところ後生大事にしてしまう性格をしている。たぶん、それも見切られているのが本当に面白くなかった。そんなに良い性格をしているつもりはないのに、こうして手玉に取られているのだから困ったものだ。

「改めて。ハッピーバスデイ、観月」

 途端に上機嫌になった跡部がいつもの高慢ちきな顔をキメてくる。嫌いにはなれそうもない。

「どうもありがとうございます」

 やれやれと思いながらも、仕方がないから言葉を返した。






◆ 2023年 跡部誕生日の跡観




「プレゼントを貰いに来た」

 堂々と現れた男は、自信満々にそう言い切った。

「は? 何も用意してませんけど?」

 付き合わされている男は困惑しつつもきっぱりと言い返す。そして沈黙が支配した。

「あん? 覚えてなかったのかよ」

「覚えてますけど、僕がプレゼントを用意する義理があるような、ないような……」

 それを言われて、跡部景吾は言葉に詰まる。それを言ってしまえば全くない。そう、全くだ。
 全国大会を終えて、ようやく秋を感じられる気温になったつい二週間ほど前、なんやかんやと関係が続いていた跡部が観月に告白をした。現在解答は聖ルドルフの文化祭が終わるまで保留中である。
 からして、そう。付き合ってはいないわけだ。用意されていなくても当然といえば当然なのである。

「そんな恨めしい顔されましても……んー、僕の持っているもので渡せそうなものはだいたいすぐに手に入るでしょうし」

「そういう事を気にするほど俺は小せえ男じゃねえよ」

 そもそもプレゼントが用意されていなかった時点で帰れという話である。いや、本当に帰れよ。逆に器が小さいのではないかと観月は心の中でつっこんだ。

「とは言いましても……薔薇が咲いているならそれでも良かったのですが、あいにく今は咲いていませんし」

「じゃぁ、その薔薇を予約しておくってのでどうだ?」

「そこまでする必要あります? いつもあなたの家で見られるようなものだと思うんですけど」

 観月が育てられるような薔薇は、大体は跡部の家にもあるのではないか。なんたって庭師も入っているし、温室もある。

「貰うのとはわけが違うだろ」

「はあ、何が何でもなにか貰っていくつもりですね」

「ああ。来年、百倍にして返してやるよ」

「そういうのはいりません」

 本当に嫌そうな顔で言ってやる。伝われば良いのだが、跡部にはいまいち伝わり切っていないように思う。
 観月は贈り物をあまり受け取らない性質だった。タダで貰うものほど怖いものはないからだ。
 だが、引かなさそうな男を見て、思案を巡らせた。何か良い手はないものか。

「ああ、そうだ。ちょっと待っていてください」

 そう言うと、観月は寮へ戻っていき、わりとすぐに外へと出てきた。手には可愛らしいシックな紅色で包装されている小包を持っている。

「お待たせしました。はいこれ、どうぞ」

 差し出された小包を跡部が受け取る。気持ちずしりと重たかった。

「ありがとよ?」

 んん、と観月は咳払いをすると、改まって説明をはじめる。

「残りが少なくなっていたので、自分用に買い足しておいたメープルシュガーです。これなら何なりと使えるでしょう」

「へえ」

「舌に合わないにしても、料理に使えるでしょうし」

「だから、そういう事は気にしなくていいんだよ。貰っておくぜ」

「どうも」

 何処となく照れている様子の観月に、思わず跡部の口の端が上がる。そっけなく見えて、なんだかんだで付き合いは良かったりする。

「こういうのが好きなのか」

「好きですけど、それがなにか? インテリアとしても良いですし、自分用ですので」

「覚えておいてやる」

 近くにいたらいくらでも甘やかしてやれるのに、と考えるが、それを是としない観月だからこそ、惹かれるものがあるのだ。

「僕から甘味を暫く奪うんですから、せいぜい喜んでくださいよ」

 それではおやすみなさい、と軽く会釈をして寮に戻っていく観月の背に、届く程度の別れの挨拶を送った。
 今日はこれで、甘いメープルティーにしよう。






◆ 2024年 バレンタイン跡観



 年に一度の甘い夢の日。
 毎年増えていくような気がする贈り物の山だが、今年は輪にかけて多かった。最近はチョコレートや菓子も減って、単純に贈り物も増えている。返し尽くすなど不可能なので、返ってくるものはないと明言してから受け取ってはいるが、それでも数が減ることはなかった。断らないのは、少しばかり気持ちがわかるからだ。
 贈り物を受け取ってくれる相手であれば、毎年山のように用意するだろうが、悲しきかな、想い人は贈り物であまりいい顔をしたことがない。
 今年も本当に欲しい人からは声がかかる事もなく、丸一日焦がれながら待ち望んでいたのだが、陽もすっかり暮れてしまって夜になっている。
 そこに掛かって来たのは一本の電話。画面を見るなり直ぐに出た。

「観月か。どうした」

 どうしたもこうしたもない。今すぐチョコをくれと叫びたい。
 のを我慢して、至って冷静なふりをする。みっともない姿は絶対に見せたくはない。

「いえ、あの。大した用ではないのですが……。チームメンバーにどうしても今日お菓子が食べたいと言われまして、致し方なく焼いたんですけど、ショコラケーキとかいりま」

「いる」

 思わず即答していた。ルドルフのメンバーにしこたま感謝した。例え義理以下でも上等である。この日にわざわざ声をかけてくれたのだ、他意くらいは期待するってものだろう。

「あなたの口に合うかは保証しかねますよ。レシピ通りに作っただけですし」

「今すぐ取りに行く」

 そう言うとコートを手にとって表に出た。高揚して火照った顔に冷えた風が心地よいくらいだった。





「はい、どうぞ。あまり日持ちしませんから、明日中には食べきってくださいね。無理なら誰かにあげてるなり処分するなりしてください」

「誰にもやらねぇよ」

 観月は応接間で用意をして待ってくれていた。華美ではないが、シンプルな中に薔薇のシールがワンポイント入っていて、とても観月らしくて可愛いラッピングの袋が手渡される。
 思わず感動して、少し泣きそうになったのを堪える。念願のバレンタインの贈り物だ。

「ありがとな。……ってか、なんで分かった?」

「分かったも何も、露骨すぎなんですよ。聡明な僕が気づかないとでも? んふっ、まぁ賄賂みたいなものですよ賄賂。ってうわぁぁ……」

 大げさなアクションをつけて偉ぶる観月が台詞を言い終わる前に袋ごと抱きしめていた。肩口に顔を埋めると、いつもの観月の香りの中にふんわりと甘いお菓子の匂いを感じる。これはちょっと至高すぎる。

「はぁ……スン。甘いにおいがする……最高かよ」

「ちょ、やめてください! 匂いを嗅ぐな、息を止めろ!」

 さりげなく死の罵倒をされているが、構わず腕に力を込める。せっかくこの日にチョコを貰って部屋に二人きりなのだ、少しくらいは充電させてもらいたい。

「もう貰えないかと思った」

「別にあげるつもりで作ったわけじゃないですからね!?」

 べり、と身を離される。ついでに少し脛を蹴られた。少し痛いが気分は最高だ。

「ついでですけど、欲しそうな顔をしてたのは知っていたので多めに焼いただけです。あと別にホワイトデーにお返しとかいりませんので。ほら、これ持ってさっさと家に帰りなさい」

「I love you……」

「はいはい、そういうのホントいいので」

 投げたハートは全部手ではたき落とされている塩対応だが、これは観月にしては貴重なデレ要素だろう。何故なら、観月は耳まで赤い。
 しっかり照れている観月を確認して、今日のところは撤退することにした。
 今年のバレンタインはVeryVery excellent!










2023年は跡観の年だったのでバレンタインの話書いてた。もう記憶にない。
んだけど、ちょっとくらいなら書けるじゃろ?っていつも軽率に書き始めてしまうんです。
それで今、書ききってない跡観の話がデスクトップに8つくらいあります。
どれがどういう跡観だったか、読まないとわからないまである。

ところで、新テニでの跡観も書いてみたい気もあるんですけど
私が途中から未読なので全く手が出せないというね……。
金銭面的にそのうち何とかなったら読みたい。
でないと永遠に序章軸が続いてしまう。

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