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錨を沈めて長居はしないさ(トッシュ×アーク)

情緒不安定なアークさんをよしよししてあげるトッシュのお話。
大丈夫、特に何もしてません。短文。
お手つきしてないし、付き合ってもいない。
でもトシュアーだよ。ほんとほんと。







 それは風の強い夜更けのことだった。
 大人組が酒盛りを終え、トッシュは酒のつまみの入っていた器をキッチンに戻しに来ていた。
 いつもは律儀に食器を戻すことはなく、そのまま大いびきをかいて寝落ちるのがほとんどなのだが、その日に限ってはやけに目が冴えていたから散歩がてらというわけだ。
 明日もおそらく戦闘だ。深酒はしていないからというのもあるが、あの程度では酔って眠くなるはずもないと鼻歌交じりにキッチンまで降りてきて、そしてアークをみつけた。
 今夜は少し肌寒いまであるのに、えらく薄着だなとトッシュは近づく。

「ん~? おまえさん、まだ起きてんのか?」

 一つのランプのみで帳簿と睨めっこをしていたアークが顔をあげる。手を動かしていなかったから、どうやら行き詰まっているようだ。

「ああ、トッシュか」

 寝支度は整えてあるらしく、いつもより軽装で、髪はしっとりとしている。
 今日もそれなりに戦闘もしたし長く歩いた。その表情には疲労も見てとれるし、顔色もよくなかった。
 黙ってぴとりと手の甲で頬に触れる。ひやりとした体温を感じとり、眉をしかめる。

「どうした?」

 ここまで懐に入っているのに、引いたり焦ったりを一切しないアークを見て、心の底から信頼されているのだと理解する。
 トッシュは一つため息を吐くと、むんずとアークの腕を掴みあげた。そちらも酷く冷たい。そのまま手を引いて歩きだす。

「うわっ、わっ! ちょっと、トッシュ!?」

「ひでぇ顔してやがる。ほっとけっかよ」

 慌てるアークの声を無視して、大股でどかどかと手を引いた。

「トッシュ、俺……まだやらなければいけないことが残ってるから」

 口では否定しているが、アークに逃げるつもりも振り払うつもりもないらしく、大人しく手を引かれてついてくる。
 何も言わずに部屋まで連れて入ると、そのままベッドに突き飛ばして上から毛布をかけた。うわ、と小さくアークの悲鳴が聞こえる。

「いいから寝ろ」

「そんな……いきなり。俺はまだ眠くなんかないし」

 這い出そうとしてくるのを押し留めて、勝手に靴を脱がせると、自らもベッドにもそもそと潜りこむ。
 そこまで嫌がっているとか、抵抗しているとかではないらしい。
 そも、この図体で暴れられたら、流石に手におえるわけがない。それくらいにはアークは成熟しているし、腕っぷしも強い。
 不服があるらしい顔に、ずいっと顔を近づけると、ごちんと頭突きをしてやった。

「てっ!!!」

 何も本気じゃない。戯れ程度だ。それでもアークは額をおさえて更に大人しくなった。

「はぁ、そう生き急ぐんじゃねぇよ。たまには止まれ。お前さん、ちぃっと気を張り詰め過ぎだ」

「そうは言っても、止まってるのは苦手だ」

 日中のアークはよく働く。ククルがいなくなった事もあってか、気を紛らわすようにずっと動いている。もともと面倒見のいい性格ではあったし、なんでもそつなくこなす。気が利くというのも強みだが、こうも真面目だと息苦しそうに見えた。

「一度止まって、見渡すことで見えてくるモンもあるってぇこった。視野を広げな」

 毛布ごと抱えて、頭をわしわしと撫でてやる。これでもかわいい弟分なのだ。たまには面倒をみてやってもいいだろう。
 アークは抵抗することを諦めたのか、大人しくなって肩を落としている。
 そしてぽつりと呟きはじめた。

「でも、俺、怖いんだ。立ち止まるのが怖い。止まってしまうと、色々と考えてしまって、考えるのが止まらなくなってしまって……」

「ふぅん」

 彼が精霊の勇者になる瞬間に立ち会ってきた、伝説の七勇者の末裔として、その責務の重さを知らないわけではない。
 本来はもっと活発で荒く幼い部分も残していたはずだが、ククルと別れてからめっきりとなりを潜めるようになった。
 だからと言って性格がいきなり変わるはずはない。元からおそらく几帳面な方なのだろう。

「それで……うまく寝付けなくなる。もともと、あんまり寝るのは得意じゃないんだ。だったらいっそ限界まで動いて、泥のように眠れたほうが良いから……」

 そう言い訳する弟分は、すっかり意気消沈している。仲間に弱みを見せたくなかったのだろう。それが何となく面白くなかった。言葉を探しながら頭をぼりぼりと掻く。

「アークよぉ、そんな無理をして何になる?」

「いいんだ。俺が止まったら、きっと……ダメなんだ」

 そういう時に緊張を解いてやるのも、年上の仲間としての務めだろう。
 突っ走るのは自分の役目だと思っていたが、こんな生き急いでる大将が後ろに控えていてはたまらない。
 ここらで一発、黙らせてやるかと頭をひねった。が、特に何も思いつかなかった。

「言うことを聞かねぇやつだな。おらよ」

 こういうのは考えるよりも直感だ。
 トッシュは毛布ごとアークを抱き上げて腕の中にしまった。

「うわ、トッシュ!? あ、あのっ」

「は~、あったけぇ」

 アークは一瞬もがいたが、封じ込めたら大人しくなる。
 子どもの体温は流石に通り越しているだろうが、それでも生きている人間というものはじっと抱きしめていると温かいものなのだ。布越しに伝わる温もりは、つまりはアークも感じていることだろう。

「離してくれっ」

「や~だね」

「トッシュッ」

「落ち着け、何もしやしねぇよ」

 流石に羞恥が先にくるのか、身を少し捩られる。が、力では勝っている。これくらい抑えこむのは余裕だった。
 更にすっぽりと腕の中にアークを収めて、毛布ごとしっかり閉じ込める。これで手も足も出せないだろう。

「でもっ!」

「これ以上暴れたらちゅーすんぞ」

「うぐっ」

 そこでぴたりとアークが止まる。そんなにチューは嫌なのかと少し胸に刺さった。まぁ、したこともないのだが。いや、酔った勢いでしている可能性はある。まぁた、嫌がられるとおもしろくてついやってしまうんだよな。
 いやいや、今はそうじゃない。

「よーし、いい子だ。ほら、心の臓の音とか聴いてると、ちったぁ落ち着くだろ。もう寝ちまえ。俺がこうして守っててやるからよ」

 できるだけ落ち着いた声音で話しかけてやる。

「そんな、子供みたいな」

「子供だろ。今くれぇは戻っとけ。また明日、頑張んな」

 あやすようにして、アークの背中をゆっくりと同じリズムでたたく。
 暫くすると、黙ったままのアークから押し殺したようなすすり泣きが聞こえた。
 恥ずかしいのか顔はまったく合わせてもらえないが、それでも思い詰めているよりかはいいと思えた。
 次はよしよしとあやすように撫でる。

「……っ、……ぅ……~~っ」

「大丈夫だ、誰も見てねぇよ。涙ってぇもんはな、心のゴミを押し流す効果があるんだってよ。今のうちにいっぱい泣いとけ」

「でも……だって……」

「今日はもういいだろ。飽きるまで泣いて、そのまま寝ちまいな。ま、朝まで離してやらんがなァ」

 観念はしているのか、腕の中のアークは大人しく、暫くは無言のまま泣いていたが、やがて静かになった。寝ている時まで静かだ。

「大丈夫だぜ、アーク。きっとぜ~んぶ、うまくいくさ」

 やっと眠ったアークを起こさないように腕に抱いたまま、トッシュもごろりと横になる。
 眠くはなかったが、この温かさを抱いていれば眠れそうだった。
 すやすやと寝入る顔を覗き込んで、そっと目尻に残った涙を袖でぬぐってやる。
 背丈は伸びたが、やはりまだ年端もいかない少年の顔だった。

「勇者たぁ……碌なもんじゃねぇな」

 青春を失った少年の涙と、引き換えになるものを、きっと手に入れなくてはならない。
 明日はもう少し近くで守ってやるかと考えながら、トッシュも静かに目を閉じた。










大人にならざるをえなかった(じつはまだ背伸びをしている)子供を、たまには大人に甘やかしてもらわないとね~って真面目に書きました。

アーク沼に落ちてから、暫く(四ヶ月くらいw)ずっとぼっちで活動してたんですが
その時に延々と聴いていたのが蒼穹のファフナーの曲でした。
そう、これは暗夜行路です。

ファフナーもそうなんですが「子どものままではいられなかった」ってフレーズが好きで
アークさんも1から2にかけての描かれていない成長部分がそうだなって思っていて
とてもマッチ力が高いので、私の作品にはよくファフソンが出てきます。

勇者本人は完璧でありたいと思っているので、上手く行かなくてズレたり凹んだりしてるところが見たいんだよな~。
そして、大人には手を貸していただきたいので、珍しくかっこいい大人なトッシュがいるってわけです。
たまに悪い大人な時もあるけどw


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